ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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125話

「ノワール、気づいていると思うけど妖怪達の配備は終わってるよ。勿論、ノワールと光龍妃が弱った所を狙うような奴らも居ないから安心ね」

 

 

 時刻は深夜、場所は決戦場所から少し離れた空き地。影の国で手に入れた覚刀「ベガルタ」を携えた平家がいつもの表情で俺に伝えてくる。妖怪達が決戦場所である地双龍の遊び場全域を囲っているのも分かっているし反乱者的な奴が居ないと言うのも分かっている。だって前者は此処からでも見えるぐらい妖怪達が大量に居るし、後者に関してはそんな事をしようものならば妖怪達の最後だからな……アイツらを率いている寧音や八坂、ぬらりひょんが許すわけもない。

 

 それに近くに居る四季音姉が割とマジな表情で決戦場所を見ているから猶更だ……お前のそんな表情、久しぶりに見た気がする。

 

 

「……なんだいノワール?」

 

 

 俺が見ている事に気が付いたのかこれまたいつもの表情でこちらを向いた。

 

 

「別に。なんかマジになってんなと思っただけだよ。お前がそんな表情するなんざ久しぶりだしな」

 

「そうだったかい? にしし! それだけ気合を入れていると思ってくれれば良いさ。一応これでも次期頭領だからね……自分を従えている(あるじ)の決戦に余計な事をされたくないんだよ。母様と芹様も同意見と思ってくれていいよ」

 

「その辺りは言われなくても知ってる。ホント……赤の他人が行う殺し合いだってのにあそこまでマジになってくれるとはな。今度時間があったら前の殺し合いの続きでも誘ってみるか」

 

「にしし。だったら光龍妃に勝たないとね。そ、それにね……あ、あああ赤のた、他人じゃなくななななるかもしれないだろう! た、例えば……の、ノワールのお嫁……になるとか……さ!」

 

「お嫁さんという単語を言うだけでそれとかマジかお前。ちょっとは平家を見習った方が良いぞ?」

 

「花恋、初心すぎて逆に引くからもうちょっとエロ系に慣れといた方が良いと思う」

 

 

 俺と平家の言葉に先ほどまでマジな表情をしていた四季音姉は顔を真っ赤にして抗議の言葉を言ってきたが無視する事にした。だって平家が言った通り、初心すぎるだろ……そりゃあ寧音もさっさと処女捨てろ的な事を言うわ……愛読書が少女漫画な時点でお察しだったが俺達と一緒に過ごしてきてなおこれとかある意味凄いとしか言えないネ! というかなんでそれじゃなくてヤンデレ方面が成長してるんですかねぇ? 割とマジな話、新生亜種禁手に至った後辺りから俺の横に座りたがってるし、平家となんやかんやしてると夜空並みとはいかないがそれに近い感じの殺気を飛ばしてきてるしなぁ。

 

 どうしてそこが成長してそっちは未成長なんだと考えていると落ち着きを取り戻したらしい四季音姉が鬼の里名物の酒を取り出して飲み始める。確かそれって水無瀬が軽く一口飲んだだけで意識失ったほどヤバい奴だった気がするんだが……鬼って本当に酔わねぇなおい。

 

 

「……と、ところで勝算はどうなんだい? まさか勝てそうにないとか言うわけじゃないよね?」

 

「アホ。勝つに決まってんだろ? そのために今日までお前やグレンデル、ヴァーリとかと殺し合ってたんだろうが。それに自分から言い出しといて絶対に勝てないとか思うわけないだろうが?」

 

「なら良いさ。勝ってきなノワール、こんな場所で死んだら絶対に許さないからね」

 

 

 それこそ言われなくても分かってるっての。

 

 平家が何も言わずにキンキンに冷えた缶コーラを持ってきたので受け取り、四季音姉――伊吹に近づいて乾杯するように互いの飲み物を軽くぶつける。そのまま一口飲むと冷えているので普通に美味かった……しかしなんで用意してたんだ? あぁ、こんなこともあろうかとって奴をしたかったと。畜生、お前だったら普通に出来るから何も言えねぇじゃねぇか!

 

 

「悪魔さん! 準備出来ました♪」

 

 

 次に話しかけてきたのは何故かチア服に着替えている橘、四季音妹、グラムの面々。なんでチア服かと言われたら応援するならこれです! と大多数の妖怪と鬼達による熱い……熱すぎるお言葉の数々により却下されることも無く実行されたようだ。橘は兎も角、四季音妹とグラムが着ているのは単に近くに居たからか芹辺りが着るように伝えたかのどっちかだな! まぁ、別に構いませんがね! ただ一つだけ言わせてもらうと戦力差……つまりおっぱいの差が酷いと思うんですよ! 見ろよ隣にいる平家の顔を! 今にも切り落とそうとして――はいないが内心では必死過ぎとか何とか思ってるに違いない。

 

 心を読んだらしい平家は普通に頷いたのでマジで思ってるらしい。

 

 

「主様。応援する時はこれを着ると母様や鬼達から聞いた。だから着てみた。主様が勝てるように応援する」

 

『我ガおウよ! 覚トともニしてイるエロげで知ッているぞ! これヲ着れバこうフんするのだロウ! ナラばおもウ存分興奮スるがイい!』

 

 

 片やマスコット感満載な表情、片や思わず拍手したくなるほどのドヤ顔。駒王学園のチア服を真似て作ったんだろうが金髪美少女と褐色美少女が着ると絵になるね! あと四季音妹は可愛いを連呼したくなるほどかわいいけどグラム、お前もう駄目だわ。俺と同じく平家に毒されてしまったばっかりに……! おい、そこでよくそこまで成長した的な表情になってる覚妖怪亜種。お前……お前……よくやった! これからもグラムの教育は任せた!

 

 

「アーハイハイコウフンシテマスヨースゴクシテマスヨー」

 

『そウだろう! なラば! 此度のいッセんに我らモ参加させヨ! 敵ハどラごんなラバわレらの出番であロウ!』

 

「いや無理だけど? お前は黙ってそれ着て応援でもしてろ。つーか下どうなってんだ……?」

 

 

 何故参加させないのだやらいい加減ドラゴン相手に使えなどと言ってくるグラムを無視してとりあえずスカートを捲ってみる。スパッツでも履いてるかと思ったら普通にパンツ、それも女物だった……誰が履かせたかは知らないがよくやった。あと四季音妹? お前はスカート捲らなくても良いんだぞ? それをすると初心なくせに凄く怖くて最強な鬼がやってくるからね! あと橘様が怖いのでやらなくて良いぞマジで!!

 

 

「悪魔さん?」

 

 

 橘様、橘様! その満面の笑みでこちらを見ないでください! 怖いです。普通に怖いです。どうしたんですが橘様! 此処に来る前までの貴方様は凄くアイドルだったじゃないですか! クリスマスライブという一大イベント、ドーム一つ貸し切って行ったライブでは休業中にも関わらず他のアイドル達を蹂躙するように歌いまくって輝いていたじゃないですか! だから破魔の霊力を威圧に使ってはいけません! それをすると他の妖怪達が死んじゃうからね! ついでにそこのオコジョも狐にならなくて良いからな!

 

 

「橘。違うんだよ……これはな、チア服を着て応援するなら下着が見えるからちゃんとしているか確認のために――ハイゴメンナサイ」

 

 

 アイドルスマイル全開での威圧には耐えれなかったよ。

 

 

「良いですか悪魔さん、いくら相手がグラムさんだとしてもいきなりスカートをまくるのはダメです! したいならいつでも私のスカートを捲って下着を確認してください! あっ……でも前もって言ってくれれば悪魔さん好みの下着を履きますからね!」

 

「アッハイ。その時はお願いするとしてだ……疲れとか無いのか? クリスマスライブで歌いまくった後だろ?」

 

「大丈夫です♪ あの程度は準備運動にもなりませんから!」

 

 

 流石はキマリス眷属が誇るアイドル、準備運動にすらならないときたか。まぁ、確かに常日頃、殺すか殺されるかの戦場で自分の声と歌を武器に戦ってきたし禁手含め俺達と特訓してたからあの程度は問題無くてもおかしくはない。

 

 クリスマスライブは俺は勿論、全力でアイドルしほりんを推す格好をした犬月と一緒にVIP席的な場所で見ていたが……他の奴らが可哀想と思えるぐらいの代物だった。声量や表現力と言ったものが段違いで内心、これってクリスマスライブじゃなくて橘志保復活ライブだっけ? と普通に思うぐらい凄かった。あと正規の手段で手に入れたらしい鬼や妖怪達――通称しほりんファンクラブも凄かった。なんせVIP席にもいたからなあいつ等! どう考えても奪い取ったとしか思えない数だったが平家からはそんな事はしていないという言葉により猶更意味が分からないね!

 

 あっ、ちなみにだがライブに来ていた連中は寧音とか八坂、ぬらりひょんの指示を無視というかそれはそれ、これはこれと言う感じでやってきてたようでライブ終了後に各々のトップから説教というされたらしい。ぬらりひょんは兎も角、寧音と八坂に説教されるとか羨ましいんですけど……!

 

 

「さっすが。俺も見てたけどやっぱお前……アイドルだったんだなと思えるぐらい輝いてたぜ」

 

「ありがとうございます! これからも悪魔さんを魅了し続けますので……絶対に帰ってきてください」

 

 

 満面の笑みから一転、心配そうな表情に変わった橘からの一言に俺はやれやれと言った感じの態度をとる。全く、そこまで心配なのか? 少しは俺を信用しろっての。

 

 

「主様。いっぱい応援する。だから帰ってきて欲しい。居なくなったら私も伊吹も寂しくなる」

 

『ワガ王よ! 負けルなとはイワぬぞ。勝て、かツのだ』

 

 

 橘に続き四季音妹とグラムからも似たようなことを言われる。ヤバいな……善意でしてるんだろうけどこれ続けられると負けフラグになる気がするんだが? まぁ、嫌じゃないけども。

 

 その言葉に軽い笑みを浮かべると平家が先ほどと同じようにどこから取り出したか分からないが酒とコーラを取り出して橘達に渡す。いきなり飲み物を渡されて橘だけが一瞬だけ疑問の表情にすぐに理解して強いね妹の手を、平家がグラムの手を取って俺が持っている缶コーラに軽く飲み物をぶつける。そしてそのまま一口飲むと先ほどと変わらない冷たさ……おい平家、お前この缶にルーン的なもの使ってるだろ? あ、やっぱりな。

 

 

「ノワール君、それに早織も……時間まであと少しですけどどうしたんですか?」

 

 

 橘達と別れた俺と平家は炊き出しっぽい事をしている水無瀬、レイチェルの所へと向かう。料理自慢の妖怪や鬼達と一緒に行っているせいかこのまま宴会をしても問題無いレベルの料理の数が出来上がっている。別の場所ではあれもってこいだのこれ持ってきてだのと言われて右往左往している犬月もいるが……どこからどう見てもパシリですね、ありがとうございます。

 

 

「別に、単なる暇潰しだ。つーか飯作るとは言ってたが……作り過ぎだろ? 何だったらこのまま宴会直行でも問題無いレベルだぞ?」

 

「だってノワール君達、これぐらい食べるじゃないですか?」

 

 

 俺の顔を見ながらこれぐらい作るのは当然ですと言いたそうな表情になる水無瀬だが一つだけ言わせてくれ……流石に俺はこれ全部は食えません! 食えるのはあの胃の中がブラックホールになってる規格外だけです! というよりお前、俺が負ける事を微塵も思ってないですよね? 普通に勝利して戻ってくるとか思ってますよね……あ、平家が頷いた。マジかお前。

 

 

「……いや俺は普通に無理だからな。夜空ならこの倍くらいは食えると思うが……なぁ、水無瀬? お前、俺が負けるとは思ってないのか?」

 

「え? 勝てないんですか?」

 

「いや勝つけど。勝ちますけどぉ! え? あのさ、ここに来る前に四季音姉やら橘やらと会ってたけど勝ちますよね? 絶対に勝ちますよね? とか言ってたけど……お前、なんで言わないんだよ。うわぁ……引くわ」

 

「ちょっと酷くないですか!? だ、だってノワール君! 勝つと言ったら絶対に勝つじゃないですか! そ、そうですよね!? ね!」

 

 

 水無瀬は自分の言葉が正しいと証明してほしいのか鍋を見ていたレイチェルを見る。え、私ですか? と言いたそうな表情を一瞬するが仕方ありませんわね……とまるでお姫様の様に優雅な表情を浮かべてこっちにやってくる。

 

 ちなみだが会話に混ざりたかったけど鍋を見ないといけなかったから話しかけてくださいオーラ全開だったよとは平家の言葉だ。真面目だ。

 

 

「そ、そうですわね。キマリス様が勝っていただかないと作った料理が無駄になってしまいますわ。水無瀬先生や他の妖怪達と一緒に作りましたし……それに私もキマリス様に食べてもらえるように頑張って作ったんですもの! ですから……ちゃんと勝ってきてくださいませ!」

 

「……」

 

「なんですか覚妖怪? 言いたい事があるならばちゃんと言葉にしてもらえませんこと?」

 

 

 レイチェルの心を読んだのかうわぁ……と言いたそう、というか普通に言った平家とそれに文句があるレイチェルがいつもの様に口喧嘩を始める。前々から思ってたけどお前ら、普通に仲良いよな? 喧嘩するほどなんとやらとか言うし。あと百合の花は何時咲きますか? 俺としてはそれに混ざるのはいけない事だとは思いつつもやっぱり混ざりたいお年頃だから咲く時は言ってくれよ?

 

 

「うげ……まーた喧嘩してるっすね。あっ、水無せんせー! 頼まれてた物は運んできたっすよー!」

 

「あっ、瞬君。それが終わったらあっちの方で男手が必要みたいなのでお願いしても良いですか……?」

 

「任せてください水無せんせー! しほりんのライブを目にした事によりこの犬月瞬! パシリ(ちから)は極限まで高まってますよ! てか王様? なんで此処に居るんすか? あともうちょっとで時間っすよ?」

 

「いや暇なんだよ」

 

「……なんか俺のイメージ的に時間まで現地で待ってると思ってたんすけど?」

 

「それやっても良かったんだが……寂しいんだもん」

 

「男がもんとか言っても可愛くないっすよ」

 

 

 知ってる。男がもんを付けて可愛いのはウアタハだけだろうね! というかすっげぇ今更なんだけど影の国に残してきた曹操って生きてんのか? まぁ、全ての男を狂わせる魔性のウアタハたんが居るから死にはしないだろうけど下手すると相棒と同じ道を進むことになりそうなんだが? それはそれで面白いから良いけども。

 

 

「まっ、王様ですし別に良いっすけどね。あーそう言えば別に言わなくて良いかもしんないけどこれだけは言っとくっすよ――勝ってくださいね」

 

 

 その言葉にやっぱり負けフラグ立ってるよなと思った俺は悪くないはずだ。

 

 

「当たり前だ。なんせ夜空とイチャイチャしたいし結婚したいし子供産ませたいしとやりたい事がかーなーりあるからな! はいと言うわけでなんかもうお決まりになったかもしれないアレやるぞ」

 

「アレって何す……いやおい引きこもり。お前それどっから出した!?」

 

「こんな事もあろうかと」

 

「いやお前が言うとネタにならねぇんだっての」

 

「早織ですし……」

 

「心を読めますものね……」

 

 

 なんて言ったってキマリス眷属の軍師的な何かだしな。コイツが居なかったら基本、俺達って回らないだろうし……あれ? 俺って王だよな? まぁ、別に良いか。俺って基本脳筋だし作戦を思いつくほど頭良くないしぃ! ぶっちゃけレベルを上げて物量で押せば何とかなりますしー!! 殺し合いは数だよと偉い人も言ってたから間違ってないはずだ! というわけでこれからも指揮系統よろしく! うわっ、満面の笑み。

 

 そんなわけで平家がまたもやどこから取り出したか分からない飲み物を犬月達に渡す。そしてそのまま乾杯してコーラを一口飲む……うん、飲み切ったけど最後まで冷やされてたなこれ。

 

 

「さてと……大体終わったか」

 

 

 犬月達と別れ、平家を引き連れたまま人気が無い場所へと向かった俺は誰も居ないのを確認してから今の言葉を言った。既に約束の時間まであとわずかだが決戦場所には転移で行けるからまだ此処に居ても問題無い。

 

 

「とりあえず最後になるかもしれないから顔だけは出しておこう作戦だけどぶっちゃけ、皆気づいていたよ?」

 

「マジか? 割と主演男優賞取れるレベルで演技してたんだがなぁ」

 

「ノワールだし」

 

 

 その言葉を言った表情はやれやれと言った感じだ。まぁ、別に気づかれようと構わないけどな……そこまで演技派ってわけでも無いし四季音姉や水無瀬を欺けるとも思ってない。俺と一緒に過ごしてきた時間は犬月達よりも上だから下手に隠そうとしてもぶっちゃけすぐにバレる。

 

 

「あと負けフラグ立て続けたら逆転フラグ立つんじゃね? とか思ってたみたいだけど現状だと負ける未来しか見えないよ。普通にアニメとかだとやったか……! して負けるなう」

 

「そこをどうにかするのが俺なんだよ。あーなんだ……お前には言う事無いしそろそろ行ってくる。安心しろ、お前が自殺しないように勝ってくるさ」

 

「ん」

 

 

 打ち合わせとか一切していないにも関わらず既に空になった缶コーラと同じくどこからか取り出した缶コーラで乾杯する。そして何も言わずに決戦場所――地双龍の遊び場へと転移した。

 

 

「――終わったん?」

 

 

 転移してしばらく経つといつもの様に空間に穴を開けて夜空が俺の目の前に降り立った。その表情、そして誰もがひれ伏すような殺気を放ちながらも口調は凄く軽い。しかし殺気だけは別格で気を抜くと呼吸する事を忘れそうなほどだ……最も屈するわけにはいかないので俺の方も同じように殺気を放っているけどな。

 

 

「まぁな。別に混ざっても良かったんだぜ?」

 

「ばっかじゃねーの。この夜空ちゃんにだって空気を読むってことぐらいできんの! ねぇ、ノワール。言っておくけどマジで殺すから。いつもの様にはい終わり! ご飯食べよー! とか無いけど別に良いっしょ? テメェが言いだしたんだから納得してるとは思うけどさ」

 

「当たり前だろ。ここでやっぱり無しは俺が許さない。なぁ、夜空……俺がお前と出会ってから今日まで長いようで短い時間が経ったよな。これからも今まで通りやりたい事やって、お前が楽しい事をやってを繰り返すかと思ったが――影の国でアレを知った以上、無理だわ。マジで無理」

 

 

 夜空が規格外な理由、それこそがこの最終決戦を行った最大の理由()()()。悪魔、それもルシファーが絡んでいるとなったら今まで通りは無理だ。誰もが気にしなくても良いとか思ってるだろうがそんなのは俺の心が許さない……どこかでちゃんとした決着をつけないとダメでそれが今だっただけの話。

 

 

「……この夜空ちゃんの規格外っぷりはルシファーが大昔にやらかしたせいって奴っしょ。あの骸骨に気にしてないとか言ったけどノワールの言う通り、今まで通りは無理。マジ無理。悪魔のせいでガキの頃、苦労したのに無かった事にとか出来ねぇっての」

 

「あぁ。正直、ルシファー的には野望成功したようなもんだからな。だからそれは全然違いました残念賞! と煽ってやるためにも夜空……お前に勝つ。ただの混血悪魔に負ける普通の人間だと証明するためにな――と言えたら良かった」

 

「こっちとしては人が生まれる前に何してんのとか言いたいからさ、全力で八つ当たりさせろ――とか言えたら良いんだけど。ぶっちゃけもうどうでも良い」

 

 

 あーだこーだカッコイイことを言ってみたが決着をつけると本気で思いながら向かい合うとルシファーがどうのとかもうどうでも良い。

 

 

「夜空、俺はお前の事が好きだ」

 

「ノワール、私はお前の事が好きだよ」

 

 

 結局のところ――

 

 

「――だから俺がお前を守る」

 

「――だから私がお前を守る」

 

 

 ちゃんとした決着をする理由が欲しかっただけだ。ルシファーなんてもうどうでも良い、大昔に何をしたかなんざ興味はない。ただ目の前に居る女が、心の奥底から欲している一人の女が欲しいから殺し合う。そしてどちらが上でどちらが下か、どっちが守るかを決めたいだけなんだ。

 

 

『Ombra Dragon Balance Breaker!!!』

 

『Luce Dragon Balance Breaker!!!』

 

 

 互いに鎧を纏うと片や光、片や影を生み出して戦場全てを覆う。

 

 

「夜空」

 

「ノワール」

 

「「死ねぇ!!」」

 

 

 相手が欲しいという理由で行われる殺し合いが始まった。




「ノワール」
ルシファーの思惑通りになるのはムカつくから夜空が普通の女の子だと証明するために決着を付けよう。

「夜空」
悪魔のせいで昔、苦労したから八つ当たりしたい。

というありがちな理由で決着をつける予定だったが……

「ノワール」
ルシファーとかマジでどうでも良い。夜空、好きです。

「夜空」
昔の事とかぶっちゃけどうでも良い。ノワール、好きです。

ノワールと夜空の両名、結局のところちゃんとした決着をつける理由が欲しかっただけでした。


さて……頑張りますよ……!

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