ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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今回は一誠side。
この作品の匙君はとあるキチガイ共の影響により(ry


119話

「……全て、お話しします」

 

 

 八岐大蛇の襲撃から数時間後、既に日が昇りだしている時間帯に俺の家に集まっていた。勿論、悪魔や天使と言った事情を知らない父さんと母さんにバレないようにVIPルームだ……もっともこの時間帯だとゆっくり夢の中かもしれないけどな。

 

 集まっているのは俺とリアス、ソーナ会長と匙、イリナとイリナの父さん、そしてこの場には居ないが通信で参加しているアザゼル先生だ。アーシア達はシトリー領の病院に運ばれた木場達のお見舞いに行ってもらってる……本当だったら俺達も行きたいところだが事情が事情のため役割分担と言った感じだ。あの場に居た俺は殆ど問題無いのはやっぱりこの身体のお陰なんだろう……まぁ、逆に皆とは違うんだと思ったのは内緒だ。此処に平家さんが居なくて良かったかもしれない……!

 

 

「パパ……」

 

「……心配させてごめんよイリナちゃん。でもこれはあの日、あの時、あの瞬間に彼を救えず今まで見ないふりをしてきた私に対する罰だ。巻き込んでしまった妻と……イリナちゃん、そしてキミ達には本当に申し訳ない」

 

 

 イリナの父さんは今にも倒れそうな顔色だ。当然と言えば当然だろう……八岐大蛇が居なくなった後、イリナの母さんの安否を確認したら行方不明だったんだからな。警護に当たっていた人達も殺害されていてバレないように術か何かで隠蔽されてたそうだ……匙とヴリトラが言うには十中八九、邪龍の一体のアジ・ダハーカだと断言してるしアザゼル先生やドライグも同意見らしいからまず間違いないだろう。

 

 魔源(ディアボリズム・)の禁龍(サウザンド・ドラゴン)アジ・ダハーカ。地双龍と称されている影の龍クロムと陽光の龍ユニアと同じ邪龍であり特に凶悪な存在として筆頭格とまで呼ばれているほどのドラゴン。あり得ないほどの魔法力を有していて魔術だろうが禁術だろうが何でもできるとヴリトラから教えてもらったが……周囲全て欺けるとかどう防げばいいんだよ! ロスヴァイセさん以上ってだけでもあり得ないのに下手すると聖杯で蘇った影響で昔よりもパワーアップしてる可能性もあるとかもうどうすりゃいいんだよ……!

 

 

『行方不明になった……いや違うな。誘拐されたであろう紫藤イリナの母親に関してはヴァーリ達に探させている。八岐大蛇の傍に居るという可能性もあるが念には念をとな……この手の事で頼みの綱なキマリスは影の国に拉致られて戻ってくるのは数日後と来たもんだ……これに関しては待つしかないだろう』

 

 

 そう、この場にヴァーリが居ないのはイリナの母さんを探すために動いているからだ! 最初は乗り気では無かったんだがアザゼル先生による交渉……というか脅しと言うかなんかそんな感じの事を言われたら渋々探しに行ってくれた。アザゼル先生はシトリー領の病院に入院中だから映像での話し合いだったけど……あのテープはなんなんだ? それを見たヴァーリが今まで見たことないくらい取り乱してたけどさ!

 

 まぁでも探してくれるのはありがたいから文句は言わないさ! 八岐大蛇が居る場所は見当がついてるらしいし同じ場所に居るかもしれないが……もしかしたらと言う事もある! ヴァーリ……頼むぞ!

 

 

「感謝します……さてまずは何を話そうか。あぁ、そうだな……まず彼の名前からお伝えしましょう。彼の名は八重垣正臣、私の部下()()()男です」

 

「……だった?」

 

「――彼はもう何年も前に、それこそイリナちゃんがまだ小さい時に死んでいるのです。それも……我々教会側が粛清という形でね」

 

 

 俺の疑問にイリナの父さんは答えてくれたけどその内容は驚きの一言だ。だって既に死んでいる人が俺達の前に現れてしかも八岐大蛇と言う邪龍になっていたんだからな! リアスやソーナ会長の表情を見ると俺と同じ事を考え付いたんだろう……聖杯。ギャスパーの幼馴染のヴァレリーが持つ神滅具の一つ、幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の力で蘇ったに違いない! 本当だったら一個しかない存在しない聖杯がヴァレリーの神滅具が亜種だったせいで現状だとリゼヴィムが一つ、邪龍達が一つ持ってかれて好き勝手されてるしな!

 

 まぁ、邪龍側に関しては取り戻すタイミングがあったのに黒井達がスルーしたのが原因だけども!

 

 

『――それはベリアル家のご令嬢が原因で?』

 

「……ご存知でしたか」

 

『こちらで一番最初に対峙した匙から聞いた内容を元に調べさせてもらった。と言っても内容の殆どは同じベリアル家から聞いたようなものだが……バアル家も絡んでいるとなれば情報が出て来なくて当然と言えば当然だったがな』

 

「アザゼル、説明して頂戴! 私達は全く知らないのよ……何を知っているの?」

 

『……これに関してはリアス、お前も無関係じゃないとだけは言っておこう。昔、この駒王町を治めていた悪魔の事は知っているな?』

 

「えぇ……クレーリア・ベリアルという女性悪魔の前任者が居たとお母さまから聞いているわ。それ以外だと詳しくは聞けなかったけれどね」

 

『よし、次に匙。八岐大蛇と戦った時にクレーリアと言っていたのは間違いないな?』

 

「は、はい! 間違いないです……あと、身分違いの恋だったとか……言ってました」

 

 

 その時は俺はヴァーリと一緒に敵と戦ってたから会話の内容は知らないけど……どうやらそれが関係してるらしい。匙の言葉を聞いたアザゼル先生はベッドに深く横たわりながら少し溜息をついた。

 

 

『こっちでも調べていた時の話だ。俺が独自にベリアルに関する事を調べていると知ったのか接触してきた悪魔が居てな……名はディハウザー・ベリアル。お前達も名前ぐらいは知っているだろう? 冥界で行われているレーティングゲームのトップランカー。あちらさんから周りにバレないようにと極秘裏に接触したのには疑問を抱いたが……色々と話しを聞いたら納得がいった。これは外に漏れたらベリアル家に大きなダメージとなりかねん』

 

「そ、そんなにですか!?」

 

『あぁ。結論から言おう――八岐大蛇、いや八重垣という男とベリアル家の令嬢クレーリア、この二人が俺達が居る駒王町で恋に落ちたのが全ての始まりだ。恐らく……教会側でも殺害されている面々はこれに関係する人物達でしょう?』

 

「……はい。八重垣君は昔、この地を治めていたクレーリアという女性悪魔と恋に落ちました。それはもう深く、深すぎるほどに……今の時代ならばまだ……まだ良かったでしょう! 和平も結び手を取り合っているのですから! ですがあの時は……前例があったとはいえあの時代はそれを許せるほど甘くは無かった……! だからこそ私達は彼を粛正して……上司としての責任として海外へ飛ばされることになったのです」

 

「前例……?」

 

「――キマリス君、いえキマリス家の事ね」

 

 

 俺の疑問に答えるようにリアスが言う。そうだ! 今まで特に何も思わなかったけど黒井って純血悪魔と人間の間に生まれた混血悪魔……この話しの内容と状況は似てる!

 

 

『ただの人間と結婚した純血悪魔、この一点だけならば同じ状況と言えるだろう。だが問題は相手側の立場だ……キマリスの場合はあまり言いたくは無いしもし聞かれたならば何をされるか分からんが言うしかないから言うぞ……! 言いたくねぇなぁ……どうせ覚妖怪経由でバレるだろうしなぁ……!』

 

 

 先生すいません! そこを頑張ってでも教えてください! 黒井には後でエロ本とかなんか差し出して怒りを治めてもらうんで!

 

 

『畜生胃がイテェがもうヤケだ! 同じ状況下で何故キマリス家が許されたかだがまず家としての格の差だろう。今でこそ最強の影龍王として有名なキマリス家だったがあの当時はまだ有名では無かったし現当主も純血悪魔の中で平凡と呼べる存在、そして相手側が一般家庭の人間だったからこそまだ許された。だがベリアル家の場合は別だ……まずレーティングゲーム王者のディハウザー氏を輩出した事が大きい上、相手側が教会の人間……あの時代ならまず間違いなく反対されるだろう』

 

「おっしゃる通りです。彼女……クレーリアさんも純血悪魔と結ばれた人間が居ると話していましたがそれを許せるかと言われれば……まず無理でした。悪魔側と教会側が手を結ぶなどあり得ないと本気で思っていた時代ですからね。これを許してしまえば他がどう動くか分からぬ以上……慎重に対処するしか……!」

 

「……だから、殺したんですか……! 無理だとかありえないとかそんな理由で!!」

 

「サジ!」

 

「……すいません」

 

 

 言葉では謝っているが匙の表情から察するに納得は出来て無いみたいだ。現に今も血が出るほど拳を握っているし……俺だってふざけるなと声を出したいさ! でも……多分だけど俺は言える立場じゃないんだろう。

 

 チラリとリアスを見る。元々俺はドライグを宿していただけの転生悪魔でリアスは純血悪魔、形は違うかもしれないが八岐大蛇とクレーリアって人と同じ状況だ。リアスを心から愛していて付き合う事を許された俺には言う資格は……無いよな。

 

 

『ディハウザー氏は八重垣正臣とクレーリアの一件は悪魔と教会の体裁のために殺されたのではないかと語っていたが……まず間違いないだろう。たったそれだけのために殺された男による復讐……頭が痛くなる案件だ。恐らくヤツは邪龍達の手を借りバアル家初代当主を殺害、今回の一件に関係する人物達も同様に殺害……そして最後は貴方だろう』

 

「……はい。今まで隠していたことを話したお陰で少し胸が軽くなりました。イリナちゃん、私が言う資格はないかもしれないが……自分の気持ちに嘘をダメだよ。私は、父親として……応援しているから」

 

「パパ……? 何を言ってるの……?」

 

 

 イリナの父さんは何かを決意した表情を浮かべた。多分……八岐大蛇の所に行くつもりだ! 自分の命で許してもらおうとか思ってるに違いない! ふざけんな! そんな事をしたらイリナがどう思う!? たとえそれしかないとしても……別の方法がきっと!

 

 俺が言葉を発するよりも先に匙が動き出した。表情が見えないほど下を向きながら立ち上がり、拳を強く握りしめて思いっきりイリナの父さんを殴った。

 

 

「サジ!」

 

「止めないでください! ふざけんじゃねぇぞおい!! アンタ……何しようとした!? まさか自分の命で許してもらおうとか思ってるんじゃないよな!!」

 

「……その通りだよ。妻を救うには……これしか……ないんだ」

 

「馬鹿じゃねぇの!! アンタ……相手が何なのか知ってるのか!? 邪龍だぞ! 俺や黒井と同じ存在なんだぞ!! 約束なんか破るに決まってるだろ!! アンタが死んだ後に紫藤も紫藤の母さんも殺すのが俺達なんだよ!!! 例え何を言われても自分の欲望に一直線に突き進むからな……! 否定したくても否定できねぇんだ! あいつが……黒井が、そんで俺もそうだから!!」

 

 

 今まで見たことない匙の表情と声に俺達は何も言えなくなった。言葉を失っている俺達を他所に匙は自分の思いをぶちまけるようにイリナの父さんの胸倉を掴んで言葉を続ける。

 

 

「なんで一人で解決しようとするんだよ! なんで一人でカッコつけようとするんだよ! 良いか……親が居なくなった子供ってのはなぁっ!! 寂しいんだよ……! 心に穴が開いたんじゃないかってぐらい辛いんだよ!! そんなもんを自分の娘に、紫藤に味合わせる気かアンタは!! ふざけんな!! 状況が詰んでる? あぁ、詰んでるよ!! 自分の大切なもんを邪龍に狙われて何も出来てない時点でもう敗北してんだ! カッコつけたこと言ってるが結局はヤケになってるだけだろうがぁっ!」

 

「……なら、なら! どうすればいい!? 妻の行方も分からず私の命どころか愛する娘の命すら狙われている状況で何ができると!? どうすれば……妻を助けられると……言うんだ!」

 

「頼れよ!! 何のための俺達だ! 一人で無理なら二人だ! 二人でダメなら三人だ! だから俺達を頼ってくれよ……! ここでアンタを見捨てたら俺は先生として失格なんだよ!! こんな状況でも自分の事しか考えてないとかいうなよ!? これが俺だ! あぁ、何度でも言うぞ! これが邪龍(おれ)なんだよ!! それにな……俺がキレてんのはアンタだけじゃねぇ! おい兵藤ォォっ!!」

 

 

 黙って見ていた俺に匙は殺気を放ちながら近づいてきて――拳を叩き込んできた。受け身も取れず床に倒れこんだ俺の胸倉を掴み、周りの声すら気にせず言葉を続けてくる。

 

 

「さっきから何黙ってんだよ! テメェの幼馴染だろ?! なんで黙ってんだよ……! 救いたくねぇのかよ!! 仲間じゃねぇのかよ!! 答えろ兵藤!!」

 

「……匙」

 

「良いか……何を思ってるか知らねぇがお前はお前だ! 俺じゃねぇし黒井でもねぇし白龍皇でもねぇし光龍妃でもねぇ!! 兵藤一誠っていう男だろうがぁ! 何他人に同情してやがるなんで馬鹿正直に助け出そうとか言わねぇんだよ!! いつものおまえはどうした!? どんな時でもおっぱいおっぱい言ってただろうが!! それで良いんだよ! 周りなんざ知った事か……テメェの事だけ考えれば良いんだ! それがドラゴンだ! だから言えよ……テメェは何してぇんだ!!」

 

 

 そんなの決まってるだろ――

 

 

「――助けてぇよ! イリナの危機だぞ!? たとえイリナの母さんとは昔しか会ったことなくても危ないなら助けたい!!」

 

 

 あぁ、そうだ……助けたい! 今にも倒れそうなイリナを笑顔にしたい! だって俺の幼馴染で仲間だからな!

 

 

「だったら今からやる事……分かるよな!」

 

「あぁ! 八岐大蛇をぶっ飛ばす! イリナの母さんを助けだす!」

 

「それで良い! 昔は昔! 今は今だ! 他人の事なんざ無視して自分の欲望まっしぐら! それで良いだろ……やらないよりはやった方が良い精神だ! 後悔するならやって後悔だ! 紫藤には酷かもしれねぇけどもう間に合わないかもしれねぇ! でもな! ここで黙ってたら俺達じゃねぇだろ!」

 

「おう! もし無理だったらとかは後回しだ! その時はその時……いや俺がイリナを幸せにする! だから匙……力を貸してくれ!」

 

「当たり前だろ! ここで手を貸さなかったらお前を殴った意味がねぇ! それに……八岐大蛇に言ったからさ。何度でも止めるって……だって所謂身分違いの恋って奴をしてるのはあっちだけじゃねぇしさ」

 

 

 そう言って匙はチラリとソーナ会長を見る。そう言えばD×D学園襲撃事件から進展したんだっけ……? 付き合ってるとかそう言うのじゃなくてまだ保留らしいけど……あっ! ソーナ会長が照れてる! 凄く照れてる!

 

 

『……はぁ、匙。お前、そう言うところキマリスに似てきたぞ?』

 

「同じ邪龍ですから! いやあそこまでド外道にはなりたくは無いですけど……えっとだからお願いします! アイツが居る場所を教えてください!」

 

「俺からもお願いだ! イリナの母さんを絶対……助けてきます!」

 

 

 俺と匙は紫藤の父さんと向かい合って頭を下げる。畜生……匙を越したと思ってたけど追い越されてたぜ! そうだよな……俺、悪魔であると同時にドラゴンだもんな。しかもオーフィスとグレートレッドの力で生まれた超ハイブリットだ! 黒井みたいに好き勝手は……あれだがこんな時ぐらいは良いだろ! きっと許される! むしろ許してください! 黒井よりは絶対マシだから!

 

 

「……すま、ない……本当に……! お願いだ……妻を……イリナちゃんを……助けてほしい!」

 

「ママをお願いします……お願いします!!」

 

「「はい!」」

 

「もぅ、仕方ないわね。イッセー、王として命じるわ……絶対に帰って来なさい。必ずよ」

 

「私からも……サジ。必ず帰ってきてください……約束しましたよね? それに、えぇと……貴方が上級悪魔になってもらわないと独り身になってしまいますので……お姉様も五月蠅くなるのでえとえと、や、約束の時まで死ぬのは許しません!」

 

「勿論です! 必ず帰ってきます! だって俺はソーナの兵士ですから!」

 

『たくっ、イチャコラしやがって。ヴァーリから連絡が入ったがどうやらこっちの予想通り八岐大蛇の下に居るらしい。黒歌曰くまだ生命力があるそうだからまだ生きているだろう……ただヴァーリの加勢は期待するな。アジ・ダハーカと戦闘に入ってるらしい』

 

 

 マジか!? いやでも匙と一緒なら大丈夫だ! なんか知らないが俺って毒とかに耐性あるっぽいしな! きっとこの身体のおかげなんだろうけど……!

 

 匙と一緒に部屋を出る。勿論行く先は八岐大蛇が居る場所だ……海外らしいが転移魔法でなんとか行けるらしい。これに関してはありがたい……空港とかだと時間かかるしさ!

 

 

「兵藤」

 

「なんだ?」

 

「頼りにしてるぜ」

 

「こっちこそ!」

 

 

 コツンと互いの拳をぶつけ合う。イリナ……必ずお前の母さんを助けてくるからな!




脳内のデータを出力した結果、なんか長くなりそうなので区切りました。
次も一誠sideです……八重垣君関連は書きたい事ばっかりですので!
観覧ありがとうございました!

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