ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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遅くなってしまい申し訳ありません。
この作品の匙君は周りの環境(とある腋好きのキチガイ)によって原作よりも強化されております。


105話

「まさか紫藤イリナを殺しに来たらヴリトラと殺し合う事になるとはね。いや、これが邪龍として普通の事なのかな」

 

 

 紫色の炎を放出しながら得体のしれない剣を握る男はやれやれと言ったような声を出す。兵藤には任せろ……なんてカッコいい事を言ったが正直、男が持っている剣を見ていると背筋が凍るというか身体が震えが出てきやがった。右を見ても左を見ても殺し合い、殺し合い、殺し合い、殺し合いでなんか即効で引きこもりたくなるぜ……こっちは一般家庭出身の転生悪魔だぞ!? 頭のネジが緩んでるんだか曲がってるんだか分からない黒井達とは違って殺し合いをする度胸なんて一切無いんだよ!! なんなんだよあの順応性!? さっきから嬉々として邪龍に変異した魔法使い達を殺しまくってるんですけどぉ!? 会長達は邪龍もどき相手に苦戦してるってのにあの人達……息をするように首落としたり喰ったり潰したり引き裂いたり真っ二つにしたりとかあり得ねぇっての。あっ、でもしほりんの生ライブだけは土下座レベルで感謝ものだな! ただ一つの癒しだと思う! ただ吐き気がするぐらい気持ち悪くなる雷を放出しているところは目を逸らしたいけどさ。破魔の霊力って怖い。

 

 

 ――我が分身よ、他の事に気を取られるな。目の前の相手の身に集中しろ。八岐大蛇を相手にするのだ、先のクロムとの殺し合い以上に集中せねば死ぬぞ。ヤツは魂を汚染する毒を持っているのだ、一度でも浴びれば先生にすらなれんぞ

 

 

 分かってるさヴリトラ、男が持ってる剣以上に目に見えている紫色の炎がマジでヤバいってことは本能が教えてくれてるしな。俺は兵藤達と比べて圧倒的に戦闘経験が少ないんだ……禁手に至ったとはいえこの状態でまともに戦える相手はシトリー眷属(俺の周り)には居なかったから一人で修行するかデュリオとの戦いぐらいだ。つまり全然アイツらに届かねぇぐらい弱いんだ! 気を抜くなんざ絶対に出来るか!!

 

 

「『さぁな! 少なくとも俺の周り……まぁ、黒井だったら普通だっていうだろうな。俺としてはありえないと思うけどさ』」

 

「なるほど。それじゃあ聞くが何故僕と戦うんだい? 先に宣言しておくが僕は紫藤イリナさえ殺せればそれで満足する。他の者には興味なんて無いよ」

 

「『それだよ。紫藤を殺すってところが気に入らない! そもそもダチの友達を……仲間を殺すと言われてはいそうですか、なんて言えるわけねぇだろ! だから止めるためにも殺し合うんだよ!』」

 

 

 もっとも黒井だったら「へー、じゃあソイツを殺したら殺し合おうぜ!」とか言うだろうけどな! アイツって自分の眷属とかその周りにしか興味ないっぽいし何よりD×Dメンバーを仲間とすら思ってないんじゃねぇか……うん。ありえる。普通にあり得る。ルーマニアでの一件とかそれ以前の行動とか見てると否定できない。そう考えると犬月って良く一緒に居られるよな……後でなんか奢ってやろう。きっと苦労してるだろうしな!

 

 纏う鎧から漆黒の邪炎を放出しながら男を見つめる。紫色の炎を放出して剣を握っているというところを除けば普通の一般人っぽい感じだ。年は二十代前半とかそのぐらいか……でもなんなんだろうな、この心の奥底まで響いてくるような負の感情はさ! この世の何もかもを恨んでいるような……俺の邪炎すら飲み込むんじゃないかってぐらいの呪詛というか、言葉に出来ないが一つだけ言えるのはアイツの心や感情を象徴しているのは放たれている炎だってことだ! 正直、別の場所で戦いたいぐらいだよマジで……この場所には会長達が居るから下手をすると巻き込まれる恐れがある……まぁ、上空で兵藤や黒井、地上でサイラオーグの旦那が戦ってる時点で巻き込まれるのは確定だけどな!! お願いだから大怪我とかしないでくれよ皆!

 

 ところで上空で戦ってる黒井さん? なんで味方……? だと思われる光龍妃の人と殺し合おうとしてんだ? こんな状況でも平常運転とか馬鹿かお前。

 

 

「止めるため、か。ならやってみるが良い。だけど一つだけ言っておくよ」

 

 

 胸に十字架の炎を灯した男が濃厚な殺気と共に全身から怒り()を出し――

 

 

「キミ程度で僕の復讐は止められない」

 

 

 ――地上を汚染する炎を俺へと放ってくる。ここで避けてしまえば目の前の男は確実に離れているところで戦っている皆……いや紫藤へとこの炎を向けるだろう。そんな事はさせねぇ! だってよ……言ったんだ!

 

 

「お前の復讐ってのには興味なんかねぇ! でもな……俺のダチに言ったんだよ! 任せろって! だったら引くわけにはいかねぇんだ!」

 

 

 

 あぁ、そうだ! ダチに言ったんだよ……任せろって! 体が震える? 吐き気がする? 知った事かそんなもの!! 兵藤も黒井も犬月も俺が気絶しそうになる修羅場を潜ってきたんだ! この程度でビビってたらシトリー眷属の兵士の名が廃る!!

 

 応戦するべく他者を呪う漆黒の炎を向かってくる紫色の炎へと放つ。常軌を逸した熱量を持つ互いの炎がぶつかり合うと周囲が焼け野原すら生温い一つの地獄へと変化した……触れたものは何者であれ呪い尽くすだろう俺の炎と何者であれ汚染するであろう男の炎。やっべぇ……! なんだよこの威力!! ドンだけ紫藤の事を殺したがってんだコイツ!!

 

 

「先ほども見たが……これがヴリトラの炎か。中々どうして……心に響く良い呪いだ」

 

「『そうかよ! おい! なんで紫藤を恨んでんだ!! アイツが何したってんだ!!』」

 

「何もしてはいないよ。少なくとも彼女はね……だが周りは違う。彼女の周りに居た人物は何があろうと生かしては置けない……あぁ、生かしておいてなるものか! 何事も無い顔で、のんきに笑って過ごしているアイツらを! 僕とクレーリアを否定したアイツらが許せない!! だから僕は彼女を殺す。その首を持って局長の前に現れてその顔を絶望に染めたいだけさ」

 

「『ふざけんな!!』」

 

 

 心からの叫びを放ちながら漆黒の炎の威力を上げる。なんだよそれ……! 紫藤は関係なくてただのとばっちりじゃねぇか! でも一つだけ分かるのは……この男はクレーリアって人を大事にしてたってことだ。全力で応戦しているはずなのに気を抜けば押し切られそうになるほどの威力がある炎を放つぐらい大事だったんだろう。でも……それでも! 殺させるわけにはいかねぇんだよ!!

 

 

「『そんなとばっちりで親友のダチを……仲間を殺させるわけにはいかねぇ!! 俺も邪龍を宿す存在だから何を言っても無駄だってことは分かってるけど……それでも言わせてもらうぜ!』」

 

「そうだね。邪龍とは自らの欲望に従うものなんだろう? なら僕は復讐という欲望に従うだけさ! 何故邪魔をするヴリトラ!! 親友とやらに任せろと言った程度で死ぬつもりか?」

 

「『死ぬつもりもねぇよ! 勝つからな!! 言っておくが……俺は結構しつこいぞ!!』」

 

 

 纏う炎を地面へと放ち、蛇のように地を這いながら男へと近づける。しかしそれを放置するほど相手も馬鹿じゃない……背からドラゴンの頭と首を模した紫色の炎を出現させて俺と同じように地面へと放った。その姿はまるで八つの首を持つドラゴンのようにも見える……なるほど、マジで八岐大蛇だな。しかも他と違って神滅具とかふざけんじゃねぇよ……そうだよな? だって前に黒井達が八岐大蛇を復活させようぜ! 核は神滅具な! 的な事を言ってたし! マジで何してんだよおい!? 面白そうってだけで本気でやるなよ!? これだから邪龍は嫌なんだ……俺も邪龍だけどさ!!

 

 周囲が轟音を鳴り響かせている中、俺と男はその場から動かず互いの炎をぶつけ続ける。接近しようにもあの炎を浴びたら下手すると死ぬだろうしあの剣で斬られてもアウトっぽいから下手には近づけない……これに関してはあっちも同じだろう。自慢じゃないが俺、いやヴリトラの邪炎は掠るだけでも死に直結する代物だ。解呪しようとしてもほんの僅かでも炎が残っていたら再度燃え上がる執念深い性質持ち……ハハ、怖いぐらい頼りになるよ!

 

 だが――俺達の攻防も長くは続かなかった。

 

 

「……ぐ、ぁ、つぅ……!!」

 

 

 周りを地獄へと変えるほどの炎を放ち続けていると男の様子がおかしくなった。自分の胸を強く抑え、何かの痛みに耐えるように歯を食いしばっている。なんだ……さっきまで普通だったのにいきなり変化しやがった? 俺の炎は一つも当たってない……ヤツの周りには自分の体から放たれている炎――まさか!

 

 

「『おい! まさかお前……自分の炎に焼かれてるのか!?』」

 

「……っぅ、あぁ、そうだよ。残念な事にまだ完全に馴染んでいないからね……体の内部が猛毒の炎で焼かれているだけさ」

 

「『……そんな状態になってまで紫藤を殺したいのかよ!!』」

 

「あぁ、そうだ!!」

 

 

 目から血を流しながら男は叫んだ。

 

 

「殺したいさ! 殺したくて何が悪い! お前達に何が分かる!! 何も望んでいない……ただ一緒に居たかっただけの僕達がお前達の、悪魔や天使達の都合で殺されたこの気持ちが! この心、この身にあるのは憎悪だけさ! 僕達を……いやクレーリアを殺した奴らは絶対に殺す!! 殺してやるさ!! 貴様達の都合で殺されたのならば今度は僕の都合で殺してやる!!! この身が修羅に落ちようと、邪龍へと成り果てようと必ずだ!! 平和な世界しか知らないお前には分からないだろう!!!」

 

 

 怒りの声、憎悪の炎が勢いを増す。空を焦がそうとする炎が、地上を汚染しようとする炎が俺へと迫ってくる……なんだよこれ! 自分の事は度外視でクレーリアって人の事しか考えていない! このままだと負ける……!

 

 

「僕達は一緒に居たかっただけだ! それだけで良かったんだ!! 誰にも迷惑をかけず静かに過ごしたかった!! 僕は教会に属する人間で彼女は純血悪魔! 生きる時間が違ったとしても一緒に居たかった!! 好きだった、心から愛していた!! なのに貴様らは……お前達悪魔は! 天使は!! 自分の都合しか考えず僕達を引き裂き――彼女を殺した!! 許すか! 許せるわけがないだろう! 身分違いの恋がなんだ! そんな理由で殺された僕のこの怒りをどこにぶつけたら良い!! 邪魔するなヴリトラ……たかが任せろという言葉で戦っているお前に僕の怒り! この憎悪を止めることは出来ない!!」

 

「『……たかがじゃねぇ!!!』」

 

 

 一歩、押し負けそうになる憎悪の炎に抗う様に前に出る。確かにこの男の言う通り、俺は平和な世界しか知らない。戦っている理由だって紫藤を殺させたくないってのと親友に任せろって言ったからだ……でも悪いけどそれを「たかが」なんて言われたくねぇ!

 

 

「『確かにお前の言う通り、俺は平和な世界しかしらねぇよ! 戦ってる理由だって皆を死なせたくないとか紫藤を殺させないとか兵藤に任せろって言ったからだ! でもな……それが俺だ!! ここで見捨てたら俺は先生になれないんだよ! 子供達に誇ってもらえる先生になる!! これが邪龍ヴリトラを宿す匙元士郎の欲望だ!! それの何が悪い!!!』」

 

「っ!」

 

「『アンタがそのクレーリアって人の事を大事にしていたのはこの炎を見れば分かるさ! 悔しかったんだろうしムカついたんだろうってのも良く分かる! だからこそ止める! 分かってんのかよ……! 今のアンタの姿をクレーリアって人は喜ぶと思ってんのか!! 目から血を流して体が焼ける痛みに耐えてるアンタを見たら泣きながらもうやめろって言うはずだ!』」

 

「だろうね!クレーリアが喜ばないことは分かってるさ……! でも止められるわけがない! たとえ見捨てられたとしても僕は必ず復讐を果たす! 邪魔をするなぁ!!」

 

 

 猛毒を宿した紫色の炎の勢いが増す。やべぇ……視界が赤くなってきた。俺が放つ漆黒の炎ですら防ぎきれないほどの質量を浴びてるから仕方ないんだけどさ。口の中が血の味しかし無いし前に進んでいるのかどうかすら分かんねぇ……でも進む! 前に進む!! この馬鹿野郎を一発ぶん殴ってやらないと気が済まねぇ!! 自分だけ不幸だって思ってるコイツだけは必ずぶん殴る!!

 

 一歩、また一歩と前へと進んでいくと地面から生えてきたドラゴンの頭を模した炎が俺の肩に噛みついきた。熱い、熱い……耳に焼ける音が響いてくる。それどころか視界が真っ暗になりつつある……魂すら汚染する猛毒を宿した聖遺物の炎を受ければ俺程度は簡単に死ぬ――わけないだろ!!

 

 

「……何故だ、なぜ生きている! 八岐大蛇の毒を! この聖遺物の炎を受けてなぜ生きている!!」

 

「『……あぁ、教えて、ほしいか?』」

 

「何……?」

 

 

 俺は黒井のように再生能力なんて無い。猛毒を喰らえば普通に死ぬし聖遺物の炎を浴びれば消滅するだろう。ハハ、きっと会長は怒るだろうなぁ……でも俺って馬鹿だからこれしか思いつかなかったんだよ。悪いなヴリトラ、辛いだろ?

 

 

 ――気にするな我が分身よ! この程度の痛みなど我が分身が味わっている苦痛に比べればなんてことはない! 進め! 前へと進め! 己が抱いた欲望を奴に見せてやるのだ!!

 

 

 あぁ、勿論だ!!

 

 

「『魂すら汚染する毒、あぁ……確かに視界が真っ赤になるし口の中が血の味しかしなくなったさ。知らないだろうから教えてやるけど俺の神器の大本は黒い龍脈だ……見えるよな? 俺の身体から生えているこの触手がそうだよ! こいつは相手の力を奪ったり出来る便利なものでさ……結構前に兵藤と戦った時は血液を奪い取った経験がまさかこんな所で役に立つとは思わなかったよ。さて、ネタばらしといこうか! やってることは簡単だ――これを自分に繋げて俺の身体に入って来た「猛毒」を抜き出してるんだよ!!』」

 

 

 禁手に至ってから今日まで黒い龍脈をメインに鍛え続けた結果、奪い取れるものを指定できるようになった。普通に相手の「力」から「血液」「生命力」とか奪い取れるし血管に直接呪詛の炎を流し込めるようにもなった。だからそれを利用して体内に入った「猛毒」を奪い取って外に出してるからこそ俺は今も歩けてるってわけだ……まぁ、解毒してるわけじゃないから辛いことには変わりなし血液も一緒に抜けてるかもしれないがそこは目を瞑ろう。

 

 

「八岐大蛇の毒を抜き出している……いや、ならば聖遺物の炎はどうやって!!」

 

「『気合、と……根性!!』」

 

「――」

 

 

 だって兵藤や黒井達と違って弱いから仕方がない。うん、泣きたくなるぐらい力の差があるのに体内に入った猛毒を抜き出しながら聖遺物の炎を完全に防ぐとか無理だ。精々やってるのは漆黒の炎を全身に纏ってる防いでいる程度……さっきからその防御を突破した熱で身体が焼かれてるけど気にしない。体が大火傷になろうと今は目の前に居る男をぶん殴るだけ考えていればいい!!

 

 

「『さっき言ったよな……結構しつこいって! 力の差があろうと俺は諦めねぇぞ……! 身体が焼けようと猛毒に汚染されようと一歩、また一歩と近づいてやる! だからそこを動くんじゃねぇぞ……!』」

 

「……何故、そこまでして僕の復讐を止めようとする。そこまでする価値があるのか!」

 

「『知らねぇ! これは俺がやりたいからやってるだけだ! 俺も邪龍だからな……一度決めたら真っすぐ突き進むしかないのさ! それに……一つだけ、俺はアンタと似てる所がある』」

 

「何……?」

 

「『身分違いの恋、それをしてるのはお前だけじゃねぇぇぇ!!!』」

 

 

 血管が切れるんじゃないかってぐらい大声で叫ぶとそれに呼応するように全身から放たれていた漆黒の炎の威力が上がる。よし、結構辛いがまだまだやれる!

 

 

「『俺は自分の主が……ソーナ・シトリーの事が好きだ! 俺は転生悪魔で会長は純血悪魔っていう身分の差があるが関係ない! 好きになっちまったもんはしょうがないだろ! だからお前の気持ちは少しだけ分かる……俺だって会長と一緒に居たいさ! 誰がなんと言おうとこの思いだけは邪魔させない! もしお前と同じような事があったら俺だって復讐に走るだろう……心の底から好きだったら当然だ!』」

 

「だったらなんで邪魔をする!」

 

「『決まってるだろ……誇れる先生になるためだぁぁぁ!!!』」

 

 

 もう何言ってんのか分かんないぐらいギリギリだ……でも、まだ倒れてたまるか! ここで倒れたら兵藤に任せろって言った意味が無くなる……それに会長が見てるんだ! カッコいい所を見せたいんだよ!

 

 その勢いのまま紫色の炎を突っ切って男の目の前までたどり着く。俺もアンタも立ってるのがやっとって感じだな……じゃあ、歯を食いしばれよ!

 

 

「『アンタの行動は間違ってるとは言わない……俺だって同じことをするだろうからな。でも、それでも! 紫藤は殺させない! 任せろって言ったのに、護れませんでしたじゃ先生失格だからな! それに……今のアンタの姿を見てるクレーリアって人の気持ちを考えろぉぉ!!』」

 

 

 拳を強く握り、全身全霊の力で男の顔面に叩き込む。既にこの世に居ないのは話の中で分かってる……それでも今のアンタの姿を空の上で見てるかもしれないだろ! もし、会長が殺されたら俺は何が何でも犯人を探し出して殺すだろう。それは考えなくても分かる……だから本当だったら俺がコイツに説教する資格なんて無いかもしれない。でもそれの何が悪い……元人間で今は悪魔! そして邪龍を宿してるのが今の俺だ。身勝手な人間が悪魔で邪龍になったらこうなるさ! 先生としてはダメかもしれないけどこれが俺だ……!

 

 脳裏には好き勝手に生きている黒井の姿が浮かんだ。ハハ、アイツはいつもこんな感じなのかな……? 分かりたくないけど分かってしまう自分がいる……良いか。だって俺は悪魔で邪龍なんだから夢に向かって突き進んでも誰も文句は言わないよな。

 

 最後の力を使い果たしたのか鎧すら維持できず地面へと倒れこむ。やべ……指一本すら動かせねぇ……!

 

 

「……馬鹿だな」

 

「……馬鹿で、悪いか」

 

「いや、悪くないだろうな。僕も大馬鹿者だ、ヴリトラ。悪いが一発殴られた程度で僕は倒れないぞ……たとえ呪いの炎に身を焦がそうともだ」

 

「し、ってる」

 

「この剣でキミを刺すだけで殺せるという事も分かっているかい」

 

「……しって、る!」

 

 

 指が動かないなら足を動かす。足が動かないなら体を動かす。体が動かないなら頭を動かす。地面に嚙り付いてでも戦意だけは失うわけにはいかない!

 

 

「――やめたよ。ここで紫藤イリナを殺すのはやめておこう。僕も限界だ……でも次は必ず殺そう。その時はまた止めに来るかい?」

 

「――当然、だ! 何度、でも止めてやる!」

 

「……そうか」

 

 

 真っ赤に染まった視界の中で男は若干だが嬉しそうな表情を浮かべて炎に包まれながら姿を消した。それを見届けた俺は誰かが泣き叫ぶ声を聞きながら――意識を失った。




遅くなってしまい申し訳ありません。
FGOが面白い+若干スランプに陥った+最近原作が悪い意味でカオスになったため読むのが辛くなった等によって投稿が遅れてしまいました……

観覧ありがとうございました!

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