ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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102話

「ふむ、悪くないな」

 

「キメ顔でラーメン食ってもカッコよくねぇぞ」

 

 

 D×D学園の体験入学初日も何事も……珍しく何事もなく無事に終了したのでサポートとして参加していた俺達は学生寮内に作られた食堂で若干遅めの夕食をとっていた。グレモリー、シトリー、バアル、キマリスの四眷属とヴァーリ達が全員入ってもまだ余裕があるぐらいの広さを持ち、貴族特有の豪華さよりも庶民的というか自分の家で食事をしているようにと思わせる落ち着いた色合いの内装と家具が配置されている。俺的にはキマリス領にある実家よりもこんな感じの食堂で食べる方が落ち着くからマジでありがたい……いい加減、あの城を撤去して作り替えろよって話だ。出来れば和風で頼む! 一度で良いから畳の部屋に住んでみたいんだよ!

 

 まぁ、そんなどうでも良いことは置いておいて俺の目の前にはムカつくぐらいにイケメンなヴァーリが見る女全てを魅了するんじゃないかと錯覚するぐらいのキメ顔でラーメンを食べている。麺を啜り、スープを飲み、具を食べるという普通の動作すらヴァーリがイケメンだと認めざるを得ないほどの美しさのような何かがある……死ねばいいのに。目の前の銀髪イケメンな最強ルシファー様が死んでくれると世の男全てが歓喜すると思うんですけどねぇ。

 

 

「別にキメ顔とやらはしてる覚えは無いんだが?」

 

「あーはいはい。お前の場合はどんな表情でもイケメンですからねぇ! 意識とかしてませんよねー! くっそムカつくんだけど……んで? 初めてかどうかは知らんが学校はどうだったよ?」

 

「……少なくとも嫌いではない。仮に俺が白龍皇でなく、ルシファーですらなかったのならばキミ達と同じように味わっていた世界なのだろう。ふっ、まさか今になってこのような空気を味わう事になるとは思わなかったよ」

 

「あっそ。つーか白龍皇のルシファー様でも学校ぐらい通っても良いだろうが……なんだったら駒王学園に来るか? 一誠もいるし俺もいるし元士郎も居るから少なくとも退屈はしねぇと思うぞ」

 

「遠慮させてもらおう。一つの場所に留まるよりも強者を探し、未知なる神秘を探求していた方が俺らしいとは思わないかい?」

 

「まぁな。少なくともお前が通ってみても良いかなんて言ったらマジかよって絶句する自信はある」

 

 

 あとついでに自分で言っておきながら駒王学園に来るんじゃねぇよとも言う自信はあるね! だってヴァーリだぜ? 銀髪のイケメンな白龍皇様だぞ? 転校してきたらもう女子共はうはうはのヒャッハー状態で私が先だとばかりに好感度上げに勤しむだろう……爆発すればいいのに! これだからイケメンは困るんだよ……! 少しばかりそのイケメンフェイスを分けてくれても罰は当たらねぇと思うんだがどうだろう!

 

 そんな事を思っていると別のテーブルで四季音姉妹や橘、レイチェルと共に食事をしている平家からノワールも黙っていればイケメンの類だよという言葉が飛んできた。おいおい黙ってればってなんだよ……俺様はどこからどう見てもイケメンだろうが! 黙っててもイケメンで口を開けば紳士的とか最高だろ。

 

 

「ギャグで言ってるならすべってるよ」

 

「んなわけねーだろ。どこからどう見てもイケメンだろうが。水無瀬、おかわり」

 

「はい。ノワール君、今日はお疲れさまでした。頑張っていたのでちょっとだけおまけです……えと、白龍皇さんは麺のおかわりはいりますか?」

 

「もらおう」

 

 

 気に入ったのか目の前のイケメン白龍皇様は麺のおかわりを所望しているらしい。仕方ないよね! だって作ったの水無瀬達だし。折角の機会だからと各眷属の料理自慢が集まって夕食を作ったんだが結構……いやかなり美味い。料理人の面々は美女や美少女、そして作られた料理は最高とかいくら出せば食えるのか分からねぇなおい……まっ、俺の目の前にある料理は全部水無瀬に作ってもらったけどね。なんて言うか普段食い慣れてると他の奴らが作った料理ってあんまり好きじゃないんだよなぁ。というよりも水無瀬の飯が食えない日があるなら軽く機嫌が悪くなる程度で俺の日常には必要不可欠な存在だと思う。

 

 

「ところで光龍妃も来ていたようだが姿が見えないのは何故だ?」

 

「んぁ? あー、帰ったぜ。またあとでだってさ」

 

「そうか」

 

 

 俺の言葉に納得したのかヴァーリは追加された麺を啜り始める。流石に夜空の事を知ってると即効で理解できるよな……俺と学校デートした後、アイツは凄く楽しそうな笑顔で「またあとでね」って言って消えていった。「またね」じゃなくて「またあとで」だから十中八九、この後何かをしでかす気満々ですね分かってます! あぁ、もうだから大好きなんだよ! 今度は何をするんだ? 今度は何を見せてくれる? お前が楽しめることはいったい何なんだよ夜空ちゃん! マジで楽しみだわ……まぁ、下手するとこのD×D学園が吹き飛ぶかもしれないが夜空が楽しいなら問題ねぇか。そもそもあんまり思い入れないし。

 

 平家からうわぁって感じの視線を浴びつつ水無瀬が作った料理を食べる。美味い、マジ美味い。流石大天使水無せんせーと男子生徒から崇められるだけはある。普通に美味いし毎日食べたくなる中毒性がある……これがデキる女って奴なのか!

 

 

「水無瀬」

 

「はい? なんですかノワール君?」

 

「美味いわ」

 

「良かったです」

 

 

 平家達とは別のテーブルで食事をしている水無瀬にその言葉を伝えると滅茶苦茶笑顔になった。普通に感想言っただけなのになんで笑顔になるか意味分からねぇ……まぁ、良いけどさ。

 

 

「……もっと料理を頑張らないと!」

 

「み、水無瀬先生の料理が美味しいことは分かっていましたが……光龍妃とは別な意味でさ、最大の敵ですわ……!」

 

「に、にししぃ~めっぐみぃ~んのごっはぁんはぁ~おいしぃもんねぇ――本格的に料理してみるべきかねぇ」

 

「伊吹が悩んでいる。分からない。先生のご飯は美味しい。それは事実。伊吹、悩んでいるなら言ってほしい。なんでも手伝う」

 

 

 何故か分からないがとある方々が張り切り出したんですがいったい誰だよあのメンツを従えている奴は……なんか離れてても怖いんだけど? 目に光は残っていると思いたいが普通に怖く感じるのはきっとここ数日間の出来事が原因だろうね! マジであの面々を率いている王って誰だよ! きっと素晴らしいほどの人格者でイケメンな人なんだろうなぁ! はいそこ、ノワールが人格者とか笑えるとか言わない。どっからどう見ても人格者だろうが! ヤンデレすら許容するこの懐の広さが分かんねぇのかお前は!

 

 

「まーた王様が爆弾爆破してるっすよ。水無せんせーの料理は世界一だってのは分かるけど出来れば家でお願いしたいっすね……モウアノコウケイハミタクナイケドネ」

 

「い、犬月……? だ、大丈夫か!? め、目が死んでるぞ!? 生きろ犬月! お前がどれだけ苦労してるかは俺が良く分かってる! 多分だが兵藤が一番良く分かってくれると思うぞ!」

 

「お、俺か!? い、いや分かんないって! だってあれってどう見ても黒井の事が……だろ! 俺もリアスやアーシアが作ったご飯を食った時には美味しいって言うけど二人共あんな感じにはならないぞ!?」

 

「兵藤……女子に、女子に囲まれて生活しているお前が言うと嫌味にしか聞こえねぇんだよぉぉっ! というか女子の手料理を毎日食えてるお前と黒井と犬月が羨ましぃィ!!!」

 

 

 隣のテーブルに集まっていたリア充一人、彼女いない歴多分年齢の童貞二人がなにやら騒ぎ出したが俺には関係ない。サイラオーグ達や生徒会長達はこの騒ぎに対して笑いながら観戦したり頭を押さえて呆れていたりと各々の反応をしている。とりあえず俺から言えるのは元士郎、頑張れ! あと一誠君……見えてないだけでお前が居ない場所ではドロドロのぐちゃぐちゃな感じが繰り広げられてると思うから刺されないように頑張れ! 監禁されたらとりあえず喜んで受け入れろよ! ハーレムは刺されたり監禁されることを受け入れられなかったら無理だからな!

 

 そんな事を思いながら水無瀬が作った料理を食べていると別方向から視線を感じたのでそちらを向くとヴァーリのところにいるイケメンメガネの妹ちゃんがチラチラと隠れながら俺を見ていた。んあ? なんだあの反応……? 何だって何か言いたそうだけど言えないような感じで見てくるんだ?

 

 

「……おいヴァーリ」

 

「なんだい」

 

「お前のところにいる魔法使いちゃんが俺をチラチラと見てくるんだが何かしたっけ?」

 

「……あぁ、その事か。なに、ルフェイは元々黄金の夜明け団に所属していてね。キミと光龍妃が黄金の夜明け団を襲撃して大多数の魔法使いを殺害した件についてこの後行われる生き残った魔法使い達との会談で何故虐殺を行ったかを聞きたいらしい」

 

「ふーん。何かと思えばそんな事かよ……てっきりどっかでフラグ立てたっけと勘違いするところだったわ。その質問の回答を今答えた方が良いか?」

 

「キミにお任せしよう」

 

「了解。まっ、俺の答えなんて決まってるけどな――魔法使いだからぶっ殺した。これ以上の理由はねぇから時間の無駄だと思うけど他になんて聞いてくるか楽しみにしてるわ」

 

 

 てかヴァーリに言われるまで忘れてたがこの後、魔法使い達との会談に出席するんだった……夜空と学校デートしたせいですっかり忘れてたわ! てか此処に集まって何話すつもりなんだろうねぇ? ぶっちゃけると目障りだから俺の視界に映らないでほしいぐらいだ……そもそも魔法使い側は俺の母さんの言葉が無かったら絶滅してたんだって分かってんのか? もし理解してないんだったら残念だが集まった奴らはこの世からおさらばしてもらうしかないな。文句を言われる? 和平に支障が出る? だからなんだよ。俺と夜空が気まぐれで生かしておいてやったのに死にに来た奴らに慈悲なんて与えるわけねぇんだよ。

 

 もっとも魔法使い側が何もしなかったら手出しはしないかもしれないけどね。会話の中でたかが人間を襲った程度なんて言葉が飛んで来たら話は別だけど。

 

 

『……クロム。やはり貴様の宿主は異常だな』

 

『ゼハハハハハハハハ! 当たり前だろうが白蜥蜴ちゃんよぉ! 俺様が認めた最強の影龍王にして俺様の息子だぜぇ? この程度なんざ当然なのよ! 文句があんなら殺し合うかぁ?』

 

『少なくともヴァーリとノワール・キマリスが本気で殺し合えばどちらも無事では済まないだろう。それはクロム、お前も分かっているはずだ。いかに不死身と言えども私の力を行使するヴァーリなら殺しきれるのだからな』

 

『ほう? 言うようになったじゃねぇのアルビオン。ドライグと和解したから強気になったってかぁ? だがこっちも言わせてもらうぜ! 俺様の宿主は確かにテメェの宿主ほどの才能はねぇさ。だがな宿主様は歴代でも最高に精神力が飛びぬけてんのさ! 自らの死すら意志一つで跳ね返し! あのクソババアの声すら無視して蘇れるほどになぁ!』

 

 

 クソババアの声ってもしかして死んだ時に聞こえるあれか? 確かに誰かが呼んでいるような感覚はあるがもしかして相棒は誰なのか知ってるのか? いや……相棒がクソババアって言う奴なんて多分少ないはずだから相手なんて限られる……まさかスカアハか? いやいや無いわ。うん、無いわ。影の国の女王が俺程度を呼ぶなんて普通にあり得ないわ。

 

 

「てか和解で思い出したがヴァーリ、お前の神器でなんか変わった事はあるのか? 何十何百年と続いた二天龍の和解だろ? 神器に何かしらの影響があっても良いと思うんだがどうなんだよ」

 

「ふっ、気になるなら試してみるかい? 食後の運動としては十分だと思うが?」

 

「オッケー! 俺も魔法使い如きの会談なんざに興味はねぇしな! いつもの地双龍の遊び場で良いか?」

 

「構わない」

 

「待てぇ!? いやいや待てって!! なにコンビニ行こうぜってノリで殺し合おうとしてるんだよ! リアスから聞いたけど黒井は絶対参加なんだろ!? だったら戦ってる暇なんて無いだろ!」

 

「だってヴァーリが教えてくれないから殺し合って確かめるしかねぇだろ。何だったら一誠も参加するか? 良いぞ良いぞ! 二天龍対地双龍って感じが滅茶苦茶盛り上がるだろうしきっと夜空も喜んで参加しそうじゃねぇか!」

 

「死ぬわ!? お前とあの人のコンビとか絶対に相手したくないぞ!」

 

「俺は構わないがな。ふふっ、影龍王と光龍妃のコンビが相手となれば全力を出せそうだ」

 

「ヴァーリ!? お前もお前でなんでノリノリなんだよ! ダメだこの二人……滅茶苦茶やる気じゃねぇか!?」

 

「兵藤……それがドラゴンだぜ。あっ、俺は遠慮するからな! 会長の手伝いの方が大事だし!」

 

 

 そんなきっと楽しくなるようなことを話していると平家がビクッと何かに反応したような動作をした顔思えば全身をまさぐられるような気色悪い感覚に襲われた。それはどうやら俺だけじゃないようでこの食堂内に居た全員が感じ取ったもののようだ……今の感じだとどこかに転移させられたってところか。ご丁寧に窓から外を見てみると紫色という冥界特有の空が真っ黒に染められているし周囲も人間界で言う深夜に近い暗さになってるから俺の予想は当たってるかもしれねぇな。

 

 確認の意味を含めて平家に視線を向けると無言で頷き、異空間から愛刀の龍刀「覚」を手にしていた。流石俺の眷属、対応が早い。

 

 

『――あーあー、マイクテスト中マイクテスト中~あれー流れてる? ホントに? うひゃひゃひゃ! やっはろーD×Dっていうチームだっけ? の諸君! リゼヴィムおじちゃんの校内放送はっじまっるよー!』

 

 

 突如として流れてきた声の主はリゼヴィム・リヴァン・ルシファーことリゼちゃんだ。うわぁ、何しに来たんだよ……まさか遊びに来た? ありえそうだな。というよりも放送が流れたことでヴァーリの表情がヤバい、マジヤバい。表情からしてキレ始めてるのが凄く分かる! どこまで嫌いなんだよ……気持ちは分かるけどさ。でもなーんでか生理的に受け付けないぐらいの不快感はないんだよなぁ……なんでだろ?

 

 

『なんか貴族や上級悪魔でも無いのにレーティングゲームを学べる学校が出来たって言うんでお祝いにきちゃったぜ♪ さてさて聞いてるかどうかしらねーけどおっそとをご覧あれ!』

 

 

 先ほど外を確認するために視線を向けた窓からもう一度外を見ると暗闇の中に複数の集団が現れていた。普通だったら顔や姿まで判断できないだろうが悪魔の視力を甘く見てはいけない……ハッキリと見えていますしあれってどう見ても魔法使いですよね? だって黒いローブを纏っていかにも私達は魔法使いですって自己主張する集団なんてあいつ等ぐらいだろうし。てか俺と夜空が殺しまくって世界的に魔法使いの数が激変したってのは聞いてたけどまだあんなにいたんだな? ちょっとビックリだわ。

 

 先輩達もリゼちゃんの校内放送に加えて学生寮を取り囲んでいる魔法使い達の姿を見て警戒態勢を強め始めた。流石にこの状況で優雅に飯は食えないよな……あっ、俺は普通になんだ魔法使いかって感じで飯食ってます!

 

 

『じゃじゃじゃーん! なんと皆さんが居る場所を取り囲んでいるのは僕ちんが聖☆杯! のお力で復活させた魔法使い達なのですよ! うひゃひゃひゃひゃ! ノワールきゅん聞こえてる? アポプス君達が裏切ってくれちゃったせいで戦力的にもうおじちゃんだいぴーんちって感じでハーデスくんに相談したら彼らの魂を貰えたんだ! でさーなんかねー恨んでるらしいよ? なんで殺されなきゃいけないんだとか俺達は関係無いのにとかってちょー怒っております!』

 

「ふーん、どうでも良いな。てかあの骸骨野郎……また悪巧みつうかメンドクサイ事をしやがったのかよ。やっぱりあの時殺しておくべきだったかねぇ? おい平家、外の様子は?」

 

「普通に取り囲まれてるね。しかも全員がノワールに敵意や殺意を持ってるし復活した事も本当っぽい」

 

「なるほどな。その辺りはすっげぇどうでも良いからスルーするがリゼちゃんは学校か?」

 

「うん」

 

「それだけ分かれば十分だ。グラム」

 

『我ラのでバんだな! 分カってイるとも!』

 

 

 俺の言葉に素晴らしい笑顔を浮かべながら剣状態へと変化したがそこまで嬉しかったのかコイツ……取り囲んでいる魔法使い共に影龍破を放つ気満々だが今日まで俺を癒してくれた……あぁ、お前のポンコツ具合に何度癒されたか分からないから今回だけ特別に全力も全力! この空間の全てを切り刻むぐらいのパワーを放ってやろうじゃねぇか!

 

 俺の思いに感動したのかどうか分からないがグラムから流れてくる呪いが濃さを増していく。腕から身体に、足に、顔に、目に、脳に、心臓に、龍を殺す呪いが俺を染め上げる。同じドラゴン系神器を宿している一誠と元士郎は即座に距離を取りえ、お前まさかって表情を浮かべ、ヴァーリは不敵に笑っている。あと視界の端で黒猫ちゃんの妹ちゃんが体調が悪そうにしているけど俺のせいじゃない! ただ呪いを放ってるだけだし。この程度で体調を崩すとか弱すぎだろ……仙術を使うならこれぐらいは慣れておけよな。

 

 

「く、黒井? 俺も同じ邪龍だからお前が今からやろうとしていることは凄く分かる! むしろやらない方がおかしいって感じなんだがちょっと待って! やるならせめて会長の許可を取ってからやってくれ! 頼む! その方がまだ納得できるからぁ!!」

 

「えぇ……仕方ねぇな。生徒会長! 学校壊します! はい許可取った! 行くぜ影龍破!!」

 

「それ取ってない!? ただ言っただけ、ああああぁぁぁぁぁぁっ!? 学校がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 グラムから漏れ出す歓喜の声を形にしたかのような呪いの波動は食堂の壁を貫き、地面を抉るように切り刻んでD×D学園を飲み込んだ。先ほどまでガキ共が楽しそうに授業を受けていた学校がたった一日も持たずに壊されるなんて誰も思わないだろう。素晴らしいほど更地になったがリゼちゃんはちゃんと死んだよな? まぁ、流石に生きてるとは思うが死んでてくれないとさっさと帰れないだろ……てかついでに魔法使いの集団も巻き込んだけど数が多すぎて半分ぐらい残ったなぁ。はぁ……二撃目行くかぁ!!

 

 

「さぁて殺し合いの始まりだ! 敵は魔法使い! 俺に恨みがあるならそれに答えてやらねぇとな! ゼハハハハハハハハハハハ! 一人たりとも残すな! 生き返ったんならもう一度ぶっ殺してやらねぇと色んな所に迷惑だからな! 遠慮なく殺るぞ!」

 

「ういっす!! 人間の肉ってあんまり美味くねぇけど王様の母さんと姫様達を攫ったことはまだ忘れてねぇからな!」

 

「めんどくさいけどがんばろー。あっ、追い詰めすぎると邪龍に変化するから注意してね」

 

「にしし! そっちの方が面白そうじゃないか! イバラ、徹底的に殺るよ」

 

「分かった。伊吹の命令は絶対。魔法使いは殺す。殺す殺すコロスぅ!!!」

 

 

 犬月、平家、四季音姉妹という遠慮という言葉が頭から抜け落ちている面々が嬉々として影龍破で空いた穴から飛び出して取り囲んでいる魔法使い達へと向かう。チラリと背後に視線を向けると水無瀬と橘の二人は既に禁手状態になっており、いつでも頑張れますという表情を俺へと向けてくる。お前ら対応早すぎんだろ……周りを見てみろよ? 先輩達や生徒会長達なんざ絶句状態なんだぜ? サイラオーグに至っては戦う準備は出来ているが俺が破壊した校舎を見て地味に悲しそうにしてるってのにお前らは殺し合いと認識したら即効で対応するとか馬鹿じゃねぇの! 流石俺の眷属だ! やっぱり良い女ってのは仕事が早いね!

 

 

「悪魔さん、私は学生寮の屋上で歌おうと思うんですけど良いですか?」

 

「そうしてくれ。リゼちゃん側の戦力で現状、注意しないといけねぇのはオーフィスの力から生まれたリリスだけだ。リゼちゃん本人は神器を持たない奴らで挑めば苦戦はするが倒せるだろうぜ。ヴァーリ! 悪いがリリスは貰うぜ? 無限の力から生まれた存在と一回殺し合ってみたかったんでな!」

 

「譲ろう。だが代わりにリゼヴィムは俺が貰おう」

 

「ムカつくが俺だと神器無効化でダメージ与えれねぇからな……グラムで斬れば問題ねぇが今回は譲ってやるよ」

 

「別に譲らなくても良いんだがな。その時はリゼヴィムを殺す役目を賭けて戦えるというものだ」

 

「……そっちの方が面白そ、いや待て! それは夜空を交えてバトロワだろ? お前、アイツが生理的に無理って言ってるぐらい殺したい相手だぞ? 俺だって殺したいから今は殺すな! 精々両手両足ぶった切って背中の羽全部抜いてボッコボコにした後で優勝賞品として保管しろ! 良いな! 勝手に殺しやがったらグラムぶっぱするからな!」

 

「俺にその刃が届くというならばやってみると良いさ。だが簡単には当たるつもりは無いぞ」

 

 

 今までと変わらない不敵な笑みに微妙にイライラします。

 

 

「……匙、あのさ……戦闘だって認識したら即効で飛び出していった犬月達を驚けば良いのかこんな状況にもかかわらず目の前で殺し合いを始めようとしている黒井とヴァーリに驚けば良いのか、どっちだと思う?」

 

「犬月達の方を驚けば良いんじゃないかな! 対応早すぎるだろアイツら……! あとほら、黒井達はいつも通りだと思うしさ……うん。というよりも学校を破壊するんじゃねぇよ!? ちゃんと直してくれよ!? 明日も体験入学があるんだからな!」

 

「んぁ? あぁ、四季音姉妹に全力で直させるさ。さてと――リゼちゃーん! 生きてるー?」

 

 

 鎧を纏い、影の翼を生成して空へと昇りながら崩壊した校舎へと話しかけてみる。先ほどの一撃で死んでるわけがないとは思っていたが思った通りだ……オーフィスと全く同じ姿をしたリリスが盾となって防いでやがった! オーフィスの力から生まれたからドラゴンのはずだよな……龍殺しの呪いを持つグラムの一撃を受けてノーダメージとか反則じゃないですかねぇ? うわー無限龍様素敵! 片手で防ぎながらももう片方の手にドーナッツを持っているとかマスコット適正高すぎませんか!?

 

 

「生きてるー! もーノワールきゅんったらいきなりグラムの呪いを放ってこないでよー! おじちゃんの晩御飯が吹き飛んだじゃったよ」

 

「おじちゃん、晩御飯なら昨日食べたでしょう?」

 

「食べたよー! ものすっげぇ豪華な奴! うひゃひゃひゃ! いやーさっすがに対応が早いわ。普通は魔法使い達の要求とか聞くんじゃないの? 全く話し合う事も無く殺害とか悪魔過ぎておじちゃん、歓喜の涙を流しそうです!」

 

「敵だって言うならぶっ殺しが安定だしな。なんかあっても襲ってきたから殺しましたで通るし」

 

「だよね! うんうん、やっぱり悪魔は悪であるべきだよねぇ~素晴らしい! 今の冥界に居る悪魔もノワールきゅんのようにやりたい事をやってくれればいいのにサーゼクスくん達のせいで出来てないのにはガッカリです! 和平? しりませーん! 悪魔なんだから楽しいことしてなんぼじゃんねー!」

 

「その意見には同意だな。好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に死んでいくのが俺達だ。勝手に仲間認定した挙句、正義の味方扱いとか死んでもごめんだ。正直、レイチェルの言葉が無かったらD×Dに加入なんかするわけねぇだろ」

 

「でもでも参加しちゃったノワールきゅんってすっげーツンデレだよねー! あっ、そうだ。生き返らせた魔法使い……うげぇ、数だけは大量に用意したのにもう少ししかいないじゃん。早すぎー! 折角邪龍に変化するように術式を埋め込んでたのに使う暇ないじゃん! とりあえずヴァーリきゅんの熱い視線に答えたくなっちゃうけどちょっと待ってねー! えーとキミで良いか。ハイ! 最大最悪の影龍王のノワールきゅんに言いたい事があればどうぞ!」

 

 

 リリスを従えているリゼちゃんは地上で蹂躙されている魔法使い達の中から一人を選び、近くへ転移させた。見た感じ、平凡そうというか特にこれといった特徴が無い男だが俺に言いたい事とか簡単に予想出来るんですけど……どーせ何で殺したとかだろ? ハイハイ、お決まりですねー! というよりも絶句状態から立ち直ったグレモリー眷属、シトリー眷属、もとから戦闘態勢だったバアル眷属が動き出してるから思いのほか早く終わると思うね! いやぁ、このメンツを相手に喧嘩を売ってきた度胸だけは認めても良いかもしれない!

 

 

「……ノワール。周りの魔法使いの心を読んだけどキマリス領が襲撃されてるみたい」

 

 

 平家からの言葉に犬月達の表情が一気に変わる。へぇ、そうなんだ。へーはーほー、俺にとっては心底どうでも良いがまー話ぐらいは聞いてやるか。

 

 

「そ、そうだ! リゼヴィム様のお陰で第二の生を得られた俺達はお前への復讐を果たすために行動したのだ! ハハハハハハハハハ! 今も俺達の仲間が全く関係のない奴らを殺しているのさ! それにだ――これを見ろ!!」

 

 

 男が魔法陣を描いて映し出すと呆れるほど殺意が湧いてくる光景が映し出された。どこかの建物内に鎖に繋がれ、暴力を振るわれたのか痣だらけな女――俺の母親が数人の魔法使いに囲まれている。あぁ、なるほどな……そうかそうか。死んだ程度では満足しなかったってことか。

 

 

「お前の母親は俺達が誘拐した! 殺されたくなかったら言う通りにしろ!」

 

 

 はいはいお約束お約束。

 

 

「……平家」

 

「偽物だよ。何故か知らないけどキマリス領を襲撃したら変な女とこれまた変なドラゴンがやってきて邪魔されたんだってさ」

 

「それが本当だという証拠はどこにある! 覚妖怪の言葉が真実だと何故分かる!! お前を気遣い、優しい嘘を言っている可能性もあるはずだ! ハハハハハハハハハ! さぁ、早く武器を捨てて――」

 

「真実ねぇ。おい、話ぐらいは出来んだろ? あーお前は()()()()()?」

 

『――ごめんねノワール、また捕まっちゃったわ……でも死にたくないの。貴方を残して、死にたくないわ……だから――』

 

 

 あっ、偽物だわ。

 

 

「そっか。じゃあ、死ねよ」

 

 

 手に持つグラムを振るうことなく、勝ち誇った男の首を、手を、胴体を、足を、肉片ひとつ残ることなく切り刻む。肉体を失った事で冥府へと戻ろうとしていた魂を霊操を使って俺の下へと近づかせて強く握る……このままだと俺の恐ろしさって奴を理解せずにまた同じことを繰り返すだろ? だから魂に刻み込んでやるよ――俺達の恐ろしさって奴をな。

 

 相棒に確認をすると問題ねぇ、良いからやりなというありがたい言葉を頂いたので男の魂をそのまま籠手部分の宝玉に叩き込む。最初からこうしておけばよかったんだ……感謝しろよ? 相棒の神器の中に入れるんだ……一生分の運を使っても中々起きない体験だろうぜ。精々、神器の中で永遠に苦しみ続けな。

 

 

『ま、待て! 見えないのか!! こ、この女はお前の――』

 

「母親じゃありませんけどぉ? あのな……アイツは捕まった()()で死にたくないなんざ絶対に言わねぇんだよ。その程度で言うなら俺を庇って大怪我なんてしねぇ。さてと――覚悟はできてるな?」

 

『ヒッ!?』

 

「逃がさねぇぞ。あぁ、逃がすものか……今日まで俺と夜空のきまぐれで生かしておいてやったのに馬鹿な奴らだな。高らかに宣言してやるよ――魔法使いは一人残らず殺してやる。隠れても見つけ出すからな? 泣いて謝っても許さねぇしやめるつもりも一切無い……が」

 

 

 グラムを振るうと俺の怒りが具現化されたかのように異常な量の呪いの波動が放たれる。周囲全てを切り刻む波動は一直線にリゼヴィムへと向かって行くが傍に居るリリスがそれを防ぐべく片手を前に出す――たった一撃、デコピンのように軽く放たれた波動によって俺が放った波動が防がれる。流石に簡単には殺せねぇか。

 

 

「うひゃひゃひゃひゃ! ざんねーん! 俺専用のボディーガードのリリスたんにはいくらグラムと言えども傷はつけれませーん! 怒った? ねぇねぇ怒った?」

 

「あぁ、激おこだ。なぁ、リゼヴィム……お前を殺すわ。おいヴァーリ、さっきの言葉は無しだ。コイツは俺に譲れ」

 

「……あぁ、構わない。どうやら俺が殺したい男ではないらしい」

 

「……どういう意味だ?」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ! なーんだバレてんのか~――なら、もう変装を解いても良いですね」

 

 

 目の前に居るリゼヴィムは掌で顔を隠すと黒い霧のようなものを纏い、別の姿へと変わった。

 

 

「やはり、あの方の真似は出来そうにないです。では改めて自己紹介をしましょう」

 

 

 それは――

 

 

「初めまして、ユーグリット・ルキフグスです」

 

 

 ――前に俺がぶっ殺した男だった。




観覧ありがとうございました!

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