前を読んでいない人は読むこと。
それではシリウスが考えた、最善の策とは?
「人質の命が欲しければ、そこをどいて貰おう。吸魂鬼達よ、幸福を吸うなよ。君達の可愛いこの吸魂鬼に当たってしまうぞ?」
{くっ。}
そう。
シリウスが考えた最善の作戦とは、私を人質にして脱獄するという方法。
たまたまその場にロボがいたおかげで、シリウスの発言を通訳をしてくれる。
しかし部下から慕われる立場だが、そんなことが可能なのか?
確かに人を引き付ける力はあるかもしれないけれど・・・
吸魂鬼達が動かない所を見ると、この作戦は失敗に終わったのだろうか。
{何事だ。}
と現れたのは私も初めて見る吸魂鬼。
幹部クラスでは間違いなさそうだけれど・・・
{サイマン総看守長‼︎大変です。梨花看守長が、人質に取られました。}
総看守長⁉︎
この吸魂鬼が一番偉い人⁉︎
暫くシリウスとサイマンの、睨みあいが開始する。
お互い何かを探りあっているようだ。
その時間は私にとって凄く長く、10分以上に感じた。
睨みあいを終えると、サイマンは声をあげた。
{全吸魂鬼に告ぐ。シリウス・ブラックに手出しすることを許さん。}
他の吸魂鬼達は驚きの声を上げる。
手出しをしないということは、シリウス・ブラックの脱獄しようが手を出さないということになり、脱獄すると分かっていながら見逃さないといけないとなるのだ。
「物分りのいい奴がいてよかった。さあ、私の為に道を開けるんだな。」
シリウスさん、凄く・・・悪役です。
吸魂鬼達は渋々ながら、シリウスが逃げれるように道を開ける。
その道を通るのだが、視線が痛い。
怪しまれないよう平常心を保つことで精一杯だ。
アズカバンの敷地を離れて付き添い姿現しをした。
姿現しで辿り着いたのは、何処かの路地裏。
1時間くらい人目がつかない所と思ったからだろう。
一安心していると、吸魂鬼から人間(昔の梨花)に戻った。
なんで変わったのかは不明だが、深く考えないでおこう。
「それが君の本当の姿と言うわけか。見た目からして、十六を超えているかどうかだろうな。」
この世界においては、本当の姿とは言えないけれどね。
この世界では猫の姿が本当の姿でいいのかな?
「今回はありがとう。また会う機会があればいいな。」
「シリウスさん。民間の人はいないと思いますが、くれぐれも気をつけて下さい。」
「ああ。」
シリウスは犬の姿になり、路地裏から路地裏に消えていった。
またいつか会えるよね。
少なくとも半年以内にね。
(サイマン視点)
俺はサイマン。
このアズカバン監獄にて、1番偉い立場の吸魂鬼だ。
3ヶ月前からある吸魂鬼の噂を聞くようになった。
梨花看守長補佐である。
日本の棚岳監獄から来た新人だそうだ。
吸魂鬼でありながら、幸福を奪わない。
いや、奪ったことがないといった方がいいだろう。
(囚人にも気を使うとは、流石大和撫子の血を引いている。)
直接見たことないが、容姿端麗でありながら知能優秀と劣っている所がない。
そんな彼女が、殺人鬼であるシリウスと付き合っているのではないかという噂。
それはないだろう。
例えるなら初めての獲物だ。
彼女がシリウスの幸福を奪いたいという衝動があり、足繁く通っているのだと思っている。
しかし奪わないのは、まだ奪うことに抵抗があるからなのだろう。
彼女が帰る日、アズカバンはどんちゃん騒ぎだ。
この機会を逃すまいと、脱獄を試みようとしているもんが多い。
最高クラスなのにも関わらず、処刑や見回りをしていて忙しい。
数10000人で回る所だが、今は数えれる人で回している。
アルコールに呑まれている奴を本来ならクビにしたい所だが、看守長までクビにしたらこのアズカバンが成り立たないため、仕方なく半年の給料無配給で許してやる。
これだから若いものは・・・
この後の仕事をきちんとやれるのだろうか?
すると、さっきまでのどんちゃん騒ぎが静かになった。
不思議に思い、会場に向かい状況を聞こう。
{何事だ。}
{サイマン総看守長‼︎大変です。梨花看守長が、人質に取られました。}
その時初めて梨花の姿を見た。
容姿端麗とは聞いていたが、これ程とは・・・
俺がもう少し若ければ、恋に奔ったかもしれない。
そう思っている私が何処かにいた。
シリウスと睨み合いを始める。
私は開心術は得意ではないが、シリウスの中を見る。
彼は冤罪を科せられたことを知る。
{全吸魂鬼に告ぐ。ブラックに手出しするでない。}
吸魂鬼にとっては屈辱的であろうが、こうするしか奴を逃がすことはできんと思ったからだ。
まあ、今現在罪を犯しているが・・・(誘拐罪)
・
・・・
・・・・・
シリウスがアズカバンを去った後、私は最高職を辞職。
手紙と共に年金ライフを生きるつもりだ。
その手紙にはこう記してあった。
“総看守長サイマンさんへ。
これを読まれているということは私が無事任務を終え、アズカバン監獄にはいないことを示していることでしょう。私はアルバス・ダンブルドアからの依頼を受け、シリウス・ブラックを脱獄すべく潜り込んだ猫を愛する一市民です。薄々気づいていたかもしれませんが・・・上司の皆さんや、部下の皆さんを騙すようなことをしてごめんなさい。一度も顔見せないまま、立ち去ることを許してください。 看守長補佐 梨花 ”
私はこう思った。
{君が本物の吸魂鬼だったら、アズカバン監獄は別の意味で地獄と化していたかもしれんな。}
out
私は姿現しを行い、校長室へ訪れた。
「梨花よ、ご苦労じゃった。これから普通の猫として暮らすのじゃ。」
突然現れたと言うのに、当たり前のように座っているダンブルドア。
さっきまでそこにいなかったよね?
まあ、どうでもいい。
「この指輪はどうしますか?」
姿現しをした時の指輪と、連絡用の指輪だ。
猫の状態だと必要にすらならないものだ。
「持っておっても大丈夫じゃろ。これから先使う時があるやもしれん。」
指輪が1つに纏まり、首輪に変わる。
どういうこと?
猫が姿現しをする?
で、できるのかな?
一旦その疑問は置いていこう。
「いつ猫に変わるのかしら?」
「そうじゃの〜。お主が元いたゲージを開けると、猫に戻るようにしてあっての。ゲージに入ると、他の者がお主の存在を確認するようになるんじゃ。」
そうか、人間の姿はあと少しか。
そう思い校長室を後にした。
(ダンブルドア視点)
梨花に頼んでおいてよかったとわしは思う。
とてつもなく早い出世、そして期限内に終わらす知能。
他の者にできないことだ。
下手したら、もう一年待とうと思っていたくらいだ。
「本当に猫かの。わしはわしの目を疑ってしまう。」
そう。
吸魂鬼達が、誰かの為にパーティを開くし、10年勤めてもなりえないと思っていた看守長になるし、おかしいことばかりじゃ。
「本当、猫であることが惜しいの〜。」
そうじゃ、動物もどき(アニメーガス)にすればいいのでは?
いや。
動物から人だから、人間もどき(ホモーメーガス)というべきかの。
そんなことを考えていたら、梨花が帰ってきた。
此奴をヴォルデモートに渡さんために、指輪二つを首輪に変えた。
姿現しはできんが、通信機の役割はまだ使えるじゃろ。
怪しまれたが、暫くは怪しいおじさんとしていようかの。
out
私は久しぶりに猫に戻り、ゲージに入る。
もう少しでこの店ともサヨナラするのだ。
そう思うと、急に寂しくなるな。
辺りを見渡すと、かなりの入れ替えがあったようだ。
しかし、あの二匹はまだいた。
さてとゆっくり休むとしよう。
クルックシャンクスが活躍する、アズカバンの囚人が始まるのだ。
楽しみでしかない。
備考
・サイマン
元総看守長。
梨花とともにアズカバンを去り、年金暮らししている。
・別の意味で地獄と化していた
梨花を狙って、血で血を洗う争いがアズカバンにて行われるんですね、わかります。
・人間もどき(ホモーメーガス)
動物もどきの逆。
秘密の部屋が終わり、次は待ちに待ったアズカバンの囚人。
できればここで、話数を稼ぎたいところ。