その夜。曲がりなりにもLv.5のベートとLv.4のアル・タユを1人で倒したのだからと、マオは一昨日更新したばかりの【ステイタス】の更新を受けていた。
「そういえばマオ、ブーケトスなんて何時知ったんや? あれ、ヘラのとこの慣習やろ」
「あー……前世ではメジャーだったので。 そっか、こっちではブーケトスしないのかぁ」
「いや、ヘラの影響受けてるとこはまだやってんで……前世か、前世の神さんはどんなんや?」
「そうですねー……神様はもう天界に帰ってしまっていて、精霊も亜人種もいなくて、
「なんや、思ったよりつまらん世界やな」
「えぇ、つまらなくなって神様はみんな天界に帰っちゃったらしいですから」
「そういうことか。 そりゃしゃーないな……っと、やぱり【ランクアップ】来てるわ。 マオ余裕そうに見えて、割とギリギリやったんか?」
「ロキさま、ベートさんの敏捷からLv.1が楽に逃げられる訳が無いでしょ。 アルさんとの戦いだってヒヤヒヤしてましたよ。
「せやったんか。 傍から見てる分には超が付くほど余裕そうに見えたで」
「それなら作戦成功です……どんな感じですか?」
ロキの書き記す【ステイタス】を覗き込む。
【ステイタス】
マオ・ナーゴ
Lv.1
力 A 817
耐久A 802
器用S 976
敏捷S 977
魔力S 999
《魔法》
【】
《スキル》
【
・精神力で力ある像を造りだす。
・
・
・
【女神の息吹】
・【神の恩恵】をより強く受ける。
・女神に対する想いが強いほど効果が大きくなる。
・女神に対する想いが続く限り有効。
「あらら、魔力カンストですか」
「せやな。 このまま【ランクアップ】までしてまうか? 発展アビリティは【挑発】ってやつだけあるわ。 あとなんか魔法かスキルも発現しそうな雰囲気あるで」
「あ、ならすぐしちゃいましょう。 後衛って訳でも無いので【挑発】も発現でお願いします」
「即答かいな。 もうちっと考えてもええんやで?」
「いいんですよ。 私は助けてもらう側ではなく、助ける側でいたいので」
「ほな、もっかい寝てー…………うん、できたけど、ホンマ規格外な【ステイタス】やで、もう驚くんも疲れたわ」
服を着てから書き写された【ステイタス】を確認する。
【ステイタス】
マオ・ナーゴ
Lv.2
力 I 0
耐久I 0
器用I 0
敏捷I 0
魔力I 0
挑発H
《魔法》
【ゲイ・ジャルグ】
・
・詠唱式【父、アンガス・オグより賜りし赤き魔槍。その赤は如何なる魔も打ち破らん】
【ゲイ・ボウ】
・
・詠唱式【父、マナナン・マクリルより賜りし黄の魔槍。その黄は如何なる生も断ち切らん】
《スキル》
【
・精神力で力ある像を造りだす。
・
・
・
【
・【
・女神に対する想いが強いほど効果が大きくなる。
・女神に対する想いが続く限り有効。
【
・
・自分より強いものには効かない。
・耐魅了
マオは思わずロキに抱きつく。その顔は今にも泣き出しそうだ。ロキも突然のことでバランスを崩しながらも受け止めてくれる。
「なんなんですか、これは……ロキさま、私はここに居てもいいんですよね?」
「どこにもやらん。 マオだけやない、みんなどこにもやらん。 それがウチの一番のわがままや」
マオはその振るえる身体でロキを抱きしめる。ロキもそんなマオに何も言わずに抱き返し、背中や頭を撫で続ける。
マオに新たに現れた魔法とスキル、そのどれかがマオを不安にさせていることだけはロキにも分かった。だ
からこそ、マオが落ち着くまでこのままで居てやろうと優しくマオを抱く……5分か10分か、お互い時計も見ずに抱きあっていた。
「……ロキさまいい匂いがします」
「なんたってウチは女神様やからな、マオもええ匂いさせてるんやで」
「じゃあ私も女神になれるんですかね」
「せやなー……うんとがんばったら成れるかもな」
「じゃあがんばりますね。 ロキさまのためにも。 そして、団長を裏切ることのないように」
「なんやフィンが何で出てくるんや?」
マオは前世のほとんどを病院で過ごしていた。そんな病弱な身体を治すため、どの神様に祈ればいいのか。世界中の神話を読み漁ったりもした。
偶然だとしても
「そうか……なら、その不安、フィンにもぶちまけてみるか」
そういうと、ロキは私を抱き上げてフィンの部屋へと向かっていった。
「マオ軽いなー、ちゃんと食べてるか?」
などと他愛のない会話を交えながらだ。
フィンは主神と抱かかえられている団員を見て笑みを浮かべながら尋ねる。
「で、どうしたらそういう状態で僕の所までくるのかな?」
「マオがな、Lv.2になったんやけど、【ステイタス】のことで悩みがな」
【ステイタス】の詳細は本来であれば隠すもの。だからこそロキはマオの悩みの詳細が【ステイタス】絡みであることまでしか伝えることができない。
しかし、マオはロキからもらったLv.2の【ステイタス】の書かれた羊皮紙をフィンに見せる。
「マオ、いいのかい?」
「うん。 見ても意味がわかるかわかんないけど」
マオの【ステイタス】を見るフィンにはやはり気づくことができなかった。だからマオはロキに語ったように、前世で知った物語をフィンにも教える。
「うん……そういうことなら確かにこれは不安だね」
ようやく納得いったという感じで大きく頷くフィン。
「大丈夫。 ロキが僕を裏切らない限り、僕もロキを裏切ることはない。 だからマオが僕と仲違いするようなことにもならない。 それにマオは女の子だ。 婚約者を横取りなんてこと起こる訳がない……ということで安心できるかな?」
そう語りかけながら優しく頭を撫でてくれるフィンに、マオはお父さんに撫でられているみたいで、心が安らいでいくのが実感できた。
「うん、もう大丈夫みたい。 フィンさんもロキさまもご迷惑をおかけしました」
「ええんやで、マオ、もっと甘えても。 何やったら今晩一緒に寝るか?」
「マオはまだ8歳なんだから……アイズが8歳の時はもっとわがままで、本当に手を焼いたものさ」
「じゃあその話を聞きながら、3人で一緒に寝ますか?」
「「それはダメだ(あかん)!」」
「流石に僕とロキが一緒に寝るのは不味い。 それにティオネが拗ねる」
「あー……じゃあロキさまと一緒に寝ます」
「マオの髪も耳も触り心地ええからなぁ。 今日は良く寝れそうや」
グヒヒと笑いながら怪しげな手の動きを見せるロキを横目に、フィンにおやすみの挨拶をして部屋を出て、
神のぬくもりを感じながら深い眠りへと落ちて行くマオの表情に憂いはもう無い。
……来月は定例の神会が行われ、マオの【2つ名】もそこで決められる。