オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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敗北の味

神会の翌日。遠征に出かけていたフィンたちが予定通り、そして大きな事故や欠員なく帰ってきた。

 

そしてなんと!階層主を倒したことでアイズ、ベート、ティオネ、ティオナの4人がLv.5にランクアップを果たした。他の団員もみな大きく【ステイタス】を伸ばしており、遠征は大成功となっていた。

 

遠征班の皆が帰ってきて見たのは居残り組の妙にピリピリした空気といつもより大きな鈴の付いた首輪(チョーカー)をしているマオの姿だった。

 

そして今、ロキ、フィン、リヴェリア、ガレスたち幹部に加え、ラウル、アイズ、ベート、ティオネ、ティオナの次期幹部たちもそろっていた。そしてマオが居た。幹部連中はその面々から重要な話があるのだろうと推測し、場違いなマオの存在になんとなく話がマオ関連であると辺りをつけていた。そんなマオだけが重く感じる空気の中でフィンが切り出す。

 

「さて、ロキ。 僕たちが居ない間に臨時で神会が開かれたんだって?」

 

「そうや。 ウチのマオに手を出した馬鹿が出てきたんや」

 

「へっ! 油断してやがるから襲われるんだ」

 

「マオ、ダンジョンに1人で行ってはダメだと言っていただろう」

 

「リヴェリア、マオはダンジョンで襲われたんや無いで。バベル8階や」

 

「バベル8階……【ヘファイストス・ファミリア】のテナントか!?」

 

小人族(パルゥム)の僕もそうだけど、意識をなくしてしまうと小さいと鞄に入れられて、あっという間に持ち去られてしまうからね。 それで、犯人は誰だい?」

 

「ニヌルタや。 マオの本名すら知らんと事に及びよった。 下手人はそこのLv.4の団長や」

 

「……【ニヌルタ・ファミリア】は確か、団員30名以上の中堅どころにランク付けされていたね。 どうしてマオを?」

 

「神ニヌルタがマオに一目惚れや」

 

ベートはハッ!と笑い飛ばす。マオとロキ、そしてアイズを除く皆は、はーっと溜め息をつく。リヴェリアが昔を思い出しながら愚痴る。

 

「アイズのときも大概だったが、マオはそれよりひどいな」

 

「アイズは近い時期にベートたちも入団したからなぁ。 ダンジョン行ってる時間の方が長くて神の目に留まることが少なかった。 それに感情を表に出すタイプじゃないからな、コアなファンの方が多い。 対してマオは外に愛嬌振りまいてるからな。 『(リン)ちゃん』言うたらこの北のメインストリートで知らん人はおらんくらいになってもうてる」

 

ティオナがロキの言葉に続く。

 

「あー……確かに。 一緒に買い物行くといつもオマケしてもらってるもんね。 マオが居るとお客さん増えるからだとかなんか言ってた気がする」

 

「私も、ジャガ丸くん、もらった」

 

マオと出かけたことのあるメンバーはみな何かしらマオのオマケの恩恵を受けていた。

 

「さて、ロキ。 それで神会(デナトゥス)の結果は?」

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)や。 フィンもみんなも帰ってきて早々で悪いけど、【ニヌルタ・ファミリア】ぶっ壊すで」

 

「マオ1人の問題なんじゃねーのかよ」

 

「ベート、マオの外出着は知ってるか?」

 

「はぁ? そんなこと……俺が知るわけねーだろっ」

 

「マオはな、襲われへんようにエンブレムの入ったスカーフを外に行くときは身につけてるんや。 前後どっちから見ても見えるようにな……つまりは――」

 

「いや、意味がわかった。 あいつらは【ロキ・ファミリア】と知って手を出したってことか。 それなら確かにきっかけはたかがLv.1の雑魚かもしれないが、俺らの問題でもあるな」

 

「ロキ、戦争遊戯のルールはどうなった?」

 

「闘技場で当事者たちによる決闘、の変則マッチや」

 

「総力戦の方が楽だったな」

 

「だからこそ、向こうは代表戦にこだわるんやろうな。 とはいえ向こうは最高でLv.4や。 フィンたちLv.6には敵わへん。 逆もまた然りや。 当事者同士の決闘で俄然(がぜん)向こうが有利や」

 

当事者同士の決闘、【ニヌルタ・ファミリア】からは団長であるアル・タユが、【ロキ・ファミリア】からはマオ・ナーゴが出場することは絶対である。

 

ただし、そのLv.差を埋めるために助っ人を各ファミリア内から呼ぶことが許されている。 それは相手のLv.合計を超えてはいけないという制約の中でだ。

 

仮にマオがフィンを助っ人に呼ぶと合計Lv.7になってしまう。アル・タユはLv.3の助っ人を呼ぶか、フィンの助っ人を許可しないかを選ぶことができる。

 

「普通に考えればマオの助っ人はLv.3までのメンバーになるわけだね」

 

Lv.1つの差は大きい。それ故にLv.4以上の助っ人を呼ぶことをニヌルタ側が許可するとは思えないのだ。

 

「あの時にフィンたちがおってくれたら有無を言わさずぶっ壊したんやけどな。 居残りしてた子らに無茶はさせられへん。 面倒なことになるのはわかってても神会(デナトゥス)を開かざるを得んかった」

 

「僕たちが居ないことも計画のうちだったんだろうね」

 

「で、誰を付ける? 今回の遠征でほとんどの者のLv.が上がってしまったぞ?」

 

フィンとリヴェリアが助っ人の選抜を始めたところでベートがそれを制する。

 

「待て、ロキ。 まだ要求の確認が終わっていない。 負けたらどうなる?」

 

ハッと皆がロキを見る。そう、負けた場合、ファミリアの解散も有り得るのが戦争遊戯(ウォーゲーム)だ。

 

最大派閥の1つとして数えられている現状に幹部も含めてどれほど慣れてしまっていた事か、『負ける』ということを皆が失念していた中で、ベートだけが冷静に全体を把握しようとしていた。

 

「なんやベート。 マオが負けると思ってるんか?」

 

「雑魚同士で戦ってどっちが勝とうが関係無ぇよ。 だけどよ、Lv.1とLv.4の差は調子の良し悪し程度では(くつがえ)る訳がねー。 なら、現状チビが負けるってことだろーがよ」

 

「心配はいらへん。 そうマオが言うんや。 だから、ウチは勝つことしか考えてない」

 

それでも一応と、マオが勝った場合、【ニヌルタ・ファミリア】の解散、そして神ニヌルタの天界への送還。負けた場合はマオの改宗となったことをロキはフィンたちに伝える。

 

「ロキ、僕たちはマオに勝ってもらいたいと思っている。 しかし、今の情報だけでは勝ちが見えない。 何か策があるのなら教えてくれないか」

 

「マオ、教えたって」

 

ロキはマオに説明するように促す。何しろロキも知らないのだから。

 

「説明するより実践したほうが良いかも知れませんね。 どなたか、できれば私の《人魚之首飾(アクアネックレス)》の効果を知らない人がいいですね。」

 

「知らないのはアイズ、ベート、ティオナ、ラウルの4人かな?」

 

「俺がやる」

 

ベートが立候補する。ラウルは自分がやらなくて良かったと心底安堵した表情をしている。

 

「では訓練場でやりましょうか。 準備が要るので20分後でかまいませんか?」

 

「何でもいいぜ、さっさとしな」

 

 

 

 

 

 

結果、ベートはマオに敗れた。


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