オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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……短い。


第2章 勧誘
1年と2ヶ月


マオが【ロキ・ファミリア】に入団して1年と2ヶ月が経った。3ヶ月前に8歳になった。先週からフィンたちは遠征へと出かけて行ってしまっていて、ホームは少し寂しくなっている。

 

現在のマオの【ステイタス】はこんな感じである。

 

【ステイタス】

マオ・ナーゴ

Lv.1

力 A 806

耐久B 797

器用S 968

敏捷S 953

魔力S 974

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

幽波紋(スタンド)

・精神力で力ある像を造りだす。

不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド):モノをなおす力がある。

人魚之首飾(アクアネックレス):液体を操る力がある。

医食同源(パールジャム):料理が美味しくなる。料理を食べた者の状態異常を治す。

 

【女神の息吹】

・【神の恩恵】をより強く受ける。

・女神に対する想いが強いほど効果が大きくなる。

・女神に対する想いが続く限り有効。

 

 

 

マオはロキに《医食同源(パールジャム)》で料理を振舞ったあの夜の一連の出来事の後の【ステイタス】更新で新たなスキルを発現させていた。

 

【女神の息吹】、ロキの謝意とマオの想いの両方が作り上げたスキルだ。【神の恩恵(ファルナ)】が【経験値(エクセリア)】を【ステイタス】に反映する際、その効果をより大きく反映させる効果だ。

 

つまり、成長が驚くほど早くなる……ということがわかるまで2週間ほどかかった。

 

マオがパーティーを組むことが出来ていれば半年で【ランクアップ】を有り得たとロキに思わせるほどにその成長は目を見張るものであった。

 

【ステイタス】の成長と共にマオの体力も伸びて行き、人前で意識を手放すということは格段に減った。無くならない理由は簡単で、団員たちが共謀して()()()マオを疲労困憊にさせているからであった。

 

この1週間は、朝食前に掃除。昼食まで訓練。午後からロキと遊んだり、1人でメインストリートへウインドーショッピングやお手伝いに出かけたりと、居残り時はほぼ毎回このような日常を過ごしていた。

 

フィンたち遠征組は今回は記録更新ではなく、金策と遠征の習熟度を上げることが目的らしく、深層で取れるドロップアイテムや鉱物などの収集のため、あと1週間は帰って来ない。

 

(よし、今のうちに)

 

マオはせっかくなので、1年半近く使い続けて流石にガタの来た槍を新調するために摩天楼施設(バベル)にある【ヘファイストス・ファミリア】のテナントに行くことに決める。

 

ダンジョンを塞ぐ摩天楼施設(バベル)。商業系ファミリアに4階から20階までをテナントとして貸し出しており、その4階から8階は全て【ヘファイストス・ファミリア】のテナントが入っている。【ヘファイストス・ファミリア】の運営方針として駆け出し鍛冶士にも販売の機会を与えているため、下級冒険者にも手の出せる質と価格の武器・防具も並んでいる。

 

マオは昼食時、ロキにバベルの【ヘファイストス・ファミリア】で新しい槍を見てくると伝える。

 

「気をつけて行ってくるんやで。 知らん人に付いて行ったらあかんでー」

 

「真っ直ぐ行って帰ってきます。 夕方には帰ってきます」

 

ロキの許可を得て、昼食の片付けを済ませて準備をする。

 

右側頭部の1掴み分を三つ編みにして留めに鈴の付いたリボン、朝から付けている尻尾と同じ鈴の付いたリボン。

 

灰色の髪と尻尾に青のリボンは良いアクセントとなっている。財布と護身用のナイフなどをポーチに入れて肩から斜めに提げる。

 

「いってきまーす」

 

玄関を挟んで内と外で2回挨拶をして出かける。門番に手を振りながら北のメインストリートに出る。

 

さっそく野菜店のおばさんが話しかけてくる。

 

『おや、鈴ちゃん。 お出かけかい?』

 

「うん。 今日はバベルで新しい槍見るの」

 

『さすが冒険者だね。 気をつけて行ってらっしゃい』

 

「帰ってきたらお店寄るね。 今日は何がオススメですか?」

 

『今日は良いホウレンソウが入ってるよ』

 

(ホウレンソウ…コンビーフ系と一緒にスープか、茹でて醤油でお浸しか…どっちも有りだな。 酒の当てとしてお浸しで出して見ようか。そうなるとワインは合わないだろうな。 焼酎か日本酒だな。 うん、決定)

 

「うん、思いついた。 また帰りに寄りますね」

 

先ほどまで別のお客さんの相手をしていたおじさんもホウレンソウを両手に持って答える。

 

『じゃあ鈴ちゃん用に取っとくぜ』

 

「おじさん、おばさん。 いつもありがとー! いってきまーす!!」

 

いつもより駆け足気味な足取りに結んである鈴はリンリンと鳴り響いている。今のやり取りや鈴の音を聞きつけてか、『鈴ちゃん来てるのか?』『今日はどこだ? バベルへ? ダンジョンかー、残念』なんて声も聞こえるけど、話しかけられているわけでもないので気づいていない振りしてバベルへ向かう。

 

道中で親しいお店の人は必ず声をかけてくれるようになった。いつもサービスしてくれるから無碍にできない。

 

それからも色々な人と会話しながらバベルに到着する。普通に歩けば15分程度で着く道のりを、マオは1時間以上かけてたどり着いた。

 

(なんかもう既に疲れた気がする)

 

精神的な疲労を振り払い、エレベーターに乗って8階へ。小人族(パルゥム)向けの槍を物色する。普通のサイズはまだ長過ぎるのと重くて扱いきれないからだ。

 

何本も重さと柄の触り心地を何度も確認する。お店の人の許可をもらいながら軽く振って見たりもする。その中の1本、白く輝く槍が目にとまる。

 

何度か手触りを確かめた後、購入を決意する。お値段3万2000ヴァリス、銘が白銀(しろがね)。製作者を知る店員曰く、「完成したときが夜で、月の光で銀色に光っていてキレイだったから」だそうだ。

 

今回の予算は20万ヴァリス。時間にも余裕があるのでこのまま新しいナイフも買ってしまおう。とマオは購入した槍を店員に預かってもらい、ナイフが置かれている一角へと足を向ける。

 

ナイフコーナーに行って、1本目、いや2本目を手に取ったところでマオの記憶は途切れた……


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