オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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お留守番

居残り組――遠征組に組み込まれなかった【ロキ・ファミリア】の団員。サポーター(二軍)としての参加も許されない実力不足の冒険者――の1人であるマオは想像していた以上に暇を持て余していた。

 

全体の6割がが遠征に、残りの4割のさらに半分がパーティーを組み、ダンジョンに行ってしまっい、『黄昏の館』は閑散としていた。

 

1人ではダンジョンに行けないマオは人がいないことをこれ幸いと、共有スペースの修繕や掃除をして過ごしたのだけれど、それも【幽波紋(スタンド)】を駆使するとすぐにキレイになってしまい、全体を通してもあっという間の3日で終わってしまった。

 

閑散とした雰囲気を嫌い、少しでも賑やかにと鈴の付いた首輪(チョーカー)とリボンを愛用していた。

 

朝、着替える時に鈴のついた首輪(チョーカー)と同じく鈴の付いたリボンを尻尾か、頬にかかる髪を三つ編みにし、結び付けていた。

 

元よりロキの悪戯(あそび)をマオが気に入り、肌身離さず使用していたこと。それを動くと鈴がなる(すぐ居場所がわかる)ので防犯にも丁度いいと極一部(ベート)を除き誰もが受け入れていた。

 

朝晩の訓練と読書、食事の手伝いが終わるといよいよマオはすることがなくなり、『北のメインストリート沿い』でなら1人での外出も許可されていた。それ以外の場所へはロキがどこからとも無く現れ、同行するか連れ帰っていた。

 

「冒険者なのだから、そこまで過保護でなくても」と団員がそれとなく諌めると「こんなに幼く可愛い子(マオ)ハイエース(おもちかえり)されるに決まってる!」とロキは反論するのであった。

 

みなハイエースの意味がわからず、神の用語で危険なことなのだろうとそれ以上の反論をあきらめるのであった。

 

リンリンと鈴を鳴らしながら元気よく挨拶を交わし、愛嬌を振りまくマオの姿に北のメインストリートを行き交う人々や店員はみな笑顔になる。

 

マオの名を知らぬ店員やが「(リン)ちゃん」と呼び始めたことから、既知の仲であるお店のおじさんやおばさんまでその愛称で呼び始める。マオも訂正するのが面倒になり、そのまま返事をしていたことがより愛称の広まりに拍車をかけていた。

 

(リン)ちゃん、ジャガ丸くん食べないかい?」

 

「食べるー! いっただっきまーす! ……うん、やっぱり塩とコンソメを交互に食べると止まんないね。 夕食たべられなくなりそう」

 

「新しい味も今度出すよ、試しておくれ」

 

「うん! 楽しみにしてるーっ!!」

 

とお昼を大きく回った時間帯に元気な声て会話するものだから、マオが来ると飲食関係の露店はあの手この手でマオを引き寄せようと躍起になる。

 

「お、(リン)じゃねーか。 その格好ってことは暇だな。 丁度良い、ちょっと手伝ってくれ」

 

「はーい!!」

 

とお店の売り子や店頭での呼び子を快く引き受けるマオ。フリフリ揺れる尻尾、リンリンと鳴り響く鈴の音、可愛く幼い猫人(キャットピープル)

 

――どれに惹かれてかどこからとも無く男が集まってきては商品を競うように買い求めていく。

 

マオが行くところは常に人だかりが出来上がっていた――主に男神(ロリコン)たちによって。

 

『ちくしょう! なんでロキがこんな天使の主神(おや)なんだ!』

 

『あぁ、お持ち帰りしたい。 そして虫歯にならない程度の甘いものを与えて、遅くならないうちに手を繋いで送ってあげたい……はっ、しまった!!』

 

『『『イエス!ロリコン!!ノー!タッチ!!』』』

 

可愛いもの、小さいものに関心を示すのは男神だけでなく、女神もいる。美の神であり、【ロキ・ファミリア】と並ぶオラリオ最大級派閥の主神フレイヤ。

 

彼女もまたマオの存在を知り、所有欲を駆り立てられる。しかしロキの過保護っぷりに手が出せず、その身に大人の美を纏いし頃――成長し、1人で行動するよう――になってから頂いてしまおうと考え、5年ほど熟成を待つことに決めた。

 

 

 

そうして日々充実した生活を過ごしていると、遠征から帰ってくる予定の日が近づいていた。ロキがお昼を外で食べようとマオとたまたま居合わせた3人を誘って出かける。

 

向かった先は西のメインストリートに面した『豊穣の女主人』というお店。店の名前にもなっている通り、店主は女性でミアというハーフドワーフで、腕利きの元冒険者だ。

 

ロキ曰く「怒らせてはいけない人の1人」ではあるが、味は確かな上に働いているのは皆美女という見た目も味も人気のあるお店だ。

 

美酒と美女が大好きなロキはこのお店を大いに気に入り、遠征の打ち上げもよくここで行っていた。今回来たのも、もうすぐ帰ってくるみんなのために予約を入れるためだ。

 

『準備中』の札が掛けられたドアを何のためらいもなく押し開けて入っていくロキとそれに続く団員(マオ)達。

 

「邪魔すんでー」

 

「邪魔するんやったら帰ってー」

 

「あいよー……ってなんでやねん!!」

 

ロキがペシッ!とマオの頭を(はた)く。叩かれたマオは「しまった!」という表情のまま固まっていた。

 

生前よく見ていたDVDのワンシーンが脳裏をよぎり、そのまま口に出てしまったみたいだ。

 

そんな咄嗟のやり取りが自分の口から出るとは思ってもおらず、ショックで動けなくなっているマオの両手をロキが掬い上げる。

 

「これ! これが欲しかってん!! だ~れもしてくれへん。 マオはええ子や!」

 

迷宮都市オラリオにおいて喜劇や観劇を上演する場は複数ある。しかし、誰がこのネタを思いつき、実行するだろうか。

 

「入り口で何やってんだい。 邪魔するんならさっさと出ていきな!」

 

奥の厨房から不機嫌そうな表情で大柄な女性が出てくる。

 

「ごめんやって、ミア母ちゃん」

 

恰幅の良い大柄な女性、彼女が『豊穣の女主人』の女将ミアのようだ。

 

「で、今日は夜だけだよ。 悪いけど出直してきな」

 

「ちゃうねん。 明後日(あさって)あたりにうちの眷属()たちがダンジョン遠征から帰って来そうやから、その翌日。 明々後日(しあさって)の夜、【ロキ・ファミリア】で予約入れたいねん。 最終決定は前日にまた言いに来るけど、27人。 行ける?」

 

「いつもの通り、外のテラスと中とで半々でいいかい?」

 

「ええよ。 ほな、一応明々後日(しあさって)で。 ちょっとずれるかも知れへんから、前日にもっかい連絡入れるわ」

 

「わかったよ。 たっぷり用意しておいてやるから、その時はたらふく飲み食いしてくれよ」

 

数年前に店を開いてからというもの、すっかりロキのお気に入りになっていて、遠征の度に必ず利用し、それ以外にも時々現れるロキは店員にも団員と変わらぬ接し方(セクハラ)をする。店員さんもそんなロキの扱いは団員並みに慣れていた。

 

この西のメインストリートは冒険者以外のオラリオで働く人が多く集まっている地域だ。そのため、冒険者でない者(一般)にも向けられた食堂が多くある。今日はその中でもハンバーグがおいしいとの噂を聞きつけたロキの案内の元、お店に入る。

 

「私はチキンハンバーグセット!」

 

マオがメニュー表を一目見るなり即決する。

 

ロキはビーフハンバーグセットとエールビール(ジョッキ)。あとの3人もそれぞれメニューの『イチオシ!』と書かれたセットや日替わりセットと(エールビールのグラス)を頼んでいた。

 

「そういや、マオはいつものお留守番やけど、ヴァレリーたちはどうしたん?」

 

ヴァレリーと呼ばれた女性、緩くウェーブした肩までの赤い髪を持つヒューマンはテーブルに置かれた水を1口飲み答える。

 

「ライナーが風邪引いちゃったからダンジョンはお休みです。 お粥と水は部屋に置いてきましたけど、今はまだ寝てるでしょうね」

 

「せやったか。 【神の恩恵(ファルナ)】あるのに風邪引くとか珍しいな。 外で裸で寝ても風邪ひかんらしいのに……まぁええわ。 あとで栄養のあるもん差し入れたらなな。で、ワルター、どこまで行ってん?」

 

「まだキスまでですよ」

 

「ちょっと!!ワルター!!」

 

「そっちやない……が、それはまぁ後でじっくり聞かせてもらうとしてダンジョンのことや」

 

ワルターは金髪を短く刈り込んだヒューマンの青年だ。ヴァレリーとワルターは3ヶ月前に同じ村からオラリオに来た幼馴染で、現在は付き合っているらしい。

 

風邪を引いて寝込んでいるライナーと今テーブルを囲んでいるカスパーは1年前にそれぞれ前後するように入団し、ヒューマン4人でパーティーを組んでダンジョンに潜っている。

 

カスパーたち2人はそろそろLv.2になるのではないかと噂されており、この噂どおり【ランクアップ】を果たした場合は最速記録保持者(レコードホルダー)のアイズに届く早さとなる。

 

ワルターは顔を真っ赤にしたヴァレリーをなだめるのに手一杯になった代わりにカスパーが答える。

 

「12階層までです。 火精霊の護布(サラマンダー・ウール)の購入資金を貯めないといけないので、ワルターたちの【ステイタス】も上げなくてはいけませんから、もう半年ほどは10から12階層あたりをうろつくことになるかと」

 

「クーポンの存在は知っとるよな?」

 

「クーポン?」

 

マオが聞きなれない言葉の響きに首をかしげる。そんなマオに対してカスパーが答える。

 

「いいかい、マオ。 火精霊の護布(サラマンダー・ウール)はヘルハウンドの吐く火を防ぐのに必要なんだ。 で、このヘルハウンドが出現するのが13階層から、だからギルドはこの必需品に対して割引券(クーポン)を各ファミリアに配布してくれているのさ」

 

カスパーがやさしく教えてくれる。そんなカスパーも、ワルターたち2人が加入する前は行ける所まで降りるやり方をしていたが、何度も命の危機に陥っては間一髪で助かるということを繰り返していた。

 

2人が加入してからは、その方針を改め、育成と自身のスキルアップ狙いで、4人のダンジョン攻略方法は「じっくりゆっくり」に切り替えたそうだ。マップが正しく描かれているのかを確認する意味でも1つの層を2、3周してから降りる念の入れようだ。そのため、この4人は12階層までならどこからでも地上に迷わず帰ってこれると豪語している。

 

上級冒険者のほとんどは各層の上下を行き来する最短ルートと最低限の回り道などを目印となるポイントを暗記する程度で、必要であればその場を新たに覚えておくということをしている。あとは地図を見れば帰ってこれるため、全てを把握している者は少ない。探索系ファミリアの中でも責任ある立場の人間(幹部クラス)くらいであろう。

 

「すごいなぁ……」

 

「すごいのはマオだよ。 フィン団長たちのフォローがあるとはいえ、2回目でもう7階層まで行ったんだろ?」

 

「帰ってきて意識無くしちゃいました……てへっ」

 

「あれは聞いておもろかったなぁ。 今度はウチがベッドまで連れて行ったるさかい、遠慮なく寝てええで」

 

ヴァレリーが呆れたようにロキをけん制する。

 

「そのまま添い寝するくせに。 ダメですよ、小さい子にセクハラしたら」

 

「おっきい眷族()やったらええってことやな!!」

 

ガバッとロキはヴァレリーに抱きつく。17歳にして成熟した肉付きのヴァレリーは妖艶な雰囲気をかもし出している。彼女自身は老けて見られてしまいがちなのを気に病んではいた。

 

「そういう意味じゃありま……勝手に揉むんじゃない!!」

 

「ギャフン!!」

 

ロキ()あるところに騒ぎあり。意外と周りの注目を集めていたようで、胸をもまれたヴァレリーは周囲から好奇の目で見られていた。ちょうど話の途切れ目にそれぞれの注文がテーブルに並べられた。

 

ハンバーグは言うまでも無く、添えられた野菜やスープもおいしく。みんなあっという間に食べ終える。口の小さいマオはまだ食べ続けているため、大人連中は会話を続ける。

 

「せや、今のうちに残ってる眷属たちの【ステイタス】の更新しといたるから。 今日、明日で出来るように声かけておいたって」

 

「わかりました……そういえばロキ、【神聖文字(ヒエログリフ)】って神様にしか読めないの?」

 

「いーや、勉強すれば誰でも読めるで。 ウチの所やとリヴェリアとアイズが読めるで。 なんでや?」

 

「いえ、いつも【共通語(コイネー)】に直していると聞いたので」

 

「確か図書室に本があったはずや。 無かったらリヴェリアかウチに言い。 教えたるわ」

 

「ありがとうございます。 ですが、遠慮します」

 

3人とロキとのやりとりを見つめてつぶやく。

 

「ロキさまから教えてもらえるのなら習ってみようかな」

 

ズガーン!と雷に打たれたような驚愕の表情の3人。ハッと正気に戻ると慌ててマオを止め始める。

 

「いやいや、マオ。 どうせ嘘教えられるんだから、素直にリヴェリア副団長に習え」

 

「そうだぞ、間違ったことを正しく覚え直すには時間も労力もかかるんだ。 初めからリヴェリア副団長にしておくべきだ」

 

「そうね。 最悪、リヴェリア副団長に後で見てもらうかよね」

 

「なんやえらい調子に乗ってくれてるやんか……」

 

ロキの目がわずかばかり見開かれる。

 

「なんや言いたいこと言ってくれるやん 。信用ない無いならしゃーないわ。 お前らもリヴェリアから【神聖文字】教えるよう言うとくわ。 遠慮せんでええ、覚えるまでダンジョン行かさへんようにするだけや」

 

「そんな!! ……【ロキ・ファミリア】の一員たる我々が主神であるロキをないがしろにする訳が無いじゃないですか」

 

「そ、そうですよ。 ロキ神の親心をマオとのやり取りを通して再確認していた次第です」

 

「疑うなんてとんでもない。 神ロキの広く豊かな御心を知ってこそ言えることでございます」

 

ロキの剣幕とその内容に3人とも顔が青ざめ、慌ててフォローする。ロキをおだてて無かったことにしようと必死になればなるほど、ロキの表情が険しくなっていく。だが、その口元は引き攣ってきており、笑いが堪え切れなくなってきているのがマオからは見てとれた。

 

「ぷっ!はははは!! 冗談やでジョーダン。 でも読めるようになりたいんやったら、いつでも言ってきてや。 なんせロキ様は広く豊かな心とやらをもっているらしいからなぁ」

 

『心は豊かでも胸は無い……ぷっ』

 

ぼそっとつぶやいたつもりなのだろう。それは我々の耳にもはっきり聞こえた。他のテーブルの皆も聞こえたらしく、シーンと静寂に包まれた。その瞬間、言いようのない圧迫感がお店を包んだ。

 

「誰や今言うたんは? ……お前やな。 マオ、水」

 

「はい。 どうぞ」

 

マオはテーブルに置かれたピッチャーを手に取り、すかさず《人魚之首飾(アクアネックレス)》でピッチャーの中の水をいつでも操作できるようした。

 

ロキは冒険者のグラスに水を注ぐ。

 

「お前、どこのもん(ファミリア)や?」

 

『ど、どこだって関係ないだろ!!』

 

ロキから発せられていた圧迫感が消え、店内はふーっと深く息を吐くもので一杯だった。冒険者だけが未だ心休まることなく嘲笑めいた笑みを浮かべるロキから解放されていなかった。

 

「びっくりして喉渇いたやろ? 溺れるまで飲んでてええで。 それとも怖くてこの水は飲めへんのかなぁ?」

 

周囲の注目を一身に浴びながら冒険者の男性は虚勢を張る。

 

『ぐ、グラスの水で溺れろだって? (むせ)ることはあってもど、どうやって溺れろってんだ!!』

 

「やかましい!!! ……決定事項や。 黙って溺れてろや』

 

鬼気迫る言い方に店内は水を打ったように静まり返る。そんな中、ロキは悠々と冒険者のテーブルに腰を下ろし口の両端を吊り上げて煽る。

 

「それとも怖くて水も飲めませんってか? はっ、冒険者言うてもファミリアも明かせん、ただのビビリか」

 

『こんな水程度で!!』

 

ケンカを売られていると悟った冒険者は、そのケンカを買うべく立ち上がり、グラスを手に取り中の水を一気に呷る。どうだといわんばかりの目が、すぐさま苦悶の表情へと変わる。喉を流れていくはずの水がその場に留まり気道を塞ぐ。

 

『!? がっ!! ギッ……グググォ………オ…ァ……』

 

暴言を吐いた冒険者が突然苦しみ、もがき苦しむ。その手は空を切り、喉に手をやるが何もできないままとうとう机に突っ伏し、バランスを崩して床へ横たわる。口から水がゴポォと大量に出てくるのを見れば、皆がロキの言った「溺れろ」という言葉を脳裏に描いただろうことは容易に想像できる。

 

店に居た全員の顔が青ざめる中、ロキは飄々としたいつもの雰囲気に戻り、伝票を手に会計を済ませようと歩き始める。

 

(ウチ)に楯突くからや。 さ、勘定頼むでー」

 

『ま、まて! こいつに何をした?!』

 

溺れた冒険者の仲間が慌ててロキを制止する。

 

「手は出してないで。 勝手に溺れたんやろ?」

 

『そんなわけがあるか!! どうやったらグラスの水で溺れるんだ!!』

 

「知らんがな。 その男に聞けや……あぁ、そういうことか。 マオ、蘇生」

 

「はーい」

 

トテテとマオは倒れている男のもとへ駆け寄ると心音と呼吸を確認する。心音はあるが、呼吸が止まっていた。

 

このままでは死んでしまうので、《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》で横隔膜を刺激し、止まった呼吸を再開させる。

 

「うん。 あとは安静にしておけば意識は戻りますよ」

 

『お、おう……』

 

7歳の少女がテキパキと動く様子に冒険者の仲間たちも呆気にとられ、会計を済ませ去っていくロキたちを呆然

 

と見送るしかできなかった。

 

ロキが全員分を奢る形で会計を済ませる。5人で1700ヴァリス。ボリュームの割りにリーズナブルだ。ミアのところはどのメニューもここに負けないくらい美味しいが値段とボリュームはさらに上を行く。しかし、遠征に参加していない以上打ち上げに付いて行くことはできない。別の機会に連れて行ってもらうことになるだろう。

 

「さ、帰ったらさっそく4人の【ステイタス】の更新してしまおうか。 マオは【神聖文字(ヒエログリフ)】のこともあるから最後な」

 

「「「「はーい」」」」

 

何事も無くホームへと帰るロキ一行。その中で心中穏やかでない3人が居たことにマオは気づいていなかった。

 

(――何なんだ()よ、今のはよぉ(ねぇ)!)

 

 

『黄昏の館』に戻ったマオたちは順番に更新してもらい、終わった人は他の団員たちに今日明日中にと伝えて回った。ライナーは病気のため、きっと明日だろう。マオが本日最後の更新を受ける。

 

「さて、マオの更新はいつ振りやったっけ?」

 

「2週間ほっど前ですかね。 全くダンっジョンに行けていませんっし、アビリティの上昇はっほとんど無いでっしょう」

 

「そんなんなになるかー……相変わらず背中弱いのー。 グヒヒ、でもそれが可愛いんやけどな」

 

尻尾に結んだリボンの鈴がチリン、チリンと鳴り響く。ロキの指の動きに合わせて尻尾がピーンと反り返る。その度に鳴り響く。マオの顔は羞恥からどんどん赤く染まっていく、がロキから見えないのでそんなことお構いなしに尻尾をいじるのであった。

 

「ちょっと待ってな。 なんか増えてるんも有るけど、今回は【神聖文字(ヒエログリフ)】と【共通語(コイネー)】の両方で書いたるわ」

 

 

 

【ステイタス】

マオ・ナーゴ

Lv.1

力 H 111

耐久I 79

器用H 122

敏捷I 91

魔力H 107

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

幽波紋(スタンド)

・精神力で力ある像を造りだす。

不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド):モノをなおす力がある。

人魚之首飾(アクアネックレス):液体を操る力がある。

医食同源(パールジャム):料理が美味しくなる。料理を食べた者の状態異常を治す。

 

 

 

「これ、《調理》とはまた違うんか?」

 

「美味しくなるだけでなく、状態異常も治すことができるところが違うのかな? どこまでが状態異常に含まれるのかが研究の余地ありですね」

 

「はー……色々ざっくりしてて訳わからんな。 《神の力(アルカナム)》並みになんでもできるんちゃうか?」

 

「さすがに寿命とか若さは無理でしょう……こっちが【神聖文字(ヒエログリフ)】ですね」

 

マオは共通文字と交互に見比べるが関連性が上手く見つけられず、お手上げになる。

 

「うん、さっぱりわかりません。 図書室から本取って来ますね。 あと、ついでに飲み物も」

 

「うん、急がんでええよ。 できればお酒がいいなー。 期待して待ってるから!」

 

マオは図書室で神聖文字に関する本を数冊取り、厨房でさっそく《医食同源(パールジャム)》を使って風邪のライナーのために簡単なスープを作る。

 

スープをライナーに届けた後、本と冷やしたワインを持ってロキの部屋で神聖文字を教わるのであった。




レストランでのモブ2人の言葉は見分けがつきやすいよう『』のままにしました。

どう表現するのが分かりやすいのか、悩ましいです。

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