もし、宝物殿の一部が別の場所に転移していたら?   作:水城大地

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デミウルゴスと、情報を擦り合わせてみた

モモンガが第九層にある自室に戻ってから数時間後、デミウルゴスから伝言(メッセージ)が入った。

どうやら、アインズに確認したい事が幾つか出てきたらしい。

正直、数時間前に顔を合わせた時の高評価を思うと、なかなか顔を合わせ難い部分がある。

あるのだが、それでもわざわざこうして伝言(メッセージ)で面談の申し込みをしてきている以上、重要性が高い可能性も高かった。

と言うより、デミウルゴスがこうして連絡をしてきている時点で、それは間違いなく先程モモンガ自身が命じた【パンドラズ・アクター】の捜索に関わる事柄なのだろう。

それ位、モモンガにも簡単に想像が出来た。

 

だからこそ、速攻で自室を訪ねる許可を出したのだから。

 

それから数分後、モモンガ付きのメイドがデミウルゴスの来室を告げてきたので、そのまま部屋に通させると、彼女たちに退出を命じる。

今回の一件は、この段階で一般メイドや他の僕たちに情報を開示するつもりはないからだ。

それに、だ。

デミウルゴスの質問の内容が、今の段階で想定出来ない以上、あまり多くの相手に聞かれるのは色々な点で良くない気がしたのだ。

 

なぜなら、【パンドラズ・アクター】に関しての情報を殆どデミウルゴスに渡していないのだから。

 

「失礼いたします、モモンガ様。

ご多忙の中、こうして私の為にお時間をいただき、ありがとうございます。」

 

丁寧に自分に向けてお辞儀をするデミウルゴスに対し、モモンガは出来るだけ穏やかでありながら威厳のある口調になるよう、気を配りつつ声を掛ける。

 

「……そう構える必要はないぞ、デミウルゴス。

お前に与えた責務を考えれば、お前が私に会いに来るのも当然の話だ。

むしろ、どのような怒りを感じていたとしても、あの場である程度の情報を開示するか、それとも後で私の元を訪れるように伝えなかった私の対応が不味かったな。」

 

先程、ついうっかり八つ当たりのように怒りをぶつける形になった事を、済まないと思うからこその対応だ。

それに、彼らとて知らない事を理由に責められても困るだろう。

あの時の対応は、間違いなくモモンガ側のミスだと言ってよかった。

 

「……いえ、私の方こそ申し訳ありませんでした。

きちんと、モモンガ様のお話を全てお伺いしてから質問していれば、あの様にご不快な思いをさせずに済んだでしょうに。」

 

恐縮したように、再度頭を下げながら告げるデミウルゴスに、モモンガは軽く首を振った。

 

「……その件はもう良い、デミウルゴス。

むしろ今は、もっと優先すべき事があるだろう?

それで、私に一体何を聞きたいのだ?」

 

このままだと、なんとなく堂々巡りになりそうな気配がしたので、先に話を進めるべくデミウルゴスに問い掛けるモモンガ。

その言葉を受け、もう一度だけモモンガに向けて頭を下げた後、デミウルゴスはここを訪ねた用件を切り出した。

 

「それでは、モモンガ様。

パンドラズ・アクターに関わる事について、幾つかお教えいただけますか?

まず一つは、わが創造主であるウルベルト・アレイン・オードル様が、かのパンドラズ・アクターの為に作った装備があり、それが宝物殿にいる彼の元にあるのか、と言う事でございます。

実は、シャルティアがかつてペロロンチーノ様とウルベルト様がそのような話をしていたのを聞いた事があると申しておりました。

それで、その話の中で出てきた装備というのが、私の予備の装備のデザイン違いだと言う事も申しておりまして。

もし事実なら、パンドラズ・アクターを探すための手掛かりの一つにならないかと、愚考した次第にございます。」

 

デミウルゴスの質問の内容を聞き、モモンガは素早く記憶を巡らせた。

 

かつての仲間との、懐かしいやり取り。

特にモモンガと親しかった、【非課金同盟】のウルベルトとペロロンチーノは、確かにパンドラズ・アクターの基本外装が決まった時に装備を贈ってくれた。

まだ、完成は先の話だと言うのに、それでもこれも一つの節目だからと、パンドラズ・アクターの為の専用装備と言う手の凝った祝い方をしてくれたのだ。

あれは、本当に嬉しくて仕方がなかったことを、モモンガは覚えている。

 

ただし、ペロロンチーノから贈られた装備は女性ものだった為、残念ながら即座にクロークの肥やしになる事が決定したのだが。

 

実は、モモンガもデミウルゴスやシャルティアの制作時に、それ相応のデータクリスタル(彼らの拘りを知っていたので、自分がデザインした装備は諦めた)をプレゼントしていたので、そのお返しだったらしい。

それらを思い出し、その当時の懐かしい気持ちになりつつも、モモンガはデミウルゴスの質問に対して頷いて見せる。

 

「……そうだな、確かに装備一式をフルセットで貰っていたな。

あれは……ウルベルトさんがナザリックに来ていた頃に、何度かパンドラズ・アクターに着せていたから、宝物殿内にあるパンドラズ・アクターの私室にあるはずだ。

黒をベースに、とてもシックな感じのデザインでな。

帽子からブーツまで、一揃えの物だとすぐに判る位に統一されていて、ウルベルトさんらしいデザインの仕上がりだと、ペロロンチーノさんと話していた覚えがある。

……あぁ、そうだ。

確かに、受け取った時に【デミウルゴスとデザイン違いなのです】と言っていたな。

私が覚えている違いは、パンドラズ・アクターの上着のボタンに使用した宝石をデミウルゴスのブローチに、デミウルゴスの上着のボタンに使用した宝石をパンドラズ・アクターのブローチにした事と、外套のデザインが一部違っている事位か。

他にも、幾つか違っている点があるらしいが、実際にお前たちを並べて比べる事はしなかったからな。

それらも全て、随分と昔の話だ。

流石に、そこまで詳しくは覚えていない。

……参考になったか?」

 

贈り主のウルベルトは、パンドラズ・アクターにその装備を何度か着せる度、満足そうに頷いて【よく似合いますね】と褒めてくれていた。

実際、黒を基調としたあの装備一式は、パンドラズ・アクターによく似合っていたと思う。

ただ、パンドラズ・アクター自身の能力の関係上、神器級(ゴッズ)アイテムを持たせられる場所が装備部分にしか存在しなかった為、メイン装備は自分で作った神器級(ゴッズ)の装備を採用したのだ。

その辺りは、ウルベルトも理解してくれていたので、まだ完成前のパンドラズ・アクターが居る宝物殿まで訪ねて来ては、そこで装備させるだけで満足していたと言う記憶も、モモンガの中にはある。

よくよく思い返せば、ウルベルトはパンドラズ・アクターの事をとても気に入っていて、未完成の状態でも構いに来ていたのだ。

 

正直、モモンガよりも宝物殿に足繁く通っていたのではないだろうか?

 

他のギルドメンバーには、未完成を理由にほとんどお披露目していないのに、基本外装が出来たと聞き付けた時点から、ウルベルトはパンドラズ・アクターの完成状況を見に来ていた記憶もある。

そして、あの装備を着せては【行動チェックですから】と言って、宝物殿内を連れ歩いていた。

ある意味では、一番パンドラズ・アクターの完成を楽しみにしていたのは、モモンガよりもウルベルトだったのだ。

結局、彼はパンドラズ・アクターの完成した状態を見る事は叶わなかったのだが。

 

そう……それら一連の出来事は、ウルベルトが仕事の都合でユグドラシルへ簡単に接続出来ない海外に向かう事になり、半強制的に引退状態になる直前まで続いた、とても懐かしい記憶だった。

 

装備に纏わる記憶から、モモンガはウルベルトとパンドラズ・アクターに絡む幾つもの思い出を引き出し、懐かしげに目を細める。

モモンガからの回答を聞き、デミウルゴスはその場で考え込んでいた。

多分、既に自分の予備装備を自分の私室がある第七層の赤熱神殿で、全て確認してきているのだろう。

それらを元に、モモンガから聞く事が出来た情報と精査する事で、どれがそれに該当するものなのか、考えているといった所だろうか。

 

「モモンガ様、その装備とはこちらのものではないでしょうか?

今、モモンガ様からお伺いした条件に合うものは、これ一つでした。

なので、間違いはないとは思うのですが……念のために、ご確認いただけませんでしょうか。」

 

その言葉と共に、デミウルゴスが自分のアイテムボックスから一つの装備を取り出す。

どうやら、自分の装備を幾つか持参してきていたらしい。

そうして取り出されたものを受け取ると、モモンガは目の前で広げて確認していく。

 

「流石だな、デミウルゴス。

既に、どのデザインなのか候補を絞って持参してきていたのか。

あぁ……これだ、な。

細かいデザインまでは、流石に覚えていないが……この、ブローチとボタンに使われている宝石には覚えがある。

装備に関しては、これで間違いないだろう。

それで、他に聞きたい事とは?」

 

指先で、ボタンの部分を軽く突きつつ、デミウルゴスに質問の続きを促す。

それを受けて、デミウルゴスは続きの質問を口にした。

 

「それでは、次の質問をさせていただきます。

パンドラズ・アクターの外装や能力に関して、どの様なものがあるのかお教えいただけませんでしょうか。

彼の種族が、上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)だという点に関しては、既にアルベドから話は伺っております。

ですが、そうなると種族的に外装が複数存在している事や、スキルなどの能力で外装を変化させる事が可能ではないのかと、推察いたしました。

しかし……それでは現時点で私が持つパンドラズ・アクターの情報量では、捜索が非常に困難かと思われます。

そこで、モモンガ様が私に教えても構わないと思う情報までで構いませんので、是非ともお教えいただきたくお願いに参りました。」

 

このデミウルゴスの問いは、モモンガも想定していたものだった。

元々、後からデミウルゴスを呼び出して教えて置く予定だった事なので、むしろこうしてデミウルゴスの方から聞きに来てくれて良かったとすら思っている。

なので、能力的な面に関しては、ある程度まで教える事に何も問題なかった。

 

「そうか、アルベドからある程度は話を聞いているのか……

正直、どこまでアルベドがパンドラズ・アクターの事を把握しているのか、私も正確には知らないのだが……種族を知っているなら、基本知識はあると判断していいだろう。

そうだな、アレの外装と能力か……

パンドラズ・アクターは、種族レベルが四十五で、そのままそっくり四十五の外装を持っている。

そのうちの四十一の外装は我ら【アインズ・ウール・ゴウン】のギルドメンバー全員分で、その能力の約七割から八割が使用可能だ。

残りの外装は、どう設定してあったか……済まないな、デミウルゴス。

どうも、ギルドメンバーの外装と能力の事は覚えているが、そちらはすぐに思い出せん。

基本的に異形種の外装だった事は、ちゃんと覚えているのだが、な。

まぁ……どちらにせよ、アレは状況に応じて姿に変化出来るような種族スキルを所持しているのは間違いない。

その点から考えても、もしアレが人間種に姿を変えていたとしたら、捜すのは間違いなく困難だろう。

この世界の事を、まだ正確に把握していない段階ではあるが……人間種がいるとするならば、紛れ込める程度の数は存在しているだろうからな。」

 

一旦そこで言葉を切ると、モモンガは空を見据えた。

パンドラズ・アクターに関して、デミウルゴスが相手でもどこまで話していいものか、ここにきて迷ったからだ。

正直言って、パンドラズ・アクターを探し出す為に必要な情報は、外装が変えられる種族的なものだけでも大丈夫な気がしなくもない。

むしろ、デミウルゴスに話しておいた方がいい内容は、別の部分に存在していた。

出来れば、モモンガ的には話したくないのだが……どうせ捜索させていれば、発見時に判明するだろう内容でもある。

 

それなら……今、この時点でデミウルゴスにだけでも話を通しておいた方が、もしかしたら自分のダメージは少なくなるかもしれない。

 

「……そうだな、パンドラズ・アクターの事を捜索するお前には、きちんとこの事に関しては話しておくべきだろう。

アレは、な……その、だ……少々、いや、大分……いや、かなり言動がオーバーで、な。

その名の通り、役者として設定を組み込んだ際に、【役者として大仰な言動をするべし】と定めた結果でもあるのだが……正直、初見の者には良くも悪くも強い印象を与えてしまうらしいのだ。

これは、性格の基礎設定の中に含まれている部分だから、そう簡単には言動が変わる事はないだろう。

もしかしたら、その辺りを踏まえて捜した方が発見し易いかもしれん。

その、だ。

お前も、アレの言動を直接見たら……少々引くかもしれんが、その点さえ除けば頭脳と知略もお前と同等レベルであり、能力面でもその利便性からかなり優秀な奴ではある。

今回のような事態に直面した場合、その優秀さ故に身を隠した上での逃げに徹せられると、探し出すのはかなりの困難さを極めるだろう。

だからこそ、私はナザリック随一の頭脳を持つお前に捜索を命じた。

その事を肝に銘じた上で、パンドラズ・アクターの捜査に当たってくれないか、デミウルゴス。」

 

腹を括り、今まで人前に連れ出さなかった黒歴史としての一面を説明したモモンガは、デミウルゴスの様子を窺った。

今の話を聞いて、どう思われるのか判らなかったからだ。

 

ただ、パンドラズ・アクターの完成を楽しみにしてくれていたウルベルトが創造したNPCだから、もしかしたら大丈夫かもしれないと思わなくもないが、あくまでもこの辺りは可能性でしかない。

 

そんな風に思いつつ、デミウルゴスの様子を見れば、自分の質問に対するこちらの返答を静かに聞きながら、何やら思案を巡らせている。

どうやら、モモンガの予想はそれ程外れていなかったらしい。

【自身と同等の頭脳と知略の持ち主】という点でも、強い興味を持った結果かもしれないが、それでもモモンガは構わなかった。

 

それで、結果的にデミウルゴスがパンドラズ・アクターを無事に見付け出し、その身柄を保護してナザリックへ連れ戻してくれるのならば。

 

「……大変貴重な情報をお教えいただきました事、心よりお礼申し上げます、モモンガ様。

先程の装備の一件に加え、今のお話に関しても踏まえた上で、パンドラズ・アクターの捜索網を構築させていただきます。

それではモモンガ様、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

私は、周辺地域の情報収集とパンドラズ・アクターの捜査網構築の為に、これにて失礼させていただきます。」

 

モモンガが告げた、パンドラズ・アクターの性格面に関して、デミウルゴスは一切触れることなく、感謝の意を示して退室していった。

この反応だと、モモンガから受けたパンドラズ・アクターの言動を含めた性格に関して、実際にどう思っていたのかいまいち不明ではあるが、表面的にはそれ程引いていた様子はない。

役者としての設定からくる言動だと、モモンガ自身がはっきりと告げていた事もあり、そのまま言葉通りに受け取ってくれたのかもしれないが、実際は微妙だった。

 

「まぁ……良いか。

デミウルゴスに話した通り、役者なら道化じみた仕種だっておかしくはないからな。

それにしても……まさか、NPCがユグドラシルでの俺たちの会話を覚えているなんて、予想もしてなかったよ。

ホント、これは思わぬ情報だったな。」

 

シャルティアの一件は、モモンガも予想していなかった内容だったので、早い段階でそれを知る事が出来たのは良かったのだろう。

NPCたちが、どれだけ自分たちギルメンの会話を覚えているのか、今の段階でははっきりしないものの、その可能性があると踏まえていれば行動も変わってくるからだ。

これは多分、このナザリックには居ないパンドラズ・アクターにも同じことが言えるだろう。

 

「……そうか。

だとしたら……パンドラズ・アクターも、ウルベルトさんとの事や俺の言った事を、それなりに覚えている可能性もある訳か。」

 

そこまで考えた所で、この場には居ないウルベルトとのここ最近のメールのやり取りを思い出す。

確かに、ウルベルトは仕事の都合で半強制的に引退状態になってしまっていた。

半ば飛ばされたような海外では、ウルベルトに割り振られる仕事はかなり多くて忙しいらしく、あちらから送られてくるメールはごく短い文章しかない。

それでも、モモンガに対して最低でも五日に一度のペースでメールを寄越しては、その時点でのモモンガやナザリックの状況と【ユグドラシル】全体の状況を確認して、モモンガとの交流を続けていた人だった。

 

帰国さえ叶えば、再度【ユグドラシル】に……ギルド【アインズ・ウール・ゴウン】に復帰出来るように、と。

 

最後に届いたメールは、丁度最終日の三日前。

 

『モモンガさん、こんばんは。

 

漸く、こちらでの仕事を終わらせる事が出来ました。

【ユグドラシル】が終了するのに、ギリギリになってすいません。

速攻で帰国するために、既にパスポートとかチケットの手配も済んでいるので、遅くても【ユグドラシル】最終日の昼には、日本に戻れる予定です。

仕事の挨拶回りだけは、帰国当日にどうしても済ませておく必要があるのが面倒です。

この数年、どれだけのアップデートがあったのか、モモンガさんから伺っていますが、それらのアップデートを済ませる必要があるので、もしかしたら遅い時間にしか顔を出せないかもしれません。

それでも、絶対にログインしてナザリックに向かうつもりですので、その時はよろしくお願いしますね。

ナザリックでの再会を、とても楽しみにしています。

 

     ウルベルト・アレイン・オードル  』

 

結局、このウルベルトとの約束は守られる事はなかったが、あの人の事だから最後まで諦めたりはしなかっただろう。

もしかしたら、【ユグドラシル】のサービス終了直前、最後のコンマ一秒にログインが叶って、それが原因でナザリック以外の場所に飛ばされてしまっている可能性だってある。

現に、あり得ないはずの宝物殿一部消失が起きている以上、その可能性が全く無いとは言い切れなかった。

 

いや……もしかしたら、ウルベルトのギリギリのログインが影響して、宝物殿が一部飛ばされてしまい、彼と一緒に別の場所に移動してしまったのかもしれない。

 

「……この想像通りだったら、どれだけ嬉しいか……」

 

もし、本当に自分の想像通りだったとしたら、パンドラズ・アクターだけではなく、ウルベルトも一緒に発見出来る事になる。

ウルベルト自身も戻ってくるつもり満々だったし、モモンガ的にもそうなってくれた方が嬉しい。

むしろ、彼がどんな形であれ帰ってきてくれたらどれだけ嬉しくて、どれだけ助かるだろうか?

 

もし、あの二人が本当に自分の想像したのと似たような形で合流し、一緒にナザリックを探して旅をしているのだとしたら……

 

《……どうしよう、パンドラズ・アクターの行動や言動パターンを思い出したら、思い切り不安になってきたんだけど……

いや、うん、大丈夫だって。

ウルベルトさん、ノリノリでパンドラズ・アクターの設定の相談に乗ってくれてたし、未完成のアイツを【モーション確認する】って自分が作った装備を着せたり、宝物殿内を連れ回していた位だし。

アイツのあのノリも、言動も半分以上モーション確認で知ってるし!》

 

頭の中に浮かんだイメージは、モモンガにとっての黒歴史全開の言動をするパンドラズ・アクターと、それを楽しむウルベルトの姿しか浮かばないのだ。

むしろ、ウルベルトの普段の言動を思えば、同じレベルで返してくる気がする。

 

「……あー、……駄目だ、精神沈静化が掛かる位、すごく不安だ……

しかも、ウルベルトさんの方がパンドラよりも不安要素が高いことに、今気付いた。

俺だって、アバターの種族に精神が引っ張られてるのに、ウルベルトさんが影響出ない訳がないだろ。

あの人、悪魔だよな?

しかも【悪の魔法詠唱者(マジックキャスター)】として、ノリノリで動き回ってたよな?

あー、もう!

……あの二人が本当に一緒だと、余計な被害を周囲に振り撒いてそうな気がしてきた……

……うぅ、胃なんて無いのに、胃が痛くなる気がしてきた……」

 

無い筈の胃を押さえ、モモンガはそこまでで想像を打ち切った。

これ以上、あり得ない想像でダメージを溜める趣味など無いからだ。

 

《まぁ……どちらにせよ、デミウルゴスが集めてきた情報次第だよな。

ウルベルトさんに関しては、何か手がかりが見つかったら、速攻でデミウルゴスが報告してくるだろうし……

早く……本当に、早く見つかるといいんだがな、パンドラズ・アクターが。 

あいつさえ保護出来れば、消えてしまっている宝物殿の一角にあったナザリックの宝の数々は、全て戻ってくるだろうし……》

 

つらつら、頭の中で半分ほどデミウルゴスを頼りにしつつ、素早く対応策を幾つか練っていく。

モモンガは、この時パンドラズ・アクターの事を考えているのに普段の冷静さを維持していた。

だが、モモンガは気付かない。

パンドラズ・アクターの事で暴走しそうな思考が、ウルベルトが戻ってくる可能性を視野に入れて思考し始めた途端、冷静になっている事を。

 

そう、今の自分がどれだけ微妙な精神のバランスで成り立っているのかを。

 




モモンガ様の精神バランスは、割と微妙なラインで成立していると思う。
ちょっとしたきっかけで、仲間に対してヤンデレ化する。

同じことを、パンドラズ・アクターにしただけで、なぜ、子離れ出来ない親ではなくボーイズラブ扱いされるのだろうか?
パンドラズ・アクターは、モモンガ様の息子の認識なので、ちょっと疑問です。

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