東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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お久しぶりです。
大変長らくお待たせしました!

就職後、やっと安定してきたので更新再開します!


注意!
今回の話にて、楯無がかなり弱体化してしまっていますので、苦手な方はご注意を。


仇敵と親友(後編)

簪と本音が晴美と思わぬ再会を果たした頃、アリーナでは魔理沙と楯無が試合開始を間近に控え、アリーナ中央の上空で対峙していた。

 

「絶対にアンタに勝って、簪ちゃんを取り戻す!」

 

「前から思ってたけどさ、お前見てるとクソ親父を思い出すんだよ!

簪がどう生きてどう強くなるかなんてあいつ自身が決める事。

たとえ肉親であっても、それに必要以上に口を挟むもんじゃないぜ!」

 

「アンタの親の事なんて知らないわよ!

赤の他人のアンタに私達姉妹の問題に口出しされる筋合いは無いわ!!」

 

お互いに不快感を隠そうともせずに殺気を出しながら二人は睨み合う。

片や友として、片や姉として、同じ相手を想う気持ちは同じ筈なのに、二人の意見は水と油の如く決して交わらないものだった。

 

『試合開始!』

 

そして鳴り響く試合開始の合図。それと同時に二人はそれぞれ近接武器であるスターダスト ()蒼流旋()を展開する。

 

「今回ばかりは遊び抜きだ。速攻で決めてやるぜ!」

 

「やれるもんならやってみなさいよ!こっちだって簡単に負ける気は無いんだから!!」

 

敵意を剥き出しにして、二人はほぼ同時に動き出し、互いに相手目掛けて接近していく。

 

「喰らいなさい!」

 

先制したのは楯無だ。

接近しながら蒼流旋に内蔵されたバルカンを発射し、牽制する。

だが、魔理沙はそれをボードに乗ったまま器用に回避する。

 

「弾を一箇所に集中させすぎだ。

それじゃ避けてくれって言ってるのと同じだぜ!」

 

「その通りよ!」

 

魔理沙の動きに楯無は計画通りとばかりに笑みを浮かべ、直後に魔理沙……延いては魔理沙が回避行動を取った直後の隙を狙って意識を集中させ、自身が操るナノマシンを操作する。

熱き熱情(クリア・パッション)……ナノマシンを用いて水蒸気爆発を起こすミステリアス・レディの誇る荒技だ。

 

「本命は、こっちよ!クリア・パッショ『そらよっ!』…なっ!?」

 

爆発が起こるその刹那、不意に魔理沙は自らの乗るスプレッドスター(飛行ボード)を足で蹴り飛ばし、蹴り飛ばされたボードは楯無の足元に直撃し、文字通り彼女の足元を掬った。

 

「キャアッ!?」

 

思わぬ攻撃にバランスを崩した事で楯無はその場で宙返りする形となる。

一方で魔理沙はボードから離れた事で重力に従って落下し、爆風が直撃するのを回避して見せた。

 

「クッ……よくも!」

 

「まだまだ行くぜ!」

 

苦々しい表情を浮かべながら体勢を立て直し、反撃に移ろうとする楯無。

だが、それよりも早く魔理沙が動いた。

 

最大出力(フルパワー)だ!」

 

地面に着地する直前に魔理沙は展開した2丁のレヴァリエ(ビームバズーカ)を地面目掛けて放ち、その反動で上空の楯無目掛けて突っ込んでいった。

 

「捕まえたぜ!」

 

「っ!?」

 

そして、そのまま楯無の腰元を掴み抱え、がっちりと固定した。

 

「こ、この!放しなさ『詰み(チェックメイト)だぜ』……何ですって!?」

 

しがみつく魔理沙を振り解こうとする楯無。

しかし、魔理沙はニヤリと笑い先程蹴飛ばしたボードを遠隔操作で自身の下へ引き寄せる。

そしてボードはバーニングマジシャンの背中へと近付き、そのまま磁石が吸い付くように接続された。

 

「今まで言ってなかったけど、スプレッドスター(コイツ)は乗って飛び回るだけじゃなくて、機体の背中にドッキングする事も可能なんだぜ。

スピードは出るけど普段以上に小回りが利かなくなるから、あんまり使う機会が無かったからな。」

 

「だ、だから何よ!?」

 

突然の説明に困惑する楯無に、魔理沙の笑みはより一層深みを増す。

 

「こういう事だぜ!点火(イグニッション)!!」

 

そして魔理沙は楯無を抱えたまま上空へと猛スピードで飛び上がった。

 

「ま、まさか!?」

 

「その、まさかだぜ!!」

 

ココに来て漸く楯無は理解する。

魔理沙と自分が飛び上がった先にはあるのは青空……ではなく、それを遮るアリーナのシールドバリアだ。

 

「ガハァァッ!!」

 

魔理沙の狙いに気づいたその直後、楯無は成す術無くバリアへと頭から強かに叩き付けられた。

 

「が……ぁ……」

 

「言ったろ?詰みだってな」

 

「こ、こんなのって……」

 

脳震盪を起こし、意識が朦朧としかけながら楯無は自身を冷めた目で見詰める魔理沙を睨む。

 

(認めてやるわよ。

アンタは私よりずっと強い、私にもう勝ち目なんて無いわ。

だけど……私がこのまま終わると思わないで! )

 

唇を噛み締め、楯無は残る力の全てを振り絞って体勢を立て直し、魔理沙の右腕を掴んで彼女を逃がすまいとする。

 

「何ィッ!?」

 

「アンタも、道連れよぉっ!!」

 

そして右手に持った蒼流旋に全てのナノマシンを集中させ、それを振りかぶる。

ミストルテインの槍……ナノマシンを一点集中させて攻撃する気化爆弾4個分のエネルギーを持つクリア・パッション以上の大技であリ荒技。

それを楯無は至近距離で使用し、自分諸共魔理沙を爆発に飲み込もうとしているのだ。

 

「喰らえぇぇーーーーっ!!」

 

そして振るわれる必殺の一撃。

“決まった”……楯無はそう確信した。

たとえ魔理沙が槍を避けたとしても、槍が(バリア)に当たった際に生じる大爆発は免れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ!」

 

「っ!?」

 

だが、思わぬ攻撃でそれは阻止され

ミストルテインの槍が繰り出されたその刹那、魔理沙は機体の空いている左腕部のみを部分解除し、生身となった左手……その人差し指と中指を突き出したまま楯無の両目を突いたのだ。

 

「ギャアアアアアアッッ!!目が、目がぁぁぁぁっっ!!」

 

目潰し(サミング)というIS史上前例の無い攻撃に楯無は堪らず手に持った槍を落とし、そのまま両手で目を押さえて悶絶した。

そして、それが決定的な隙となったのは言うまでもない。

 

「今のはちょっとヒヤッとしたぜ。……あばよ」

 

「きゃああああああああああああああ!!!!」

 

ダメ押しにビームバズーカが放たれ、楯無を吹っ飛ばす。

それで終わりだった……。

 

『試合終了ーー勝者、霧雨魔理沙』

 

「ったく、胸糞の悪い試合だったぜ」

 

 




次回予告
魔理沙に手も足も出ず、完膚なきまでに叩きのめされ受け入れがたい現実に打ちひしがれる楯無。
そこにあらわれたのは……。

欠回『再会は拳骨と共に』

魔理沙「冷静さを欠いてなきゃ、あそこまで無様な姿は晒さなかっただろうな」

楯無「私、どうすれば良いの?教えてよ、晴美 」

??「ったく、何年経っても泣き虫なんだから 」

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