東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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お待たせしました。
仕事を満了退職し、遂に完全復活しました!


降り注ぐ厄災(前編)

(な、何が......起きてるの?)

 

目の前に在る悪意に満ちた光の塊を前にして、更識簪の脳内は混乱を極めていた。

自身が思慕の情を寄せる魔理沙、更には彼女が所属する河城重工の者達の大半が人間ではなく、妖怪や魔法使いといった人外の存在であるという事実。

それだけでも十分だが、目の前では天災と称されるISの生みの親がその魔法とやらの

力を以って旅館ごと自分達を吹き飛ばそうとしているのだ。

 

「あ……ぁ……」

 

身動きが取れないどころか、声も出なかった。

魔力を持たず、感じる事も出来ない自分達でも解る程にその力は圧倒的で、決して逃れようも無い絶対的な『死』を感じさせるものだった。

そして、それはセシリアや弾達も同様だった。

目に映る現実味を欠いた光景に思考を奪われ、ただ『自分達はこれから目の前に居る天災の手によって死ぬ』という未来だけを理解していた……いや、させられていたのだ。

 

「や、やめろ!ココには無関係の生徒達も居るんだぞ!?」

 

「…だから何?」

 

千冬の制止の声などまるで意味を成さず、束の手元を離れる魔力弾。

それがより一層強い光を放ち、爆ぜようとしたその瞬間……。

 

 

「変化『百鬼妖界の門』!!」

 

 

ある人物が簪達を庇う様に飛び出し、声高に叫ぶ。

直後に、突如として大広間の床に鳥居が現れ、そこから飛び出す異形の怪物達。

輪入道、ぬリかベ綱切、提灯お化け……日本の怪談話で有名な妖怪が群れを成し、

行進するかの如く飛び出し、束の身体と束の放った魔力弾を天井突き破って上空へと押し上げてしまったのだ。

 

「……とんでもない女子(おなご)じゃのう。

普通の人間ではないとは思っておったが、これ程までに常軌を逸した奴とは思わなんだ。

本当に、万一の備えはしておくもんじゃのう……(わし)自ら出向いて正解だったわい」

 

「の、布仏?…………布仏がスペルを!?」

 

普段ののんびりとした口調と違う、どこか年寄り染みた口調で喋りながら、その少女......布仏本音は束を睨みつける。

 

「あ、アナタ……本音じゃない……誰なの?」

 

「そ、その喋り方って……まさか! ?」

 

最初に反応したのは本音と古い付き合いである簪。

そして本音の口調に聞き覚えのある真耶だった。

 

「もう隠す必要も無いの。真耶、騙していてすまなんだな。儂も妖怪なんじゃ」

 

真耶へ向けた謝罪の言葉の直後に、本音の身体が煙で包まれる。

そして、煙が晴れた直後、現れたのは丸々とした大きな尻尾を持つ妖怪……『佐渡のニッ岩』の異名を持つ化け狸、ニッ岩マミゾウがその姿を見せた。

(※真耶が戸惑っているのは人間に化けた姿しか見た事が無いため)

 

 

 

 

 

「わ〜お、化け狸の大物か。

流石に人を化かすことに長けてるねぇ。束さんでも気づかなかったよ。

……まあ、いちいち気づく必要も無いんだけどね」

 

マミゾウの出現にも全く動じる事無く、上空で静止しながら挑発交じりに余裕の表情を見せる束。

 

「な、何あれ?」

 

「う、浮いている?生身で……」

 

呆然としながら疑問を口にするしか出来ない鈴音とラウラ。

無論、それは他の4人も一緒だった。

 

「しっかりしろ!」

 

『っ!?』

 

しかし、そんな彼女達を千冬の一喝が現実に引き戻す。

彼女は何かを覚悟したように前に出て、右手に魔力の剣を作り出て束を真っ直ぐに睨みつけた。

 

「お前達は今すぐ他の生徒を連れて逃げろ。このままココにいたら確実に死ぬぞ!

文、椛……悪いが生徒達の護衛を頼む。束は私が止める! !」

 

「移送にはバスとスーパーアームを使えば良いわ。

生徒全員バスに詰め込めば2台ぐらいで済むし、後はそれをスーパーアームを使って数人掛かりで持ち上げれば長距離移動も出来るでしょう?」

 

「…………分かりました。皆さん、来てください!」

 

臨戦態勢を取りながら千冬と、それに追従するようにレミリアが指示を出す。

二人の言葉に真耶は暫し困惑したものの、やがて意を決して頷いてセシリア達に指示を出し、その場を立ち去っていった。

 

「さーてと、結果的に邪魔な連中も消えてくれたし、やっと二人でお話できるね。ちーちゃん」

 

「話、だと?」

 

逃げる者達に見向きもせず、束は自身の目の前にやって来た千冬達を見詰めながら妖しく笑う。

 

「お話って言っても、束さんがちーちゃん聞きたい事は一つだけだよ。

ねぇ、ちーちゃん。最後にもう一回聞くよ。ちーちゃんは私の味方?それともいっくんを含めた幻想郷の味方?」

 

不意に束の顔から笑みが……いや、表情そのものが消える。

文字通りの無表情だ……何の感情も想いも、一切を押し殺したかのようなそれは、見る者に一種の恐ろしさを予感させるものだった。

 

「こんな真似をする人間に味方できるとでも思っているのか?

漸く決心がついたぞ……束、私はお前を止める!

それが、例え馴れ合っていただけの関係だとしても、私が友人としてお前にしてやれる唯一の事だ!!」

 

「そう.……残念だなあ。本当に、残念……。

 

 

 

それじゃあ............

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くたばれ、裏切り者! !

 

怒りと憎悪に満ちた言葉と共に、海から無人機の大群が出現した。


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