東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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大変遅くなってしまい、申し訳ありません。

仕事でのミスやココ(ハーメルン)でアカウントロックが1段階になってしまったためモチベーションが下がりまくってました。

ちなみに原因は主に攻撃的な感想との事です。
よってしばらくは他作品へ感想を書くのを控えます。


皆さん、感想を書くときはよく考えて言葉を選びましょう。




あと、今回少しだけオリキャラが登場します。


援軍と二つの心(前編)

 日本国内某所の上空。

複数の人影が千冬達が束と対峙する旅館を目指し、それぞれSW(ステルス装備・戦闘用カスタム)を身に纏い飛行していた。

その先頭に立つのは炎魔のエージェント、アキラである。

 

「チッ……あの船(聖蓮船)があればあっという間なのに、わざわざ飛んでいかなきゃならないとはねぇ」

 

「隊長、アンタのテレポートで行けないの?」

 

 アキラの後を飛ぶ二人の女性がうんざりした様にぼやく。

一人は重工から今回の戦いに志願した星熊勇儀。

そしてもう一人はバイザーをかけた少女……アキラの部下である戦闘部隊隊員・天野晴美(あまの はるみ)である。

 

「愚痴るなよ。あっちは海上の連中(一夏達)の救援だ。

あと、俺のテレポートは術式を刻んだ所以外は短距離しか移動できないんだよ。

それより晴美、何だそのバイザーは?全然似合ってないぞ」

 

「私だって好きでこんなの付けてる訳じゃないわよ。

ただ、約一名顔を見られるわけにはいかない子がいるのよ」

 

 アキラの指摘に苦々しい表情になりながら晴美は返答する。

 

救援部隊の目的地到着まで、あと十数分。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「イィチィカァァァッ!!!!」

 

「っ……箒!?」

 

 命蓮との戦いで漸く有効打を与えたと思った矢先、突如として現れた箒の姿に一夏達は驚くも、そんな事はお構いなしに箒は両手に持った二本の刀を振り上げて三人に襲い掛かってきた。

 

「うわっ!?お、お前何を……」

 

「死ねェ!化け物ォォッ!!ッゥア゛アァァァァァッッーーーー!!!!」

 

 狂気と怒気が入り混じった悪鬼羅刹の如く目を血走らせ、自分の最も近くにいた魔理沙に斬りかかる箒。

福音との戦いの前での彼女との余りの豹変ぶりに一夏達は狼狽を隠せない。

命蓮と戦う前に通信で聞こえた千冬達と束の会話で箒が束に何かを吹き込まれていたのは知っていたが、それを差し引いてもこの狂乱振りは異常だ。

 

「どうしちまったんだよ、箒!?

それに、その機体……専用機はまだ受け取らないって言ってたじゃないか!?」

 

「うるさい……煩い五月蝿いウルサァァァーーーーーイッ!!!!」

 

 横から止めに入る一夏を強引に振り払いながら、箒は絶叫する。

その姿はまるで以前、一夏と仲直りする前までの荒れきっていた頃と…………いや、それを数倍酷くしたような狂乱振りだ。

 

「クソッ!何でったってこんな時に……!!」

 

「やめて、篠ノ之さん!!」

 

「黙れ!お前らが……お前らが!お前らみたいな化け物が!!この、妖怪共がぁぁーーーーーーっ!!!!」

 

 再び殺意を魔理沙と早苗に向けて箒は二人に向きかえる。

そして、それと同時に箒と、彼女が纏っている紅椿が禍々しい光を発する。

 

「お前らが、一夏を変えた……おまえらのセイでイチカハチフユサントアンナタダレタカンケイニ……、

コロシテヤル……オマエラミンナ、コロス!!」

 

「やめるんだ箒!!」

 

 最早意識があるのかさ疑わしい声を発しながら箒は魔理沙と早苗に刀を振るい続ける。

しかし、一夏はそれを止めるべく箒の身体を掴んで強引に動きを封じた。

 

「クッ!……何故だ?何故止めるんだ一夏!?

コイツらは!コイツらのせいでお前は!!」

 

「……千冬姉との事を隠していたのは、俺の責任だ。お前にいくら謝っても謝りきれない。

だけど、千冬姉を選んだのは俺自身の意思だ!魔理沙達は関係無い!!

だから、魔理沙達には手を出すな!恨むんなら俺だけを恨め!!」

 

「っ…………!!」

 

 一夏の叫びに箒は一度目を見開き、やがて動きを止めた。

 

「なんで……」

 

「箒……?」

 

「なんで、そんな事を……言うんだ?」

 

「!?」

 

 振り返った箒が一夏を見詰めるその瞳は、黒く濁りきっていた。

 

「だったら……お前モ敵ダァッ!!」

 

 今まで河城重工の者達を始めとした者達に向けてきた憎悪の視線を遂に一夏に向け、箒と彼女が纏う紅椿から赤黒い光が溢れ出す。

 

「ま、魔力!?」

 

「霊力も感じる!どうなってるの!?」

 

「この、ウラギリモノォォォォッ!!!!」

 

「ぅグッ!!」

 

 驚く周囲を余所に箒は憎悪のまま一夏へと斬りかかる。

一夏は自らも魔力を纏いこれを受け止めるが、箒と紅椿の予想以上のパワーと命蓮との戦いで疲弊した体では力負けしてしまい、ガードした腕へのダメージはかなり大きい。

 

「クッ……やめるんだ、箒!目を醒ましてくれ、頼む!!」

 

「ウルサイィッ!死ネェ!」

 

 一夏の呼びかけにも応じる事無く、箒は刀を振り回す。

最早今の箒にとって一夏は思慕の対象ではなく明確な『敵』として認識されていた。

 

『…め……れ』

 

 だが、同時に彼女の中で異変が起きつつある事を、今はまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「一夏!糞っ、いい加減に……」

 

 一方で、箒の暴走を見かね、魔理沙は二人の間に割って入ろうと武器を構えるが……。

 

「ま、魔理沙さん、危ない!」

 

「っ…うわぁっ!?」

 

 早苗の悲鳴と同時に巨大な水柱が打ち上がる。

そしてその中から現れたのは、先程魔理沙が起こした津波に飲み込まれた命蓮の姿。

津波による攻撃で所々傷を負っているものの、その霊力と威圧感は未だ健在だ。

そして、命蓮は水中から飛び出すと同時にブーメラン型ブレードを魔理沙目掛けて投げ付け、魔理沙はそれを避けきれずに大きくバランスを崩してしまった。

 

「こ、こんな時に……っ!?」

 

 苦々しく苦悶の声を上げる魔理沙の目が大きく見開かれる。

眼前には先程投げたブレードを瞬く間に回収し、今まさにそれを突き立てようとする命蓮の姿が……。

 

「魔理沙さぁぁん!!」

 

(や、やられ……)

 

 オンバシラによる援護も間に合わず、早苗の悲鳴が木霊し、魔理沙は恐怖を感じる事も目を閉じる暇も無く、ただただ刃が振り下ろされる光景を見詰める事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでにしな……!」

 

「っ!?」

 

 しかし、刃が魔理沙を捕らえる間際、一条の光線が命蓮と魔理沙の間を通り、直後に飛んできた一本の杖が命蓮の身体に命中し、彼を吹っ飛ばした。

 

「い、今の、声…………あ、あぁぁっ!!」

 

 混乱する思考の中、魔理沙はたった一つの事実を理解した。

 

「まったく、いつまで経っても世話の焼ける弟子だねぇ」

 

「み、魅魔様!」

 

 己が敬愛する師匠、魅魔が目の前に現れ、自分を助けてくれたという事実に……。

 

 

 


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