東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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遅くなってしまい、その上短くて大変申し訳ございません。
本筋は次は来週か再来週には更新するつもりなので、暫しお待ちを。


悪夢の死闘劇(閑話)

「何故……どうして命蓮が……」

 

 時は一夏達が命蓮と戦い始めた頃に遡る。

何の前触れも無く蘇り、画面に一瞬だが映し出された命蓮の姿に、白蓮はただただ呆然とするしか出来なかった。

 

「生き返らせてあげたに決まってるじゃん?

最近手に入れた駒が良い具合にその手の能力に適合してくれてさぁ♪」

 

 子供のように笑いながら束は『Revival』と書かれたラベルの貼った試験管を見せびらかす。

 

「それは……?」

 

「束さんお手製の魔法薬。

これを飲ませると、あら不思議。飲んだ奴の適正次第で『反魂の能力』が手に入っちゃいま~す」

 

 若干顔を青褪めさせて訊ねるアリスに束はご機嫌な様子で説明する。

そして、それを聞いたアリスの表情がより一層青くなる。

 

「能力を付加する魔法薬!?

材料全てが最高ランクの希少種でしか作れない伝説級の物じゃない!そんな物を作ったというの!?

そ、それに……反魂の魔術は、禁術中の禁術。

どんな狂人や天才と言われた者でも、それを成す事は出来なかったし、

仮に出来るとしても、デメリットが大きすぎて結局は思い止まり断念した程の禁忌!

そ、それを……ウグッ!?」

 

 驚きの余り、早口で捲くし立てるアリスの言葉が急に途切れる。

今までのヘラヘラした様子が急に冷たいものに変えた束の手がアリスの首を掴み、そのまま軽々とアリスの身体を持ち上げてしまったのだ。

 

「ガ…カッ……!」

 

「あーもう、糞ウザイよ……!

狂人?天才?……束さんがそんな井の中の有象無象と同レベルだと思ってんの?

それとも、高々人形動かすしか能の無いありふれたボンクラ魔女には、理解出来ないのか、な!!」

 

「ガハッ!?」

 

 そのままアリスは投げ飛ばされ、壁に激突する。

 

「束、貴様!」

 

 思わぬ暴挙に、千冬は激昂して束に掴みかかろうと手を伸ばすが、その手が束に届くことは無く、簡単に受け止められてしまう。

 

「落ち着きなよ、ちーちゃん。

せっかく特別出血大サービスで、いっくんと命蓮の関係教えてあげようと思ってるのに。

出生の秘密も込みでね♪」

 

「っ!?」

 

 思わぬ言葉に千冬は一瞬硬直し、その隙を突くように束は千冬の腕を振り払い、再び千冬に向き直る。

 

「命蓮(アレ)はね……血縁上で言えば、いっくんの『お父さん』なんだよ」

 

 『父』という言葉に室内の束を覗いた全員に動揺が走る。

 

「ち、父親って……何を言ってるんだ?第一、生まれた時代が違いすぎるだろ?」

 

「そ、そうです!それに、命蓮は生涯独身を貫いていました。

その命蓮に、息子なんて……」

 

 真っ先に反論したのは一夏と命蓮に最も深く関わる千冬と白蓮だ。

その反応を眺めながら束は溜息を吐いて呆れたように首を振る。

 

「だぁかぁらぁ、『血縁上』はだよ。

生まれた場所や結婚暦は一切関係無いよ。

まぁ、一番解りやすい言い方をすれば……クローンだね。

もっと言えば、『ハイブリッド・クローン』って所かな?」

 

「……どう言う、事だ?」

 

 いつの間にか千冬の声は震えていた。

生まれが特殊という事はある程度予測していたとはいえ、まさかそれがクローンだという答えは予想の遥か斜め上を行くものだった。

 

「昔、ある遺伝子学者の女が提唱したプランでね。

過去の偉人や実在した伝説の人物の遺伝子を片っ端から集めて、それを受精卵の中にいる胎児の父親、若しくは母親の遺伝子とそっくりそのまま入れ替えて人工的に歴史上の人物の子供を作ってしまうっていう面白い計画だよ。

そして、聖命蓮の遺伝子を組み込まれて彼の息子として生まれたのが……」

 

「それが、一夏……」

 

 束の口から語られる余りにも壮大、且つ衝撃的な事実に、千冬達はただ呆然と立ち尽くすのみだった。

 

 

 

 


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