東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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告白

 再会を果たし、互いに熱い抱擁を交わし終えた一夏と千冬。

熱い抱擁を終えた頃、泣いていた千冬も今ではようやく落ち着きを取り戻していた。

 

「落ち着いた?」

 

「ああ、すまない……一夏、ココは一体何処なんだ?」

 

 まだ目を赤くしてはいるが千冬はだいぶ落ち着き、一夏に以前からの疑問を問う。

 

「ココは幻想郷……この世の理想郷だよ」

 

 一夏は語る。この幻想郷は自分達の元居た世界の裏側に存在するもう一つの世界、そして人間を含めた全ての種族が種に関係無く共存する世界である事を。

 

「俺は誘拐犯から逃げてる途中で変な光に包まれてこの世界に迷い込んだ。そして魔理沙……さっき千冬姉にスープを持ってきた魔法使いに助けられたんだ」

 

「ま、待ってくれ!さっきから魔法使いとか妖精とか、何を言ってるんだ?」

 

 次々に出てくる非現実的な言葉に千冬は一夏の言葉を遮る。

 

「ん?ああ、確かにいきなりこんなこと言われても信じられないか(俺もそうだったし……)。まぁ、実際に体験した方が早いか」

 

 そう言うと一夏は千冬を抱きかかえる、しかもお姫様抱っこで。

 

「い、一夏!?」

 

「しっかり掴まってなよ」

 

 それだけ言って一夏はベランダに出る。

 

「お、お前何を!?」

 

「飛ぶんだよ!」

 

 そして千冬を抱きかかえたまま、一夏は軽々とベランダの柵を乗り越え、跳躍した。

 

「!!」

 

 あまりにも現実味を欠いたその行動に千冬は驚愕し、思わず目を瞑るがいつまで経っても着地の衝撃が来ない。

恐る恐る目を開くと予想外の光景が目の前に広がる。

 

「う、浮いてる?」

 

 一夏の体は宙に浮き、空を飛んでいるのだ。勿論何の道具も無い生身の状態でだ。

 

「ココでは空を飛べる奴なんてざらだよ。ちょっと魔力や気の類を扱えるようになれば簡単に飛べる」

 

 説明しながら一夏は家に戻る。

 

「納得できた?」

 

「ああ……」

 

 呆然としながらも千冬は頷いた。

 

「それじゃあ、さっきの話の続きだけど……」

 

 それから一夏はこの一年間で起きた事を全て話した。

この幻想郷で出来た新たな友人、スペルカードルールを学び、魔拳を編み出した事、あらゆるものを打ち砕く力を得た事、幻想郷での生活の中で女尊男卑の異常さを知った事。

その話を千冬は静かに無言で聞いていた。時折少し悲しげな表情を浮かべながら……。

 

「ゴメン……千冬姉。俺の勝手で一年間も千冬姉に辛い思いを……」

 

「違う!!」

 

 全ての話を終え、自分に謝罪しようとする一夏の言葉を千冬は遮った。

 

「違うんだ一夏……お前は何も悪くない。お前が危険な目に遭ったのも、世界が狂ってしまったのも……全部、私のせいなんだ」

 

 千冬は震える声を必死に絞り出す。

千冬は必死に心の中にある恐怖心を押さえつける。これは自分の罪なのだ、もう逃げることは許されない。

そう、たとえ一夏から嫌われ、拒絶される結果になったとしても。

 

「白騎士事件で、ISが世界に出て世界を狂わせてしまったあの日、白騎士を操縦していたのは……私、なんだ……」

 

「っ!!」

 

 千冬は遂に告白した。己の罪を……。

それからは千冬の独白だった。両親に捨てられ、自分の境遇を呪った事や束に誘われるままにISを駆り、白騎士事件の共犯になった事など自分の罪を全て告白する。

そして千冬から告げられた真実に一度は絶句した一夏だが、それ以降は一言も喋らぬまま、黙って千冬の独白を聞き続けた。

 

「すまなかった……謝ったって許されない事は解ってる。だけど……」

 

「もう良い……それ以上は言わなくていい」

 

 千冬が声を震わせながら謝罪する中、一夏はそれを制し、千冬の手を優しく握った。

 

「一夏……」

 

「千冬姉と束さんがやった事は、やっぱり間違ってると思う。もし、千冬姉が自分の罪を自覚せずにいたなら俺は千冬姉の事を軽蔑していたかもしれない。だけど、千冬姉はそれに気付いて一年間苦しみ続けた。それに俺の事をずっと守り続けてくれたんだ。俺は許すよ、千冬姉の事」

 

「一……夏……」

 

「でも、千冬姉の罪は多分一生付いて回るし、それから逃げることも出来ない。だからこれからは俺も一緒に背負うよ。千冬姉の罪を」

 

「一夏ぁ…!………ごめんなさい…ごめんなさい」

 

 気が付けば千冬は一夏の胸の中で涙を流し、ただひたすら謝罪の言葉を繰り返していた。

『自分を許す』……ただその言葉だけで心が救われた気分になり、嬉しさの余り涙を零した。

 

 

 


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