東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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長い事間を開けてすいません。

スランプに加え、最近ノベマスにハマってしまい、執筆が進まず、加えて試合が少し長くなりそうだったから前後編に分けました。



あと、楯無ファンの方々……すいません!!(平身低頭)


今を超えろ!!(前編)

 エキシビションマッチ副将戦の直後……、

大将戦まではまだ準備時間が残っているが、開場は副将戦までの興奮が消える事無く残り、観客達は大将戦を心待ちにしている。

そんな中、別の場所では……。

 

「うぅ……ん?知らない天井……………じゃねぇか。

しかし、まさかあそこまで強かったなんて……」

 

 医務室のベッドにて弾は目を覚まし、一先ず先程の試合を思い出す。

追い詰め、後一歩と思った矢先に驚異的な力による反撃を受け、そして敗北……まだまだ目標への道は険しいようだ……。

 

「あ、起きましたか?」

 

「め、美鈴さっ、イデデデ!?」

 

 不意打ち同然な美鈴の登場に思わず飛び起きそうになる弾だが、身体の節々から来る痛みにそれは遮られた。

 

「あ、無理しちゃダメですよ。結構傷酷いんですから。

……怪我させた張本人の私が言うのもアレですけど」

 

 気まずそうに頭を掻きつつ、美鈴は弾をベッドで安静にさせる。

 

「すいません。

……にしても、やっぱ美鈴さんは凄ぇや。強いってのは解ってるつもりだったけど、俺とはものが違うってのが改めて思い知ったよ」

 

「そんな事ありませんよ。実を言うと、最後は本気を出しちゃいました。

正直言うと、いつか本当に負けるんじゃないかって、内心冷や汗かいてますよ、私。

……あ、あと、ですね、その…………デートのお誘いの件、ですけど…………」

 

「!?」

 

 思わぬ言葉に弾は傷の痛みも忘れて身体をビクッと跳ね上がらせる。

 

「あの、そのぉ……私、こういうの初めてで、上手く言えないんですけど、

ふ、不束者ですが……謹んでお受けいたします」

 

「………………………………………………」

 

 顔を真っ赤にしてデートを承諾した美鈴。

その言葉に弾は暫し固まり、やがて…………

 

「う、うぉぉおおおおおおおおお!!!!!やっっっったぁぁぁぁアアアアアアアアアアーーーーーーーっ!!!!!!!!」

 

 凄まじい声量の歓喜の声が響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

『―――――インストール、及び最適化完了』

 

「…………良し」

 

 試合を目前に控える中、簪は打鉄弐式の最終調整を終え、カタパルトを見詰めながらこれまでの訓練や対策に思いを馳せる。

一夏と戦うため、これまで出来る事は何でもしてきた……。

自分の身体能力と得意傾向を知るため、そしてそれを最大限に活かせるようになるために色んな武器や格闘術を試した。

過去の映像資料から一夏のデータを徹底的に見直しもした。

それらは決して無駄ではないと、簪は確信している。

 

「覚悟は決めてる。……だから、もう何も怖くない!」

 

 引き締まった表情で簪は打鉄弐式を身に纏い、カタパルトにて発進準備に入る。

 

『試合開始時刻です。発進してください』

 

「行きます!!」

 

 全身に力を込め、簪はアリーナへと飛び立った。

最早彼女に恐れは無い。今はただ目の前の敵に全力を以って戦う事のみを考えている。

かつて負けを恐れ、自分に自信が持てなかった者の顔は存在しない。

強敵、好敵手との戦いを楽しみ、己の力を研磨する事に価値を見出した戦士……それが今の簪の表情を現す言葉だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、観客席では、多くの観衆が固唾を飲んでいよいよ始まる試合に胸を躍らせる中、簪の姉である楯無は険しい表情でアリーナを睨んでいた。

 

「よぉ、隣良いか?」

 

「!?……アナタは」

 

 そんな中、アリーナを凝視していた楯無に近付き、声をかける一人の少女……霧雨魔理沙。

彼女の姿に楯無は相手に悟られないように目を細めて睨みつける。

 

「何か用?アナタ達ならココじゃなくても専用のモニターが付いた部屋があるでしょう?」

 

「そりゃお前、モニター越しより、生で見た方が臨場感あるだろ?」

 

 楯無の棘の含んだ言葉を気にする事無く、魔理沙は楯無の隣に座り込み、ビニール袋の中から売店で購入したイカ焼きを取り出し、それに齧り付く。

 

「美味ぇ〜〜。お前も食うか?遠慮しなくてもまだたくさんあるぞ」

 

「いらないわよ!」

 

「イカ焼き嫌いだったか?

ま、それは良いとして、簪の姉貴としてはこの試合どう見る?」

 

 腹立たしげに返す楯無を見詰め、魔理沙は本題を切り出す。

 

「どう見るって……分かりきってるくせに。

簪ちゃんには悪いけど、織斑君相手に勝てる見込みは無いわ。

良くて精々SEを2割から4割ぐらい減らせるのが関の山なんじゃないの?」

 

「妹なのに随分過小評価なんだな?

同じ武術部の弾は美鈴相手に本気出させたってのに」

 

 魔理沙の言葉に楯無は額に汗を浮かべる。

先の試合の終盤で見せた美鈴の体術……あれを見れば察しの良い者なら他の河城重工所属メンバーもまだ真の実力を隠していると考えるのが普通だろう。

仮に一夏の本気が美鈴の本気と互角だとすれば、自分でも惨敗してしまうというビジョンまで見えてくる。

 

「……何が言いたいのよ?」

 

「簪は強いぜ。お前が思っているよりずっとな。

そしてこれからもっともっと強くなれる。お前も簡単に抜かれないように気を付けとけよ」

 

「アンタ達が勝手に強くしてるだけでしょう!?

私が簪ちゃんに抜かれる?そんな事あって堪るもんか!」

 

 魔理沙の警告にも似た言葉に楯無は最早不快感を隠せず、声を荒げて魔理沙の胸倉を掴む。

 

「……だから、お前は底が知れてるんだよ。

いつまでも妹を見下せるなんて思ってると、いつか泣きを見るぜ」

 

 楯無の手を引き剥がしながら喋る魔理沙の目は、どこまでも冷ややかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより最終戦、更識簪VS織斑一夏の試合を開始します』

 

 魔理沙と楯無の言い争いなど知る由も無く、簪と一夏はアリーナ中央へ立ち、身構える。

 

「一夏、お願いがあるの」

 

「何だ?」

 

 試合を前に簪は静かに口を開き、一夏もまた静かに応える。

 

「私は最初から全力で行かせて貰う。だから、一夏もその気で来て欲しいの。

…………お姉ちゃんに勝った時みたいに」

 

「……本気で、とは言わないんだな?」

 

「それは試合で出させるから。自分の実力で、絶対に!」

 

 握り拳に力を込め、闘志を燃やす簪。そんな彼女に一夏は笑みを浮かべる。

その瞳には簪と同じく闘志を燃やしながら……。

 

「分かった。後悔すんなよ……」

 

「大丈夫。超えるって決めてるから…………!!」

 

「上等!それでこそだ!!」

 

 好戦的な笑みを隠さずに一夏はDアーマーを展開して身構え。それに呼応して簪も夢現を構える。

そして……。

 

『試合開始!!』

 

 エキシビションマッチ最後の戦い……その火蓋が今、切って落とされた!!

 

 


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