生まれた時から、自分には家族というものが存在しなかった。
軍によって戦うために生み出された試験管ベビー……それが自分、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。
兵器として生まれ、育てらた自分にとって戦う力こそが存在意義……。
それに疑問を感じた事は無い……だが、そこに温もりが無かったのは確かだ。
だが、そんな自分にも温もりを知る出来事があった。
事のきっかけは、普段眼帯で覆い隠している片目……ナノマシン処理された義眼『ヴォーダン・オージェ』だ。
IS適正を上げるために作られた義眼……理論上は100%適合するはずだったこの目が自身の身体に合わず、結果として自分は部隊随一の優秀な兵士から落ちこぼれへと転落した。
そんなどん底にいた自分を、ドイツ軍に出向していた織斑千冬は救ってくれた。
落ちこぼれと蔑まれる中、彼女は自分を真っ直ぐに見てくれた。
そんな彼女から指導を受け、自分は部隊最強の座に返り咲き、シュヴァルツェア・ハーゼの隊長にまで上り詰める事が出来た。
千冬は決して自分を兵器や道具としては見ない。一人の人間として接してくれた。
それは今まで戦う事しか知らなかったラウラにとって新鮮過ぎるものだった。
故に、ラウラは千冬に憧れ、尊敬し、慕った。
生まれて初めて暖かさを教えてくれた存在にラウラは心を奪われ、それはやがて崇拝の域に達した。
そんな自身にとって神にも等しい千冬が弟である織斑一夏の喪失を嘆く姿だけは見るに耐えなかった。
千冬にとっての一番は自分ではなく一夏だと言われているようで……無償に腹立たしかった。
自分は死人にも劣る存在なのかと何度も自問した。
だが、同時に一夏がもういないのであれば自分が千冬の支えになる事が出来る……それは即ち、自分は千冬の家族になれるという悪魔の誘惑だったのかもしれない。
千冬が日本へ戻った後も、その願いを糧にし続けたラウラだったが、そんな中耳に入った二つの凶報。
一つ目は千冬の行方不明……それを聞いた時はわき目も振らずにISで日本へ向かおうとしてシュヴァルツァ・ハーゼの全隊員に無理矢理止められたのは記憶に新しい。
そして二つ目……行方不明になっていた千冬が再び姿を現した、そこまでは良い。
しかしそこ死亡した筈の織斑一夏まで生き返ったという事実にラウラは憤った。
折角千冬と再会出来るのに、自分は最早千冬の支えになる事は出来ないという事実を突きつけられたも同然だった。
故に、ラウラ・ボーデヴィッヒは織斑一夏を妬み、憎んだ。
それから先は一夏を潰すために動き続けた。
しかし、編入初日に宣戦布告の一撃を喰らわせようとした自分は逆に組み伏せられ、模擬戦では惨敗……挙句には何の興味も無い存在だった犬走椛から痛烈な批判を受ける破目になった。
兵器をファッションにしか見てない周囲への苛立ちもあり、ラウラは日に日に怒りを募らせ、武術部を襲撃するに至った。
だが、その結果は無様な敗北と暴走の果てに終わった。
(私は……どこで何を間違えた?)
気が付けばラウラは闇の中にいた。
真っ暗で自分以外に何も無い黒い空間の中、たった一人立ち尽くす。
「私は……何がしたかったんだ?」
答える者などいない筈なのに自然と問いが自身の口から出る。
『これだ、この力だ!!これこそ私が求めていた力だ!!!!』
(こ、この声は……)
不意にどこからか鳴り響く狂った声……その言葉を聴いてラウラは絶句する。
それは先の戦いで自分が言った言葉と全く同じもの……つまりこの声は。
(わ、私の……声?)
『喜べ。貴様はこの私による粛清の第一歩だぁーーーーー!!!!』
再び響く耳障りな声。
自分がどれだけ狂っていたのかを改めて認識させられる狂気に満ちた声だ。
(や、やめろ……やめてくれ!)
『ギャアアァァァァッ!!!!』
断末魔の叫びと共に視界が黒から赤に染まる。
そして目の前には血まみれで倒れる襲撃グループの一員である少女の姿。
『アハハハハハ!!死ね!死んで後悔しろ、クズ共ぉぉ!!』
「や、やめろぉっ!!やめてくれぇぇっ!!私は、私はそこまでするつもりは無かったんだ!!」
狂気に身を任せてがむしゃらに力を振り回す己の姿にラウラは叫び声を上げる。
しかしそれは何の意味もなさずに周囲には亡骸だけが増えていく。
「カッ……!?」
突然背後から何かが己の身体を貫く感覚を覚える。
「……え?」
突然の事に困惑し、自身の胸を見下ろす。
そこからは一本の刀が生えていた……そしてその刀の持ち主は。
「この、人殺しが……」
「犬、走……?」
犬走椛……自分を叩きのめした一人。
その彼女が先の戦い以上に憎しみの視線を送って自分を睨みつけている。
「ち、違う……違うんだ。私は……ここまでする気は……」
「……だが、この力を欲したのはお前……選んだのは、お前自身だ」
椛の姿は一夏の姿へと変わり、ラウラへの糾弾をより強くする。
「……これで満足か?千冬姉の恥晒しである俺にも勝てず、八つ当たりでこんな真似した薄汚ぇクズ野郎が!!」
「ウアァァァァアァァーーーーーーーーーーッッ!!!!!!」
目の前の一夏から放たれた言葉にラウラは絶叫し、直後にラウラの世界は闇一色に染まった。
「……ハッ!?」
絶叫し、目の前が真っ暗になった後、ラウラは悪夢から現実に引き戻される。
全身から噴き出る嫌な汗が現実を認識させる。
「わ、私は……私は……」
そして興奮と暴走が消え失せ、冷静さを取り戻した頭は自身の行いを改めて認識させてくる。
気が付けばラウラは自分の両手を見つめて震え始める。
「あ、あぁぁぁぁ……!!」
取り返しのつかない事をしてしまった……混乱しそうな頭でそれだけは理解する。
機体の暴走があったとはいえ、何人かの生徒を負傷させ、挙句には殺人未遂にまで及んでしまった……自分のしでかした事は重大だ。
「ア゛ア゛ァアアアアァァァァァッッッ!!」
今度は現実で絶叫する。
ラウラはこの時、自分の犯した過ちを痛烈に後悔していた。
救助された生徒達(負傷者除く)が集められた会議室では、殺伐とした空気が漂っていた。
ある者は先程の戦闘での恐怖が頭から離れず震え続け、
またある者は自分達が受けるであろう処罰に頭を抱える。
襲撃グループの者達に最早逃げ場など無かった。
自分達を手引きし、訓練機の使用記録を改ざんしてくれた味方(女尊男卑主義)の教師は既に不正行為の証拠をあっさりと掴まれた挙句、先程千冬に叩きのめされ、ズタボロの姿で自分たちの目の前に転がった。
その際の千冬の形相を見れば彼女の処分はコレだけでは終わらないという事は嫌でも理解出来る。
それはつまり、自分達の受ける罰も大きいという事……それを察した時、襲撃グループの女子達は全員絶望のどん底に落とされた。
「……ふむ、大体分かった。取り敢えず、暫くこの事件の詳細は他言無用で頼む」
「了解ッス」
「分かりました」
「畏まりました」
逆に襲撃された側である弾達は、勝敗や被害率はどうアレ、法的には被害者側に当たるため、ある程度の取調べと情報規制を命じられる程度で済んでいた。
(さて、一夏達は概ね五反田達と同じとして、あとはコイツら(襲撃グループ)の処遇だが……)
千冬は考えを切り替え、絶望に震える女子達を見下ろして表情を厳しくする。
しかし、その時……
「お、織斑先生!大変です!!すぐに来てください!!」
普段以上に慌て、血相を変えた真耶が室内に駆け込んでくる。
緊急事態だというのは誰が見ても明らかだ。
「どうした?」
「ボーデヴィッヒさんが…じ、自殺しようとしてるんです!!」
「何だと!?」
「や、やめてボーデヴィッヒさん!!」
「お、落ち着きなさい!!」
「離せ!離せぇっ!!」
割れた花瓶の破片を握って自身の身体に突き刺そうとするラウラを保健医と監視を担当している教師が必死になって取り押さえようとするが、軍事訓練を受けているラウラの腕力は思いのほか強く、何度も振り放されそうになる。
「離してくれぇ!!私は、私は……取り返しのつかない事を…………もう教官にも、祖国にも合わせる顔がないんだぁ……」
目から滂沱の涙を流し、ラウラは戦闘での負傷も気に留めずに保健医達を振り払って自身の喉下に花瓶の破片を突きつける。
だが、そこに何処からか小石らしきものが飛び出し、花瓶を持ったラウラの手に直撃してラウラは花瓶を床に落としてしまった。
「痛っ!?……何が?」
「さっきから騒がしいですね。うるさくて治療に専念できないじゃないですか」
「犬、走……!」
小石を投げた者の正体は椛。
先の戦闘で骨折した腕をギブスで固定し、三角布で吊るしているが雰囲気や覇気は戦闘前と全く変わらない姿でラウラの前に姿を現し、静かに近づいてラウラを見据える。
「犬走………殺してくれ」
現れた椛に対し、ラウラは涙を流し続けながら懇願する。
「…………」
そんなラウラを見下ろし、椛は無言のまま冷めた視線を向ける。
「取り返しのつかない事をしてしまった……もう私には生きる価値も無いんだ。
だから頼む。私を殺してくれぇぇ……」
絶望と失意だけしか残らぬ表情で椛に縋り付くラウラ。
そんな彼女に椛は静かに空いている腕を振り上げ、そして……勢いよくラウラの頬を張った。
「ッ!?」
「いつまで甘ったれてりゃ気が済むんですか、アナタは?」
視線を冷めたものから鋭いものへ変え、椛は静かに言い放つ。
平手で頬を打たれたラウラは尻餅をつきながら呆然と椛を見つめることしか出来ない。
「アナタが自殺しようが泣き喚こうが私の知った事じゃないです。だけどアナタ一人死んだだけで何が解決するんですか?
結局アナタ一人が死んでもアナタが閻魔様の下に行くだけで、残りの後始末は全部学園とドイツ軍に丸投げ。本気で反省してるんなら迷惑掛けた人達に土下座して回る覚悟でもした方が有意義なんじゃないんですか?」
「う……うぅ……」
「いつまでも私情だけで動いてないで、自分のやるべき事を考えてみたらどうですか?
自分の感情を無視しろとは言いませんが、組織の一角である軍人たる者、己の感情と理性を上手く使い分けてこそでしょう?」
言いたい事を言って椛はラウラに背を向けて医務室を後にする。
医務室内には嗚咽を漏らすラウラと呆然とする教師と保健医の3人が残された。
「すまない。世話を掛けてしまったな、椛……」
医務室を出た椛を千冬は出迎え、声を掛ける。
「私の事より、さっさと彼女の所へ行ってください」
「ああ……いい加減、私も向き合わないとな」
自嘲気味に呟き、千冬は医務室へ入っていった。
「っ!き、教官……」
「「織斑先生!?」」
医務室に入ってきた千冬の姿にラウラ達はそれぞれ驚きの表情を浮かべる。
「……済まないが、ボーデヴィッヒと二人きりにさせて貰えないか?」
「は、はい……」
千冬からの頼みに保健医と監視役の教師は二つ返事で了承し、医務室を後にする。
「……ボーデヴィッヒ」
「教官……わ、私は……」
二人きりとなった医務室の中、文字通り合わせる顔が無いとばかりにラウラは千冬から目を逸らす。
そんなラウラに千冬は何を言うわけでもなく静かに歩み寄り、そして……
「すまなかった!」
突如として千冬はラウラの目の前で膝を突き頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
土下座である……世界最強と名高い織斑千冬が一代表候補でしかない教え子に対して土下座をするなど、本来あっていい光景である筈がない。
「え……え?」
一方ラウラはラウラで目の前の光景に唖然とし、金魚のように口をパクパクと動かすことしか出来ない。
「お前には、全て話す……私がお前に慕われる資格なんて無い、その理由を……」
土下座の姿勢を崩さず、千冬は静かに白騎士事件の真実を語りだす。
それはつまり、自分自身がISの進出、そしてヴォーダン・オージェが開発される切っ掛けであるという事を。
「私があの時、束を止めさえしていれば、お前にヴォーダン・オージェが移植される事も無かった。
お前が部隊の落ちこぼれになる事も無かった。
全ては私と束の責任だ!私はお前を落ちこぼれにした元凶も同然なんだ!!
それなのに私は今までそれを隠し、お前の心を弄び続けた!!
今更許してくれなんて言わない。……だけど、頼む!これ以上過去に囚われて不幸にならないでくれ!力だけが自分の価値だ何て思わないでくれ!頼む!!」
千冬は頭をより一層深く下げ、床に頭をこすり付ける。
一方ラウラは千冬の言葉に耳を疑い、ただ呆然と千冬を見ている。
もうその目に涙は無い……あるのは驚愕から来る虚無感だけだ。
「教、官が……白、騎士……?……私を、落ちこぼれにした、張本人……?
……う、……ウ…………うっ…………………ウアァァァァァァァアアァァァァア!!!!!!」
絶叫と共にラウラは千冬に飛び掛った。
「嘘だったのか!?全部嘘だったのか!?
私を真っ直ぐ見てくれたのも!鍛え上げてエースに返り咲かせてくれたのも!!
全部……全部嘘だったのか!?」
「グッ……ぅぅ…………」
馬乗りになって自分を何度も殴り続けるラウラの言葉に、千冬は何も答えられない。
言葉にすればどんな言葉も嘘になる……あの時の自分は一夏を失った悲しみで頭が一杯で、その悲しみを紛らわすためにドイツ軍へ出向したといっても過言ではない。
だが、当時のラウラの姿に、落ちぶれてしまった自分の姿をダブらせ、助けてやりたいと思っていたのも事実だ。
「何とか言えぇぇっ!!言い訳ぐらいしろぉぉっ!!何泣いてるんだぁぁ!?」
気が付けばラウラも、そして千冬も泣いていた。
「ハァハァ……卑怯だ………アナタは卑怯だ!!
今更そんなこと教えられて、そんな顔されて……今更どうやってアナタを憎めというんだ!?」
いっその事千冬が下衆な悪党だったら良かった。敵対でもしていればまだ良かった……。
そうすれば自分は心置きなく千冬を憎む事だって出来た。
だが今の千冬の顔を、千冬の涙を見て……千冬が本気で泣いている姿を見て、それでも千冬を憎む事が出来るほどラウラは図太くも非情でもなかった。
その上、理由はどうあれ自分に温かみを感じさせてくれた相手を憎めなかった。
「…………もう、アナタを教官とは呼びません」
「…………」
ひとしきり殴り終えた後、ラウラは千冬に背を向けて静かにそう言い放った。
千冬はその言葉を聞きながら自嘲的な表情を浮かべる。
元々期待などしているわけではなかったが、やはり面と向かって決別の言葉を受けるというのは辛いものがある。
「……ただ」
「え?」
不意に出てきたラウラの言葉に、千冬は思わず顔を上げラウラの背中を凝視する
「ただ……少しでいい、少しでいいから……生徒としてでも良いから…………私の事、ドイツにいた頃みたいに、見てください」
「………ああ…!」
ラウラの声は震え、泣いていた。
顔は見せていないが泣いている事は十分に解る声だった。
そんなラウラを千冬は後ろからゆっくり、そして優しく抱きしめたのだった。
翌日、襲撃グループおよびラウラ・ボーデヴィッヒの処罰が決定した。
襲撃グループに関しては未遂とはいえ集団リンチという悪辣な行為に及ぼうとした事により、率先して参加した11名が退学。
残りの者……弾から逃げようとしてラウラに撃墜された二人の女子を始めとする4名は半ば強引に参加を強制された部分があるという事実が判明し、多数の反省文と停学処分となった。
ただし、この4名は周囲からのバッシングやいじめを恐れ、反省文を書いた後、武術部に謝罪した直後に自主退学。
グループを手引きした教師に関しては、千冬から物理的な制裁を加えられた後、懲戒免職及び、教育委員会から破門状を突きつけられた。
そしてラウラ・ボーデヴィッヒ。
後の調査でシュバルツェア・レーゲンに条約で禁止されている『VTシステム』が搭載されていた事とそれがハッキングされていた事実が判明した(なお、ハッキングの犯人は判らずじまい)。
ただし、椛への攻撃意思、学園と襲撃グループへの実害はかなり大きく無視出来ないもののため、学年別トーナメントへの参加を停止と反省文100枚。及び臨海学校の準備期間に入るまで停学処分。
ドイツ軍においては、部隊長資格の剥奪と2階級降格処分が決定された。
それぞれの処遇が決定したその日の朝、朝連中の武術部に、千冬に連れられた一人の来訪者の姿があった。
「ボーデヴィッヒ、さん?……何でココに?」
思わぬ来訪者にやや呆然としながらセシリアが尋ねる。
それに対してラウラは神妙な態度で一歩前に踏み出した。
「先日の一件、どうしても謝っておきたくて、
教官……いや、織斑先生に無理を言って来させてもらった。
あれから色々と考えて……私がどれだけ身勝手な事をしていたか、少しは理解したつもりだ。
本当に、すまなかった!」
そして一夏、椛、セシリア、簪、弾をそれぞれ一瞥し、ラウラは深々と頭を下げて謝罪した。
その表情は先日までの苛立ちに満ちた表情ではなく、どこか憑き物が落ちたような表情だった。
「犬走、お前の言うとおり、私は軍人として失格だった。今回の一件でそれがよく解った。
シュヴァルツェア・ハーゼの……私の元部下達にも昨日の夜に通信越しではあるが謝罪してきた。
だから、勝手な願いかもしれないが停学期間が終わったら、私も武術部に入れてもらえないか?もう一度、一から自分を磨き直したいんだ!」
しっかりと頭を下げ、ラウラは自身の願いを口にする。
そんな彼女の言葉に一夏達は快活な笑みを浮かべる。
「俺は構わないぜ。お前、根性ありそうだし」
「前のお前ならともかく、今のお前なら上手くやっていけそうだしな」
「以前から、軍人の動きも参考にしてみたいと思っていましたので、丁度良いですわ」
「……早く処罰、済ませてきて。アナタとも戦ってみたい」
一夏、弾、セシリア、簪はそれぞれ快諾の意思を見せ、他の者達も『来る者拒まず』といった態度を見せる。
「あ、あと……これは、個人的な頼みなんだが……い、犬走……いや、姉御!!」
「へ!?あ、姉御……?」
突然の変な方向な呼ばれ方に椛は思わず間抜けな声を上げてしまう。
「アナタの戦いぶりと心構えは軍人としても、パイロットとしても尊敬に値する。
だ、だから……舎弟にしてください!!」
ラウラの思わぬ言葉とぶっ飛んだ展開に武術部内が一気に愕然とする。
たった一人……椛当人を除いては。
(姉御……姉御……何て、何て甘美な響き!!)
椛は口から涎を垂らしながら恍惚の表情を浮かべていた。
元々哨戒担当という低めな地位にいた椛にとって舎弟という存在と『姉御』と呼び慕われるという事に慣れていない事もあり、ラウラの言葉は目茶苦茶刺激的だったのだ。
「も、もっと呼んでください」
「はい!姉御!!」
「……もう一回!」
「姉御ぉ!!」
こうして、何とも奇妙な舎弟関係が生まれたのであった。
次回予告
学年別トーナメントを翌日に控え、弾達3人と鈴音を始めとした出場者達は上位入賞を目指してそれぞれ準備に入る。
一方で束はある目的のため、動き始める。
そして箒は……
次回『目標への道』
弾「俺と戦って、アンタを認めさせることが出来たら……」
束「……手に入れてきたいものがあるんだよ」
箒「姉さん……頼みがある……!」