東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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今回は前後編に分けました。


二人の強者に迫る悪意(前編)

 1組と4組の試合も大将戦を残すのみとなり、一夏と魔理沙はそれぞれ出撃準備に入る。

 

 

Bピットでは……

 

「魔理沙、頑張ってね」

 

「おう!行ってくるぜ!!」

 

 モジモジと照れながら応援の言葉を掛ける簪に魔理沙は気風の良い笑顔で応えた。

 

(……嗚呼、立場上いけない事と解っていても一夏さんの応援に行きたい)

 

 

 

Aピットでは

 

「何でアナタがココに居るの?早苗」

 

「応援です♪一夏君に声だけ掛けたら戻りますのでご心配なく」

 

 お互いに黒い笑顔を浮かべながら咲夜と早苗は互いを牽制しあう。

そんな二人をセシリアは呆然と、一夏は気まずそうに見ていた。

 

『試合開始一分前です。出撃をお願いします』

 

 そんな中救いの声のように響くアナウンス。

それを聞き一夏はそそくさと出撃しようとするが……。

 

(チッ……仕方ないわね、今回は特別に見逃してあげるわ。ただし右は私が貰うわよ)

 

(なら私は左側を……)

 

 時間的にヤバくなってきたので二人は一時休戦し、一夏に駆け寄る。

 

「「一夏(君)」」

 

「え……!?」

 

 一夏が振り向くと同時に咲夜は一夏の右の頬、早苗は左の頬にキスをした。

 

「「頑張ってね♪」」

 

「お、おう……」

 

 赤面しながら一夏はアリーナへと向かった。

 

(お姉様、私はアナタを応援しますわ!お姉さまと一夏さん……嗚呼、何とお似合いなベストカップルなのでしょう)

 

 セシリアは自分の世界に旅立っていた。

 

 

 

そして管制室では

 

「…………」

 

「あ、あの織斑先生……なんでさっきから壁を……」

 

 千冬は無言のまま壁を殴り続けていた。

 

「すまん、何か無性に腹が立つんだ」

 

(うぅ……怖い。助けて***ウさん)

 

 逃げ場の無い状況に真耶は心の中で故郷の古い知人に助けを求めた。

 

 

 

「ふぇっくしょい!……誰か儂(わし)の噂でもしとるのかのぉ?」

 

 

 

 

「魔理沙、俺との戦績忘れてないだろうな?」

 

「ああ、私の25勝17敗だろ?」

 

「その内5勝は俺が駆け出しの頃だろ。今回は俺がいただくぜ」

 

「そいつはどうかな?逆に差を広げて吠え面掻くなよ」

 

 アリーナに出て早々お互い強気な表情を浮かべて一夏と魔理沙は対峙する。

 

(しかし、河童の奴等ISまで私のスタイルに合わせてくれるなんて、本当に良い仕事してくれるぜ)

 

 自身の纏うISに魔理沙は感心する。

霧雨魔理沙専用機『バーニングマジシャン(爆裂の魔術師)』はアンロックユニットはおろか単体での飛行能力を持たず、ボード型の飛行ユニット『スプレッドスター』に乗る事によってサーフィンのように飛行することが可能になっている。

これは魔理沙が箒(言わなくても分かるが掃除用具の方)に乗って戦うスタイルを考慮して作られたものだ。

 

『試合開始!』

 

 アナウンスによって告げられる試合開始の合図。

開始直後に魔理沙は2本のビームバズーカ『レヴァリエ』を展開して一夏目掛けてぶっ放す。

 

「っ……開始早々派手にやりやがるぜ」

 

「派手なのはこれからだぜ!」

 

 回避する一夏に先回りし、魔理沙は肩に装着されたレーザーカノン『イリュージョン』を連射して一夏の背後にレーザーによる射撃を浴びせる。

 

「うおぉぉっ!?」

 

 想像以上の魔理沙のスピードと連続攻撃に一夏の口から驚愕の声が漏れる。

スプレッドスターの最大の利点はその速度にある。

重火力機であるバーニングマジシャンの持つ本来の機動性は決して高くない。

しかしスプレッドスターという高速移動の手段を得ることにより高機動と重火力という二つの両立に成功したのである。

 

「そら、もう一発!!」

 

「嘗めんな!!」

 

 怒涛の勢いでレヴァリエによる追撃を喰らわせようとする魔理沙だが一夏も黙ってやられているだけではない。

 

「コイツ(Dアーマー)にはこういう使い方もあるんだ!」

 

 迫り来るビームを前に一夏はまっすぐに腕を伸ばし、掌を突き出してビームを防いだ。

 

「おいおい、そんなの有りかよ?」

 

「有りなんだよ。特殊装甲嘗めんなよ!」

 

 驚く魔理沙に今度は一夏からの攻撃が飛ぶ。

レミリアとの戦いで見せたワイヤー付きロケットパンチだ。

 

「おぉっと!?こんなのに捕まっちゃ堪ったもんじゃないぜ」

 

 一夏のパワーを十分理解している魔理沙は即座にワイヤーの射程範囲外に逃げるがそれを見て一夏はニヤリと笑う。

 

「まだまだ!」

 

 直後にナックルから指の部分のみが切り離されて射出される。当然指もワイヤー付だ。

 

「ゲッ!マジかよ!?……!!」

 

 驚愕しながらも魔理沙は紙一重で指弾を回避するが直後に魔理沙の眼前に大きな足に似た何かが現れ、回避も間に合わず右肩にそれが叩き込まれる。

 

「アグァッ!?あ、足にまで……」

 

 魔理沙に直撃したのは両手同様にワイヤーを装着したDアーマーの足の部分だった。

ロケットパンチならぬロケットキックとでも言うべきだろうか……その威力はかなりのものでシールドエネルギーが防御したにもかかわらず魔理沙の右肩に鈍い痛みが残る。

 

「ったく、何でもかんでもワイヤー付けやがって……千冬相手に縛りプレイでもやってんのか?」

 

「(ギクッ)……余計な口叩いてる場合かよ?仕切り直しと行こうぜ」

 

 図星を隠しながらワイヤーを手繰り寄せてDアーマーを再度装着してファイティングポーズをとる一夏。それに呼応して魔理沙も接近戦用の西洋剣型ブレード『スターダスト』を展開して構える。

 

「行くぜ!一夏!!」

 

「ああ!」

 

 二本のビームバズーカをスプレッドスターに装着させ、凄まじい加速力で魔理沙は一夏に突撃する。

 

「行っけぇぇ!!」

 

「うぉおおおおお!!」

 

 突撃する魔理沙と迎え撃つ一夏、二人がぶつかり合うその刹那会場内に轟音が鳴り響く。

 

「「!?」」

 

 しかしそれは一夏達からではなくアリーナの上空、シールドを突き破り現れた『それ』は無機質な人の形をした機械人形だった。

 

 

 


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