東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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激突!一夏VSレミリア!!

 第一試合が一夏の完勝に終わった直後、一夏は気絶したセシリアを控え室に連れて行き、その場に寝かせて機体のエネルギーを補充した。

補充と言っても殆どエネルギーを使用してないので(攻撃や高速移動等で武器エネルギーを少し使用した程度)補充したエネルギーは微々たる量だったが……。

 

(まさかレミリアとこんな形で戦うことになるなんてな……楽しみだぜ)

 

 補給が済んですぐに一夏はレミリアの待つアリーナへ出撃した。

 

「……ねぇ、千冬」

 

「織斑先生だ。何だ一体」

 

「お嬢様(主人)と一夏(想い人)、私はどっちを応援すればいいのかしら?」

 

 出席簿を咲夜目掛けて振り下ろしながら応対する千冬に咲夜は避けながら自分の葛藤を吐露する。

 

「知るか。自分で決めろ」

 

(お、織斑先生を呼び捨て……河城重工の人達って一体……)

 

 そんな会話があったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 そしてアリーナでは一夏とレミリアが相対し、臨戦体勢に入っていた。

 

「お前とは一回ガチで戦ってみたかったんだ。本気で行くぞ、レミリア!!」

 

「咲夜を虜にしたアナタの実力、見せてもらうわ!!」

 

 お互い好戦的に笑い合い、それぞれのISの武装を展開する。

一夏はDアーマー、レミリアは真紅のビーム展開装置付突撃槍『グングニル』を構え、互いに少しずつ距離を詰め合う。

 

「楽しみましょう。この最高の戦闘(あそび)を!」

 

「ああ!!」

 

 二人が声を発したその刹那、両者は一気に間合いを詰め、拳と槍がぶつかり合う。

 

「クッ……」

 

「チィッ……」

 

 武器を伝わってくる衝撃に一夏とレミリアは互いに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

(なお、ダークネスコマンダーのDアーマーは対ビームコーティングが施されており、多少傷は付いたものの破壊されてはいない。)

 

「ハァッ!」

 

「甘い!」

 

 直後にレミリアはグングニルを再度振り一夏を攻撃するが、逆に一夏は迫り来るグングニルの柄の部分を掴み、それを軸に回転するように跳び上がりレミリア目掛けて蹴りを放つ。

 

「グゥッ!」

 

 反射的に身体を反らせ、レミリアは致命的なダメージを防ぐも一夏の蹴りはレミリアをの身体を掠め、スカーレット・コンダクターのシールドエネルギーが削られる。

しかしレミリアもただやられるだけではない。一夏の攻撃を受けると同時に投擲用小型円盤型カッター『スカーレットシュート』を一夏目掛けて投げつける。

 

「痛っ!?」

 

 攻撃の直後という事もあり完全に避けることが出来ず、一夏もまたダメージを受けてしまう。

 

「甘いのはお互い様のようね」

 

「ああ……我ながら修行が足りないなって思うぜ」

 

 レミリアの皮肉に一夏は苦笑いしながら答える。

直後に二人は再び距離を取って構え直す。

 

「「仕切り直しだ(よ)」」

 

 この間僅か1分にも満たない戦いだった。

先のセシリア戦とは違い静かではあるが見るもの全てを魅了するハイスピードバトルはまだ始まったばかり……。

 

 

 

 

 

「何、ですの……あの二人は?」

 

 控え室のベンチの上で目を覚ましたセシリアの目に映ったのは圧倒的な戦闘力を以ってぶつかり合う一夏とレミリアの姿だった。

モニター越しでも分かってしまう……少し前に一夏が自分と戦っていた時、確実に手加減していた事、そして自分と彼等の力量差に……。

 

「あ、あんな人達を相手に私は……」

 

 セシリアは自分の声が震えている事に気付く。

自分はとんでもない怪物に喧嘩を売ってしまった……いや、それだけならまだ良い。

問題はその時勢いで受けてしまった賭け……。

 

『う、受けますわ!!だったら私は代表候補の座とこのブルーティアーズを賭けますわ!!』

 

 そう、あの時自分は観衆の目の前でそう宣言した。つまり言い逃れは絶対に無理!

この後に控える咲夜、レミリアとの戦い、それに負けてしまえば自分はもう代表候補ではいられなくなってしまう。

 

「あ…ア゛ァァァァ!!」

 

 絶望が叫び声となって部屋中に鳴り響く。

セシリアは自分の傲慢と慢心を今、心の底から後悔した……。

 

 

 

「す、凄い……」

 

 セシリアが控え室で震える中、観客席では別の意味で身体を震わせるものがもう一人居た。

 

「やっぱりまぐれなんかじゃない、彼があの人に勝てたのは……!」

 

 彼女は一年生(河城重工メンバーを除く)の中で『織斑一夏は編入試験の際に更織楯無を負かした』という噂が事実である事を知る数少ない者だった。

ずっと目標にしていた存在であり、自分のコンプレックスの源である姉……その姉を打ち負かしたという男、織斑一夏。

最初にそれを聞いた時何かの間違いではないのかと思ったがこの戦いを見ればそんな疑念は一瞬で吹き飛んでしまう。

彼の強さの秘密が知りたい、彼の強さが羨ましい……そして彼のように強くなりたい。

 

「彼の下に行けば、私も強くなれるかも……」

 

 1年4組クラス代表補佐、更織簪は希望を見つけたかのような表情でポケットから一枚のチラシを取り出す。

そこには『武術部員募集』という文字が書かれていた。

 

 

 

 

 

「喰らえぇぇっ!!」

 

「落ちなさいっ!!」

 

 先ほどの接近戦とは一変し、戦いは遠距離からの撃ち合いに変化していた。

一夏はDガンナーによる高威力の砲撃にレミリアは両肩に装備されたレーザー砲『ダビデ』による連射で応戦する。

 

「いくら威力があったって、そんな連射の利かない武器で私に当てることが出来るかしら?」

 

「そっちこそ、連射は利いても威力の低いレーザーで俺を倒そうなんて、片腹痛いぜ!!」

 

 互いを皮肉り合いながら一夏とレミリアは撃ち合いを続ける。

二人の射撃は他の生徒から見れば途轍もなく正確且つ回避困難な射撃に見えるが二人はそんな射撃を回避し続けている。しかも自分側の攻撃の手を全く緩めずにだ。

一体どれだけの才能を持ち、どれだけの訓練を積めばこれほどの攻撃と回避が可能になるというのか?

文字通り別次元の強さだった……。

 

(このままじゃお互いジリ貧だな……)

 

 撃ち合いを続けながら一夏は内心で毒吐く。

お互い回避の甲斐あって致命的なダメージは防いでいるものの、それでもダメージが皆無という訳ではない。

このまま撃ち合いを続けてもどちらが先にシールドエネルギーが尽きるか分からないし時間内に決着がつかない可能性も高い。

 

「なら、そろそろ仕掛けるか!」

 

 意を決して一夏はDガンナーによる射撃を続けながらレミリアとの距離を詰める。

 

「行っけぇぇーーーー!!」

 

 ある程度近付き、一夏はDガンナーをフルチャージで発射する。

 

「そんなもの当たらなければどうって事ない!」

 

 だがそれを黙って喰らうほどレミリアはお人好しではなく、いとも簡単にそれを回避する。

 

「まだまだぁ!」

 

 しかしレミリアが回避した直後、一夏はレミリアの真正面から右手のDアーマーそのものをレミリアの顔面目掛けて射出した。

 

「!…ロケットパンチ!?」

 

 まさかの攻撃方法にレミリアは一瞬面食らうがすぐに正気を取り戻して即座に身を捻って回避する。

 

「っ!?」

 

 しかし回避したはずのレミリアは目を見開いて驚く。

先程までは自分の視線の真正面にあったため気が付かなかったが一夏の飛ばしたDアーマーにはワイヤーが装備されていたのだ。

 

「しまった!」

 

「もう遅いぜ!」

 

 レミリアの後悔も既に遅く、一夏の操作でワイヤーはレミリアに絡みつき、彼女の身体を捕縛する。

 

「そりゃあぁぁーーー!!」

 

 気合と共に一夏はレミリアをワイヤーごと振り回し、勢いよくアリーナの外壁に叩きつけた。

 

「うぐぅ……ッ」

 

「とどめだ!!」

 

 苦悶の声を漏らすレミリアに一夏はフィニッシュとばかりに左腕のDガンナーを発射する。

 

「まだよ!!」

 

 だがこれで終わるようなレミリアではない。

壁に叩き付けられダメージの残る身体とISに鞭打ち、身体を僅かに捻りながらグングニルのビーム刃を最大出力にして一夏に投擲する。

「何っ!?がぁぁ!!」

 

 荷電粒子砲を突き破る程の一撃が一夏を襲い、一夏は直撃こそ避けるものの大ダメージを受け、Dコマンダーのシールドエネルギーが大幅に削られる。

 

「ぐぁっ!」

 

 だがダメージを受けたのはレミリアも同じ事だった。

二人は同時に地面に落下するも即座に体勢を立て直して着地する。

この時点で二人のISのシールドエネルギー残量は10%を切っていた。

 

「負けて、たまるかぁぁーーー!!!」

 

「ハァァアアアアーーーーー!!!」

 

 そして着地と同時にお互い最後の力を振り絞るかの如くDガンナーとダビデを同時に発射し、その一撃はお互いを直撃した。

 

「…………」

 

「…………」

 

 一夏とレミリア、そして会場内を静寂が支配する。

それは一瞬の間でしかないがその場にいた全員にとっては数十分にも感じられただろう。

やがて静寂を掻き消すかのように機械音声が試合の結果を告げる。

 

『Dコマンダー及びスカーレットコンダクター、共にシールドエネルギーゼロ。両者引き分け』

 

 電光掲示板に試合結果が表示されると同時に観客席からの喧騒が場を支配する。

引き分けという結果にしては異例とも言える騒ぎようだ。

 

「引き分けねぇ……出来ればもう少し戦いたかったけど」

 

 退屈そうな表情を浮かべながらレミリアは武装を解除する。

 

「ああ、次は生身でやるか?勿論幻想郷でだがな」

 

「そうね……それも良いかもね」

 

 一夏も同様に武装を解除しながら軽口を叩き、レミリアはその言葉に笑みを浮かべた。

 

「またやろうぜ、レミリア」

 

「ええ、今回は引き分けだけど次はこうはいかなくてよ」

 

 互いに笑い合いながら二人はピットへと戻っていった。




次回予告

 クラス代表決定戦第3試合、咲夜VSセシリア。
もう後が無いセシリアにとって絶対に負けられない一戦だが力量差は明らか。
追い詰められたセシリアの運命は……

次回『折れるプライド、砕けた慢心』

咲夜「精々祈る事ね。アナタの信じる神か悪魔に」


IS紹介

スカーレットコンダクター(深紅の指揮者)
パワー・B
スピード・B
装甲・C
反応速度・A
攻撃範囲・B
射程距離・B

パイロット・レミリア・スカーレット

武装
ビーム刃展開装置付突撃槍『グングニル』
突撃力を重視した接近戦用の武装。
最大出力での一点突破力は一撃必殺の威力を誇る。

投擲用小型円盤型カッター『スカーレットシュート』
扱いやすさを重視した中距離戦用の武装。
汎用性が高く、軽量で非常に扱いやすい。

肩部レーザー砲『ダビデ』
連射性能を重視した遠距離戦用の武装。


レミリア専用機。
バランス性を重視した性能で全体的に癖が少なく、汎用性が非常に高い。
また、接近戦用の武装であるグングニルの性能もあり、突破力に秀でている。
カラーリングは紅、待機状態はネックレス。

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