東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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真実と異変の予感。いざ外界へ!

 姉弟という垣根を越え、一夏と千冬が一組の男女として結ばれた日から約4ヶ月の時が過ぎ、現在は2月末。

外はまだ寒さの残る日々が続いているが一夏達の暮らす万屋は防寒設備がしっかりしているためか十分暖かい。

そんな暖かさに包まれたまどろみの中で千冬は目を覚まし、一糸纏わぬ体にシーツを器用に巻きつけて身体を起こす。

隣では自分と同じく裸姿の一夏が寝息を立てている。

 

「……一夏」

 

 穏やかな寝顔の一夏を見ていると昨夜の情事を思い出し、千冬は頬を紅く染めながら一夏の身体に触れる。

無駄がなく引き締まった全身の筋肉、全身の至る所に勲章のように刻まれた傷跡が一夏の逞しさを引き立てている。そんな逞しい一夏に自分は抱かれ、千冬は事の最中は勿論、余韻に浸る今も尚途方も無い幸せを感じる。

それと同時に愛おしさと悪戯心が芽生え、千冬は寝息を立てている一夏に覆いかぶさり、そのままキスをする。

 

「一夏……んっ…………んんっ!?」

 

 触れるだけのキスを堪能していた千冬だったが、突然頭をガッチリと捕まれ、寝ていたはずの一夏の舌に自分の舌を絡め取られる。

 

「ん゛んーーーーっ……プハッ。い、一夏お前起きてたのか!?」

 

 一夏からの思わぬ不意打ちに千冬は狼狽しながら千冬は拘束から解放されて顔を離す。

 

「千冬姉がキスしてきた辺りからね」

 

 最高に”良い”表情で笑ってみせる一夏。姉弟という垣根を越えて付き合うようになってから千冬は終始一夏にリードされていたりする。

 

「一応私は姉で年上なのに……」

 

「良いじゃん、凄く可愛いんだから。それよりさ……」

 

 ニヤリと笑みを浮かべ、一夏は千冬と体位を入れ替える。

 

「あ……また、するのか?」

 

「うん、千冬姉のキスで興奮したから。千冬姉は嫌?」

 

「嫌な訳…無いだろ」

 

 恥じらいながらも千冬は一夏に身を委ねつつ一夏に向けて僅かに唇を突き出してキスをねだる。

 

「千冬姉!」

 

「一夏っ……んんっ!」

 

 本能のままに舌を絡め合う一夏と千冬。

そのまま互い下半身に手を伸ばそうとした……が、その時。

 

「一夏、千冬!!遂に解せ……」

 

「「あ……」」

 

 窓からISを背負いながら飛び込んできたにとりの表情が一気に凍りつく。

まぁ、そりゃ素っ裸でディープなキスをかましながらイチャつく男女(しかも姉弟)を目撃してしまえば困惑するのも当たり前だが……。

 

「……オジャマシマシタ」

 

「ま、待ってくれにとり!」

 

「今の無し、無しで頼……どわぁあああ!?」

 

 引き攣った顔で背を向けるにとりをおいかけようとして一夏と千冬は盛大にすっ転んだ。

 

 

 

「あー、えーと……とりあえず、本題を言わせて貰うと例のコアの解析、終わったよ」

 

 起きて早々に起きたドタバタ劇から数分後、一夏と千冬は着替え、にとりも混乱から覚めてにとりは漸く本題を切り出す。

 

「本当か!?それで、どうだったんだ?」

 

「うん、その事で色々と分かった事があるんだけど……まず結論から言わせて貰うと男がISを使うの事は可能だね。その方法も見つけたよ」

 

 にとりの言葉に一夏と千冬は安堵の表情を浮かべる。

男にもISが使えるようになれば女尊男卑を根本的に解決できる。それが可能になったのは最高の収穫だ。

 

「でね、ココから先なんだよ本題は」

 

 喜びの表情を浮かべる二人とは逆ににとりは真剣な表情になる。その表情にはどこか嫌悪感も出ている。

 

「解析していて分かったけど、まずコレは宇宙進出を目的にしたものじゃない、完全に戦闘を目的に作られた兵器だよ」

 

「!?……そ、そんな」

 

「宇宙へ上がるためなんてありえないよ。そもそも完全装甲(フルスキン)じゃない時点でパイロットに死ねって言ってるようなもんだよ。シールドエネルギーや絶対防御は宇宙服の役目は果たせてないしね」

 

 にとりの口から出た思わぬ言葉に千冬はハンマーで頭をぶっ叩かれたような衝撃を受ける。

『ISは宇宙へ進出するためのもの』……そう言っていたのはISを作った張本人である束なのにそれを根底から覆されてしまったのだ。

 

「そしてこれが一番胸糞悪い部分……ISは男に使えないように出来てるんじゃない。元々男女問わず使えるように出来てるよ」

 

「な!?じゃあ男に使えなかったのは……」

 

「人為的にプロテクトが掛かってたから、って事だね」

 

 宣告にも似たにとりの言葉に千冬は苦虫を噛み潰したような顔になる。

男女問わず使用出来るものをわざわざプロテクトを掛けてまで女性専用にしている。

この時点で束が意図的に世界を女尊男卑にしたのはほぼ間違いないだろう。

 

「そして、唯一プロテクトのパスコードに設定されている生体データも見つかったんだけど……」

 

「まさか!?」

 

 千冬は半ば確信したように声を上げる。

束がISを動かせるように設定する生体データの持ち主などたった一人しかいない。

 

「俺……って事か?」

 

「うん。触ってみなよ、直しといたから」

 

 そう言ってにとりは持ち込んだラファール・リヴァイブに目を向け、それに促されるように一夏はそれに触れる。

そしてその機体に内蔵された部品が動き出しラファールは起動した。

 

「束……お前は何故そんな真似を?」

 

 起動するラファールを前に千冬の呟きが虚しく部屋に響く。

 

「にとり、男に使えるようにする方法も見つかったんだろ?」

 

 親友の行為に疑念を抱き、俯く千冬に変わり一夏が口を開く。

 

「うん。って言っても単にプロテクトを解除するだけだからね。今の外界の技術でも解除は可能だよ。はいこれ、この中に解除方法入力しといたから」

 

 にとりは懐からUSBメモリを取り出し、一夏に渡す。

一夏はそれを受け取り一瞥した後、千冬の方を向く。

 

「とりあえず、これで根本的な問題は片付いたわけだし、あとはどうやってこれを世間に発表するかだけど……」

 

「そこら辺は私がどうにかする。束からデータを盗んだという事にでもすればどうにかなるだろう」

 

 多少気落ちしながらも千冬は一夏の問いにしっかりと返す。

 

「じゃあ、他には……」

 

「一夏さん、千冬さん。いますか?」

 

 一夏達が今後の事について考えを巡らせようとしたその時、家の外から大声が聞こえてくる。

紅魔館の門番、紅美鈴だ。

 

「美鈴?どうしたんだよこんな所で?」

 

「お嬢様とパチュリー様が大至急来てくれと言ってました。何か、外界に関することのようです」

 

「「「外界?」」」

 

 美鈴の口から出た思わぬ単語に三人は顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 紅魔館の大広間の中に大勢の人物が人間、妖怪、神など人種を問わず一堂に会する。

博麗霊夢、霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイドなど幻想郷でも屈指の実力者を始め、白玉楼、永遠亭、八雲家、守矢神社、それに加え半月ほど前に異変を起こした地底の者達の姿も数名ではあるが見られる。

更には地獄に住む閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥとその部下の死神、小野塚小町の姿もあった。

そして当然ながら一夏と千冬、それに着いて来たにとりもその中に居た。

 

「で、パチュリー。私たちをココに呼び出した理由って何だ?」

 

 一通り人数が集まったのを皮切りに、魔理沙が口を開く。

 

「ココにいる何人かは勘付いている筈よ。魔理沙、アナタも魔法使いなんだから気付いてる筈よ」

 

「……やっぱり、アレか」

 

 パチュリーの言葉に魔理沙は納得したように呟き顔を顰める。

 

「そろそろハッキリ言ってくれない?私達にも解るように」

 

 痺れを切らして霊夢が声を上げる。

それに伴いパチュリーは静かに口を開く。

 

「アナタ達を呼んだのは私だけではないわ。私と彼女……八雲紫よ」

 

 パチュリーの言葉にその場にいる全員が紫を見る。

それに対して紫は何も言わずに椅子に座って目を閉じて……。

 

「……zzz」

 

 いや、寝ていた。

 

「……すいません、紫様は本来この時期は冬眠中なんで」

 

 紫の式である九尾の狐、八雲藍は頭を抱えながら他の者たちに謝罪する。

 

「……話を戻すわ。事の発端は半年前……いえ、紫にとっては2年前ね。その頃から外界では少しずつ、本当に少しずつだけど魔力を感じる頻度が増え始めていた。当時は私もまだ気にも留めていなかったんだけど、1年前ぐらいからそれが少しずつ気になり始めていた。そして半年前、八雲紫に調査を依頼……というか押し付けられたの」

 

 パチュリーはジト目で紫を睨みながら説明する。

しかし紫は無反応のまま眠り続けている。

 

「すいません……」

 

 こうなってしまった以上一番割を食うのは彼女の式である藍である。

 

「まぁいいわ。それで調べて最近になって漸く分かった事があるんだけど、これがアナタ達を呼び出した最大の理由よ。小悪魔、アレを」

 

「はい」

 

 パチュリーの指示を受け小悪魔は大型の水晶玉をテーブルに運ぶ。

 

「この水晶玉を通せばその魔力を直に感じることが出来るんだけど、何しろ場所が外界なだけに、魔力を特定するのにかなり時間がかかったわ。けど……ようやく例の魔力を特定する事が出来たわ。コレを直で感じれば全て理解できるわよ」

 

 それだけ言ってパチュリーは水晶玉を持つ手に力を込め、直後に水晶球が光り輝く。

 

『!!?』

 

 美しく光る水晶玉に反し、その奥から迸るのは圧倒的なまでに黒い魔力。

まるで全てを憎み、拒絶するかのようなドス黒い悪意を持った魔力。

 

「ハァ、ハァ…ッ!?」

 

「な、何なんだ、この魔力は?」

 

「何て……ドス黒いの」

 

「ら、藍しゃまぁ……」

 

 その場に居た全員がその異常な魔力に冷や汗を流し、全身に鳥肌が立つような感覚を覚える。

藍の式である化け猫の橙(チェン)に至っては藍にしがみ付いて身体を震わせている。

 

「これは確かに異常ね。それに加えて水晶越しでもコレだけの魔力……放っておけば幻想郷にとんでもない災害となりえるという事もありえるわ。……やはり私の勘は正しかったわ」

 

 先程まで寝ていた紫が突然目覚め、珍しく真剣な表情で水晶玉を睨みつける。

 

「もしかして……月に戦争を仕掛けた人間って」

 

「この魔力の持ち主かもね。これ程ドス黒く底知れない魔力の持ち主、月に手を出すという命知らずな真似をしてもおかしくないわ」

 

 輝夜の言葉に周囲の空気が更に張り詰めたものに変わる。

月の戦力は千年以上前に起きたと言われる月面戦争において紫率いる妖怪の軍勢を敗走させるほどのものである。

 

「鈴仙、その戦争を仕掛けた奴に関して何か情報は無いのか?」

 

 今まで黙っていた千冬が鈴仙に訊ねる。

 

「正直あんまり有力なものは無いですね。私がキャッチした波動で判明してる事は、その地上人は機械の人形を多数所有している事と、陣頭で年端も行かない少女がその機械人形を身に纏って戦っていたという事ぐらいです」

「……そうか」

 

 鈴仙からの情報に千冬は顎に手を当てて考え込む。

 

(機械人形……やはりISなのか?それに今の話を聞く限り無人機を使用しているとも考えられる)

 

 千冬の頭の中で彼女にとってあまり喜ばしくない仮説が浮かび上がってくる。

ISは(名目的には)宇宙進出のために作られたものだが、現状ではISの運用は兵器とスポーツに集中して宇宙への進出は殆ど無い。

第一にISで宇宙に上がったという話題すら聞かない程だ。

いや、実際には実験は行われているのかもしれないが失敗に終わったのだろう。

ISが宇宙で使えるような物でないという事実はにとりによって証明済みだ。

 

(つまり、月面への襲撃者はISを宇宙用に改造する事が出来て、尚且つ無人機を作れる人物……)

 

 千冬が知る限りそれは一人しか居ない。

 

「千冬、アナタが何を考えているのか大体分かるわ。ISと篠ノ之束の事でしょう?」

 

「……ああ。知っていたのか?アイツの事を」

 

「ええ、名前程度はね」

 

 紫からの指摘に千冬は肯定の意を示す。

 

「確かに束なら可能だと思う。だが疑問もあるんだ……一夏以外の皆は知らないだろうがアイツは他人に対して驚くほど無頓着で私と一夏、あと妹の篠ノ之箒以外に対してはまともに口も聞かない程なんだ。鈴仙が言うには陣頭に立って戦っていたのは年端も行かない少女との事だが、束が私達以外に心を許す者がいるのか?」

 

 千冬にとってはむしろそれは願望に近いものだった。

束に対して疑念は募るばかりだがそれでも千冬にとっては親友なのだ。

出来ることなら彼女を説得して一緒に罪を償って真っ当に生きていけるようになりたいと今でも千冬は思っている。

 

「アナタの気持ちは解るけど、現状では彼女が第一容疑者よ。これ程の魔力に月に襲撃をかける人間……幻想郷の存在を知らないとは思えない。調査する必要があるわね」

 

 千冬の言葉を一蹴するようにレミリアは言い放つ。

千冬は何も言えずに黙るしかなかった。

 

「外界に出るつもりですか?調べるのは仕方ない事ですが、外界に出るとなると私達幻想郷の住人ではそう大っぴらには動けませんよ。外界と幻想郷は剥離されているからこそ均等が保たれている、しかし下手に動き回れば外界を混乱に陥れてしまう可能性もあります」

 

 調査に対して難色を示したのは閻魔である四季映姫だ。閻魔である彼女にとって下手に動いて罪が増えてしまうのは見逃せないことなのだろう。

 

「そうね、だから大っぴらに動けるように隠れ蓑を考えているわ。一夏、千冬、アナタ達とお互いに協力する形になるけどね」

 

 嬉々とした表情で紫は計画を語る。自身が考えた壮大な計画を……

 

「な、なるほど……確かにそれなら男女平等に戻す事も出来るし堂々と調査も出来る」

 

「でしょ?ついでに言えば女尊男卑から男女平等に戻す際の反動も少なくなるわ」

 

 紫の計画に千冬は驚くと同時に賞賛する。

 

(そのやる気を偶には仕事にも向けてくださいよ、紫様……)

 

 藍が内心でそうぼやいていたのは彼女だけの秘密だ……。

 

「問題はそれを可能にする方法だけど……にとり、出来るか」

 

「フフフ……河童の技術力は世界一ィィィ!!」

 

 某奇妙な冒険漫画の第2部に登場するドイツ軍人のようなポーズでにとりは声高に叫ぶ。

 

「実は研究段階でその手の道具を作っておいたのさ!」

 

「おお!!」

 

 即効で解決した問題に一夏の目が輝く。

この時点で計画の準備はほぼ完了したといっても過言ではない。

 

「それじゃあ、調査に参加したい者は3日後に博麗神社へ。文、告知と人材集めはアナタに頼むわ」

「了解。その代わり私も行かせて貰いますよ。こんなおいしい新聞のネタ、滅多にありませんからね!!」

 

 紫と文の会話によって紅魔館での会議は締めくくられた。

 

 

 

 

 

「紫さん」

 

「あら一夏。何かしら?」

 

 会議に参加していた者達が帰路に付く中、一夏は一人紫を呼び止める。

 

「一つ教えてくれ。俺をこの幻想郷へ導いたのは、やっぱりアンタなのか?」

 

「何でそう思うのかしら?」

 

 考えの全く読めない笑みを浮かべながら紫は聞き返す。

しかし一夏はどこか確信のあるような表情で言葉を続ける。

 

「アンタはさっき、あの魔力を感じた時、『自分の勘は正しかった』って言っていた。それにアンタは束さんを知っていたし、千冬姉が束さんの事を考えているのも見抜いた。最初からあの魔力の持ち主は束さんだって確信があったんじゃないのか?だから束さんと関係のあった俺を……」

 

「4割程正解ね。でもなかなか良い回答よ」

 

 一夏の推理に紫は曖昧な表現で返し、直後に淡々とした口調で語りだす。

 

「まず、確かに私は篠ノ之束を確かに知ってるし彼女が怪しいとも思ってるけど確証があるわけではないわ。まぁ、確証なんていちいち得るのも面倒臭いし」

 

「……そ、そうですか」

 

 若干いい加減な態度に呆れつつも一夏はそれ以上何も言わなかった。

言っても無駄だと思ったから……。

 

「そして二つ目、お察しの通りアナタをココ(幻想郷)へ導いたのは私よ。けど、それは篠ノ之束の関係者だからではない、アナタだからよ」

 

「俺だから?」

 

 紫の思わぬ答えに一夏は目を丸くする。

 

「そう、正確にはアナタの底知れない資質ね……アナタを見た時、幻想郷へ導くべきだと感じたのよ。私の勘がね」

 

「また勘かよ」

 

 どこまで本気で行っているのか解らない紫の物言いに一夏は苦笑いを受かべる。

逆に紫は扇子で口元を隠しながら意味深な笑みを浮かべて一夏に背を向ける。

 

「どう捕らえるかはあなたの自由よ。それじゃあ、3日後にね」

 

 言葉と共に紫は己の能力で空間の境界を操り、虚空に裂け目を作り出し、どこか別の場所へと繋いで藍、橙と共に去っていく。

 

「スキマか。……いつ見ても訳の分かんねぇ能力だな」

 

 そんな事を呟きながら一夏も気持ちを切り替え、外界への帰還に思いを馳せながら自分を待つ千冬のもとへと向かった。

 

 

 

 

 

 外界への異変調査が決定したその日の夜。

この時点で既に参加を決意している者達も多数おり、皆それぞれの思惑を持っていた。

 

 

魔法の森

 

「やっぱりアナタも行くの?」

 

「ああ!あんな魔力を感じて指咥えて見てるだけなんてゴメンだぜ。一夏と千冬に協力するのも悪くないしな」

 

 ある者達は一魔法使いとして……。

 

 

紅魔館

 

「それじゃあパチェ、小悪魔。留守番とフランの事頼んだわよ」

 

「ええ、分かったわ。アナタに渡した例の日焼け止めの効果は1回で14時間だから気を付けてね」

 

「お嬢様、咲夜さん、美鈴さん。どうかご無事で」

 

「お姉さまぁ〜〜、お土産よろしくね」

 

「あの……私の門番の仕事はどうなったんですか?」

 

「あって無いようなもんでしょ……(必ず一夏を手に入れて見せる!!)」

 

 

白玉楼

 

「それでは幽々子様、行ってまいります」

 

「お土産よろしくね。あと出来れば一夏君も手に入れてくるのよ」

 

 

守矢神社

 

「まさか、信仰が薄れる一因となったISに関る事になるなんてね」

 

「でも、ある意味外界の方でも信仰を増やすチャンスかもしれないよ」

 

「あと、一夏君を手に入れるチャンスでもあります!!」

 

「その意気だよ早苗。絶対ものにして来い!!」

 

 

 またある者達は野心を胸に……。

 

 

妖怪の山

 

「はぁ〜〜」

 

「ん?どうしたの椛」

 

「……これ」

 

『射命丸文のお目付け役を命じる』

 

「……ご愁傷様」

 

 またある者は仕事で……。

 

 

 

 そして……

 

「千冬姉、荷物の準備できたよ。そっちは?」

 

「ああ、あと少しだ」

 

 万屋を閉め、数日後に待つ外界への帰還に向けて準備をする一夏と千冬。

荷物を纏める千冬の手を見つめ、一夏は突然その手を優しく握った。

 

「手、震えてるよ」

 

「……すまない」

 

「怖いの?」

 

「少しだけな……」

 

 僅かに声を震わせながら千冬は答える。

彼女にとってはこれから先に待ち受ける運命は自分の罪と真っ向から向かい合うものだ。

遅かれ早かれこうなる時が来るのは分かっていたものの、いざその時になるとやはり恐怖心が生まれてしまうのだ。

 

「……大丈夫」

 

 しかしそんな千冬を抱き寄せながら一夏は優しく笑いかける。

 

「俺が支えるから、千冬姉の事。……支えて、守るよ」

 

「ありがとう、一夏……愛してる」

 

 一夏の言葉に千冬は頬を赤らめながら微笑み、二人は唇を重ねた。

 

 

 

 

 そして3日後

 

「それじゃあ……行くぜ、皆!」

 

 さまざまな思惑を胸に幻想郷の住人達は外界へと旅立つ。

この先にどんな運命が待ち受けるのかを彼らはまだ知らない……。

 

 

 そしてこれより数日後、とある二つの記事が新聞の一面を飾る事となる。

 

『世界初の男性IS適正者発覚!!』そして『無名のIS企業、男性のIS使用方法を発見!!』と……。

 


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