東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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風神録
外界から来た強敵!?一夏ラヴァーズ全員出動!!


 季節は秋。人里は収穫期で賑わい、来るべき冬に備えている。

秋といえば食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋とさまざまなイメージがあるがそんなものとは全く無縁の騒動が今起きようとしていた……っていうかもう起こっていた!!

 

「はぁ〜〜?営業停止命令?」

 

「そうなのよ……頭来ちゃうわよ、まったく!」

 

 博麗神社の巫女、博麗霊夢は一夏、千冬、魔理沙を博麗神社へ呼び出し、愚痴っていた。

話の内容を要約すると……

『突然現れた謎の巫女が妖怪の山に神社をおっ建てて博麗神社に営業停止と自分達の傘下に入るよう迫ってきた。』

……との事である。

 

「しかし、いきなり現れて営業停止を強要するとは随分な話だな」

 

 愚痴る霊夢に呆れた視線を向けつつも一夏はいきなりの営業停止勧告に表情を顰める。

 

「それで、お前はどうするつもりなんだよ?」

 

「決まってんでしょ。これから皆で山に行ってその神社の神様に文句……じゃなくて話しを付けに行くのよ!」

 

 魔理沙の問いに憮然とした態度で答える霊夢。

しかしその言葉に千冬が反応する。

 

「ちょっと待て。皆でって、何で私達が頭数に入っている?」

 

「え〜〜、だって妖怪の山ってさぁ、雑魚とか結構多いし。神社に着くまでに体力使ってそれでやられちゃったら本末転倒でしょ?」

 

「素直に例の巫女と神以外と戦うのが面倒だと言ったらどうだ?」

 

「ギクッ……」

 

 霊夢の見え見えの言い訳に千冬の鋭い突っ込みが突き刺さる。

完全に図星を突かれたようだ。

 

「言っておくが私は行かないぞ。にとりの奴には世話になってるからアイツに迷惑は掛けられん」

 

「あー、そういやそうだったわね。まぁ、良いわ。さすがにそういう事情じゃ無理強いできないし……一夏と魔理沙は?」

 

「私は良いぜ。山の方って何か面白そうだから一回行ってみたかったしな」

 

 魔理沙は簡単に承諾。

 

「う〜ん、俺もにとりには迷惑かけたくないけど……溜まり場が無くなるのも嫌だし、一応行くか(お前らに任せてたら穏便に済むものも済まなくなるかもしれない)」

 

 一夏も渋々行く事を決める。

 

「そういえば、その営業停止を迫ってきた巫女ってどんな奴なんだ?」

 

 同行者が決定し、魔理沙は霊夢に騒動の原因となった少女について訊ねる。

 

「そうね…歳は私や一夏と大して変わらない……いえ、一夏より1〜2歳上ぐらいかしら?髪は緑のロン毛で蛙と白蛇の髪飾りをしてたわね」

 

「……!?」

 

 巫女の容姿の特徴を聞き、千冬は突然音を立てて立ち上がった。

 

「千冬姉?」

 

「(緑の髪に蛙と白蛇の髪飾り、その上巫女だと?……ま、まさか!?)……気が変わった。私も行く」

 

 突然立ち上がった千冬は先程と真逆の言葉を口にした。

 

「「「は?」」」

 

 突然180度意見を変えた千冬に三人は声を揃えて目を点にする。

にとりに恩があるにも関わらずこうも千冬が簡単に意見を変えるなど普通はありえない話だ。

それを差し引いても意見を変えなければいけない理由とは一体何なのだろうか?

 

「その話、聞かせてもらったわ」

 

「私達も一緒に着いて行きます!」

 

 そして更に、突如として神社の境内から何者かの声が聞こえてくる。

 

「さ、咲夜に妖夢!?」

 

 声の主は咲夜と妖夢。

しかも二人の表情は途轍もなく真剣だ。

 

「お前等……一夏、悪いが少し席をはずす。お前等、ちょっと裏まで来い」

 

「ええ、良いわ」

 

「こっちもその必要があると思ってましたしね」

 

 三人はそのまま神社の裏へ向かった。

 

 

 

「お前等……何故ココに?」

 

 裏庭に集まり、千冬は二人に話を切り出した。

 

「勘よ、女の勘。でもそれはアナタ達も同じでしょう?」

 

「ええ、どうにもとんでもない強敵が出てきそうな気がして」

 

 千冬の問いに二人は真剣な面持ちで口を開く。

傍から見れば色々と突っ込み所満載な会話かもしれないが彼女たちにとってコレは非常に重大な会議だ。

 

「そしてさっきの霊夢の言葉に対するアナタの反応……恐らくアナタはその強敵になりうる存在の事を知っているかもしれない……」

 

 咲夜が目を鋭く細める。

そんな彼女に千冬は静かに頷く。

 

「これは可能性でしかないのだが……山に現れた神社の巫女は私達同様外界から来た人間かもしれない。そして、もし私の勘が正しければその巫女は…………一夏の幼馴染だ!」

 

「「な、なんだってーーーーー!?」」

 

 

 

 

「神奈子さま、ただいま戻りました」

 

 妖怪の山山頂にそびえ立つ神社『守矢神社』。

博麗神社よりも立派な作りをしたその神社の中に巫女服を着た少女が入り、奥の部屋に座る注連縄を背負った女性に頭を下げ、口を開く。

 

「首尾の方は?」

 

「はい、ほぼ順調です。ただ……」

 

「ただ?」

 

「例の博麗神社の巫女はこちらの交渉に応じる気は無いようです。もしかしたらこちらに直接出向いてくる可能性も……」

 

 巫女服の少女の言葉に注連縄を背負った女性……山の神、八坂神奈子は立ち上がり、少女の方を向く。

 

「ま、来るだろうねぇ。そうでなければ断る訳ないだろうし……早苗、もうすぐ戦う事になるかもしれない。心の準備をしておきな」

 

「はい!」

 

 静かだが厳かな雰囲気を持つ神奈子の声色に守矢神社の巫女……東風谷早苗はしっかりと返事をする。

 

(これから私はこの幻想郷の住人になって、信仰を取り戻す……この守矢神社の巫女としてしっかり頑張らないと!)

 

 これから始まる戦いに早苗は気合を入れて部屋の隅に飾られた写真立てに近づく。

 

「身勝手なお願いかもしれないけど、天国で見守っていてね……一夏君」

 

 写真立てに入っている写真には幼い頃の早苗と二人で並ぶ幼き日の織斑一夏の姿が写っていた。

 

 

 

 

 そして所変わって博麗神社の裏庭。

千冬は自分が感じた予感を咲夜と妖夢に語り終えていた。

 

「つまりその早苗って娘は一夏の1歳年上の幼馴染で……」

 

「私達と同じ様に一夏さんに好意を抱いていると?」

 

「ああ、一夏が7歳の頃、親の実家である諏訪の神社に引っ越してそれっきりだったんだが……外界に居た頃は年に2〜3回は手紙が来ていた」

 

 千冬が苦虫を噛み潰したような表情で説明する。

遠距離恋愛は成功しないと世の人は言うがどんな事にも例外はある。

7歳から一夏が外界で行方不明になるまで早苗が手紙を送らなかった年は無かった。

これは早苗が一夏への想いを失ってない証拠だ。

 

「こうなってしまった以上、手は一つですね」

 

「その巫女が早苗って娘だとしたら一夏を単独で会わせる訳にはいかないわ!」

 

「あの天然超S級フラグ建築士の一夏さんが単独で幼馴染と会おうものなら……しかも相手は一夏さんを死んだと思ってるからその場の勢いで告白されるなんて事になる可能性も……」

 

 思わずその光景を想像してしまう。

もしも率直に「好きです!付き合ってください!」なんて言われてしまえば超朴念仁な一夏といえども理解してしまうのは確実。

そしてそれが実現してしまったら自分達が抑止力にならないと本当に一夏が奪われてしまう。

話が飛躍しすぎな気もするが彼女達は至って真剣なのだ。

 

「こうなったら……非常に不本意だが」

 

「やるしかないわね」

 

「私達3人が手を組んで東風谷早苗への抑止力になる!!」

 

 妖夢のその言葉に二人は頷き、三人は皆その右手を重ねあう。

 

「言っておくがお前らと馴れ合う気は無いぞ。抜け駆け禁止なんて甘っちょろいルールを作る気も無い」

 

「上等よ。あくまでもこの共同戦線は共通の大敵に一夏を奪われない為のもの」

 

「私達が敵同士という事実に何の変わりもない。……ですが」

 

「「「今は一夏の貞操を守るために!!」」」

 

 今、三人の恋する乙女の心が一つとなった!!

 

織斑一夏、織斑千冬、博麗霊夢、霧雨魔理沙、十六夜咲夜、魂魄妖夢

以上6名、妖怪の山へ出撃!!


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