思わぬ
Table1 欧州組+さとり、天狗コンビ
「んぐっんぐっ……ぷはぁ~~~~っ!!
ビールって初めて飲んだけど、美味しいですね」
「はむっ……んん~~っ!!
このソーセージも良いです!!」
「当然です!ビールとソーセージの本場であるドイツ出身の私が厳選して持ってきたんですから!……ヒック」
ラウラが持ち込んだビールとソーセージは文、椛に大好評。
慕ってる相手とその先輩格に褒められ、酒も入ってラウラはご機嫌だ。
既に瓶ビール一本分は飲んでおり、顔は赤くなっているがまだ理性を保っている辺り結構酒に対する耐性があるようだ。
「それにしても意外だね。ラウラって意外とお酒イケる口だったなんて」
「本当ですわ。私なんて酎ハイでも少しずつ飲むのがやっとですのに」
「最初は飲めるか不安だったみたいですけどね。飲んでみたら意外と美味しくて上機嫌になったみたいです。
……本当に美味しいわねコレ。地霊殿へのお土産に何本かもって帰ろうかしら?」
シャルロット(日本酒2杯目)とセシリア(缶酎ハイ1本目)が呆れと感心の混じった視線を向ける中、さとりはソーセージを齧りながらラウラの内心を読み取っていた。
Table2 織斑姉弟・サブヒロインズ・命蓮寺・神霊廟組(箒含む)
「いちかぁ~~!最近イチャイチャ出来なくて寂しいんだよぉ~~!!」
顔を赤くしながら千冬はキャラ崩壊など気にせずに一夏に抱き付こうとする。
『酔った勢いに託けてイチャつこうとするな!』
「グヘッ!?」
が、そんな千冬を妖夢と早苗が羽交い絞めに、咲夜が時を止めて一夏と千冬の間に割って入り、千冬の顔面にヤクザキックをぶちかます。
「き、貴様らぁ……久々に一夏とイチャイチャしようと思ったのに……!!
良いだろう。この際決着つけてやる!そして。私こそが一夏の嫁だと言う事を嫌というほど教えてやろう!!」
『あ゛!?誰が誰の嫁だって……!?』
そのまま4人は空中乱闘に突入するのだった……。
「千冬さんって、こっちではこんな感じなのか?」
「あー、普段はともかく、宴会の時は割とな……」
そんなドッグファイトを眺めながら呆然とする箒と、冷や汗を流す一夏。
「でも……羨ましいな。あんな風に気兼ねなく喧嘩したり、酒を飲み交わしながら騒げる仲間がいるのは。
そんな仲間を一夏と千冬さんは一年以上前に得ていたんだな」
「今はお前だって仲間の一員だろ、箒?」
羨望の眼差しを向ける箒に笑いかけ、一夏は酒瓶を箒に差し出す。
「箒ぃ~~、この猪鍋凄く美味いぞ!おぬしも食え!!」
「やっぱり久々に堂々と飲む酒は美味いわ~~!」
更に、普段の対立も気にせず肩を組みながら笑い掛ける布都と一輪。
そんな光景に箒は思わず笑みを零す。
(……そうだな。私は、もう孤独じゃないんだ)
充足感を噛み締めながら、箒は再び酒に口を付けた。
「はぁ~~、美味い……!」
Table3 暗部姉妹とその従者達
「このシスコンストーカー女!」
「何よ!妬み嫉みの姉不孝者が!!」
酔いが回った更識姉妹はお互い顔を真っ赤にしながらお互いに口論……というか、口喧嘩に発展していた。
「大体ねぇ!アンタみたいな大人しい子が暗部の職になんか向いてるわけ無いでしょうが!!
だから私は断腸の思いでアンタを遠ざけたのに!!」
「はぁ!?その結果が『アナタは無能のままでいなさい』発言!?
こっちのプライドも気持ちも全く考えない気遣いなんてありがた迷惑でしかないんだけど!!
根本的にシスコンの癖して妹の気持ちを考えないってどんだけ面倒くさい性格してんの!?」
「ぬわんですってぇ~~!!」
こんなやりとりがかれこれ15分近く続いていたりします。
「ねぇねぇ、晴美お姉ちゃん!修行したら魔法とか使えるようになったりするの」
「まぁね。何ならアンタ達も修行してみる?」
「え、良いの?『だったら是非!私も修行させてください!!』……お姉ちゃん?」
晴美と本音の話に虚が割って入った。
……コレまでに無い程に目をキラキラと輝かせながら。
「う、虚……?」
「す、すいません。……こ、これはアレです更識家の従者として主との差が開きすぎるのはよくないと思って……」
「そういえば……お姉ちゃん子供の頃、『将来は魔女っ娘になって箒で空を飛びたい』とか言ってような……」
「ほ、本音!昔の事なんて掘り返さないで!!」
普段生真面目な虚の思わぬ一面に唖然とする本音と晴美であった。
そして……
「大体何よ!霧雨みたいな男口調な魔女っ娘に懐いてちゃって!!
一緒に箒に乗ってツーリングならぬホーキングでもする訳!?」
「ふーんだ!それならもうやったもん!箒は使ってないけどこんな風に空を飛んでね!!」
未だ続く句姉妹喧嘩の中、簪は飛行術で空を飛んでみせた。
「んなぁっ!?か、簪ちゃんが
「うわぁ、古い駄洒落だね、それ」
愕然とする刀奈の隣で日本酒を堪能していたジンヤが静かにツッコミを入れたのだった。
Table4 紅魔組とその新メンバー候補
「んぐっ、んぐっ……ぷはぁ~~~~!ひっく……梅酒お代わり!!ストレートで!!」
紅魔館組の席では、美鈴が顔を真っ赤にしながら酒を浴びるように飲んでいた。
「珍しく深酒じゃないの美鈴?もう4杯目、アナタがこんなに深酔いした姿は初めて見たかも?」
「だってぇ~~、聞いてくださいよお嬢様ぁ!」
やや呆れた様子で自分を見るレミリアに対し、美鈴は若干呂律の回らない口調で返す。
「私、この前の臨海学校で弾君の事本気で好きになってぇ、実質両思いになったんですよぉ!
でも、合宿に入ってから訓練ばっかりで全然進歩無し……。
今でも弾君は勇儀さんと萃香さんのお酒の相手ですし……普通、合宿って男女の仲を進展させる最高のイベントじゃないですか!なのに、なのにぃ~~~~!!」
勇儀と萃香に挟まれている弾の後ろ姿を恨めしげに見つめる美鈴。
そんな彼女の様子にニヤニヤと笑うレミリアを始めとした紅魔組の面々(別席の咲夜除く)。
「へぇ~~、もしかしてとは思ってたけど、やっぱり両想いなんだ」
「まさか能天気な貴女に春が来るなんて、100年近く生きてきて一番の驚きよ」
「彼が紅魔館の一員になったら私の後輩ですよね!前から後輩欲しいと思ってたんですよ!!」
「ねぇねぇお姉さま!弾が家に来たら何の役職にする?厨房係とか?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!まだ告白もしてないのにそんな気が早いんじゃ?」
既にカップル扱いの主達に美鈴は慌てて訂正しようとするが……。
「じゃあ本人に聞いてみましょうか?ねぇ、弾?」
パチュリーがそう言って指を鳴らすと背後から顔を真っ赤にした弾の姿が現れた。
「へ?え、ええぇぇ~~~~~っ!!?
だ、弾君!?な、何でココに!?あっちで勇儀さん達と飲んでたんじゃ?」
思わぬ想い人出現に美鈴は勇儀達の席を見るが……。
「ぬっふっふ……上手くいったようだね」
「可愛い教え子の恋路は見事成就!最高の酒の肴が手に入った気分だよ!」
何と、勇儀と萃香の隣に居た弾と思われた後ろ姿はカツラをかぶせたマネキンだったのだ。
「じゃ、じゃあ、今までの会話は全部……」
そして、当の弾はパチュリーの魔法で姿を消し、美鈴とレミリアの会話を後ろで聞いていたのである。
そう、全ては二人の仲を進展させるべくレミリア、勇儀、萃香が結託して仕組んだ計画だったのだ!!
「め、美鈴さん!!」
「は、ハイ!!」
不意に名前を呼ばれた美鈴は思わず大声で返事をした。
「お、俺……め、美鈴さんの事、初めて会った時から一目惚れして好きになって、今でもそれは変わってないです!!
俺はまだ美鈴さん達より全然弱くて、未熟だけど!いつかきっと、いや必ず美鈴さんを守れるぐらい強くなる!!
だ、だから……俺と、正式に付き合って下さい!!」
「……は、はい。
ふ、不束、者ですが……よろしくお願いします///」
こうしてココに周囲の吸血鬼、鬼、小悪魔、魔法使いの祝福の拍手が送られ、一組のカップルが誕生したのだった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
翌日
「おえぇぇ~~~~!!」
「ぐえぇぇぇぇ…………!!」
当然ながら、慣れない深酒により更識姉妹は仲良くリバースしたのは言うまでもない。
次回予告
正式に合宿に参加する事になった刀奈、虚、本音。
それぞれに師匠が付き特訓が開始される中、刀奈は未だ簪を戦いに巻き込む事に難色を示していた。
そして、そんな姉を煩わしく思う簪……そんな二人に晴美はある提案をする。
次回『姉妹の確執×晴美の提案』
刀奈「私は簪ちゃんが戦わなくてもいいぐらい強くなるつもりよ……!」
晴美「言葉で駄目なら身体でぶつかりあってみろ!」
千冬「今のお前は昔の私とよく似ている……」