東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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長々とお待たせして申し訳ありません。

並行連載中の魁‼インフィニット・ストラトスの方に感想が来てくれてそっちにばかりやる気が向いてしまいました。
やっぱり感想が書く意欲を盛り上げてくれるんだなぁって痛感しております。


レベルアップへの茨道(後編)

 合宿メンバーが各々個別の修行に入って約4時間が経過した。

神霊廟の一角にて、箒は神子が見守る中、座禅を組みながら、己の霊力を制御し続けていた。

 

「……よし、そこまで!」

 

「ふぅ……」

 

 神子の言葉と同時に、長時間霊力制御に集中し、精神力を大きく消耗していた

箒は額に大量の汗を浮かばせながら体勢を崩す。

 

「だいぶ制御がしっかりしてきたのう。

これなら今日から組み手の量を増やしても問題無さそうじゃ」

 

箒の成長ぶりに布都が感心したように笑う。

不安定になった魂を安定させるために行った霊力制御の特訓を始めて数日。

神子達の予想よりも早く箒は霊力制御のコツを掴み、魂も安定していた。

 

「今日はSWを使って組み手を行います。勿論霊力を使って構いません。

武装はこちらで用意したので、好きなものを使ってください」

 

「武器、か……」

 

 目の前に並んだ武器を眺め、箒は思案する。

最初に目に付いたのは剣だが、箒はそれを頭を振ってそれを否定した。

 

「剣じゃないのか?」

 

 神霊廟の一員である亡霊、蘇我屠自古が箒の様子を察して声を掛ける。

 

「もう私には剣を持つ資格は無い……剣道をただの暴力として使ってしまった私には……。

ん?これは……」

 

 気まずそうに剣から目を離した箒の視界に、ある物が映った。

 

「これだ!これにする!!」

 

「え?それって作業用の奴じゃ……」

 

「構いません。これが良いと感じたんです。

それに、以前戦闘用に転用出来ると聞いているから、たぶん大丈夫です!」

 

 自身の新たな武器を見出し、箒は神子との組み手に臨むのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「遅い!」

 

「キャアアッ!!」

 

 晴美からの怒声と共にセシリアの身体にペイント弾が直撃する。

 

「うぅ……こ、これでもう20回も連続で完敗……」

 

 ペイント弾で汚れた顔を拭いながらセシリアは嘆く。

いくら訓練用の修行着で負担をかけた状態といえ、これだけ無残な結果だと自信も失いそうになるというものだ。

 

「狙いはよくなったけど、まだ狙ってから撃つまでのタイムラグがあるね」

 

「そう言う事。狙って撃つんじゃ遅すぎなの。

“狙うと同時に撃つ”……これが今のアンタがクリアすべき課題よ」

 

「狙うと同時に……やってみますわ!」

 

 ジンヤと晴美からの指摘と激励に、セシリアは気持ちを切り替えて再び立ち上がった。

 

「よし、じゃあ次は接近戦の訓練行くわよ!その次はジンヤ相手に狙撃訓練!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ふぅ……ハアァァァッ!!」

 

 紅魔館の外れの広場。

そこに用意された大岩目掛け、鈴音は気と霊力を集中させた拳を打ち込む。

 

「……う~ん、やっぱり美鈴さんみたいにはいかないか」

 

 自身のパンチで出来た小さな窪みを見詰めながら、鈴音は溜息を吐く。

修行を開始して間もない頃、美鈴は手本として現在使用しているものよりも一回りは大きい岩を正拳突き一発で真っ二つに破壊して見せた。

それと同様に自らも何度か挑戦してはいるものの、現状では窪み一つ作るのがやっとだった。

 

「そう一朝一夕で出来るものではありませんからね。

それに、鈴音さんは十分成長してますよ。最初の頃は傷一つ付けられなかったんですから」

 

「そりゃあね……」

 

 初めて大岩割りに挑戦したときの事を思い出し、鈴音は苦い表情を浮かべる。

最初の頃は霊力を上手く集中させる事ができず、殆ど素手に等しい状態で岩を殴って悶絶したものだ。

 

「力を極めれば肉体は鋼の如く強靭となるが、技が無ければそれを活かせない。

技を極めれば負担は最小限となり力を最大限発揮できるが、その力そのものが無ければ意味を成さない……。

力と技……この二つのバランスを保ちつつ鍛えていきましょう。

さて、次はこれまで教えた技の反復練習です」

 

「押忍!」

 

(思ってた以上に成長速度が速い……。

これなら合宿が終わるまでには奥義を見せても良いかもしれませんね)

 

 弟子の成長に胸が躍るのを抑えつつ、美鈴は鈴音への指導に向き直るのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ふぅ~~、終わったぁ~~……」

 

「お、お疲れ……」

 

「皆さん疲れきってますわね。私もですが……」

 

 日が沈んだ頃、個別訓練を終えたメンバーは皆ヘトヘトになりながら下宿先の命蓮寺へと戻る。

 

「た、ただいま……」

 

「あ、アタイ……もう、駄目……」

 

「うわっ!?だ、弾……また今日も一段と……」

 

 そんな中、最後に戻ってきたのは弾だ。

その姿は見事なまでに全身ボロボロ……。

傷など数えるのも馬鹿らしい。切傷、擦り傷、噛み痕、打撲、引っ掻き傷と何でもござれだ。

師匠である高原の意向で幻想郷中のあらゆる妖怪と戦うという、実戦あるのみの修行のため、ほぼ毎日傷だらけになって帰ってくるのが定例となっていた。

 

「相変わらずズタボロだな、大丈夫か?」

 

「あぁ、何とかな。チルノは分からんが」

 

「アタイは最強だから問題ないの!ご飯食べて寝れば治る!」

 

 軽口を叩き合うあたり、見かけほどダメージは重くないようだ。

 

「今日は誰と戦ったの?地底の方で見かけたけど……」

 

「ああ、水橋パルスィって奴だ

何か、常に『妬ましい妬ましい』とか言ってる奴でさ。

……何だったんだアイツは?

でもまぁ、お陰で良い技思いついたぜ。それに……」

 

 一端言葉を切り、弾はニヤリと笑って霊力をコントロールする。

その直後、足が地を離れ、弾の身体は宙に浮いた。

 

「え!?五反田君……飛べるようになったんですか!?」

 

「へへっ!チルノや他の奴と戦って飛ぶ姿を見てる内にコツを掴んだぜ!!」

 

「織斑先生やシャルロットでも飛べるようになるのに一週間は掛かったのに……私達も負けてられないな。

明日中には私も飛べるようになってやる!」

 

 得意気に笑いながら空中で胡坐をかく弾の姿に、合宿メンバー達は対抗意識を刺激される。

これより数日後、全員が無事飛行術をマスターしたのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 数日後、東京都内・更識家

 

「それじゃあ、行くわよ!二人とも、しっかり気を引き締めてね!」

 

「気を引き締めてって、決戦に行くわけじゃないんですから……」

 

 ある日の朝、礼服に身を包み、刀奈は従者である虚、本音の姉妹を引き連れて門の前に待つ送迎車へと向かう。

三人が向かう先、それは……河城重工。

 

 

 




次回予告

簪に会うべく河城重工へとやって来た刀奈、虚、本音。
だが、彼女達の前に社長である紫が直々に姿を見せ、事態は思わぬ展開に……。

次回『更識一行幻想郷珍道中』

??「うらめしや~~!」

刀奈「何なのよこの人外魔境は~~~~っ!?」





※真耶の修行パートは基礎訓練の延長なのでカットしました。



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