東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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長々と間が空いてしまった上に短いですが、投稿します。

あと気が付いたら100話目。


レベルアップへの茨道(前編)

 合宿開始5日目。

合宿参加メンバー全員が霊力・魔力のコントロールに無事慣れる事が出来たのを皮切りに、数日前に一夏に渡されたものと同じ修行着(霊・魔力養成ギプス服)が千冬達残りのメンバーに手渡され、それを着用しての修行が開始された。

(なお、修行着は各メンバーの力量に合わせて調整されている)

 

「お、重いぃぃ……」

 

 余談だが、何故かチルノも修行着を貰っていたりする。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

迷いの竹林

 

「オラァッ!!」

 

「ちょっ!?待って!ひ、火って!?」

 

「問答無用だ!」

 

「ぐえぇぇっ!!

熱っっ~~~~!!うぅ……」

 

 結界で仕切られた即席の修行用エリアで簪は妹紅の拳を喰らって悶絶する。

それもただの拳ではない、魔力の……それも火炎妖術による炎を纏った手で放った渾身のパンチだ。

いくら纏った魔力で防御していても熱さと痛みは半端なものではない。

 

「何びびってんだ!お前火に弱い獣か!?今のは十分避けれる程度のパンチだぞ!!

それに熱がる暇があるなら反撃の一つでもしてみろ!!」

 

「う、うぅ……。反撃って言っても、どう反撃すれば良いか……」

 

「そんなのはお前のその薄い胸に手を当てて自分で考えろ!」

 

 殴られた部位を手で押さえ、少し弱音を吐きながらフラフラと立ち上がる簪。

そんな彼女に妹紅の檄が飛ぶ。

 

「…………」

 

 無言のまま再び身構える簪。

この時妹紅は気付いていなかった。簪のこめかみに血管が浮き出ている事に。

 

「…………あ、輝夜さん!」

 

「何ッ!?」

 

 不意に妹紅の背後を見て、大声で輝夜の名を呼んだ簪の言葉に妹紅は脊髄反射的に振り向く。

だが、そこには輝夜はおろか、誰一人として人影は無かった。

 

「薄い胸は、余計なお世話!!」

 

「ホゲェッ!?」

 

 振り向いて隙を晒した妹紅の顔面目掛けて、簪のヤクザキックがぶち込まれた。

 

「言われた通り反撃したけど」

 

「そうかそうか。そんなに手加減して欲しくないんだな……!」

 

「……構わない!元々強くなるためにやってる。

だったら、思いっきりやった方が良い!!」

 

 引き攣った笑みを浮かべる妹紅に簪も珍しく好戦的に笑って身構える。

この日、竹林から凄まじい音が鳴り響いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

地底

 

 訓練用に作られた結果を張った広場で、シャルロットはさとりを相手に戦っていた。

 

「ハァ、ハァ……このぉっ!!」

 

「甘いです」

 

 繰り出される魔力弾の連射を次々と回避していくさとり。

特訓の第一関門として出された課題『さとりに攻撃を当てる』という目標は未だ達成できずシャルロットは臍を噛む。

 

(心を読まれるのが、ココまで厄介だったなんて……。

今のままじゃ駄目……チマチマ撃ってたって当たりっこない!なら……!!)

 

「え゛っ!ちょ……アンタ何考えて!?」

 

 シャルロットの心を読み、彼女の策を察したさとりの表情に始めて動揺が走る。

 

「新技行くよ!」

 

 両手に大量の魔力を集め、シャルロットは完成したばかりのスペルを発動させる!

 

「まとめて吹っ飛ばす!爆撃『マインスイーパー』!!」

 

 両手から生み出される大量の球状の魔力弾。

シャルロットはそれを周囲全体に放り投げた!

 

「爆ぜろ!!」

 

 そして全方位に放たれた魔力弾が爆発し、結界内全体を爆炎が包んだ。

 

「ゲホッ、ゲホッ……結界で仕切られてた事、すっかり忘れてた。すっかり

で、でも攻撃、当てたよ」

 

「ま、まぁ……良いでしょう。ちょっとズルいけど……」

 

 爆発によって、さとりのみならず自分も髪型をアフロヘアにしながらも、シャルロットは第一関門を突破した。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

永遠亭

 

 訓練用に用意された長距離廊下(訓練所)

それをISを纏って必死に駆けるラウラ。

多数の妨害やトラップを掻い潜ってゴールまでたどり着く事……これがラウラに与えられた課題だ。

 

「よし!前回失敗したポイントはクリアしたぞ!」

 

 事の始まりは数日前、永遠亭にやってきてすぐに鈴仙と組み手を行うよう指示された。

以前に千冬を破った事もある実力者である鈴仙を相手に、ラウラは心して掛かったものの、結果は当然完敗。

そしてその試合を通して言われた指摘……。

 

 

 

『いい、ラウラ?

戦ってみて分かったけど、アナタには2つ重大な弱点があるわ。

ココでの特訓はそれを直す事に重点を置いて訓練するわ』

 

 

 

 そしてラウラは日々この長い廊下を駆け続ける。

多数設置されたトラップ(てゐ作)、鈴仙からの妨害によって毎回ボロボロになりながらも……。

 

「くっ……来たな!」

 

 設置されたトラップから放たれる矢の雨霰。

初日はこれをAICで受け止めようとして別方向から奇襲され、痛い目に遭った。

 

(ウドンゲ教官が言っていた……『弱点その1・AICに頼りすぎて、何でもAICで片付けようとする傾向がある』。

確かにその通りだ……AICは強力な武器、それ故に私の戦い方はAIC中心になり過ぎていた。

それを使う事自体は良い。だが、それだけに頼りすぎてはその性能も十分に発揮できなくなる!ならば……!!)

 

 迫る多数の矢にラウラは一瞬だけ意識を集中させ、AICで矢の一部を止める。

それで十分だった。

 

(以前の私なら矢を止め続けていたが、今は違うぞ!

止めるのは一瞬だけで良い!!)

 

 そして一瞬だけ止まった事で他の矢と着弾するタイミングが変わり、その合間を縫うようにして避ける。

 

「見えた!」

 

 さらにそこから自分に目掛けて発射された鈴仙の妖力弾を回避してみせた。

 

「っ……やるようになったわね。なら、次はこれでどう!?」

 

 ラウラの成長をその目にして、鈴仙はニヤリと笑みを浮かべて己が妖力を高める。

 

「ぬぅっ!な、何だ……め、目が?」

 

 鈴仙の眼が赤く変色すると同時にラウラの視界から鈴仙の姿が消えた

かつて千冬を苦しめた時と同じく、鈴仙の能力がラウラの波長を狂わせ、視界を狂わせたのだ。

 

「弱点その2・アンタは目に頼りすぎている。

AICを使う事が多かった影響でしょうけど、目で追えない敵や視界を奪う相手にはとことん弱い!

身に覚えがあるんじゃないかしら?」

 

「うぐっ、確かに……」

 

 図星を疲れてラウラは言葉を詰まらせる。

以前戦った一夏にせよ椛にせよ、その弱点が如実に出たがために完敗を喫したと言っても過言ではない。

 

「これが第2関門よ!私の攻撃、全て避けるか防ぎきってゴールしてみせなさい!!

散符『真実の月(インビジブル・フルムーン)』!!」

 

 鈴仙から放たれる弾幕がラウラを襲う。

迫る弾幕を前にラウラは直立不動のまま身構える。

 

「……甘く見るなよ。私だって策ぐらい用意している!!」

 

「何ですって!?」

 

「クラリッサ(元副官で現シュバルツェア・ハーゼの隊長)が言っていた!こういう時は……」

 

 自信満々に言い放ち、ラウラは静かに己が目を閉じた……。

 

「心眼……即ち心の眼で見れば良いんだ!!」

 

 

 

 

 

 

「……フッ」

 

 目を閉じて数秒、不意にラウラは口元に笑みを浮かべ、そして……

 

「……真っ暗で、何も見えん」

 

 閉じたラウラの眼から涙が一筋流れた。

それとほぼ同時に妖力弾はラウラに着弾したのだった。

 

「ひでぶぅっ!!」

 

 全身に妖力弾を諸に浴び、ラウラはものの見事に墜落し、床に這い蹲った。

 

「ねぇ、アンタって…………」

 

「控えめに言って、馬鹿ですね」

 

「阿呆ウサ」

 

「いいえ、馬鹿で阿呆よ」

 

 永遠亭メンバー全員がラウラを憐れむ目で見詰めたのだった。

 

「心の眼って言う発想は間違いじゃないわ。

けど、それは視覚のみならず、聴覚、嗅覚、触覚といった全ての感覚を研ぎ澄ます直感(もの)の事を言うのよ。

断じて心に目があるとかそんなんじゃないから。

分かったらさっさと立つ!次は姫様とてゐ相手に組み手よ!!」

 

「い、イエッサー……!

うぅ……クラリッサの嘘つき……(泣)」

 

 ラウラの苦難はまだまだ続く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




残りのメンバーは次回。
そして、次々回より楯無を本格的にレギュラー入りさせます。

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