長いことパチンコと学校であった怖い話にかまけてしまい、更新サボってすいませんでした!!
弾達が各々の師匠の下へ向かった後、一夏と千冬は命蓮寺に残り命蓮寺の面々指導の下、自分達の修行を開始していた。
「フンッ!ぬぐぐ……!!」
「そう、その状態を維持するのです。長く続ければ続けるほど魔力量と体力
が鍛えられます」
一夏は自身のスタミナと魔力を徹底的に底上げする為に常に魔力を全力で出し続ける状態を維持し続け……
「千冬さん!また魔力が漏れてますよ!もっと全体に気を配って!」
「う、うむ……こうか?」
千冬は自身の苦手分野であった魔力の微細なコントロール技術を磨く。
それぞれ体力の底上げと弱点克服に励むという、スタンダードな修行。
最初の1日はこれをメインに行って身体を慣らし、明日から更に厳しい修行を追加する予定だ。
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織斑姉弟の修行が開始される中、他のメンバーも各々の師匠の下、独自の修行を開始していた。
まず、一夏を除けば唯一の男性メンバーである弾は……。
「よし!坊主……弾って言ったな?
早速質問だが、お前素手で戦う時は手技と足技どっちが得意だ?」
「へ?べ、別にどっちでも大丈夫ですけど……どっちかって言えば手技、かな?」
師匠である高原日勝からの突然の質問に疑問符を浮かべながらも弾は答える。
弾は基本的に武器を使った戦いを得意としている。
IS戦である以上それは当たり前だが、弾の場合はどんな武器でも(特殊なものでない限りは)早々に習熟して使いこなす事が出来るのだ。
物を使う器用さという点で言えば一夏や咲夜以上の才能だろう。
一方で素手での戦闘も勇儀と萃香との組み手の繰り返しでそれ相応に対応できるようになっている。
「手技か。よし、なら決まりだな」
「?」
何かを決したよう高原は弾と距離を取って向き合う。
「お前に教えてやるのは一つ、見切りだ。
お前は俺と同じで相手の技を真似て盗むのが才能があるって聞いた。
だが、戦ってる内に技を盗むのには時間が掛かりすぎる」
「う……」
身に覚えのある指摘に弾は言葉を詰まらせる。
思い出すのはトーナメントでの対セシリア戦。
彼女の
反撃に転じるまでが長く、かなりSEを削られて漸くセシリアの動きを見切って反撃する事が出来たのだ。
もしもあの時に、もっと早く見切れていたらと思った事は一度や二度じゃない。
「俺と組み手をやって動きを見切ってみろ。
俺が使う手技を一つでも見切って盗めたら次の修行に進めてやる」
「押忍!」
高原の意図を汲み取り、弾は威勢良く返事を返し、自らも構える。
「よーし!チルノ、開始の合図頼むぜ!」
「OK!じゃあ行くよ!よーい、始め!!
(へへん!天才のアタイが覚えるのに5日かかった高原のオッちゃんの技だ。
弾って奴がどれ程のもんか知らないけど、最低でも一週間以上は掛かるのは確実だね!
アイツが苦労して覚えたらアタイの記録を教えて姉弟子の威厳を見せ付けてやる!)」
チルノの合図と共に始まる二人の組み手。
他方でちょっと邪な事を考えるチルノ……だったのだが、
弾はこれから4日程で高原の技を覚える事になるのを彼女まだ知らない。
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「(……そろそろ夕暮れですね。良い頃合でしょう。)
一夏さん、一旦修行はココまでにしましょう。」
一夏が修行を開始して5時間近くが経過し、日も暮れてきた頃、白蓮は一夏の修行を制止し、二人に近付く。
「ハァ、ハァ……もう終わりですか?
確かに疲れはあるけど、俺はまだやれます!」
体力的な余裕か、はたまた束の強さへの焦りか一夏は続行の意思を見せるが、白蓮は首を横に振る。
「これ以上は却って負担になります。
それに、これから貴方に特殊な修行を施すので、体力は残してもらわねばなりません」
「特殊な、修行?」
白蓮の言葉に一夏は怪訝な表情を浮かべる。
「早速ですが、これを着てください。」
そう言って白蓮が取り出したのは1枚の表面に文字のような模様が細かく刻まれた黒いTシャツだった。
「これは?」
「今回の修行用に作ってみたものです。試作ではありますが、貴方なら恐らく問題ないでしょう」
「へぇ、それじゃ早速……」
白蓮の言葉に納得し、一夏はそのシャツに袖を通す。
着てみた感じは、ごく普通のTシャツと同じものであり、これが一体修行にどう関係するのかと一夏は首を傾げる。
「では、失礼して、…………絶ッ!」
「ん?……うおぉぉっ!?」
白蓮によって流し込まれた魔力にシャツの文字が一瞬光り、それと同時に一夏は突然地面に倒れ伏した。
「な、何だこれ!?お、重い……!」
全身にかかる大きな重力に身動きが取れなくなり、何とか立ち上がろうとするも身体はまったく動かない。
「私が封印されていた頃に使われた封印術と道具を基にして、私と魅魔さんとで作った特殊な法衣です。
魔力や霊力などのあらゆる力を押さえ込み、肉体は動けなくなります。
この状態から脱するには封印を上回る魔力を身に纏って、封印の力を中和せねばなりません」
「ぬぎぎ……こ、こうか!?」
白蓮の説明に従い、一夏は全身に纏う魔力を高めていく。
すると、今まで身体に掛かっていた重力が弱まり、一夏の肉体は拘束から開放された。
「どうやら完成度は申し分ないようですね。
まず今日はこれを着たまま生活、明日からは修行もそれを着たまま行います」
「な、なるほど……常時修行になって力を付けられるって訳か」
「はい、千冬さんや他の方にも、調整を終えたら順次配っていく予定です」
白蓮の説明を余所に、既に一夏は立ち上がって身体を動かし始める。
「これなら
思わず口に出してから一夏は“しまった”と後悔する。
「…………」
目柄の前には悲しげな表情を浮かべる白蓮。
そうだった、自分が戦うべき相手の一人は白蓮の実の弟であり、更には血縁上は自分の実の父親なのだ。
(正直、実感なんて無いけど……)
一夏にとって、これまで家族は千冬だけだった。
そんな中で血縁だけの関係とはいえ、突然現れて敵に回った存在が父と知り、当然戸惑いはあったが、感情は思いの外変化しなかった。
だが、白蓮は違う。父が生前の頃から彼を愛し続けた彼女にとって、今回の事件は彼女の心に大きく傷をつけるものだ。
「すいません、無神経でした……」
「いえ、良いんです。それに、あの者達に操られるのは命蓮にとっても苦痛でしょうから……」
一夏からの謝罪を白蓮は首を横に振って受け流す。
「あ、あの……時間があるなら、教えてもらえませんか?
命蓮……俺の父さんに当たる人がどんな人だったか?」
「ええ。良いですよ」
重い雰囲気を変えようと一夏が発した言葉に白蓮は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
そして、一夏は知る事になる……己が父、聖命蓮という男を。
「ところで、一夏さん」
「何です?」
「私の事は普通に伯母さんと呼んでくれても構いませんよ」
「いや、姉と見た目年齢が変わらない人を伯母さんと呼ぶのはちょっと……」
なお、白蓮は既に一夏を甥っ子として見ているようである。
次回予告
白蓮の口から語られる伝説の大僧侶・聖命蓮。
彼の生前の活躍、そして嘗て唯一交わした言葉に一夏は……。
次回『幕間~聖命蓮という男~』
一夏「白蓮さん、もしかして……」
白蓮「ええ、愛していました。
……いえ、今でも愛しています」