今年初の投稿です。
「3……2……1……0 !よーし、ここまでだ!」
合宿二日目
時刻は朝の7時半。
早朝5時に起床した合宿メンバー、加えて今日から本格的に合宿に加わった一夏と千冬は前日に行った魔(霊)力特訓を1時間、更に30分の休憩を挟んで基礎体力作りと筋カトレーニングを合わせて1時間行った。
「ゼェ、ゼェ……。
な、何でアンタ達姉弟は息一つ乱れてないのよ?」
「ぐ、軍の訓練でもココまで疲れた事は無いぞ……」
早朝からハードなメニューをこなし、一夏と千冬を除く全員がヘトヘトになって地に座り
込む。
「皆さーん、食事が出来ましたよ〜〜!」
そんな中、下宿先の命蓮寺から門下である山彦の妖怪・幽谷響子の大声が広場に響く。
「飯(ご飯)っ!!』
当然ながらハードなスケジュールをこなしてきたメンバーは空腹な訳で、『食事』の一言に過剰反応し、皆我先にと室内へと駆け出すのだった。
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「ガッ…ガツ……ガツ!」
「はむっ……はむっ……!」
「ングッ…ングッ……ぷはぁ〜〜〜〜っ!!」
テーブルの中央に山積みにされた白蓮お手製のおにぎり、村紗の作った味噌汁、一輪が漬け込んだ漬物、星が淹れたほうじ茶を囲み、メンバーは凄い勢いで食す。
「ハグッ……塩が良く効いて美味いな。具も色々とあるから飽きが来ない」
「お粗末さまです」
ちなみに、おにぎりの具は鮭、梅干、おかか、昆布、高菜、明太、焼肉など多数である。
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そして、朝食後再び広場に集まったメンバーは
……。
「よし、これからは個別訓練に入る。各自、前もって渡した地図に書かれた場所に行ってくれ。
そこで、それぞれに宛がわれた専属の教官が待っている」
千冬から受け取った地図に従い、メンバーはそれぞれ、師匠となる存在の元へと向かう。
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《五反田弾の場合》
「えーっと、ココ……だよな?」
紅魔館近くの霧の湖の湖畔に設置されたテントを前に弾は怪訝な表情を浮かべるが……。
「ん?」
不意に、弾はテントの裏手から聞こえる物音を捉え、そちらへと足を運ぶが……。
「どりゃああ!!」
「良い浴びせ蹴りだ!俺が教えた通りに使いこなせてるじゃねぇか。
だが、まだまだ遅いぜ!!」
「ひでぶっ!?」
そこには、額にバンテージを巻いたオッサンと氷の羽根を生やした少女が格闘している光景があった。
(何なんだ、この光景……?)
「ん?おぉ!お前か、俺の担当する奴ってのは?」
男は弾の存在に気づき、少女との組み手を中断して弾へと近づく。
「は、はい!五反田弾です。よろしくお願いします!」
「おう!俺は高原日勝、格闘家だ」
(え?高原日勝って あの勇儀さんとタイマン張って互角に渡り合ったっていう……)
高原からの自己紹介に弾は以前に訓練生仲間から聞いた噂を思い出し、唖然とする。
「で、今そこで倒れてるのがチルノ。少し前に俺に挑戦して負けたから弟子になった妖精だ」
唖然とする弾に高原は倒れて悔しそうに唸っているチルノを指差す。
「ま、これから二人纏めて面倒見てやるから、よろしく頼むぜ!」
「お、押忍!!」
高原の豪快な笑みを浮かべた挨拶に、弾はやや戸惑いながらもしっかりと返事をしたのだった。
「おい、お前!」
「ん?」
そんな中、いつの間にか復活したチルノは弾に近寄り声を掛けた。
「アタイの名はチルノ!一夏も霊夢も高原のおっちゃんも超えて最強になる妖精だ!
あと、アタイの方が姉弟子だからな!よく覚えとけ!!」
(何抜かしてんだ、このチビは?)
この奇妙な組み合わせに、弾は一抹の不安を覚えたのだった。
五反田弾
師匠・高原日勝
姉弟子・チルノ
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《セシリア・オルコットの場合》
セシリアが地図に従いやって来た場所は、人里から離れた場所にある未開地の草原地帯だった。
「来たわね。待ってたわ」
「あなた達は、合宿の時の……」
セシリアを待っていた人物……それは以前、臨海学校での事件の際に助けられた炎魔所属の少女、天野晴美と神埼ジンヤの二人組だった。
「ジンヤの方は、
炎魔所属の天野晴美よ。
アンタの指導は私が担当するわ。で、ジンヤはそのアシスタントね。ま、これからよろしく」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「早速で悪いけど、アンタの射撃の腕を見せてもらうわ。ジンヤ、アレを」
挨拶もそこそこに晴美はジンヤに指示し、大型のケースからあるものを取り出す。
「……ドローン?」
セシリアが疑問符を浮かべるのを余所にジンヤは取り出したドローンを起動させ、それを空中に飛ばす。
「今からISのライフルでアレを狙撃してみせなさい。
ただし、ハイパーセンサーは無しで」
「……解りましたわ」
ある程度ドローンが離れたところで、晴美は指示を出す。
晴美の意図は解かりかねるものの、セシリは指示に従ってブルーティアーズを身に纏い、スターライトmk-Ⅲを展開して、ドローンに狙いを定める。
(センサー無しでというのは少々難しいですが、これくらいなら……! )
狙いを定め、動き回るドローンを狙い撃つセシリア。
流石に一発二発程度では当たらなかったが、数発程撃った所でレーザーがドローンのプロペラに命中し、落としてみせた。
「ケッ!話にもならない豆鉄砲ね!」
「んなっ!?」
セシリアの射撃を眺めながら、唐突に晴美は下品な口調で悪態を吐いた。
「い、いきなり何を言うのですか!?」
「あー、ごめん。晴美は銃の事になると普段以上に毒舌だから」
いきなり罵倒され慟既するセシリアにジンヤはフォローに入る。
一方、晴美はそんな事にお構い無しに腰のホルスターに下げられた二丁の拳銃を取り出す。
「ジンヤ、もう一回ドローン飛ばして。残りの分全部」
「了解」
晴美の指示に従い、ジンヤによって残りのドローン12機が次々に飛ばされていく。
そしてセシリアが狙撃した時と同じ距離になった時、晴美は両手の拳銃を静かに構える。
「狙いも連射も甘過ぎんのよ!そんなんじゃ、これから先の戦いであっけなく死ぬわよ。
せめてこれくらい出来るようにならないとね ……!」
(え?ま、まさかハンドガンで、しかも生身でアレを!?)
セシリアが目を見開いたその刹那、晴美の銃が連続して火を吹き、瞬く間に発射された多数の弾丸、それらが一発の無駄も無くドローンの中心を撃ち抜き、12機ものドローンは一斉に地に落ちた。
ISも装備せず、ライフルより射程のはるかに短いハンドガンにも関わらず完璧な狙擊、 更には自身の遥か上を行く常識はずれの連射にセシリアは開いた口がふさがらず、呆然と立ち尽くす。
「ま、ざっとこんなもんだけど、私に教わる事に何か文句ある?」
「ありません……御見それしましたわ」
セシリア・オルコット
師匠・天野晴美
アシスタント・神埼ジンヤ
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《更識簪&ラウラ·ボーデヴィッヒの場合》
「この竹林、だよね?」
「うむ……」
奇しくも渡された地図の行き先が同じ迷いの竹林入り口だった簪とラウラ。
だが、入り口まで来たのは良いものの、自分達の担当者の姿が見えない事に首を傾げる。
「ん?おい、簪……。アレを見ろ」
「……光?」
竹林の奥から見える赤い光、それに導かれるように竹林に入る二人。
「くたばれ!この蓬莱クソバカ姫が!!」
「あんたが死になさいよ!アホバカぼっちが!!」
そこでは、二人の女がガチバトルの真っ只中だった。
「「これで最後d…『いい加減にしなさい!』うぎゃっ! ?」」
二人がお互いの顔面をその拳に捉えた時、どこからか飛んできた二本の矢が二人の尻を射抜いた。
「まったくもう、やっぱり姫様だけに出迎えに行かせるべきではなかったわ」
矢を射ったその人物……八意永淋は部下の鈴仙とてゐを引き連れて現れる。
そして、矢(痺れ薬付加)で射られて地に伏せて痙攣する二人……蓬莱山輝夜と藤原妹紅を見下ろし、頭を抱えながらそう呟いたのだった。
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「……と、言うわけで、ラウラさんは私達の永遠亭に、簪さんは妹紅さんの下へ行ってもらう事になります」
妹紅と輝夜を強制的に落ち着かせた後、永淋から説明を受け、簪とラウラは漸く自分の担当者が誰か理解するのだった。
「ラウラだったかしら?これからよろしくね。
ま、大船に乗った気でいなさい。私達が鍛えるからにはどこぞのアホバカ案内人から指導受けるより遥かに強くなれるから」
「簪って言ったな。
安心しろ。私がきっちり鍛え上げてやる。どっかのクソボケ姫の駄目指導なんか目じゃなからな!」
((し、師匠同士の因縁に巻き込まないで……))
未だ二人のケンカ腰は収まらないままだが……。
「ラウラ……私達、ずっと友達でいようね」
「ああ、私達はずっと友達だ簪……」
簪とラウラ……二人の新密度が大幅に上がった。
更識簪
師匠・藤原妹紅
ラウラ・ホーデヴィッヒ
師匠・永遠亭メンバー
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
《篠ノ之箒の場合》
「い、石畳の下にこんな場所が?」
「うむ、ココが我らの修行地、神霊廟じゃ!」
地図に従い、博麗神社へとやって来た箒は、そこで待ち構えていた尸解仙の少女・物部布都に連れられ、神社の石畳から神霊廟へと入っていた。
そこで待っていたのは獣耳のように二つに尖った金髪に、耳当てを着用した少女だった。
「お待ちしていました。篠ノ之箒さん。
私は豊聡耳神子。この神霊廟の長だ」
「は、はじめまして。篠ノ之箒です。今回はよろしくお願いします!」
どことなく感じる風格に、箒は深々と神子に頭を下げる。
「話は布都達から聞いている。……君の身体の事を含めてね」
「……」
神子の言葉に箒は表情を顰める。
分裂する以前の自分、そして分裂したもう一人の自分……どちらも自分の醜い面を思い出させる存在だ。
「君の身体は魂が分裂してしまった事で不安定だ。
まずは魂を安定させましょう」
篠ノ之箒
師匠・豊聡耳神子
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
《シャルロット·ビュセールの場合》
「ハァ、ハァ……ぜ、全然当たらない。
まるで全て見透かされてるみたいだ……」
「その通りです。これが私の【心を読む程度の動力】。
アナタの考えは全て読めています」
地底に聳え立つ館『地霊殿』の庭にて、シャルロットは館の主、古明地さとりに出迎えられ、到着早々彼女との組み手を指示されたのだが、遠距離から弾幕を撃っても、接近して格闘戦に持ち込んでも一撃与える事すら出来ずにただただ体力を消耗するのみだった。
「アナタの強みは豊富な手数だと聞きましたが、当たらなければ何の意味もありません。
今は生身だけですが、仮にISでアナタが得意とする
まずは私に一撃でも当てる事……それが第一関門です」
シャルロット・ビュセール
師匠・古明地さとり
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
《山田真耶の場合》
「えっと……私は、どこに行けば?」
参加者の中で唯一地図を渡されなかった真耶は困惑しながら、その場に立ち竦む。
「真耶、お主はココで儂と実戦形式で修行じゃ。
お主は他の者と違って既に戦闘スタイルが完成されとるからの。
後は基礎を鍛え、地力を徹底的に底上げするだけじゃ」
「は、はい!」
山田真耶
師匠・ニッ岩マミゾウ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
《鳳鈴音の場合》
「ココが、紅魔館……。本当に真っ赤なのね」
鈴音は目の前に聳え立つ紅魔館の外観に鈴音は圧倒されていた。
「待ってましたよ、鈴音さん!」
門の前で待っていたのは、紅魔館の門番で鈴音にとっても合宿前からの師匠格である紅美鈴だ。
「やっぱり私の担当って美鈴さんだったんだ」
「はい……ですが最初に一つ、修行の前に、詫びなければいけない事があります」
「え?」
突然すぎる『詫び』の言葉に呆然とする鈴音。
そんな彼女に美鈴は深々と頭を下げる。
「改めて自己紹介します。私は心山拳門弟、紅美鈴。
今から約300年前の心山拳師範 アナタのご先祖様に当たるレイ・クウゴの弟子です!」
「は?は、はいぃぃ〜〜〜〜〜っ!?
い、今、何て?……私が、美鈴さんの師匠の?」
「私も知ったのは学年別トーナメントの後でした。
知らぬ事とはいえ、大恩ある師匠の血を引くアナタへのこれまでの無礼の数々、深くお詫びします」
いきなりの爆弾発言に鈴音は盛大に混乱する。
それを余所に美鈴は鈴音に対し、頭を下げ続けている。
「鈴さん、私はアナタに私の持つ心山拳の技全てを伝えたい。
ご指導、受けていただけますか?」
「あ、うん。それは勿論……。
これからもよろしくお願いします……。
あ、あと変に肩肘張らなくていいから……」
若干変な方向に話が行きつつも、二人の師弟関係は無事継続となったのだった。
鳳鈴音
師匠・紅美鈴
次回予告
簪達学園組が修行を開始する中、一夏と千冬もまた、命蓮寺で白蓮指導の下、己を鍛え直す修行を開始する。
新たな修行で二人は何を得るのか?
そして、血縁上とはいえ、実の父と敵対する事になった一夏は何を思うのか?
次回『父を追って』
白蓮「普通に伯母さんと呼んでくれても構いませんよ」
一夏「いや、姉と見た目年齢が変わらない人を伯母さんと呼ぶのはちょっと……」