東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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工場退職、パソコン修理、バイト探し……、
それらを乗り越えて遂に俺、復活!!

今回は短いですが、またよろしくお願いします。


幻想郷の洗礼

「という訳で、シャルは死んじゃいない。向こうで自殺を偽装してこっちに移住してたんだ」

 

「そ、そうか……。

何でも有りとは思ってたが、ここまでとは……」

 

 死んだはずのシャルロットの復活による大騒ぎから約20分程経過し、パニックになった弾達7人は事情を説明されて漸く落ち着きを取り戻した。

 

「それで、デュノア……じゃなくて、ビュセールさんも合宿に参加するのですか?」

 

「うん。これからまたよろしくね。

あ、僕の事は普通に名前で呼んでくれていいから」

 

 漸く再会の挨拶を済ませ、合宿メンバーはシャルロットを含めた8人となった。

 

 

 

 

 

「さて ……それじゃあ、これからまず全員の基礎的な実力をテストする。

お前達には河城重工(こちら)で用意した相手と一人ずつ対戦してもらうぞ」

 

 再会の挨拶も程々にと千冬が切り出し、その含葉に8人の表情が引き締まる。

この合宿における第一歩が遂に始まるのだ……そう思うだけで不安と緊張で身体が強張りそうになる。

 

「まず、戦う相手だが『お〜〜い!』……アイツらだ」

 

「い゛ぃっ!?あ、あの声は……」

 

 千冬が指した先からやって来る声の主達に弾の顔が大きく引き攣る。

無理も無い……その人物は彼にとって畏怖の対象にして絶対に頭の上がらない存在なのだ。

 

「よぉ弾!久しぶりじゃないか!」

 

「まさか幻想郷(こっち)でアンタに会えるとはねぇ。

この前(束襲撃時)は会えなかったから、会うのを楽しみにしてたよ!」

 

「ゆ、勇儀姐さんに萃香さん!?」

 

 そう、弾が訓練生だった頃の教官コンビ、星熊勇儀と伊吹萃香である。

 

「この方達が、弾さんの教官……というか、あれって」

 

「"角”だよね?」

 

 空を飛んだり、羽根や獣耳が生えているのを見ても、やはり初めて見る角には驚きを隠せないセシリア達。

そんな中、弾は何かに気付いた様な表情を浮かべて一夏に向き直る。

 

「なぁ、勇儀姐さんと萃香さんって……」

 

「ああ、鬼だ」

 

「 納得」

 

 鬼(みたいな)教官と思ってた二人が本物の鬼だった事に、弾は死んだ魚の目をしながらがっくりと項垂れたのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「さて、弾以外の奴らは初対面だから自己紹介させてもらう。

私は星熊勇儀。誇り高き鬼の四天王が一人『カ』の勇儀だ。

怪力乱神を操る程度の能力を持っている」

 

「同じく鬼の伊吹萃香。

能力は密と疎を操る程度の能力だよ」

 

「程度……?」

 

 とても“程度”で片付くような物ではない能力にラウラが思わず疑問符を浮かべて呟く。

 

「細かい事は気にしなくて良いぜ。

ここでは能力の大小に関わらず『程度の能力』で表すんだ」

 

 ラウラの問いに魔理沙が補足・説明する。

 

「まぁ、そう言う事だ。

私達はお前達8人の基礎戦闘訓練を任されている。

合宿の間、定期的に私達と組手を行うから覚悟しときな!

特に弾、今回は外の世界の時みたく甘くないぞ!」

 

「お、押忍!!」

 

 萃香からの檄に半ば反射的に返事する弾。

他の者達も返事こそ無かったが、より一層緊張した面持ちとなる。

それを一瞥し、勇儀は一歩前に出て口を開いた。

 

「それじゃ、早速始めるとするか。

まずは私と一対一(サシ)で組み手をしてもらう。勿論生身でな。

武器は一夏達が用意してくれてるから自由に使って構わない。

さぁ、誰から来る?」

 

 一夏達の手で準備される訓練用の武器を尻目に、好戦的に笑いながら勇儀は一歩前に出る。

その威圧感に8人は思わず身じろぎ、押し黙る。

だが、数秒程沈黙が続く中、ある人物が端を切った。

 

「お、俺だ!俺がやる!!」

 

 その人物は勇儀と萃香に最も動揺していた筈の弾だった。

 

「弾、アンタ一番ビビッてたんじゃ?」

 

「ああ、正直言って今でもビビってる 」

 

 鈴音からの最もな指摘に弾は真剣な表情で返す。

 

「けど、あの人達のとんでもない強さは俺が一番良く分かってる。

だからこそ、皆よく見とけ!俺達が相手しなきゃいけない相手がどんだけ桁外れかをな!!」

 

 自ら当て馬になる覚悟を決め、弾は歩を進めて勇儀の前に立つ。

 

「まずはお前か、弾。

ルールはお前が訓練生だった頃にやってた組み手と同じ、

私が持った杯に注がれた酒を一滴でも零させる事が出来れば合格とする。

異存は無いな?」

 

「押忍!!」

 

 手に持った杯の9割近くを占める量の酒を注ぎ、勇儀は仁王立ちしながら弾に問い、弾はそれに力強く頷いてみせる。

そんな教え子の覚悟に勇儀は満足気な表情を浮かべる。

 

「よーし、良い返事だ。

それじゃ、鈍ってないか見てやるよ。かかってきな!!」

 

 地獄の合宿開始!!




次回予告

 訓練以来、久方ぶりに勇儀に挑む弾。
学園生活で鍛え上げられた弾の実力は、果たしてどこまで勇儀に届くのか?

次回『弾VS勇儀 恐るべき鬼の力』

勇儀「ハッハッハッ!!随分器用になったじゃないか!!」

弾「どこまでだって足掻いてやらぁっ!!」

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