烏森に選ばれた少女   作:琴原

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初めてのため誤字脱字、見にくいなどのことがあるかもしれませんが、ご容赦ください。


過去~少女の始まり~

今から7年前。

 

当時7歳だった私に、祖父はこう言った。

 

 

 

「よいか、真守美。

お主も今年で7になった。

よって、正統なる継承者の名に恥じぬよう、お主に烏森の地を守るための術を身に着けてもらう」

 

 

 

 

それからの私には、修行の日々の繰り返しになった。

 

辛いことが多かったが、私は知らないことを知ることが楽しかった。

 

だから修行にも耐えることが出来た。

 

 

でも、大人達は違った。

 

 

 

 

9歳になり、出来る術も増え本格的に烏森を任され始めたころのことだ。

 

その日の私は、何時ものように学校から帰り、家の道場で修行した後、父さんの作った夕食を兄と弟に挟まれながら食べ、お風呂に入った後少しの間仮眠をとり、深夜の学校へと駆け出す。

同じく烏森を任されている雪村時音の小言を右から左へ流しながら妖を滅していく。

其れを繰り返していれば、あっという間に時刻は帰宅の時間をさしていた。

道中も色々と言われていたが内容は忘れた。

家に着き、門をくぐる前に「おやすみ」と言われたので、反射的に「おやすみ」と返すと、彼女は満足そうに家に入っていった。

彼女の行動に不思議に思いながらも家に入り、部屋に天穴を置き、祖父の部屋に向かう。

基本的に報告などは朝で構わないのだが、私の場合は祖父より刷り込まれた「報連相」が体に染み込んでしまい、無意識に体が動いてしまうのだ。

こういう時は大体が祖父の部屋の前で寝息が聞こえた時に気付いて自分の部屋に戻るか、偶々その日書道の練習をしていて祖父が起きていたから報告をする、という2パターンだ。

大体は最初のパターンが多い。

 

祖父の部屋へ着くための曲がり角で、祖父の部屋から光が漏れているのが見えた。

今日はコッチの方か、と内心呟きながら祖父の部屋に向かう。が、途中で祖父以外の気配があることに気が付いた。

気配を消し、祖父の部屋の襖の横に身を隠す。

部屋から聞こえてくる声は2つ。

1つは祖父の声、もう1つは普段家を離れ妖退治をしている私の母、墨村守美子の声であった。

母が帰ってきていたという事に驚きながらも、あの二人がどんな話をしているのかが気になり、こっそり話を聞いてみることにした。

 

最初はいきなり帰って来た母に色々言う祖父であったが、母が無事なことを確認するかのように質問していく。

しかし祖父の言葉も母によって断ち切られる。

話の内容は、私のことについてだった。

 

「そういえば、真守美はどうしてます?ちゃんと役目を果たしていれば良いのですが」

「ふん、あ奴はお主のようにじゃじゃ馬では無いからのぉ。ようやっておる」

 

普段から褒め慣れていない私はそれを聞いて柄にもなく喜んでしまった。

でも、

 

「ならいいんですけど、あの子は雪村と違い男家系の墨村に生まれたから、やはり男の正守には劣っているでしょう。同じ女の私が言うのも変ですが、やはり女のあの子には厳しいと思います」

「…わしかて方印が出さえしなければ、あ奴にあんな無理させとらん。だが、方印が出た以上正守に任せるわけにもいかん。酷かもしれんが、普通の女子として扱う訳にもいかん」

 

それを聞いたとき、私の頭の中は真っ白になった。

祖父達は兄のような優秀な才能ある〝男〟の正統継承者を望んでいた。

私は、祖父達の期待に、応えられない…?

 

暫くフリーズしていると、後ろから肩をたたかれる。

 

「っ…」

「真守美」

 

肩をたたいたのは兄の正守だった。

 

「おにぃ、ちゃ…」

「もう遅い、報告は起きてからにしな」

 

そう言われ、正守に手を引かれながら静かに部屋に戻る。

 

部屋の前に着くが、兄の手を離さない。

 

「真守美?」

「ねぇ、お兄ちゃん。私って、産まれちゃいけなかったの…?」

「!そんなわけないだろ」

「だって…」

「いいか、お前は確かに女の子だ。そりゃ男で年上の俺に劣る部分は多い。でもな、お前は正統継承者だ。俺にないモノを、お前は持っている。今はまだソレが目覚めていないだけで、ちゃんとお前にもあるんだ。御祖父さんも母さんも、お前が心配でああ言ったんだ。たとえお前が男だったとしても、それは変わらない。お前は、墨村家に望まれて産まれたんだ。だから、もう二度と、そんな事言っちゃダメだぞ」

 

兄はそう言うと最後に、私の頭を優しく撫でた。

 

「…ごめんなさい」

「分かってくれたならいいんだ。今日は疲れただろう、ゆっくりお休み」

「うん、おやすみなさい」

「おやすみ」

 

私は兄から離れ、自分の部屋に入り、仕事着からパジャマに着替え、布団に入り瞼を閉じる。

1つの願いを、胸に秘めながら……。

 




今回はここまでとなります。

次回からは原作(?)に突入したいと思います。

何か不満やご意見がございましたら、些細な事でもよろしいので、どんどんしてください。

本日は見て下さり、誠にありがとうございました。

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