物語館   作:むつさん

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どうも悠樹です

ちょっとした小話です。


ではごゆっくり


盲目と約束

あのときの約束…覚えてる?

 

……

 

「ここ…どこだろう…」

 

森の入り口でよく見かける果物を探していたはずが…いつの間にか見覚えのない場所まで来てしまった…

 

「迷った…どうしよう…」

 

いつも目印にしている木や景色も見えない…

 

「奥に迷い混んでないかな…」

 

「迷子かな?」

 

「あっ…」

 

後ろから声が聞こえた…

振り向くと羽のある女の子…

妖怪少女がいた。

 

「もうだめだ…」

 

「ねぇ、迷子なの?」

 

「うん…」

 

「そっか。人里の子供かな?」

 

「そうだよ。」

 

「連れてってあげるね。」

 

「えっ?良いの?」

 

「だって、迷子なんでしょ?」

 

「そうだけど…」

 

「ほら、おいで。」

 

少女におんぶしてもらう。

 

「入り口まで向かおっか」

 

「うん…ありがとう。」

 

「どういたしまして。ところでどうして森に来たのかな?」

 

「入り口の近くの果物を取りに来てて…」

 

「そっかそれで迷い込んだんだね。かなり奥まで来ちゃってるよ?」

 

「そうなんだ…」

 

「入り口まで距離もあるし少し歌を聞いてもらおうかな。」

 

「えっ?う、うん…」

 

少女は歌った。

とても綺麗で素敵な歌声で。

聞き入ってしまう。

 

子守唄のようでだんだん眠たくなってくる…視界が霞んで…ねむたくて…

 

「また。会いに来てね?」

 

「う…うん…」

 

それからまた歌を聞いていると

眠ってしまっていた

 

「すぅ…ふぅ…」

 

「ふふ、今はお休み」

 

……

 

目が覚めてからのことだった…

 

「うぅ…んぅ?」

 

目線に薄っすらと光を感じる

でもそれがどんなものかはわからなかった。

 

「どうなってるんだろ…」

 

目を開けている感覚はあるのに何も見えない…

 

「ここどこ…」

 

何度目を開け直しても。どこを向いても何も見えない…

 

「目が…視えない…?」

 

「目が覚めたのね!」

 

母の声がするが。

声の方を向いても何も見えない…

 

「母さん?どこに居るの?」

 

「何処って…ここにいるわ!」

 

「ここって言われても…わからないよ…」

 

「目の前にいるわ?」

 

「何も…視えないよ…」

 

「まさか…貴方…目が…」

 

母が心配して医者を幾つも呼んでくれたが

永遠亭の医者にも治せないような状態だって聞いた

 

目が視えなくなった…

なんで視えなくなってしまったのか…

 

「目が視えないのか…」

 

食事も自分一人では満足にできない

寺子屋にも行っても聞くことしかできない…

外で遊ぶこともできない

 

「何もできないや…」

 

不便でならなかった

人と話したりすることはできても、相手が見えないと何故か不安になってしまう。

聞き取りをしても書き記すことができない

両手は使えるが、掴むものすら見えないとうまく使いこなせない。

 

「どうしようか…」

 

毎日毎日何もせず介護されて過ごす…

 

「何かできる事はないのかな。」

 

話したりはできるのなら…

歌うことはできる。

 

「歌っても…何かあるわけでもないし…」

 

特別歌が上手いわけでもない…が

練習して見る価値はあるだろうか

歌の練習や作詞をしてみるが

なかなかうまく行かず年月だけが過ぎていく

 

ある日の夜のことだ、

作詞を終えた歌を練習し終えた頃。

 

「歌、上手だね。」

 

私の声を聞いていた人がいる。

 

「誰だ?」

 

「誰だと思う?」

 

聞き覚えのある声、

でも最近のことではないと思う

 

「あのときの約束…覚えてる?」

 

約束…そうか、この声の持ち主は…あの少女だ

 

「会いに来てほしい…だったかな。」

 

「そうだよ、私待ってるからね」

 

「目が視えない…その約束は果たせるかわからないよ」

 

「なら目が視えるようになったら会いに来てほしい」

 

「もし目が視えるようになったら」

 

羽ばたく音とともに少女の気配は無くなって

 

その日はその後すぐに寝た。

 

次の日のことだ。

目が覚めて目を開くと証明の光がとても眩しく見えた。

 

「あれ…?視える…?」

 

目が視える。

手も見えて、壁と天井もわかる

 

起き上がると初めて見る景色ばかりだった

 

机には歌詞の書かれた冊子がいくつもあった

 

「今までの景色とは全く違う…」

 

「おはよう。気分はどう…?」

 

「おはよう母さん、目が見えるってとても不思議だよ。」

 

「えっ?、今なんて…」

 

「なんでだろう。目が見えるようになったんだ」

 

「本当に見えているの?」

 

「ああ。今日はよく晴れてるよ。空なんて久々に見た。」

 

「よかった…ほんとに良かった…」

 

「ちょっと出かけてくるね。」

 

「どこにいくの?一人で行ける?」

 

「大丈夫だよ。昔よく言ってた森に行くだけだから」

 

「そう…気をつけてね。」

 

家を出て里を出る。

 

見覚えのある森だ…

入り口の脇にある小道、奥に行くほど木々は多くなって道という道は見当たらない。

 

その先に小さな広場があった、

 

「来てくれたんだね。」

 

「約束。だったからね、」

 

「ありがとう。」

 

「君はずっとここにいるのかい」

 

「そう思う?」

 

「ちょっと疑問に思っただけさ。それと僕の視界を奪ったのも君だろう?」

 

「そうだね。」

 

「なんで、視界を奪ったのか。それも疑問に思ったな。妖怪なら回りくどいことはすることなかっただろう?」

 

「私はね。子供は襲わないの。」

 

「そうか。優しいんだね。」

 

「だけど。大人はそういうことは少ない。」

 

「僕も覚悟はしているよ、」

 

「あなたは、どうかな。」

 

「抵抗する手段がないかな。」

 

「そっか。ならまた歌を聞いてくれる?」

 

「構わないよ。」

 

少女は歌い始めると。

視界が霞んでまた、何も見えなくなった。

そして次第に眠たくなってきてしまった。

 

「素敵な歌声だな…」

 

「ふふ、嬉しい。みんなそういう前にどこか言ってしまうから。」

 

「そうか…」

 

歌に聞き入っていると。

いつの間にか眠ってしまっていた

 

「ふふ。おやすみなさい。そして、さようなら」

 

それから私の視界が戻ることはなく。

眠りから覚めることもなかった。




少しだけ報告を。

次回以降数話は同時間に連続投稿になります。
というのも。ロングシナリオになるからということですので

二月くらい空くんじゃないかな…


また会えたら会いましょう

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