物語館   作:むつさん

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どうも夢子です、

今回は出したかっただけの人です。


どうぞごゆっくり


単純なる出会い

あの巫女が言っていた。人里

 

「ここが人間の里」

 

月に比べると平和的に思える

まぁ、月は穢れを嫌うのもあるから。

こんな風にのんびりしていられないのだろうか

 

ん?この匂いは…揚げ物の匂い

腹は空かないけれど。食欲が唆られる

 

この感じだと、この店…

 

「肉カツ屋。ふむ。」

 

カツか。久しく口にしてない

たまにはいいか

 

「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ。」

 

店内は案外狭いな…

陰気とまではいかないが、割と暗めで

少し寂しい感じはあるだろうか。

 

「ご注文が決まりましたら。お呼びください。」

 

「わかりました」

 

店員は至って普通

暗くもなく明る過ぎもせず。

 

割といい食事処。

 

メニューも…

揚げ物がメインかな。

豚カツ。鳥の唐揚げに砂肝の揚げ物。

牛カツ?牛のカツなんて初めて聞く。

これにしてみよう。

 

「注文いいですか。」

 

「はい、お伺いします。」

 

「この、牛カツの定食、お願い」

 

「かしこまりました。その他はよろしいでしょうか?」

 

「以上で。」

 

「かしこまりました。ご準備しますのでしばらくお待ちください」

 

「勘定は?」

 

「あっ、当店は後払いですので。」

 

「わかりました」

 

後払いか、食い逃げする奴もいると思うが…まぁ、ここまで治安が良ければそれをする必要もないのかもしれない

 

「狭い店内だからね、隣。失礼するよ」

 

この男…まぁいいか。

 

「こんな店に来るなんて珍しいね。」

 

「店員がそれを言うならまだわかるけれど。あなたがそれを言うのは店に失礼なのでは?」

 

「ああ、そうかもしれないな。済まなかったね」

 

「まぁでも、この感じなら、そう思うのもわからなくはないと思うわ」

 

「まあ。雰囲気が、そう思わせるからね。」

 

「そういうあなたは、なぜここに?」

 

「僕はここのカツが好きでよく来るんだ」

 

「常連ってことね。」

 

「少し高いが、それに見合わないくらい美味しいよ。」

 

「少し楽しみですね。」

 

高めなのか。他の店は少しばかり安いのだろうか。

 

「おまたせしました。」

 

「ありがとう。」

 

「ごゆっくりどうぞ。」

 

「では、先にいただきます。」

 

「ええ。」

 

確かに美味しい。

揚げ物特有のサクサク感と牛の溶けるような感触がよく合う。とても美味しい。

 

「さて僕もいただこうかな。」

 

あまりにも美味しかったから。

つい無言になってしまった。

 

「ふぅ。ごちそうさま。」

 

「なかなかにおいしいだろう?」

 

「ええ。聞いたとおり。とても美味しかったわ。」

 

「それはよかった。」

 

「こんなに美味しいのは久々ですね。」

 

「そうか。」

 

「それにしても。私に声をかけるなんてね。」

 

「ん?あぁ、ある人かなと、もしかしたらと思ったんだよ」

 

「人違いだったら?」

 

「一応聞いておくよ、純狐さんだろ?」

 

「よく知っていますね」

 

「これでも。博麗神社に参拝に行くんだ。その時巫女さんの愚痴を聞くことがあってね。あんたの話を聞いたことがある。確か月で騒動起こしたとかってね。」

 

「そういうことですね。」

 

「ただ、少し驚いたな。騒ぎを起こした人って聞いてたからもっとこう。気の荒い人かと思ってたのだが、それは勘違いみたいだ。」

 

「私は嫦娥への復讐が目的です。それ以外にはあまり興味がありませんから。ここで騒ぎを起こしたところで、不利益になるだけです。私は不必要なことはしないつもりです。」

 

「なるほど。案外良識のある人なんだな。」

 

「私が正しいというわけではありません、無益な争いは意味を成さないですから。例えて言うなら、私の復讐に他人を巻き込むのは好ましくありません。」

 

「まぁ、被害受ける側としても、それに対して報復心が生まれて悪循環ですからね。」

 

「個人的な復讐以外に、力を振るうときは、恐らく自己防衛ぐらいです。」

 

「まぁ、普通そんなもんだろう。それじゃ、俺はそろそろ行くかな。」

 

「そうですね。失礼します。」

 

 

店から出て男と別れた。

 

しばらくまた歩いていると。

見覚えのある人物を見つけた、

 

「あれ、あんたなんでここに?」

 

「博麗の巫女も人里に来たりするのですね」

 

「そりゃもちろん。でなきゃどうやって人の信頼集めれるのよ。」

 

「あなたなら妖怪退治すればいいのでは?」

 

「それをするにもまず私のことを信じてもらう必要があるじゃない。」

 

「それは確かにそう。」

 

「で、あんたはどうせ暇だから人里を散歩してたんでしょ」

 

「その通り。ここは平和でいいですね。」

 

「もちろんよ。そう何度も異変が起きても困るけど。」

 

「ところで隣のお二方は?」

 

「俺は悠と言います。」

 

「私は祐奈です。それでこの子は雪樹です。」

 

「よくお世話になってるんだ。」

 

「なるほど。巫女の知り合いですね。」

 

「数少ない私の神社の参拝者なのよ。」

 

「数少ない、ね」

 

「何よー。」

 

「別に何も」

 

「霊夢さん用事は済みました?」

 

「ええ、今から神社に帰るところよ」

 

「そうだったんですね、引き止めてすいませんでした」

 

「いいのよ。あんたらは」

 

「わざわざありがとう、」

 

「それじゃ私は帰るわ」

 

「はい、またよろしくお願いします。」

 

巫女も忙しいのだろうか。

日中一日のんびりしているイメージがあるけど…

 

「ところであなたは?」

 

「ああ。私は純狐と言います。」

 

「純狐さんって、月がどうとかって聞いたけど」

 

「まぁ、そんなところですね詳しくは知らなくても問題はない。」

 

「そうですか。」

 

気のせいか…?

何か感じるな。

女性の方からだな…

 

「祐奈さんだったかな。」

 

「はい?」

 

「なにか病気を患わっているかな?」

 

「んーと。少し前に、まだ完治はしていないみたいだけど」

 

「やっぱりそうですか。治してあげましょう。」

 

…純化できるか…?

 

「治すって?」

 

「少し大人しくしててください。」

 

…うまくいけばいいけれど…

 

「あれ…なんか。体が軽くなった?」

 

大丈夫そう。

 

「これでいいはずですが。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「良かったな、祐奈」

 

「赤子の方も。少し体調が悪かったみたいだから。一緒に治してあげました。風邪か何かで具合が悪かったでしょう?」

 

「そうですね。さっきも息苦しそうにしてたので…助かります。」

 

「まぁ、あの巫女の知り合いならね。あの巫女には少し迷惑をかけたのもありますから」

 

「わざわざありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

ん…頭になにか…

雨か…?

 

「雨?洗濯物、入れなきゃ。」

 

「ああー。そうだな。すまない純狐さん。また今度。」

 

「ええ、」

 

さて…傘も持ってないけれど…どうしようかしら

 

どこか雨宿りできる場所は…

無意味に食事処に行くのも気が引けるし

近くの軒先でとりあえず…

 

「ひとまず雨は凌げるけれど…」

 

「あれ、見覚えのある人だな」

 

「あなたは、先程お会いした方」

 

「その様子だと、雨に降られた感じだな」

 

「生憎、傘は持ち合わせてなくて。」

 

「雨宿りできる場所を探していた。そんなところだな。」

 

「ええ。」

 

「俺の家の軒先は役に立つかい。」

 

「ここは、あなたの家だったのですね。」

 

「まぁ、あがって。」

 

広い家。その割には物が少なく感じるけれど…

 

「そんなに見渡してどうした?何か珍しいものでもあったか?」

 

「いえ、広い家で、裕福なのかと。」

 

「裕福ではないが。まぁ余裕はある程度さ、広いのには訳があるんだ、」

 

「訳とは?」

 

「もう随分昔の話になるが、聞きたいか?」

 

「まぁ、雨が止むにも時間がかかるでしょうし。」

 

「まぁ、な、」

 

「実は俺はもう何十年も生きてる半妖なんだ、この幻想郷ではよくいるだろう。」

 

「半妖。ですか、」

 

「ああ、ここには俺みたいな半妖以外に案外普通に妖怪だっている。博麗の巫女と妖怪の賢者によって作られたルールで、平和が保たれてる。」

 

「なるほど、だから巫女はあれほど強いのですね。」

 

「ああ、おかげで俺らは種族を超えて共存できる。そして俺は人間に恋をした、昔幼い頃に死に別れた同じ半妖の少女以来。久々だったかな。」

 

「死に別れた?」

 

「ああ。ちょっとした事件でな、立て籠もり犯に人質にされて、救われず犯人たちに殺されちまった。」

 

「それは…残念ですね…」

 

「当時、両思いでお互い仲良くやってたんだが、そうだな。今と同じ時期だったよ。」

 

「同じ時期?」

 

「ああ、丁度年が明けたばかりだ。」

 

「年明け早々、嫌な出来事ですね。」

 

「ああ、あの時は厄にでも取り憑かれたんじゃないかって思ってた。でも、まぁ、単に運が悪かったよ。」

 

「それで。それからどうして今は一人なのですか?」

 

「ああ、それ以来、何十年もずっと一人だったんだがな、ある異変の時、一人の女性に会って俺はその人と結ばれることになった。理由は単純、相手側の一目惚れだ。」

 

「その相手が人間だった訳ですね」

 

「そう。大人しくて清楚な感じだった。今思うと好みの女性だったよ。何度か会ううちに俺も彼女を受け入れようと思った。」

 

「しかし、半妖と人間では寿命が違いすぎるが…」

 

「彼女自身それは気にしていなかったようだ。単なる俺への愛。それが強かった。」

 

「純粋な愛ですね。」

 

「ああ。彼女の家で俺と暮らしていて。別で家を持つことになった。それが今いる此処だ。」

 

「ということは昔は二人で住んでいた。」

 

「いや、この家にはずっと一人で住んでる。」

 

「どういうことですか?」

 

「家の建設中の時、大きな地震があった、巫女の話だと、地底の仕業らしいんだが…人里は大惨事だった。建物の倒壊が激しくて巻き込まれる人もいた。」

 

「まさか…」

 

「ああ、彼女も俺も丁度食事処にいて倒壊に巻き込まれた。俺は足を怪我した程度で済んだが…」

 

「彼女さんは助からなかったと…」

 

「ああ、木の柱の破片が腹部を貫通してた。頭も大きく凹んでいて…見るに耐えなかった。当然夢だと願ったさ。でも今が、現実なんだ、」

 

「なんとも…」

 

「その後里の復旧のついでに、家は完成した、それ以来一人で住んでいるんだ。」

 

「なるほど…」

 

「広いのはそのせいさ。」

 

「一人で住むには余りますね。」

 

「まぁな。でも、広くて損はない。」

 

「確かに。」

 

「単に運が悪かった。そう思っている。だから今後も一人で生きるよ」

 

「そうですか、」

 

「今夜は雨は止みそうにないな。」

 

「そうですね。しばらくは世話になりそうです。」

 

「構わないよ。ゆっくりしていくといい、」

 

「助かります。ただ、変な真似はしないように。」

 

「ははは、今の話を聞いて、尚それを言うんだね。」

 

「まぁ…念には念を入れて。」

 

「そうか。大丈夫だよ、」

 

「それならいいのですが、」

 

「さて。俺は寝るよ。先に失礼する」

 

布団は…二つある。

まぁ、当たり前か。

 

「おやすみなさい、」

 

気がつけば雨と時計の音だけ…それでもかなり静かだけれど。とても落ち着く

布団で横になるなんて久々かもしれない。

 

「たまにはいいかもしれない。」

 

気がつくと。眠ってしまっていた。

 

 

目を覚ますとまだ雨の音は聞こえた。

どうやら雨は止んでいないみたいだ

 

「彼は…?」

 

机に置き手紙がある。

何かあったのだろうか。

 

 

起きるまで待とうと思ったのだが

仕事のこともあって間に合いそうもない。

軽い食事は用意しておいた。

もしよかったら頂いてくれ。

 

あと傘を用意してあるから

好きに使ってくれていい。

 

 

「不用心極まりないですね。」

 

食事…?

ああ。これか。

 

「握り飯か。ありがたくいただきます」

 

塩握りか、粗食ではあるが

なんだかこれも久々な気がする。

 

 

さて…傘を借りて。

次はどこに行こうか…と思ったんだが。

 

玄関から振り返ると。

家の中はとてもじゃないが

整理がされていない、

 

「1食1泊の恩もありますね。」

 

とりあえず見える程度の場所はきれいにしておこう。

 

「押し入れが…これでは布団がしまえないな…」

 

全く…

 

 

「ふぅ。これで。いいでしょう。」

 

結局、掃除洗濯水回り。

全てやってしまったな。

まぁ、たまにはいいでしょう。

昔の恩返しって言うのはこういう形だったかしら。

 

「外が晴れている、干してこうかしら。」

 

なんだか…

 

「ここまでやりきると逆に気分が良くなってくるわね。」

 

「あれ…純狐さん。まだいたんだな。」

 

「はい。少し気が変わったので。」

 

「んーと…?あれ。」

 

「どうかしましたか?」

 

「もしかして、掃除してくれていたのか?」

 

「ええ。家を出る前に何か恩返しと思いまして。」

 

「恩返しにしては…かなりやってるな。」

 

「ええ、まぁ。」

 

「ありがとう、しばらく手を付けれなかったからな、助かったよ」

 

「お忙しいのですね、」

 

「まぁ、少し前に、ちょっとした事件があってな。その後始末してて。」

 

「後始末?」

 

「自警団の一員って言えばわかるかな、収まったあとも、事件の黒幕とかその一部を探してたりするんだ。」

 

「なるほど。」

 

「今日は特に何もなかったから。昼には帰って丁度掃除しようと思ってたところだったんだがな。先を越されたと言うか。」

 

「余計なお世話、でしたか。」

 

「いーや、そんなことはない。」

 

「まぁ、泊めてもらった恩返しですから。」

 

「ああ、ありがとう」

 

「私はそろそろ失礼します。」

 

「わかった。今度会うときは食事でも奢るよ。」

 

「ご親切ありがとう。」

 

 

 

人里というのは、人の温もりに溢れているな。親切は親切で返す、

なかなかいいのかもしれない。

また今度、時間があれば寄るか、

 

そういえば

名前…聞いていなかったか…?

 

また今度会った時でいいか、

 




では、また会えたら会いましょう

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