なんかもう、ほんとなんかもう
だぁぁ!あぁ…
そんな感じ…
そうだよ!うまくいかなかったんだよ!
あぁ…
ではごゆっくり…
「あ…貴方は」
「久しぶりだね、妖夢」
「今日はどうしたんですか?」
「幽々子様に呼ばれたんだ。」
「そうですか。ゆっくりしていって下さい」
…
「幽々子様。遅いですよ」
「ごめんなさいね。ちょっと妖夢と話し込んでたのよ」
「そうですか。それで用事って何ですか?」
「聞きたいことがあって。貴方って一度死んでるのよね、」
「うんまぁ。」
「正確にはあの世に行ってから帰ってきている、だけれど。」
「変わりないと思いますよ。よくご存知ですね」
「まぁ、貴方とは短くはないけど。そういう話を閻魔から聞いたから確かめてみたくてね、」
「あっ。閻魔様こっちに来てたんですね」
「休暇貰ったから羽伸ばしにこっち来たらしいけど。結局説教三昧だったらしいわ」
「そうですか…忙しい人ですね」
「まぁ。性格上仕方ないんじゃない?」
「まぁ。そうでしょうね。」
「それで私が何か?」
「貴方が少し前から仕事が忙しいって里に付きっきりで、妖夢が元気無いのよね」
「そうですね。確かにさっき会ったけど思いの外声も小さかったな。」
「ずっとそわそわしてるのよねぇ」
「元気もなかったしな」
「庭先も不揃いだし。料理も味にばらつきがあるのよねぇ。」
「…つまりアレか、俺に戻ってきてほしいって意味か」
「私はどっちでもいいのよ?」
「めんどくさいこと言うなぁ…」
「それに。妖夢?ほら隠れてないで」
「えっと…私はそんな。」
「ごめんな。まだ掛かるから。待っててくれないか?」
「そんな!私は急かしている訳ではなくて…」
「たまにはこっちにも来るから、元気出してくれ」
「あの…は、はい 。」
「貴方達って面白いわねぇ?」
「余計なこと言わなくていいから。それじゃ、俺は里に戻って仕事してくるよ」
「落ち着いたら戻ってくるといいわ」
「あぁ、もちろんさ」
……
幽々子様は…またからかって…
「優真さん、仕事大変なんですね」
「あはは、まぁね」
「治安維持、でしたっけ。最近事件とか多いんですか?」
「…まぁ。」
「頑張ってください。」
「ありがとう」
…また一緒に過ごせたら、それは嬉しいけど
でも仕方ないですから…
「妖夢、」
「はい?」
「一生懸命、頑張れな」
「えっと、はい?」
「さっきの幽々子の話、本当ならちょっと申し訳ないかなって思ってさ」
「もちろん…少し寂しいのはありますけど…」
「料理も庭仕事も自分が満足するようにしてほしい。」
「はい。」
…
仕事…私にとって…庭仕事も食事の用意も…いつものこと、満足行くように…か…
忙しいってどんな感じなんだろう…
「妖夢?手が止まってるわ、」
「あっ…」
「妖夢、こっちおいで」
「はい…」
最近…すぐに考えてしまう…
「あのね。いろいろと思い込むのはわかるわ。考えが纏まらなかったりするのもね、でもそれで何も手がつかないのは良くないわ。」
「申し訳ないです…」
「あと、彼の事が気になるならたまには里に行ってきてもいいわ」
「いいのですか?」
「ええ。でもあなたのやるべきことはしっかり済ませて頂戴、」
「はい。」
…
彼に会える…
それを思うと何故か心が高鳴る…
「あれ。妖夢」
「幽々子様がたまには会いに行ってもいいって。」
「そっか、上がって」
質素で殺風景
これが里での優真さんの住む借家
それでも…何故か暖かい感じがする。
「ごめんね、何も用意してないや」
「いいんです。私が突然お邪魔してるだけなので…」
「お茶持ってくるよ」
里のお茶は…白玉楼で飲むお茶に比べると少し薄い。薄いし濁りがある。
「それにしても、ここに来るまでに何もなかった?」
「え?はい。何も。」
「そうか。よかった」
「どうかしたのですか?」
「忙しいって言ってたよね、理由なんだけど…」
「?」
「最近、大人の男性が男女問わず成人未満の子供を攫う事件が多くてね。」
「なんとも野蛮な…」
「それで、重労働や売買、更には欲求を満たすための道具にする輩すらいる」
「ひどい…」
「今は落ち着いてきたが少し前までは酷かったよ…悲鳴が毎日聞こえてたからね。」
「大変ですね…」
「俺達のような里の役人には手に終えなくてね…自警団と妹紅さんが動き始めてからまぁ落ち着いてきたよ」
「そうなんですね。」
「それでも里の仕事がそれだけって訳じゃないから、まぁ忙しいことには変わりないよ」
「しばらくは白玉楼に戻ってこれなさそうですね」
「でもまぁ。すぐ戻るよ」
「戻れるんですか?」
「忙しいとは言っても、忙しくしてるのは俺くらいだしな」
「どういうことです?」
「自警団が里の見回りとか一部をやってくれることになった、全体的に仕事の役割が減ったんだ、だから、役人の中でも地位が上の人間、特に俺とかはまだやることが多いけど、その他はそうでもない」
「そうだったんですね」
「だからすぐにでも、戻れると思う」
「良かったです」
「それに、妖夢がわざわざ会いに来るくらい、寂しい思いさせてるみたいだし。」
「えっと…それは。」
「ははは、まぁ、俺も寂しくないわけじゃないし、一緒に入れたらそれこそ嬉しいよ」
「私も…それは嬉しいです。」
「だから、まだ少し寂しくなるかもしれないけど。白玉楼にいるときは、この前言ったように自分が満足いくような仕事をしてほしい」
「わかりました、」
そう思って優真さんの借家を出た直後に…
誰かにつけられてる。
まだ距離はあるけどはっきりわかる。
「はぁ…命知らず…」
わざと立ち止まって迷子になってフリをすると…一気に詰めてきた。
鞘からは抜かず白楼剣で叩く
「うげぇ!」
「聞いたとおり、まだ人攫いはいるんですね」
「へへぇ…お嬢ちゃん、なかなかきれいだな、」
「貴方のような人間に褒められても気味が悪いだけです」
「悲しいこと言うなよぉ、」
気を引いてるつもりでしょうけど…
まだ何人かいる、視線でわかる
「私は暇じゃないんです」
そう言って振り向くと隠れていた輩も出てきた…
「遅い!」
野蛮なやり方…私には、どうということはない…
「ちっ!つまらねえなぁ!」
「貴方達のような人間に負けるほど弱くはありません、」
「人間だあ?誰が人間だよ?」
「何を言ってるの?どこからどう見ても人間でしょ?」
「へへ…後悔するなよ?」
人の体から…虫のような…化け物に豹変していく…見た目が気持ち悪いのはさておき、人攫いが妖怪だったなんて
「お嬢さんよぉ?最後に何か言いたいことはあるかぁ?」
「貴方達、今までに何人攫ったのですか?」
「いやぁ…覚えてない、沢山だな。それだけか?」
「ええ、充分です」
「そうかい!それじゃ!」
「それなら容赦は必要ないですね。」
少し息を止めて…構えて…
「おお?怖すぎて動けねぇか!」
襲いかかる…
でもその程度なら。
「未来永劫斬!」
真っ二つ…いや2本とも使ってるから
4つになった。
もちろん…息絶えただろう、
「てめぇ!何しやがる!」
「子供を攫った罰です、しっかりと受けなさい!」
まるで阿呆のように叫んで。
襲い掛かってくる。正面から何体も、
正面…か。
「妄執剣…修羅の血!」
文字通り真っ二つ。
「な、何だこの化物!」
「化物はあなた達でしょ?」
「間違いじゃねぇが…巫女以外にこんな強えやつ見たことねぇ」
「この幻想郷には私よりも強い人は沢山居ます、私はまだ序の口と言えるかもしれないが…貴方達程度の下衆な妖怪に負ける程、甘くはない。」
「畜生!」
「最後にいくつか聞きたいことがあります」
「な…なんだよ…」
「攫った人間…主に子供や私のような若い人間でしょうけど、どこに連れていきました?」
「…い、言えねぇ…知らねぇ?」
「なら、斬ればわかりますね。」
「まて!わかった!いうから見逃してくれ!」
「どこに居ますか?」
「里の倉の裏手!そこに地面に隠し戸がある!そこに何人か…いや俺らが攫ったのは全員いる!」
「何故攫ったんです?」
「俺や…あんたが斬った兄貴は…若い頃あんなようなガキどもにイジメられてたんだ!」
「イジメられてた?」
「俺たちゃ虫のような見た目だ。妖怪だ、力もない頃はずっと迫害されてたんだよ!今!力を手に入れた今だから!復讐したかったんだ!」
「なるほど…」
「でも…あんたは…」
「そう思う気持ちはわからなくはないけれど、そこで復讐するとなればそれは罪です、ここではそれは悪なのです」
「それくらいわかってるよ!でも…何もしないでずっと我慢するのは耐えきれなかったんだ!」
「そうですか。残念です」
「畜生…」
「もう十分でしょう」
「お嬢さんよ…最期に名前を教えてくれ…」
「私は魂魄妖夢。半人半霊です」
「魂魄妖夢…ああ…早く斬ってくれ…」
「見逃すというのは?」
「今更だろ…」
「わかりました。」
望み通り、命を断つ。
迷いもないような諦めだったけど、
それでも罪が晴れるわけじゃない
「妖夢、大丈夫かい」
「優真さん、いらしたんですね」
「この妖怪達は?」
「人攫いをしていた団体です。『俺達が攫ったのは』、と言っていたので他にもいるかと…」
「そうか…」
「里の倉の裏手に隠し戸があってそこに攫われた子どもたちがいるそうです。早く行ってあげてください。」
「わかった、ありがとう」
これで…よかったのでしょうか…
いいえ。これでいいです。
彼らは然るべき罰を受けたのですから
「他の連中の話は何か言ってたか?」
「いえ、特には。」
「そうか、知らなかったかもしれないし仕方ないか」
…
「妖夢?」
「はい、幽々子様」
「里で一悶着あったって聞くけど大丈夫だったかしら?」
「傷一つないですよ。大丈夫です」
「そう、相手は誰だったの?」
「人攫いの妖怪でした。どうも彼らだけではなさそうですが。」
「そう。それなら他の人攫いもあなたがおびき出してみたら?」
「私がですか?」
「だってそうすれば彼の仕事が早く終わるでしょ?」
「そ、そうですが…もしかしてそれだけですか?」
「んー…そうね、そんな感じ」
突拍子もないことを…
確かに里に住む妖怪なら…負けることはないと思うけど…万が一のことを考えると危険だから…
「幽々子様、その必要はありませんよ」
「優真さん?」
「あら、来てたのね」
「やっと暇がもらえたからね。」
「もしかして解決したのかしら?」
「自警団と話をしてね、大体の目星をつけたんだ。それで昨日、妖夢が斬った妖怪達の他にも捕まってね。多分同時期ぐらいに自警団が輩に接触してる」
「そうだったんですね」
「ああ、後は攫われた子供達の身元を確認して引き渡しておしまい、俺はほとんど仕事が無いから、戻ってきたよ」
「そう。」
「まぁ。やっと終わったって感じだよ」
「良かったです」
「それに、妖夢も寂しそうだったしな」
「私はそんな…!」
「それじゃ今日はもう疲れたしゆっくりしようかな」
「そう。」
「それじゃまた後で」
…
「優真さん…」
「どうした?妖夢」
「お茶持ってきた…」
「ありがとう、」
…何か話さないと…何か…
「妖夢はさ」
「私ですか?」
「やっぱ…なんでもない」
「そうですか」
…彼のことを考えると何故か落ち着かない…
「妖夢…」
「なんでしょう?」
「俺な、ずっと考えていたんだ。」
「どんなことですか?」
「生き還ってから、今はしっかりと身体が戻って不自由なく生きてる。」
「はい、あのときはとても心配しました」
「でも。それでいいのか。なぜ俺は戻ってこれたのか。」
「何故か…それはあなたが…」
「あのとき俺の魂は天国に行ったんだ。それで天国で暮らしていた。」
「はい…」
「でも、俺は天国でも働こうとして、働けないストレスに負けて二度目の死を迎えた。本来なら天国で死を迎えるはずはないと思うし。仮に迎えたとしたらそこで成仏するだろ。」
「そうかもしれませんが…」
「なぜ俺は…二回も閻魔のところに行ったのか…ずっとわからないままなんだよな…」
「生きている…それでいいと思います」
「それはわかる。今でもここで妖夢と一緒にいると言葉は出なくてもすごく安心して落ち着ける。」
「私もそうですよ」
「そう。それなのに俺はどこに行っても働き者なんだよ。折角生き還って、妖夢に辛い思いさせなくて済むはずだったのに、仕事ばかりだ」
「私はそんな風には思ってないですが。」
「申し訳なくてな。」
「私は頑張っている優真さんの方がいいと思いますよ」
「そうか?」
「だって。天国でも働こうとするんですから。その方が優真さんらしくていいと思います」
「俺らしさ…か…妖夢は寂しくないのか?」
「寂しいと思うこともありますけど。でも普通はそうだと思います。だって人里では男が仕事して女が家事に努めて。そういうものだと聞きます。だから、自然なことだと思いますよ?」
「そうだな…」
「私は…優真さんの事は好きだけど、優真さんのことを縛り付けるようなことはしたくないです。仕事をしたいと思うならしてもいいと思いますよ。」
「妖夢、ありがとうな」
「いいんです。そんな風に私の事を思ってくれていたなんて少し嬉しいですよ、でもだからこそ優真さんには優真さんの思うように生きてほしい」
「わかった。」
初めて彼の弱音を聞いたかもしれない
でも…誰だってそういう所はある…
だからこそ、彼は私に話してくれた…
それが…とても嬉しく思う
「妖夢、ありがとう」
「どういたしまして。」
半ば無理矢理進めてしまった感が否めない…
一体何があってどうしてこうなった!
もう自分でも訳がわからないよ
また会えたら会いましょう