物語館   作:むつさん

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どうも夢子です

ちょっと長めのシナリオになりました



それではごゆっくり


届いた想いと愛の奇跡

「つまんないなぁー」

 

少女はベットで寝そべってつぶやいた。

 

「早く戻ってこないかなぁ…」

 

つまらなそうに本をめくる。

 

しばらくすると部屋の扉を叩く音がした

 

「妹様。戻りました」

 

その声を聞いて少女の顔はぱぁっと明るくなった。

 

「入って入って!」

 

「失礼します。」

 

執事の男が部屋に入るなり少女は走って抱きついた。

 

「おかえり!」

 

「ただ今戻りました。」

 

少女は手に男が持っている袋を疑問に思い覗きこんだ。

 

「あっ、これ!」

 

中に入っていたのはデザートだった。

 

「これは今日のおやつですよ、」

 

「あれ?でも今日はお姉様が作るって言ってたけど…?」

 

「それがこれですよ。」

 

少女は袋の中の紙を取った。

 

少女宛の手紙でこう書かれていた。

 

 

今日のおやつは私がアリスに教えてもらったクレープよ。

フランはアリスのお菓子やデザートが好きと聞いたから習ってみたの。

暁と一緒に食べなさい。

 

 

「お姉様がわざわざアリスのお家に?」

 

「ええ、そうみたいです。」

 

フランは不思議そうにしていると。

 

暁は時計を見て近くの机にお茶とクレープを用意する。

 

「はぁぁ。おいしそう…」

 

今にも飛びつきそうな顔でお菓子を眺める。

 

しかしお茶が淹れ終わるまでフランは我慢していた。

 

行儀を良く。という意味で、

 

「それでは食べましょうか。」

 

「うん!いただきます!」

 

しかしながら口の周りにクリームが残ったり少々お茶をこぼしたりと…

必ずしも行儀が良いとは言えなかった。

 

「ごちそうさまでした!」

 

20分ほどのお茶の時間が過ぎた。

 

「ねぇ暁。」

 

「はい、妹様。」

 

「あっ、またそうやって」

 

「ん?」

 

「私のことはフランって呼んで!」

 

「わかりました。フラン様」

 

「もーっ!またそうやって様付する!」

 

お互いに愛し合いながらも

暁は執事としての立ち位置を捨てないからか

いつも様付や、メイド達と同じ呼び方をする。

 

フランはそれが気にいらないようで。

度々機嫌を悪くする。

 

「今度。私もアリスにお菓子の作り方教えてもらってみようかな。」

 

「その時は私も一緒に習いに行きたいです。」

 

「もちろんよ!私は暁にお菓子を作りたいんだもの!あとお姉様にお返しもしたいし。」

 

「ならフラン様と普段お世話になる、メイド長とパチュリー様に。」

 

二人は気分を上げながらも何を作りたいか考え楽しく話をしていた。

 

そこにレミリアが帰ってくる。

 

「フラン入るわね。」

 

「あっ!お姉様!」

 

「ちゃんといい子にしていたかしら?」

 

「もちろんよ!」

 

「そう。クレープは美味しかったかしら?」

 

「すごく美味しかったわ!また作ってもらいたいわ!」

 

「そう、じゃあ今度はフランも一緒に作りに行きましょうか。」

 

「やったぁ!」

 

喜ぶフランとそれ見て和む二人。

 

レミリアは暁に伝言があるらしい。

 

「暁、話があるから今夜食事のあと私の部屋に一人でいらっしゃい」

 

「んー…わたしはお部屋でお留守番?」

 

「そうね。あなたにも関わることだけど、こればかりは暁だけに話したいわ。」

 

「わかった。待ってるね!」

 

「ふふ、いい子ね。」

 

フランはちょっと残念そうにしていたがそれでも笑顔だった。

 

愛人を待って会うまでの時間があればあるほど、再開の楽しみが大きいのだ。

 

その日の夜。

食事を終えると、暁は咲夜と共に片付け掃除をして、すぐにレミリアの部屋に向かった。

 

部屋に入ると。

 

「あれ。お嬢様…これはどういうことですか。」

 

レミリアがすぐに鍵をかけた

 

貴方には大事な話があるの

 

「何でしょうか。」

 

「このままではフランには悲しい思いをさせてしまうの。それで貴方には2つの選択のどちらかを選んでもらうわ。」

 

「二択…それ以外は無しですか。」

 

「これからの選択で貴方の運命が最悪となるか幸福となるか、私はあえて運命を操らないわ。貴方に決めてもらうのよ。」

 

「なぜそれをフランには話さないんです?」

 

「フランは必ずわがままを言うわ。でもそれじゃ、いつも通り貴方がフランの言いなりになるだけで変わらないわ。私は貴方の意志が聞きたいの。」

 

「私の意志ですか」

 

「もちろん。貴方とフランは、今はもう運命共同体と言っても過言ではないわ、考えて答えて頂戴。」

 

「して、選択とは。」

 

 

一つは

フランの血を取り込んで吸血鬼になること。

 

もう一つは

明日何も言わず紅魔館を去ること

 

 

「吸血鬼になるか紅魔館を去るか」

 

「咲夜は吸血鬼にはならなかった。人間としての意志があったわ、あなたはどうかしら?」

 

「……そうですね。」

 

暁は迷わなかった。

彼には答えは一つしかなかったのだ

 

「フラン様の血を頂けるのであれば吸血鬼になりましょう。」

 

「…本当にそれでいいのね?」

 

「ええ。私は彼女の愛人。そして彼女は私の最後の愛人…後は言いたいことはわかりますね?」

 

「分かったわ。それならもう良いでしょう。」

 

レミリアは部屋の鍵を開けると。扉を開けた。

 

「あっ、えっと…暁…」

 

「えっ、妹様?」

 

暁は話がよく掴めず困惑していた。

 

「貴方が部屋に入って少ししたあとに、フランに扉の前で待つように言ってあったの。」

 

「それって、まさか。」

 

「そうよ、あなたの試させてもらったわ。」

 

「あぁ…やっぱりか」

 

暁は、してやられた、という表情を隠せず、フランの方をみる。

 

「実はこのことは全部フランにも話してあるわ。フランは駄々をこねて同席したがっていたけど。」

 

「でも…暁…」

 

フランは泣きだしそうになりながら、暁に歩み寄る。

 

「はぁ…お嬢様には毎度毎度…」

 

暁は呆れながらもしゃがんだ。

そして近寄るフランを待っていた。

 

「暁…わたし。暁が居なくなるのは嫌…」

 

「私はいつもここにいますよ。」

 

暁はフランの頭を撫でながら慰めた。

 

「でもいつか消えちゃうんだよ…?」

 

「どういう意味です?」

 

「だって貴方は人間だから…」

 

「そういうことですか。」

 

「だから、貴方にも吸血鬼になってもらう必要があるのよ。フランと永く共に居るのであれば、それが最善よ。」

 

フランは震えながら暁の手を握った。

それも今までよりも強く熱く

 

「わたし…本当にこれでいいのかわからないけど…でも…暁が選んだなら…」

 

暁はずっと不安そうにするフランを見て何か気づき疑問を覚えた。

 

「…お嬢様。まだなにか隠していますね。」

 

「さぁ?なんのことかしら。」

 

いつもより強くそして鋭くレミリアを睨む暁。

 

「あら、ご主人に対してそんな態度でいいのかしら。」

 

「フラン様がこれだけ怖がるのです。あなたが何か仕掛けたとしか思えません。」

 

「あら。それなら何をすると思うの?」

 

「例えば私が消えかけるか、フラン様の身に何か起こるか、または今後二人が引き別れる様な事故が起こるか。

あなたは運命を使わないと言いました。それであなたは操らない【何か】の事件、または事故が起きるのだと私は予測しますね、」

 

「なかなか鋭いわね…今回は私の負けよ。あなたが答えた3つのうち2つは正解、」

 

「やっぱり…」

 

フランは涙を流し。いつまでも暁に抱きついていた。

 

「初めに、これは全部フランのお願いなの」

 

「それは…?フラン様、本当なのですか?」

 

何も言わず、首を立てに振るフラン

驚きのあまり暁はフランを見つめていた

 

「お願いとは。いつまでも貴方と一緒に居させてほしいという。我儘だけど、フランの今までで一番のお願い」

 

「わたし…貴方を愛してるから…だから…」

 

「それで、今回話をさせてもらったわ」

 

「ふぅ…で。このあと何が起きるんです」

 

「もちろん、貴方にはフランの血を取り込んでもらうわ。でもねそれがとても危ないのよ。」

 

ついにフランは涙が止まらず暁から離れず。

ずっと泣いてしまっている。

 

「どう、危ないんですか。」

 

「血が変われば貴方の身体がどう変化するかわからないし、今まで巡っていた臓器達に異常が起きるだろうし、貴方は元の姿の影もなく異形になるかもしれない。最悪の場合、心臓が止まって死に至るわ」

 

「な…なるほど…」

 

「もちろん、パチェに頼んでどうにか成功するよういろんな施しは掛けさせてもらうわ。」

 

「何故、お嬢様は運命を操らずに?」

 

「フランが自分で決めたこと。私の能力には手を借りず。運命に向き合うため。彼女なりの決意があるのよ」

 

「フラン様…」

 

「巻き込んでしまって…ごめんなさい、でも…フランがここまで本気なのは初めて、私も正直、まだ驚きが隠せないの」

 

「わかりました…それなら。私もフランが決めた運命に向き合いましょう」

 

「暁…」

 

フランはレミリアの隣に立ち顔を上げ

レミリアと同じ姿勢を取った

 

「「あなたの運命は私のもの」」

 

レミリアは哀しみを浮かべながら

フランは泣きながら言葉を口にした

 

「ご主人様の思うままに…」

 

 

その後大図書館の地下で

 

大きな魔法陣の上のベットで横になる暁

 

そしてその周りには

レミリア

フラン

咲夜

パチュリー

美鈴

小悪魔

が揃っていた。

 

「さぁ、始めるわよ」

 

そう言ってパチュリーは魔法陣を起動させ

できる限りの耐性魔法を暁に掛けた

 

そしてフランはよくある普通の注射器で、自分の血を暁の血脈に流しこんだ。

 

見守る五人

 

注射器を抜いて、

魔法陣の外に。

 

数秒後。

暁は異常なほどの熱と目眩、全身に痺れるような痛み、そして、何よりも身体が悶苦しむ程の苦しみを味わった。

 

「うっ、ぐぅー、がぁー…ぁぁ…!」

 

落ちないようベットには結界が張ってあるが、その中でかなり激しく悶え動く。

 

「暁…暁…頑張って…」

 

フランはひたすら成功を祈った

レミリアはフランに寄り添う

 

その他も成功を祈り続ける。

 

パチュリーは休む暇なく

治癒魔法も繰り返す。

 

数分後暁は鎮まり。眠るように意識を失った。

 

パチュリーはまだ治癒魔法を掛けているが

五人は魔法陣の中に入り、暁の様子を伺う。

 

「暁…暁…?」

 

一見、何も異常はなかった。

結界を外し心臓に手を掛けたが普段通り動いている。

 

動脈部分も鼓動を繰り返し血も流れている。

 

しかしどれだけ経っても暁は目を覚まさない。

 

「ねぇ…成功したのかな…」

 

不安を抱えるフラン、、

 

誰も答えることはできなかった。

誰も予想していない結果になったのだ。

 

死ぬか見るに耐えれなくなるか、

何事もなく成功するか。

パチュリーが出した答えと他の予想はこれだけなのだ。

 

異常も見られず、意識を失ったままになるなど誰も予想しなかった

 

「そんな…起きてよ暁…」

 

フランは暁の身体を揺すりながら、そして泣きながら名前を呼んでいた。

 

当然、悲しんだのはフランだけではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから十日ほど経つが

まだ目は覚まさない。

 

「フラン、入るわね。」

 

椅子に座って日記を書くフラン

レミリアの方を向いて一言だけ話した

 

「お姉様…暁は?」

 

「…ごめんなさい。まだ何も。」

 

「そう…」

 

それだけ話すとまた書き始めた

 

「十日…かしら。」

 

「うん…」

 

「フラン…あのね。」

 

「何?お姉様」

 

「後悔は…」

 

レミリアが言い切る前に即答した

「後悔はしてないわ、これがわたしの運命だもの。わたしが決めた決意の結果だから。後悔なんてしてないわ。」

 

「フラン…」

 

「ずっと、待ってるの。」

 

「起きないかもしれないのよ。」

 

「きっと起きるわ。だからそれまでずっと待ってるの」

 

「そう…強いのね。」

 

「だっていつまでも泣いてたら、昔の弱い私のままだもの、変わりたくて、暁と同じように強くなりたくて。決意をしたのよ。」

 

「わかった…それじゃ、お茶にしましょうか。今日はアリスが来てるから一緒にお菓子を作りましょう。」

 

「アリスが来てるの?」

 

「ええ、そうよ。前に言ったじゃない次作るときは一緒にって。」

 

「そうだったかしら、?」

 

「ええ、ほら行きましょう。」

 

 

キッチンなる場所に行くとすでに咲夜がアリスに教えてもらいながらアリス特製のお菓子を作っていた。

 

「咲夜、どうかしら?」

 

「普段、お菓子は作りませんので、なかなか難しいです…」

 

「ふふ、咲夜さんでも苦労するのね。レミリアは2日でできるようになったから、あなたならすぐよ」

 

「えっ…?は…はい、精進します…」

 

「さぁ、フラン作るわよ。」

 

「はい、お姉様。」

 

四人は気が済むまでそして何度もお菓子を作った。

以外にもフランの作ったお菓子は形は少しズレども味はアリスのそれに一番近かった。

 

「流石、フランちゃんは私のお菓子が好きなだけあって、味を覚えてるのね。」

 

「そう?なのかな?」

 

「暁が起きたら、沢山食べさせてあげなさい。きっと喜ぶわ。」

 

「はい!お姉様!」

 

 

 

そしてそれから2日だったある昼。

 

パチュリーが異様な音に気づいた。

 

「なにかしら…地下?」

 

地下の先の実験室でガラスを叩く音がしている。

 

「…まさか!」

 

そのまさかである。

 

扉を開けると、暁が起きて結界を叩いていた。

必死になって叫んでいるようだが。

結界に阻まれて音が消えていた。

 

「待ちなさい。今自由にするから。」

 

結界を外すと暁はベットから降りた。

 

「あー…やっと目が覚めた…」

 

「気分は?なにか変な感じはしない?」

 

「んー…寝すぎて頭が痛いかな。」

 

「へぇっ?」

 

あまりの返事にパチュリーは気の抜けた声が出てしまった。

 

「あとは運動がしたい。」

 

「あっ、いや、だから、何かえっと。」

 

パチュリーは動転して困惑している。

 

「落ち着いて。私はなにも問題ないですよ。」

 

「本当に?」

 

「このように元気が溢れちゃってますね」

 

その一言でパチュリーは安心した

 

「そうならそうと最初から言いなさいよ…」

 

少し考えると暁はまた話した

 

「えっと。餓死する勢いで空腹ですね、」

 

「あぁ…そう…」

 

パチュリーは呆れてそれしか言えなかった。

 

「まぁいいわ、上がりましょう。」

 

大図書館を出て紅魔館に戻り。

 

丁度お茶をしていたフランとレミリアの所に向かう。

 

そして。

 

レミリアの部屋のテラスで。

 

「レミィ、遅くなったわ」

 

「珍しいわね、あなたが遅れるなんて」

 

「まぁ、いろいろあったのよ。」

 

「そのいろいろとは?」

 

紅茶を一口飲むと合図のように声をかけた

 

「来なさい。」

 

新しい執事服を来た暁が3人分のケーキを運んできた

 

「貴方は…」

 

「暁…!」

 

レミリアとフランは驚き、椅子から立ち上がった。

 

「お二人とも、椅子をそんなふうにしてはいけません。」

 

「え、えぇ、そうね。」

 

「はい…ごめんなさい」

 

「待って、いや、そうじゃなくて!」

 

「やっと…やっと目が覚めたのね…」

 

二人は暁が起きたことに感激し

嬉しくなった。

フランは余計嬉しくて泣きそうになっている、

 

「「おかえりなさい」」

 

二人は口を揃えた。

 

その後のお茶時間は咲夜と暁、二人ともいた

 

 

 

そしてその日の夜

 

フランが部屋に戻ると一枚の手紙が置いてあった。

 

「なにかしら…?手紙?」

 

こう書かれていた。

 

 

 

あなたの想い、私にちゃんと届きました。

運命に打ち勝ち奇跡を掴みとったんです、

いつまでもお幸せに!

 

 

 

 

その文の後にかえるとヘビのスタンプが押されていた。

 

 

「奇跡…奇跡かぁ。」

 

フランは不思議そうにしながらも

奇跡が起きたということを理解した。

 

「きっと、奇跡のおかげなのね…」

 

フランはその手紙を仕舞い込み

暁の帰りを待った。

 

そして数分後、扉を叩く音がした

 

「妹様。」

 

その声を聞いてフランは声を弾ませた。

 

「入って入って!」

 

暁が部屋に入ると、

 

「その袋は何?」

 

「これはフラン様が作ったお菓子とデザートです。」

 

「アリスの特製伝授の!」

 

「はい。一緒食べましょうか」

 

「うん!」

 

 

二人は談笑しながら幸せな時を過ごしていた

 




また気がむいたら書こうと思います。

今回フランは初ですが

主人公の執事の名前は以前のシナリオにあります。

吸血記のその後の話に近い形をイメージしました
またこんな感じなのも書きたいと思ってます。


それではまた会えたら会いましょう。

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