物語館   作:むつさん

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どうも松K.です

前書きよりも本編を読んでください


ではごゆっくり


親愛なる者達

夜中に用事があって人里を歩いていた、

 

何か後から気配を感じて振り向いてみることにしたんだよ。

 

そしたら…

 

眩しい光と同時に大きな声が聞こえた。

 

「驚けー!」

 

まぁ、確かに驚いた。尻もちも付いたし何よりも眩しかった。

 

誰の仕業かわからない

顔をよく見ていなかったものだから仕方ないが、傘を持った青い服の少女だってのは分かった。

 

そんな少女がなぜいたずらをするかは知らないが。こういうイタズラは里でよく起きるらしい。

 

 

ある日の夜だ。

 

雨に濡れるのが好きなものだから。小雨程度ならと思い、傘もささないで歩いて仕事帰りに家まで帰っていた。

家に帰ると。

イタズラばかりしていたであろう少女が座りこんでいる。

 

意識はないが眠っているようだ。

 

息が荒くおそらく疲れているのだろう。

逃げていたのか単に疲れていたのか。

 

昨日から指名手配の様な張り紙もあったし、前者だろうとは思う。

 

そんなことだから。とりあえず扉の前では邪魔なので家に連れて行く。

 

所業から人ではなく妖怪なのはわかっていたので。目が覚めたときに何されるかわからないため。とりあえず簡単に手は縛っておいた。

 

 

どうしたものかと。晩飯を食べながら考えていると目をさました。

 

「あれ…ここは…」

 

「目が覚めたのか。」

 

少女は初めはぐったりしていたが、

気がついたのか私を見て睨みつけてきた。

 

手縛ったのだから仕方ないか。

 

「あ、あなたが私を捕まえて…」

 

「捕まえたというよりかは…そうだな。預かっていると表現しておこう。」

 

指名手配をおいそれと差し出す俺じゃない。更生できるならしてやりたいが。

 

「指名手配されてたんだっけ…どうするつもりなの?」

 

「別に。俺の勝手だ。」

 

「そう…そうだよね…」

 

案外簡単に諦めるみたいだ。

 

「そうだな…」

 

「ってやる…」

 

何かつぶやいてるみたいだ。

 

「呪ってやるんだから!」

 

いきなりすごいことを言い出すな

と、そうは思っていたが

案外そうでもないかもしれない。

 

「貴方に一生つきまとって!死ぬまで驚かしてやる!」

 

いや…それだけか…

正直にいえば。

さほど…怖くはないか。

 

「まぁ、好きにするといい。」

 

「絶対!絶対に驚かしてやるんだから!」

 

よほど怒っているらしい。

ここまで感情的なことに驚く

 

「ただ、今、君を自由にするとまた里で追われるかもしれないだろう」

 

「うん…」

 

「とりあえずしばらくはここにいろ。その方が身のためだ。」

 

軽く提案をする

すると頷いて、半分嫌そうに提案に乗った。

 

「まぁ、外に出て捕まるか。ここに残って隠れているかだし。ここは里からは離れているから、わざわざ家まで探しに来るやつなんかいないさ。」

 

それを聞いたのか。ホッとしている様子だった。

しかし気が緩んだのか、さっきの怒ったのとは真逆となった。いきなり泣き出して私に謝り始めだした。

 

「…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

「何がだ…?」

 

「まさか、驚かすだけで怪我させてしまうなんて…」

 

昨日の事件のことなんだろう。

 

少女が子供を驚かしたそうで

その子供は体の弱い子だったらしく、驚いた拍子に転けて地についた際、腕の骨が折れてしまったらしい。

まさかとは思った少女もその場で子供を介抱し、医院まで連れて行こうとしたのだが。

気の働かない大人のせいで加害者悪人扱いだ。

悪を認め善を積もうとする者を悪人呼びするほうが悪人な気もするが

 

この少女に限っては今までのイタズラが過ぎたのだろう、仕方のないことだと俺は思う。

 

結果子供は医院まで連れていけたが

その場で捕まりそうになり。

逃げたのだという。

 

まぁ、あのまま捕まっていたら、まともではいられなくなっていただろう。

賢明な判断だ。

 

 

「起きたことは変えられないし。いくら俺に謝っても何も変わらないぞ。」

 

「なら、わたしはどうすれば…!」

 

自分で考えろ…と言いたいところではあるが

 

「捕まれば良かったのかな、逃げずにそのまま謝っていれば。」

 

見苦しい考えばかりだ。それでどうなりたいのか。

 

「いくら考えても意味がないぞ。」

 

「じゃあ、私はどうすばいいの?」

 

簡単な話だ

 

「妖怪が人に害を成すのは当たり前、むしろそれを悪と捉えて人の法で裁こうと思うのも間違い。だから簡単に言えば悪くないわけではないがそれは必然だからお前が悪く思うことはない、、それともう一つ。お前はその子供を助けようと自分を改めた、それを踏み躙るような行動を取る大人たちも悪い、理解が足りないってやつだな。」

 

「えっと?…えっ、えっと…」

 

「お前は悪くない、妖怪として当たり前のことをしたまでだ、そしてお前はいいやつでもある。だから、そのままでもいい。」

 

複雑等な顔をしている少女だが。どうやら理解はしてくれたらしい。

 

「ただ、調子に乗るとまた同じことになるから気をつけろよ。」

 

「うん…」

 

俯いてばかりだったから、とりあえず手を縛っていた縄を解いた、

そしたら急に泣きついてくるものだから少し驚いた。

 

「いま驚いたよね…」

 

「まぁ、そうだが。」

 

「でもそんなことはいいの。あなたにも謝りたくて、」

 

「なんのことだ」

 

「さっき散々怒っちゃって、呪うだとか、つきまとうだとか言っちゃって…」

 

あー…そんなこともあったな

申し訳ないことだが。

半分ほど聞き流してたものだから覚えてなかった、

 

「別に気にしてないさ」

 

「しばらくここに居させてもらえないかな…その…何かやれることがあるなら。」

 

やれること…、まぁ、派手にやらかしてもらわなければ特に。

 

「自分の家だと思ってしばらくゆっくりするといい、それが今できることだ。」

 

「それだと、申し訳なくて大したことできないけど…」

 

「まぁ。問題起こさないでくれればいい。」

 

「…うん、わかった」

 

その後、少女は部屋で蹲っていた。何か考えているのだろうか。

聞き出す理由もなければ聞いて何かあるわけでもなさそうだが。気にはしておこうと思う。

 

とりあえず少女の分の晩飯を用意し

少女に声をかける。

 

「わざわざ私のために…?」

 

頷いて食べるように促す。

 

「でも…」

 

「気にしてばかりでは、何もうまく行かない。とりあえず食って落ち付いてみろ。」

 

そう言うと、少女は恐る恐る用意した晩飯を食べる。

 

「おいしい!」

 

その一言で少女は明るくなりやっと俺も気が落ち着いた。

 

まだ少女のような妖怪だ、里の大人が何するかわからん

保護という名目になるのかもしれんが、しばらくはここにいてもらうしかない。

 

それが今の少女にとっても里にとってもいいのだろうと、俺は思う。

 

その日は、少女は家で寝泊まりした。椅子に座って本を読んでいる最中に寝てしまったので俺のベットに寝かせておいた。

 

俺の寝床が無くなるが…

まぁ、ソファーでも寝れなくはない、

 

 

 

次の日の朝だ。

 

家の扉が強く閉まる音と鍵の閉まる音、それと扉を叩く音で起きた。

目覚めが悪い…朝から何があったと言うんだ。

 

目が悪いものだからソファーにおいた眼鏡をかけて周りを見渡す。

 

すると少女が駆け寄ってきて、

声をかけてきた…

 

「た…助けて、…来たのよ…」

 

何が来たというのか。

まさか里から…?

わざわざご苦労なことだとは思うが。

 

そのまさかであった、

 

「はいはい、今出ますからお待ちください。」

 

その一言で叩く音は消えた。

 

鍵を開け扉を開ける。

 

すると血眼になって顔を真っ赤にした輩が散々いた。

 

「何用で。」

 

「ここにあの小娘がいるのはわかってるんだそこをどけ!」

 

狩人じゃあるまいし、落ち着くべきだ。それと家をを勝手にしてくれるのは困る

 

「お帰りください。ここにはイタズラ妖怪なんていません。あと勝手にうちを荒らすなら里に迷惑状を出します。貴方達のような非常識な人たちがいると里も迷惑を被ると思いますよ。」

 

するとさらに顔を赤くしてしまった。火に油を注いだか。まぁいい。

 

仕方ないからまた扉を閉めて鍵を締めたするとまた扉を叩く

バカの一つ覚えのように言葉を繰り返す、

 

全くだ。

 

そのうち扉を叩く音が消えて

老いた声が聞こえた

聞き覚えがある

里の権力者の爺さんだろう。

まさか権力者がわざわざ捕まえに…?

ご苦労なことだ。

 

「開けてくれんかね。」

 

乱暴と荒さないことを誓えば

 

「安心してくだされ。我々はあの妖怪の娘に用事があるだけじゃ」

 

「その用事の内容を聞かせてもらえますかね。」

 

「部外者には話せぬ」

 

「ならお引き取りください。」

 

勝手に入られては困るし

少女もかなり怯えている

そんな状態でまともに話ができるわけもない。

 

ここは何が何でも下がってもらわないと。

 

「どうしてもかね?」

 

「はっきり言えば貴方達の探している少女は確かにいます。でも彼女は今怯えてて、まともではない状態です。仮にも妖怪、何が起きるかわかりません。ですのでお引き取りください」

 

かなり頑固だ、下がりたくないと見える、

 

「言っているではないですか。害は成さないと、」

 

「私が無事であっても少女に何かあれば私が許せません、里につれていくのであれば私も同伴します。今は私が彼女の保護者です。」

 

返事がない。小声は聞こえるから相談をしているようだ。

やがて返事が来たでも、それは老いた声ではなく若い声だった

 

「わかりましたでは同行をお願いします」

 

「お待ちくださいね。」

 

条件に乗られたからにはこちらも引き下がれない

仕方なく少女を説得し絶対に離れないことを約束し。

扉を開ける。

すると扉の前には若い男が一人で立っていた。

 

「他は?」

 

「里に戻られました。」

 

わかりやすい嘘だった、

真後ろ、いや、正確には後方から異常な殺気と気配を感じる。

 

「家の裏手に回り込ませましたね、勝手に家に入り込むのは許していませんが?」

 

「貴方には要はないのです早く娘を引き渡してください。」

 

そのことを聞いて、流石に腹が立ったので引きこもることにした。

 

「お断りします。帰ってください、」

 

こうなれば篭城だ。

 

少女も怯えている。俺もとてもじゃないが冷静さを失うか。

 

全くだ。

 

結局また老人が声をかけてきた。

 

「聞こえるかね。」

 

「何用で」

 

「今、先程だな。貴方はあの小娘の保護者と言うたな」

 

「ええ、確かに言いました」

 

「それならば一つお願いをしたい。」

 

「内容を」

 

「小娘が里でいたずらをしないよう里に現れぬよう、監視してくれるかね。」

 

どんなもの条件飛ばしてくるかと思ったらたかがそれだけか

 

「ふふっ。そうですか」

 

「何がおかしいのだ。」

 

「これは失敬。いいでしょうそのお願い聞きましょう。」

 

「よろしく頼みますぞ」

 

不便なことはある。それは今のうちに消しておこう

 

「ただ私からも一つお願いしましょう」

 

「なにかな?」

 

「私が同伴でのみ里には行かさせてもらいます」

 

「なぜかな。?」

 

「簡単な話です、私が離席中、少女に好き勝手させないため、それと里の人々に監視がしっかりとされているという証明をするため、」

 

「なるほど…」

 

「あとは単純に俺の生活関係で里に行くからそれについてきてもらう」

 

「それならば問題はなかろう、しかし問題沙汰になれば即出入り禁止とさせてもらうがよろしいかな?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

結果この場で全部解決した。

 

里の人達か帰った後、少女が話しかけてきた。

 

「もう驚かしちゃだめなのかな」

 

「あぁ、そうなっちまったな」

 

「そっか…」

 

悲しそうに俯く

何もしてやれないどころか。

こいつには悪い条件に乗ってしまった

それは俺の責任でもあるが

どうにも不甲斐ない

 

少女は俯いたまま寝てしまい。仕方ないからまたベットに寝かしておいた。

 

特に何もすることがなく暇が続く。

家の隣の畑もまだ野菜の収穫には遠い、

かと言って山に行って山菜採りをするわけにも行かない。

 

どうにも暇だから

この前鈴奈庵から借りてきた本を読んでいた。

それにも流石に飽きてきたのか次第に微睡み始めてきていたころ。

 

「驚けー!」

 

何事かと大きな音に驚き体が一瞬跳ねた。

すぐに振り返ると先程まで寝ていた少女の恥ずかしそうに笑う姿があった

 

「どうかな、驚いてもらえたかな?」

 

「ああ。結構効いた…おかげで眠気がどっかすっ飛んだよ。」

 

そう言うと少女は笑顔になり安心したように俺の隣に座りこんだ。

 

「貴方は私が妖怪だというのはわかってるんだよね。」

 

「あぁ、まぁそうだな。」

 

「さっきの話だと私はずっとあなたと一緒にいることになるんだよね。」

 

「そうだな…嫌か?」

 

少女は考えながら話た。

 

「嫌じゃないかな。」

 

そして俺を見て話し続けた。

 

「貴方って、優しくて強くて暖かいんだもん。そんな貴方を嫌いになるなんて私には出来ない。だからね、貴方さえ良ければ…私はずっとここに居たい。」

 

少女の言葉に心を動かされた、

里を出てから誰かに想われたのは久々かもしれない。

もちろん里に知り合いや家族はいるが、疎遠になっているし、兄弟とは元々仲の良い方ではなかった

 

少女が望むのなら俺は彼女を守り続けて行く。それだけだ。

 

「あぁ、構わないよ。」

 

少女はふふっ、と笑って立ち上がった。

そしてまた一言

 

「これで、貴方を一生驚かしていられるね」

 

なるほど、さすが妖怪の考え方は一転しているようだ。

 

少女にとって驚かすとは生き方、アイデンティティとかいうやつだ。

それがなくなってしまっては悲しい限りなのだろうが。

俺がいなかったら全部無くしてたのかもな。

 

「俺でいいのか?」

 

「貴方を驚かすとね、お腹一杯になるだけじゃなくて、心も暖かさで一杯になるの。だからね、すっごく幸せでね。貴方が大好きでね。」

 

なるほど。

俺に心を寄せるのか、

 

「俺が好きか」

 

「恋人とかそういうのはちょっと遠いかもしれないけど。でもずっと一緒にいたくて。」

 

どうも心が暖かくなる。

親子ってこんな感じなんだろうか。

俺は今まで親に縛られて生きてきたから、こんな暖かみは初めてかもしれない、

 

「そうだな、俺も好きだし一緒にいてあげたい。」

 

俺も少女もお互いにお互いを必要としていた。

生きていく上で誰かを欲するのは当たり前だと聞くが。それが今なのだろう。

 

たまに喧嘩もする。一方的に感情をぶつけもしたりされたりする。

 

でもその度それを認めあっている

 

何よりも繋がりを持てたことに俺も少女も喜びを覚えていた。

 

それでまた、用があって人里に行くことにした。

技師の河童に用があったのだ。たまに里に顔を出すことがある。そのときにお願いをしたく里に行くことにしたのだ。

 

簡単に言えば機械のメンテナンスだ

 

少女と共に里に足を運んだ。

 

少女を連れて歩くものだからやはり鋭い目線を飛ばす輩もいる。

 

だが、そんなばかりではない。

少女に興味を持って好意を抱くやつもいる、

 

悪いことばかりではないようだ。

 

買い出しもついでにしておこうと思う。

 

それで河童がいつもいる暗い路地に入ったときだ。

後ろからいつもの声が聞こえた。

 

「おや、あんたさんいつの間に子を持ったんだい?」

 

「子じゃねぇ、拾い妖怪だ。」

 

「あー。忘れ傘の。」

 

「知ってるのか。」

 

「噂はかねがね。でもまぁただのいたずらに過ぎないのにねぇ。」

 

「俺が保護者として預かることにした。」

 

「忘れ傘を拾い傘って感じか、」

 

「まぁそんなとこだな。」

 

「今日はどうした?メンテナンスかな?」

 

「よくわかったな。時計を直してもらいたい。」

 

「はぁー…またあんたの家まで出張か…」

 

「すまないな、今夜は晩飯を用意するよ」

 

「おっ、よし乗った、きゅうりは出してくれるんだろうね?」

 

「この通り袋詰めだ。」

 

「なかなか準備がいいじゃないか、そういうとこ好いちゃうねぇ。」

 

「まぁ、そうでもしないと来ないだろう」

 

「よくわかっていらっしゃる」

 

談笑を終わらせてから後で家で会う約束をし大通りに戻る。

 

するといきなり人里の住人に囲まれた。

 

「これは一体なんのつもりですか、」

 

「その小娘にはやはり出てってもらいたい。」

 

「理由は?なぜ今になって。」

 

「いつイタズラをされるかわからない、それでまた被害が出ても困る。」

 

そういうと有無を言わさず近寄って少女の腕を掴み引っ張りだす。

 

「いや…やめて!」

 

俺も黙っちゃいない、

すぐさま少女を掴む腕を振り払おうとする、

 

すると少し離れたところから聞き覚えのある老いた声が聞こえてきた。

 

「やめんか!何をしておる!」

 

その声と同時に水玉のようなものが周りに浮かび始めた。

 

「身勝手すぎる。それでなんの満足なのさ。」

 

人里の長老とさっきの河童だ。

 

どうやら騒ぎを聞きつけたようだ。

 

「お主らに少女を問い詰めることは禁止したはずじゃ!その男に任せるのが吉と同意したではないか!」

 

「し…しかし!」

 

「あんたらさ、これ以上何を望むのよ、皮肉だけど、もうそいつは何もできやしないよ」

 

腕を振り払い少女を後ろに隠す。

 

「何を考えておる、なぜそこまで。」

 

「ただの八つ当たりだよ。何もできないんじゃ悔しいんだ」

 

それ以外何も言わず男たちはイライラしたまま帰っていった。

 

長老が申し訳なさそうに話し掛けてくる

 

「これは申し訳ないことを…」

 

「あいつらには今度、度の効いた説教をしといてくれ。」

 

「娘や、すまないな…」

 

怯える少女に手を差し伸べる。

少女はそれに応えるのを戸惑った。

 

「やはり…まだ怖いかね。」

 

「ごめんなさい…」

 

謝りながらも、怯える少女

長老はまだ申し訳なさそうにしていた。

 

「今回ばかりはこちらの不手際、そなた等にはなんの非もない。」

 

それはわかっている。

これでこちらのせいでは話にならない。

 

「里での息苦しさはあるかもしれぬができる限りこちらも手助けはしようとは思う、悪く思わんでくれ。」

 

「あぁ、助かるよ。」

 

一しきり落ち着いた頃、長老は去っていき、荷物を持った河童が寄ってきた。

 

「また面倒になったもんだねぇ、小傘さんや」

 

小傘。少女の名は小傘というのか

 

「…貴方は人里にいて、なんともないの?」

 

「私にとって人間は友だ盟友だ、それにあんたの隣にいる男は元々。」

 

それ以上言われると困るが…

 

「おい待て、それだけは言うな。」

 

「いいじゃないか、どうせあんた、小傘に心開いてんだろ?」

 

まぁ…そうだが…

 

「場所を考えてくれるか。」

 

「まぁ、そうだねぇ。」

 

結局河童と同行して帰ることになった

 

帰り道の途中、人里を歩いていると一組の親子が話しかけてきた。

 

「あなたですか?」

 

母親のほうが少女に話しかけてくる

 

「えっと…私が何か?」

 

「うちの子を医院まで連れてってくれたんですよね…?」

 

「は、はい。だって怪我しちゃったから。」

 

「それです、お礼を言いたくて。」

 

「えっ、?でも…」

 

「おねぇさん、ありがと!」

 

親子は少女の答えも聞かずただお礼をしていた、

結果良ければそれでいい

 

「まぁ、間違いじゃなかったってことだ。良かったな。」

 

少女…小傘は恥ずかしそうに頷いた。

 

親子と別れて里を離れ、家に戻る

 

するとすぐに河童が暑そうな上着を脱いだ。

 

「はー!ほんとここは快適だよー!」

 

「いきなり肌けすぎだ、少しは控えろよ、」

 

「いいじゃないか、どうせ私の家みたいなものだし。」

 

何を言い出すか。

 

「全く、ほら、早く時計を直してくれ。」

 

「はいはい、今診ますよー」

 

慣れた手つきで時計を解体、部品を修復していき、組み直す

十五分からニ十分ぐらいで人の体より大きな置き時計が正常に動き出す、

 

「ほんと、お前のその技術には感心するよ。」

 

「でもさぁ?これなんの意味もないんだよねぇ」

 

この幻想郷に時間の概念はあまり意味がない、俺が独断で考えて使っているだけで、本来の使い方は知らない。

 

「置物としては優秀だ。」

 

「そんな置物をわざわざ私に直させるとは、いい趣味してるねぇ。」

 

「ちょっと修復して、そのお代替わりに晩飯食えるんだからいいだろ、」

 

「ごもっともで、」

 

そういうと、さらに着ていたカッターシャツのような服すら脱いでタンクトップ一枚になる。

「何もそこまで暑くないだろ。」

 

「身が苦しい感じがするんだよなぁ。厚着すると」

 

厚着という厚着ではないだろう。

 

横から見ると胸が見えかける。

あまりにもだらしなく感じるが…

流石に目も耐えられない。

 

「さっきから赤くなってー。見える?ねぇ、みえるぅ?」

 

あからさま過ぎて泣けてくる。

 

少女は里での事件の反動で疲れているのかソファーで座って寝てしまっている。

 

「今なら何でもできちゃうねー?」

 

勘弁してくれよ…

 

そんなくだりをしていると河童の腹が鳴った

 

流石の河童もこれには恥ずかしさを覚えたようだ

 

「な、なんにも聞いてない!私はお腹へってないから!」

 

「じゃぁ、晩飯いらねぇな」

 

「いや、食べる!ごめんなさいって!」

 

河童が叫ぶものだから少女が起きた

 

「うーん…どうしたのぉ?」

 

「河童が腹減ったみたいだから晩飯にするんだ」

 

「私がお腹空かなくても晩飯は食べるでしょ!」

 

そんな河童の焦りを押し退けながらも三人分の夕食を用意した。

 

「相変わらずの味付けだねぇ。」

 

「あっさりしてて美味しいよ」

 

まぁ、料理は下手な方ではないが。薄めであっさりした味付けにいつもするものだから、あまり好まれない。

 

「濃い味は好きじゃない。」

 

食べ終わり。ゆっくりしていると。

河童がまた話し始めた、

 

「小傘はさ。なんでこの男と居ることにしたの?」

 

「成り行きっていうか…拾われてそれで。いろいろあって。」

 

「ふーん。確か里でいたずらして相当嫌われてたよね。」

 

「うん…まぁ、」

 

「それで、追われて逃げた挙句、家の前で意識無くして行き倒れてるところを拾ったんだ。」

 

「へぇー。相変わらずお人好し」

 

「好きに言え。」

 

「さっきの話の続き話そっか?」

 

結局そうなるのな。

 

「気になります。なんだったっけ?」

 

「この男は元々、里に住んでたんだよ。でもある薬屋に騙されてある病気になったんだ、」

 

「病気?」

 

「病気って言っても体に害悪があるわけじゃないけどな。」

 

「でも、普通の人ならかなり後悔するのにこの男はどうとも思わないんだよね。」

 

「どんな病気なの?」

 

「うーん。なんていえばいいかなぁ」

 

「そのままだ、死ねなくなる病気。」

 

「それって…」

 

そう、不死だ。

 

昔、二度と治らないと言われる病気に掛かり。かなり苦しんでいた。

永遠亭の薬屋にいろいろな薬を処方されたがどれも効かなかった。

 

でも一つだけ絶対的に効く薬があると言われ、俺もそれを望んで飲んだ

 

それで…不死になったのだ。

死にたくない、まだやりのこした事がある

 

でもやり残したこともなくなり、後悔も消え去っても尚病で死ぬことはなく生きている

それこそ健康体で、

 

「不老不死…だよね」

 

「あぁ、すっかり騙された気分になったけど、まぁ、この普通な生活がつづくなら悪くない。」

 

「ほら、つまらないこと言う。どうせ普通を繰り返すならさ、」

 

このくだりは何回目か、

 

「私もここに居させてよー。」

 

それだけはどうしても気が乗らない

 

「めんどい、却下」

 

「もーまたそれじゃないか!」

 

小傘が呆けて聞いているから河童が茶化す

 

「まだ早いかな?子供だねー」

 

子供でも妖怪は妖怪だ、

 

「実は言うと。こいつがまだ里にいた頃に。私はこいつに愛を誓うつもりだった」

 

懐かしい話だ。

 

「えっと…好きってことですか?」

 

「そう。誰よりもこいつが好きだった。」

 

「俺は何も言わん。」

 

「でも、こいつは私が妖怪だって、河童だって知らなかったみたいだから。悲しせてしまうって言って、少しも私に向いてくれなかったんだよねー。」

 

「悲しませる?なんで?」

 

「ほらこいつ、不死でしょ?それだけでも違いがあってそれで、らしいんだよね。」

 

「でも、妖怪なら今は?」

 

「どうなの?ねぇ。」

 

「発言は控えさせてもらう。」

 

「ほら、いつも、こんな感じ」

 

「なんで、この人はここにいちゃいけないの?」

 

それもまた、何度目の質問か、

 

「単純に面倒だからだ。」

 

「ふーん。私、面倒なんだ、」

 

面倒だからこそがこういう関係でいられる。これ以上は望むと思わない

 

「でも、お前には感謝している」

 

「い。いきなり何さ」

 

「いろいろだ。」

 

頬を赤くしてうつむく河童。

こいつのこの表情を見るとどうも胸が熱い。

 

わかってはいるが。

どうしても【怖い】んだろうと思う。

この河童が俺を好きなのはわかってる。俺もその思いには答えてやりたい。

だが、俺がこいつにしてやれることが見つからない。

普通の人間…いや、ただの不死の人間が、技師の河童に対して、何がしてやれるのか。

探しても探しても見つからない。

 

「そんなに…私が一緒にいると迷惑?」

 

「俺がお前に釣り合わない」

 

「そんなこと気にしないよ」

 

「俺が気にするんだ。」

 

「でも…私は…」

 

これ以上繰り返すのも、河童に悪いか。

でも俺にも俺の意志があるわけだが…

もう、こればかりは河童を…彼女を受けいれていくのがいいのかもしれない。

俺もいつまでも孤立意思を引きずる訳にもいかない?

 

「なぁ、河童。いや、にとり」

 

「なにさ。」

 

「本当に俺でいいんだな?」

 

「私には、あなた以外にいないからね、、」

 

「わかった。なら、それなら。」

 

「一緒にいてもいいの?」

 

「あぁ、あの日の答えだ。

俺もお前が好きだ。」

 

「うん!」

 

河童が明るい顔をするとまた胸が熱くなる。

出会いの多い最近だと痛感する。

いつから俺はこんなにも好かれるようになったのか。

 

元々嫌われもので。好かれるのも好きじゃなかった。

 

だが、今は変わってきている、

自然と好かれ好いている。

 

だが、俺も含め普通の人間ではない

それはまぁ…俺が不死だからというのもあるのだろう。

 

これもあの吸血鬼の言う【運命】ってやつか

 

悪くない。だが、昔を振り返ると俺がどれだけ損をしていたかよくわかる。

 

これからはこの親しき者たちと。

愛しき者たちと、生きていきたいと思う。

 

 

 

「ねぇ…」

 

唐突ににとりが話し掛けてくる

 

「あんたの名前、そういえば教えてもらってない。」

 

「あぁ。あだ名しか教えたことなかったな。」

 

「あんたにあんなあだ名は合わないよ」

 

名前か…

 

「私も知りたいな」

 

小傘も寄り添ってくる。

 

状況の説明がまだだったな、

 

実は今、俺はベットに寝ている。

 

二人の分も用意したのだが

どうしても俺の隣で寝たいという。

それで今両手に花状態だ。

 

勘弁してくれよ…暑苦しいだけじゃなくて寝苦しいとかそういうのじゃなくて。

 

恥ずかしいとかそういう感情に包まれて心を無にするのが精一杯だというのに。

 

質問までされたら気が確かじゃなくなる…

 

「名前か…」

 

「「あなたの名前は何?」」

 

「…」

 

「そっか!」

 

「いい名前だね!」

 

早く寝たいの一心で呟いた。

 

その後二人は俺の腕にくっついて寝ている

散々だ…そう思いながら二人の寝顔を眺めるとどうも心が和らぐ

 

俺も心が温まったような感覚で眠気が来て寝た。

 

いつかの吸血鬼

あいつが言っていた

 

あなたのように苦労と努力と損を重ねた者はいつか報われる。

安心なさい私が保証するわ。

 

その言葉を思い出した、

そう、報われる、今がその時で

俺は幸せを手に入れることができたのだろう

 

俺はいつまでもこの幸せが続いてほしいと願っている。

だから、俺はこの二人を大切にしたい。

 

「いつまでも愛してるよ」




ついに一万文字を越えました

ついでに題名もすぐ思いついた

それだけ

ではまた会えたら会いましょう

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