物語館   作:むつさん

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あなたとの思い出

どうも犬走椛です。

 

今日は筆者さんの代わりに私が書くことになりました。

 

ちょっとした思い出話です

 

 

 

ゆっくりしていってくださいね

………………………………………………

 

やっぱ、今日も山は平和です。

そのまま何も起きなきゃいいですねえ

 

 

「もみじー!ちょっといいですかー!」

 

なんだ…また文さんか…

 

「なんですか…仕事の邪魔しに来たなら帰ってくださいよ…」

 

「違いますよーちょっと大事な話があるので手止めれます?」

 

大事な話?

 

「なんです?話って」

 

「とりあえずこの手紙読んでみてください、」

 

「は、はぁ。」

 

……………………………

 

拝啓 もみじ殿

 

先日、新人の白狼天狗が来た

 

椛殿は白狼天狗の中でも特に優秀かつ有望な方だと判断した

新人が半人前だと判断がつくまで教育担当を頼みたい

 

以上

 

……………………………

 

 

なんで私が……

 

「他には誰かいなかったんですか?」

 

「いやぁ、私が引き受けますよって言ったんですけどねぇ、どうしても上の方々が椛にって言うんで」

 

また面倒なこと増えたなぁ…はぁ…

 

「それで。新人ってのが、隣の方ですかね」

 

「よろしく」

 

暗い子だなぁ…

 

「まぁ、仕事まだ途中なんで詳しいことは後でお願いします。それまで文さんと詰所で待ってて下さい。」

 

「わかった」

 

「返事をするときは、はい。でおねがいしますね。」

 

「はい。」

 

「それじゃ。また後でおねがいしますね。」

 

「はーい、わっかりましたぁー。」

 

返事…新人の前でそれはない…

 

全く…上の方もなぁ、私じゃなくてもっと良い担当見つけてくれたらいいのに…

 

「まぁ、相変わらず山は平和でいいことです」

 

……………………

 

 

まぁ、見回りも終わりましたし詰所に戻りますか。

 

……………………

 

「文さーん、戻りましたよー、」

 

「お、帰ってきましたか。」

 

「それで、新人は?」

 

「向こうのテントにいますよ。」

 

テント?テントなんかあったっけ?

 

「あぁー、あれですか。」

 

「それじゃ私はこれから仕事なんで失礼しますねー。」

 

仕事って言ったって盗撮ですよ、どうせ

 

まぁ、挨拶しますか…

 

「入りますよー。」

 

「どうぞ。」

 

「新人の方ですよね、私は犬走椛と言います。さっき文さんが言ってた通りあなたの教育担当ですので、よろしく頼みますね」

 

「よろしくお願いします。」

 

ありゃ、それだけか…

 

「あの、名前をですね…教えてもらいたいんですけど…」

 

「しろ…です」

 

「しろさん、ですね。よろしくです、」

 

変わった名前ですね、、

 

「もう夕方ですし私もそろそろ帰るので今日はこの辺で。」

 

「あの。」

 

「はい?なんでしょう?」

 

「このテントどうしたらいいですか?」

 

何も片付けるだけですけど…

 

「片付けて帰られたらいいと思いますけど。」

 

「文さんが…テントしまってくださいって…どこか寝泊まりできる場所ってありますか…?」

 

「あー…えっと…」

 

家無し…?

いやそんなまさかね…

 

「家に戻らないんですか?」

 

「事故で無くして…」

 

なるほど…

こまりましたね…

仕方ありませんか。

 

「なら、案内するので来てください」

 

「はい…」

 

家がないなら。うちで預かるしかありませんから

 

「ここって、」

 

「私の家です。まぁ、しばらくはここで暮らしていってください。」

 

「いいんですか…?」

 

「私の家ではダメでしたか?」

 

「いや、そういうことじゃなくて」

 

「私が案内したんですから私が断ることはないです。」

 

「わかりました…」

 

「さぁ。どうぞ上がってください」

 

「おじゃまします…」

 

そうですね…それじゃ違いますから。

 

「ただいまでいいですよ。」

 

「いや、でもまだ…」

 

「おかえりなさい。しろさん。」

 

「た、ただいま…」

 

さてと…何から準備しましょうか…

 

「とりあえず部屋の用意しないといけませんね…」

 

二階に空き部屋あったはず…

 

「ここでいいですか?」

 

「えっと…はい、大丈夫です」

 

「荷物って何持ってます?リュックの中出してくれますか?」

 

「あぁ、はい。」

 

メモ帳に、筆記具に、

ビニール?包のごみかな…

あとは…

 

「懐中時計…?」

 

「母がくれたものです。妖怪の森の近くの変な店で買ったって。言ってました」

 

こーりんさんのとこのか。

 

「お母さんは?一緒にいないんです?」

 

「火事で…家が燃えた時に…」

 

あぁ…それは…

 

「わかりました…」

 

「大切なものなんです。」

 

「形見ですか、」

 

「そう。ですね。」

 

「さぁ、部屋の準備しましょうか。」

 

「はい。」

 

………………………………………

 

その後はですね…

 

私は先の新人の白狼天狗と暮らしました。

 

そうです、同棲ですよ?

 

だからといってまだ何も新展はないですからね?

 

なかなか筋は悪くないみたいで、

仕事も武器を使った訓練も問題なく

こなしていってました。

 

それで、しろさんの母親のことですけど。

気になりますよね。

 

………………………………………………

 

「椛さん…今時間あります?」

 

「ええ。丁度仕事が終わったところですよ。」

 

「母のことなんですが…」

 

「無理に話さなくてもいいんですよ…?」

 

「椛さんを見ていると、母を思い出すんです…」

 

「私…ですか」

 

私としろさんの母親とで何かあったのでしょうか

 

「椛さん。母にすごく似ているんです。」

 

「は、はぁ。」

 

似ている、ですか

 

「強くて、優しくて、それで…」

 

それで…?

 

「とても綺麗で…」

 

綺麗…ですか。

 

「本当の母のようで、何故か思ってしまうんです。」

 

「なんだか、嬉しいですね…」

 

「母と家族は…皆亡くなってしまったんです。」

 

「そう…なんですね。」

 

「火事が家で起きて、たまたま買い出しで出掛けているときに…」

 

「助からなかったんですか?」

 

「ある妖怪が…家族を襲ってその後、火を付けたみたいで、逃げれなかったのだろう…って」

 

逃げれなくした…なぜ?

 

「なるほど…そうですか…」

 

「戻った時には手遅れだったんです、その妖怪もその場で焼け死んでて…」

 

その後の自殺ですか…

 

「家族も殺されて、その復讐もできなくて」

 

辛かったでしょうけど…

 

「でも全部忘れたくてここに来たんです。」

 

「でも。今話しているのは…向き合うために?」

 

忘れないため…でしょうか

 

「そうです…でもまだ逃げてて…」

 

「強くなろうって思ったんですよね」

 

「はい…」

 

「なら、逃げてないですよ」

 

「えっ?」

 

「強くなって護れるようになろうって思っているなら、それはもう、過去に立ち向かっていってますよ。」

 

「…怖がって前に進めなかった…それだけなんでしょうか、」

 

「そうですね。それももう、悩むこともないですよ、」

 

「はい…ありがとう御座います」

 

 

…………………………………………

 

ということです、

 

母親に似てるなんて言われまして。

ちょっと驚きました。

 

でもまぁ普段の生活からそう思われるのは、

悪い気はしないですね。

 

それでまぁその後のことです。

 

無事、上からは評価されて

しろさんは一人前にまでなれて

 

私も指導を終わることになったんですけど

それでも家がないからということで、

しばらくは同棲が続きました

いえ、まだ続いてます。

 

彼は立派な哨戒天狗として仕事をしてます。

 

それで…ですね。

 

私も想定外なことに

また驚いたことがあったんです。

 

…………………………………………

 

「この懐中時計…懐かしいですねぇ」

 

しろさんがうちに来た時にいろいろ聞いたなぁ…

 

中身って時計と写真を飾る場所があるんでしたっけ?

 

「時計しかないですね…。」

 

「それ、写真ってどう取ればいいんですか?」

 

「あぁ、しろさん帰ってたんですね」

 

そうですね…文さんにでも頼めると思うんですけど、、

 

「家族とか大切な人との写真を飾るって聞きました。それで写真撮りたいんですが…」

 

「誰と取るんです?」

 

「もちろん、椛さんとですよ」

 

わ、私とですか!

 

「な、なぜ私なんです?」

 

「ここにきてから椛さんにはずっとお世話になってて、本当の母のように思ってて、それで…良ければお願いしたいんですが。」

 

そ、そうですね…

 

「そういうことであれば、まぁ、わかりました。」

 

多分盗聴ぐらいしてるでしょうし、あの人ならすぐそこにいますよね

 

というか…あの黒いのって、羽ですかね

 

「文さーん?盗聴お疲れ様ですー」

 

「あやややや、バレバレでしたかー」

 

いや、ほんとにバレバレですよ…

 

「あのですね…盗聴も程々にお願いしますね。」

 

「ど、どこから聞いてたんですか?」

 

「うーん…全部?」

 

悪趣味だなぁ

 

「で、ですよ。写真とってもらえますか?それで現像までして欲しいんですけど」

 

「えー、めんどくさいですよー」

 

はぁ…しかたないですね。

 

「盗聴までしてそれとはホントあなたって人は。」

 

どうしてあげましょうかねえ

 

「わかりました!、わかりましたから剣を収めてください!」

 

よし、解決。

 

「で、写真ですね。どう撮ります?椛のグラビアでも撮ります?」

 

この人はほんとに…

 

「右か左かどっちがいいですか?」

 

「あやや、どっちも大切な翼なんで勘弁してください…」

 

「まともにおねがいしますね…?」

 

「は、はいっ、」

 

「単純にしろさんとの写真です、懐中時計に入れるので現像までおねがいしますね。」

 

「ツーショット写真ですね。場所はここで大丈夫です?」

 

まぁ、いいでしょう

 

「はい、構いませんよ。」

 

文さんにカメラを向けられるのは何度目でしょう…

でもまぁ、今回はお願いしてますし。気にしませんけど

 

「あっ、しろさん目が閉まっちゃってますね。眩しかったですか?」

 

「す。すみません。」

 

撮り直しですかね。

 

「撮り直しますか」

 

あれ…手が暖かい…

えっ、しろさん?

 

「よしよし。いい出来になりました。」

 

「現像、お願いできますか?」

 

「ほいほい、もう出来てますよー」

 

やっぱり…これ

 

「し、しろさん…」

 

「まぁまぁ、手繋ぐぐらい許してあげてたらどうです?」

 

まぁ…嫌ではないんですけど…

 

「心の準備というものがですね…」

 

「あ。えっと。いや自然と…」

 

しろさん…なんだか、嬉しいですね…

 

「あらあらぁ、お熱いですねぇ。」

 

 

…………………………………………………

 

と、まぁ…

 

こんなことがあったんです。

 

今でも写真は懐中時計の中にありますし。

それとは別で飾ってあります。

 

 

実はというと…

 

あれから何日か経ったあと。

しろさんに改めてプロポーズをされまして。

 

付き合うことになりました。

お互い仕事もあることですから、

一緒に居られる時間は少ないですけど。

それでもその時間を大切したいということです、私もそれには賛同はしました。

 

 

 

……………………………………………

 

こんな感じでしょうか…

 

でもまぁ、これぐらいにしておきますか。

 

「ただいま。」

 

「しろさん、おかえりなさい」

 

「ん?そのノートはなに?」

 

「これですか?秘密です」

 

「そっか。」

 

 

私の唯一の思い出。

 

忘れたりしませんよ

 

「簡単に言えばあなたとの思い出です」

 

「思い出…思い出かぁ」

 

………………………………………………

 

それじゃこの辺で

 

また会えたら会いましょう

 

犬走椛

 


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