物語館   作:むつさん

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どうも、夢子です。

最近ゲーセンの音ゲーにハマってしまった。
悪いとは思ってない


ではごゆっくり


幸福の兎

「かなり歩いたな…まだか?」

 

迷いの竹林を歩く一人の男がいる。

 

永遠亭まで薬を貰いに来た人里の人間なのだが…

 

どうやら案の定、迷ってしまったらしい、

 

そんな男に幾つも災難が起きる。

 

ブンッ…バチンッ

 

「っ痛っ!」

 

男の頬に木の板が叩きつけられたり…

 

時には、わざとらしい竹の根に引っかかり転ぶ。

 

男は呆れるように立ち上がり

 

「次はないぞ!」

 

誰かに言い叫ぶように吠えたそれで、

 

竹林が一気にざわつき

 

男の後ろから人の影が現れる

 

「えっー。楽しかったのに」

 

「馬鹿。俺はいてぇんだよ」

 

「ごめんねーー。」

 

謝りながら因幡てゐが姿を現した

 

「棒読みで謝ってるように思えねぇんだが。」

 

「えぇー。まぁいいや。」

 

「何がいいんだよ…」

 

そうして。二人は永遠亭まで歩きはじめた。

 

「母さんがまだ良くならなくてな」

 

「ふーん、偉いね」

 

「大切な家族だ。守っていかないとな」

 

「大切ねぇ…」

 

そうこう話をするうちに永遠亭に着いた。

永琳に用事があって来たのだ

 

「あら、今日も来たのね。」

 

「普通の風邪薬でいいんで。」

 

「もう4日経つのに治らないのかしら?」

 

「薬効いてないんじゃない?」

 

「良くはなってる。熱は下がったんだ、もう少しだと思う。」

 

「そう、それは良かった。」

 

「早く良くなるといいねぇ」

 

「あぁ。」

 

男は薬を受け取ると永遠亭を後にした。

てゐは、次のいたずらは何にしてやろうか、なんて考えを浮かばせニヤニヤしていた。

 

すると永琳が困った顔をしながら話しはじめた。

 

「多分治らないわ…」

 

不思議に思うてゐは聞いた

 

「何が?、風邪?」

 

「病気でもなければ風邪でもない、彼の母親は…」

 

「え?でもまだ若くない?40ぐらいでしょ?」

 

「老衰とは言ってないわ。」

 

「まぁ、そりゃそうだけど。」

 

「多分…臓器に異常があるわね…」

 

「ありゃ…そりゃご愁傷」

 

「薬じゃ治らないわ、さっきの通り熱が下がるだけね。」

 

「治してあげないの?」

 

「本人が来ない限りはそのつもりはないわ。それに出張サービスなんて、する気ないもの」

 

「案外ひどいねぇ」

 

「勝手に言ってなさい」

 

そう言い二人は別々に歩きはじめた。

 

「大切…か、」

 

てゐは人里に向かった。

 

竹林を抜け、広い草原を歩き、人里に着いた。

 

人里には幾つがイタズラをして来たが今回だけは理由が違う。

 

「ちょっと会いにでも行ってみようかな」

 

見慣れた道を進み

見慣れた光景を眺め。

 

ひとつの家に着く。

 

てゐは呼び出しをしたが。反応はなかった。

どうやらまだ男は帰ってないようだ。

 

許可もなく、だが恐る恐る家に入る

 

「おじゃまするね」

 

すると家の奥で横たわる一人の女性がいる。

 

「おや…あなたは…」

 

てゐは女性の隣に座った

 

「いたずらっ子の因幡てゐ、って言えばわかるかな?」

 

「おやおや…幸福の兎さんに会えるなんて…私は幸せもんね…」

 

「病気…辛い?」

 

「いーえ…あなたに会えたし、いつも息子が側にいてくれて。なんともないわ」

 

「そう…」

 

「でもね…もうそろそろなのかもしれないわ…」

 

「えっ…?」

 

「すごく眠たくてね、力が入らなくてね。私は、ただの風邪じゃないって知ってたのよ。」

 

「なら、なんで…?」

 

「あの子に心配掛けさせたくなくてね。」

 

「じゃあ!アイツは…」

 

「頼んだわね…あの子のこと…」

 

それ以降てゐが話しかけてももう返事はなかった。

 

「そんな…いきなり…」

 

涙ぐんで、何もできない事を悔やんだ。

 

「私は幸せを、呼ぶって。そんなの…」

 

やりきれない思いが溢れそうで

その場をあとにして

ひたすら走って永遠亭までもどった、

 

途中、男に話しかけられたのにも気づかずに。

 

男は家に戻ると涙を流しながら母の名を呼んだという。

 

それから男は永遠亭に顔を出さなくなった。

 

てゐもいたずらはしなくなった

 

 

………………………………

 

永遠亭でてゐが餅つきを眺めていると。

永琳がてゐに話しかけた、

 

 

「あの日、最期を見届けたのね」

 

「…うん。」

 

「気を落としたって何も変わらないわよ。」

 

「それはわかってる…」

 

「男が気がかりかしら?、」

 

「それも…あるかな。」

 

「元気…とは言い切れないけど、里でしっかりしてたわ。」

 

「そっか、よかった。」

 

「納得出来なさそうね。」

 

「いや、べ、別に」

 

「ふふ、会いに行ってみたら?」

 

「…後で行ってくる。」

 

そう言うと、てゐも餅つきを始めた

 

「いたずらっ子は素直じゃないのね」

 

そう呟いて永琳はその場を離れた。

 

餅つきを終えた後、てゐは人里に向かった

 

日も落ちかけた夕方に永遠亭を出て、人里に着いたのは夜だった。

 

よく晴れた満月の綺麗な星空。

 

見慣れた人里の道

見慣れぬ夜景の人里

そんな場所をてゐは歩いていた

 

 

 

男が家に向かう途中。

男の後ろからひとつの影がついて来ていた

 

「てゐか。」

 

「よく気づいたね。」

 

「いたずらっ子は見慣れたよ」

 

「散々いたずらしたもんね」

 

「ありがとうな。」

 

「何が?」

 

「あの日。母さんの最期を見届けたんだろ?」

 

「うん。」

 

「母さん、幸せそうな顔しててな、」

 

「えっと…」

 

「お前がいてくれたから寂しくなかったんだろうな。」

 

「そんな…私は幸せを、呼ぶって、そんなの!…信じてないのに…」

 

「でも、俺もお前に逢えて幸せだぞ、」

 

そのことを言われて何も言えずただ立ち尽くしていた。

ひたすら涙を我慢をしていた

 

「どうした?」

 

「ごめん、えっと…」

 

何も言えず結局涙が流れはじめ。

男はてゐをそっと抱きしめる。

 

「お前も寂しかったんじゃないのか?」

 

「別に寂しくなんかない…と思う」

 

「そうか」

 

涙を流したまま、てゐは話し続けた。

 

「あんたは…消えたりしないよね」

 

「死ぬまでは、」

 

「私が好きになった人は、いつもどこか消えちゃって。離れられたり…事故で死んじゃったり…幸福なんて全部ウソなんだよ…」

 

「やっぱり寂しいだろ?」

 

「…うん、」

 

「それなら。幸福が嘘なんて言うな。お前だって幸せがいいだろ?」

 

「私は幸せなんて…」

 

「なら、俺が幸せにしてやるから。」

 

「えっ…えっと…」

 

「なにか言いたげだな?」

 

「私が側にいても…幸せ?」

 

「そうだな、幸福の兎なんて関係無しに、お前と居れたら嬉しいかな。」

 

「えっと…あんたのお母さんに頼まれたんだ、よろしくねって。」

 

「そうか…」

 

「だから、お願いされたからには、と思って。」

 

「でも、それだけじゃないんだろ?」

 

「うん…あんたを幸せに…したいかな」

 

「ありがとうな。」




短めのもののほうが書きやすい感はある。

でも長いもののほうが書ききった感がある

どちらも良い良い


ではまた会えたら会いましょう

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