イルヴァの大地でとりあえず世界一位でも目指しましょうかplus(Overdose) 作:輝く羊モドキ
「くぅうううん。」「フハハ!お前がポピーだな!」ス
サッ。
「…くぅうん。」「…」ス
ササッ。
「フハー・・・。」「クゥン」
あんなことすればそりゃ嫌われるわな
*
さて、なんとか子犬の『ポピー』を保護できた。このまま無事に連れて帰らなければ。
「ご主人ばかりずるいぞ!」「わん!」
今どういう状況かというとポピーはケガをしていて、手持ちのポーションを使って回復させたはいいが足の具合がよろしくないらしい。とはいってもすぐに治るだろうが、少なくともこの洞窟から出るまでは歩くことに支障が出るみたいだ。
そこで私が片手でポピーを抱きかかえ、もう片方の手で鞭を持ち警戒に当たり、オートスに周辺のモンスターの殲滅を担当させることにした。
なぜ私がポピーを抱えているかというと私が哨戒にあたるには足が遅く、ポピーを片手で抱えても安定感が十分にあるからだ。
そして何よりもポピーに嫌われているオートスにポピーを抱えさせる訳にはいかなかった。
「いいなぁ。かわいいなぁ。抱っこしたいなぁ。」
真面目に警戒しなさい
*
階段を昇ったら違和感が襲ってきた。
そしてその違和感の正体もすぐに掴めた。
「地形が…変わってる…?」
行きで来た時と帰りの今で地形が全然違うのだ。
「フハハ、ご主人、聞いたことがある。入るたびに地形が変わるネフィアの話をな!」
入るたびに地形が変わる?
「どういう仕組みなんだ?」「知らん!」「ぁぅぁぅ」
…まあいいか。仕組みがどうであろうとどうでもいいことだ。
今重要なのはポピーをリリアンの元へ届けることだ。
「なあご主人。」「なんだ?」
「ここに何度も出入りしたら簡単に稼げるのではないか?」「…。」
天才か
* * * * *
道中冒険者の亡骸を埋葬したり、辻プリーストに出会ったり、どこからともなく漂ってきたごちそうの匂いに腹が不満を上げたりして、何とか洞窟から脱出することが出来た。すでに外は月は沈み空は白んでいた。
道中で仮眠をとりながらヴェルニースの町に到着した。
「ポピー!!無事だったのね!」「わんわん!」
ヴェルニースに着き、リリアンの元に行く頃にはすでにポピーの足の具合は良くなっていた。ポピーはリリアンに跳びつき顔をぺろぺろ舐めまわしていた。
「フハー。よかったなぁ、ポピー。」グズッ
意外なことにこの手の話に弱いらしい。
ひとしきり戯れた後、リリアンはこちらに向き直って
「冒険者さん、本当にありがとう。これ、あげる~。」
そういってなんだかよく分からない箱を渡してきた。
?なんだこれは。
「その箱はね、中に食べ物をいれると腐らないんだって。冒険者さんの役に立つと思うの!」
ふむ。食べ物が腐らなくなるというのは長旅には持ってこいだな。
「ありがたくいただいておくよ。もうそいつから目を離すなよ。」
「うん!」
そうして犬好きの少女『リリアン』と別れた。
* * * * *
「おたから鑑定のコーナーだ!」「フハー!」
先の洞窟から様々なものを持ち帰ってきた。それが売れるものかどうかを鑑定しようじゃないか。テンション上げて行こう。
とはいえ、
「流石にすべて鑑定できるだけのお金がありません…」「フハー…」
自分で鑑定できるんだったらいいがそうはいかない。町の冒険者組合の建物の中には大抵鑑定士がいて、その人にお金とアイテムを預けて売れるものか売れないものか、高いか安いかを鑑定してもらう。
というより初めて見たアイテムに正確な価値を付けることは不可能。当然店主も安く買い取りたいから少しでも相手に付け入るスキがあれば容赦なく付け入ってくる。だから価値の分からないものは容赦なく金貨1枚とかで買い取ろうとしてくるわけで、基本的に鑑定をしてもらってから売却なりするのだが…如何せんお金が足りない。
ではどうするかって?もちろん簡単な話だ。
「価値がありそうな物だけ先に鑑定してもらいます。」「フハーン!」
* * *
「いやー売れた売れた。」「フハーハハハ!」
特に神託の巻物を5巻も拾ってたのが大きかったな
実に多くの物が売れたぞ。はっはっはっはっは
「フハァ!それで、だ。」「うん?」
「幾らくらい稼げたのだ?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
ふっ
「大赤字でした(号泣」「フハァ?!」
駆け出し冒険者は、儲からない。
初心者あるあるだと思います。