ハイスクールN×K(なんだかんだ)   作:トメィト

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ついに念願のあの方の登場です!


術式の前でずっとスタンバってました。

 

 

 

 

 イツラック(戦友)と運命的な出会いを果たした俺は、コンビニで買った食べ物を食い終え、その他諸々をざっと済ませて自室に敷いた布団の上に寝転がる。このまま電気を消して寝ようとしたその瞬間、狙ったかのように俺の携帯が鳴った。

 こんな時間に、このタイミングで……と考えつつも携帯を手に取り、通話を開始する。

 

「もしもし」

 

『やっほー。おひさだね、クロ君』

 

「チッ、てめぇか。クソ女」

 

『もー。まだそんな乱暴な言葉使ってるの?レヴィアたんぷんぷんだぞー?』

 

「年考えろ。普通に痛いわ」

 

『うわっ、グサッと来る!グサッと来るよ!しかもクロ君マジトーンだ!』

 

「で?用件はなんだ?俺はテメェらとは違って人間なんだ。普段ならとっくに寝てる時間なんだっつーの」

 

『うん?今から寝るところだったの……子守唄歌おうか?』

 

「切るわ」

 

『わー!待って待って!言う、用件言うからちょっと待って!』

 

「早くしろ」

 

 なんでこいつは一々前振りが長いんだよ。

 普通に本題にいけないもんかね。ほんとに眠いんだけど。明日も出勤なんですけど。

 

 

『全くクロ君は乙女心をわかってないなぁ………。それで本題なんだけどね?コカビエルの件をどうにかしてほしいんだ。多分ソーナちゃんから聞いてるとは思うけど……』

 

「あぁ、今日聞いた。……本当に厄介事が集まる街だよここは。それこそ、てめぇらが集めてんじゃねーかって疑うくらいにはな」

 

 俺の言葉に電話をかけてきた魔王セラフォルーは苦笑する。

 

『魔王の妹が二人いるってだけで話題性はばっちりだからねー』

 

「悪い意味でな」

 

『……ほんとにね。困るんだよー。悪魔の上層部の御爺様達にはさ。外交担当の私までつらい思いをしなきゃいけないんだからー』

 

「愚痴ならよそでやれ。で?この電話はコカビエルをぶっ殺せってことの念押しってことでいいのか?」

 

『本当に冷たいなー……。そうだよ、今回の電話は念押し。私たちが動けなさそうだから反逆者()に頼んでるの。まさか、自分が何のために駒王学園に居るか、忘れたわけじゃないでしょ?』

 

「…………まぁな。俺は納得してねぇけど」

 

『それに関しては、ほんとに悪いと思っているよ?正直、私もそろそろどうにかしたいと考えているもの。けどねー……』

 

「ケッ、どうだか……魔王なら老害共の手綱もしっかり握っとけってんだ。まぁ、その話はいい。とにかく、コカビエルが何かしたら俺がしっかり殺してやる。その分色々便宜は図ってもらうけどな」

 

『………うん、それくらいならいくらでも。――――――――さて!難しい話はこれでおしまい!あとは私と楽しくお話s――――――』

 

 セラフォルーの真面目ゲージが底をついたため通話を切ってついでに携帯の電源を落とす。これでもう掛け直しすらできないだろう。

 携帯を枕元に放り投げ、目覚まし時計をセットする。布団にもぞもぞと入りながら目を閉じて、いつも今日という日の最後に思うのだ。

 

 

―――――明日はどうか、平穏な一日を。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 なんて祈っていたのはもうすでに数日前のことである。

 珍しく俺の祈りは届いたらしく。それから数日間は平和な日々が続いた。聖剣使い共が街を闊歩してたり、木場や兵藤、塔城と匙がうろちょろしてたり、スパーキングしてたりということもまぁまぁあったけど概ね平和だったと言えるだろう。

 

 おかげで仕事がはかどる捗る。

 今まで終わらなかったものが嘘のように片付いていくぜ。最近、相棒(イツラック)のおかげで体調も万全だし、後はコカビエルがひょっこり顔を出して、ストレス発散気味にぶっ殺せば全部終わりだ。

 最近フォローだなんだと走り回っていただけあって、若干楽しみにすらなってきたわ。たまには体も動かさなきゃ鈍っちまうだろう。グレモリー眷属とかイカレ神父はそういうのじゃなかったしな。

 

 そんなことを思いながら今日もまた帰宅路に着く。

 空を見上げれば、そこには暗くなりつつも所々緋色に染まった夕焼けが広がっていた。

 

「あぁ、素晴らしきかな平穏……!」

 

 悪魔や堕天使、その他人外たちが問題を起こさなければここまで早く帰宅路に着くことができるのである。やはり平穏は最高だ。後は先程も言った通り、コカビエルさえどうにかしてしまえばいいのである。そうすれば、完全に……とは言わないだろうが少しは平穏な日常が戻ってくると思う。そう信じたい。

 久しぶりに自分で作ってがっつり夕飯を食べようかと考えている時、つい先程出てきた駒王学園から割と洒落にならない量の膨大なエネルギーを感じ取った。属性は聖、大方、あのイカレ神父が持っていたエクスカリバー(偽)を合体させたときに発生した余波かなんかだろう。

 つまり、コカビエルが行動を起こしたのだ。

 

「このタイミングは運がいいのか悪いのか……」

 

 幸せを感じている瞬間に釘を刺された気分で、最悪な気もするし、厄介事が思ったよりも早く片付くかもしれないという嬉しさも感じている。

 まぁ、なんにせよ。学校に戻れということだろう。

 

「……今夜は酒でも飲むか」

 

 右腕を開放して、いつもの衣装を纏うとそのまま地面を蹴って跳躍。近くの家の屋根に着地するとそのままニンジャのごとく駒王学園にとんぼ返りをした。

 

 ピョンピョンと移動し、空が暗くなっていた頃に駒王学園に到着を果たす。

 するとすでに学園全体に結界が張られていて、中からも外からもできるだけ干渉できないようになっていた。

 それらの結界を張っているのは生徒会の連中であり、駒王学園を取り囲んで必死に結界の維持に努めていた。

 

「よう生徒会一同。お疲れ様」

 

 俺がそう声をかけると、生徒会のメンバーは特に驚くことなく俺を一瞥するとすぐに結界の維持に戻った。どうやらこのままのんびりお話する余裕はないようだ。別にするつもりもないけど、中の状態は知っておきたいので、比較的余裕のある支取か真羅に話しかけることにした。

 

「状況は?」

 

「現在中でリアスたちが交戦中です。どうやらコカビエルの目的は三勢力の戦争再開が目的のようで、魔王二人を挑発する意味でこの街を狙ったと。エクスカリバーについても同様で天使側に対する挑発だったみたいです」

 

「なるほどな」

 

 今時戦争とか本気でやる奴の気が知れない。そんなに戦いたいなら同じ堕天使の幹部同士で競い合ってればいいのに。あのプリン頭もさぞ迷惑そうにしているだろうぜ。というか、どうしてあいつはうちの学校でことを始めようとしているのか……嫌がらせかな?

 多分嫌がらせなんだろう。俺じゃなくて魔王の妹二人に対しての嫌がらせだろうけど。間接的な被害を受けるのは俺なんだよなぁ。

 

「大体の事情は把握した。この結界、人ひとり分くらいのスペースを空けることは可能か?」

 

「はい、短時間なら問題ありません」

 

「じゃあちょっくら行ってくるから」

 

「…………はい。ご武運を」

 

「お前らも、これが終わったら生徒会顧問として晩飯でも奢ってやるから頑張れよ」

 

『本当ですか!?』

 

「嘘は言わねぇよ。いくらほかの種族とはいえ、いい年こいた大人が子どもに多大なる迷惑をかけてんだ。普段から頑張っていることも加味して、これくらいのことはあっていいだろう」

 

 俺の言葉に結界に力を注ぎつつも年相応に喜ぶ生徒会一同。そこまで喜んでもらえると言った甲斐があるというものだ。というか、これくらいのご褒美がないとこいつらが不憫すぎる。そういうことならグレモリー達にも何か褒美を用意したほうがいいかもしれないな。一応、天と地ほどの差がある奴相手に足止めをしてもらっているのだから。

 そんなことを考えながら、俺は結界の中へとその身を運んだ。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 中ではかなり戦況が進んでいた。

 校庭に大穴が空いていたり、体育館が吹っ飛んで消えていたりしていたが、格上相手になりふり構ってなどいられるわけがないのでそこは気にしないことにする。

 なんだか、神父服をした小太りの親父が、聖剣を折られて呆然としており、木場は何処か清々しい表情で空を見上げていた。

 

 ふむふむ、一応の一区切りはついているといったところか。

 コカビエルは戦闘狂ということはわかっている。そのため、赤龍帝の倍化と譲渡で強化した誰かの攻撃を一回は受けようとするはずだ。少なくともそれまでの間、彼らが殺されることはない。

 

 そこで俺は先に光り輝く魔法陣の方に足を向けた。

 あの術式にはこの街を吹き飛ばすほどのエネルギーが溜め込まれており、起動してしまったらこの街ごと吹き飛んでしまう。

 流石にそれは看過できないので、右腕を魔法陣につけてその能力を開放する。俺の右腕である捕食者の力で魔法陣の魔力を吸い上げながら、再び彼らの方に視線を向けた。

 

 えーっと、グレモリーと姫島は戦線離脱。兵藤はまた力を溜め直しで、木場と教会組の片割れがコカビエルと切り結んでいるのか。そこに塔城も加わるが、あっさりと吹き飛ばされた。

 やっぱりあいつらじゃあキツイよなぁ。右腕から吸収している魔力が確実に少なくなってきていることを感じながら、戦況をそのまま見守る。もうここまで来たら早めにこの魔法陣をぶっ壊しておこう。そうしてから加勢しても遅くないだろう。コカビエルも遊んでいるようだし。そのまま慢心していてくれ。

 

 しかし、慢心していても、性根が腐っていようと堕天使幹部の名は伊達ではないらしくルーキーのグレモリー眷属や教会組の片割れを面白いくらいにあしらっていた。そこからさらにコカビエルの一人語りが始まる。

 

 「先の大戦で、魔王だけでなく聖書の神も死んでいたのだ!」

 

 『!?』

 

 あっそ。

 魔力の吸収が完全に終わったので中身の空になった魔法陣を軽く握りつぶして壊す。そこでコカビエルはこちらの存在に気付いたのか、神の死を知ってショックを受けている教会組(元を含む)を見ながら愉悦していた表情を俺の方に向けた。

 

「貴様、一体何時からそこにいた?聖剣の膨大なエネルギーによって起動した術式はどうした?」

 

「見てわかんねえのか。ぶっ壊したに決まってんだろ」

 

「ほう?貴様がか?……それは面白い。だが、残念だ。面白いのだがどうやら貴様は唯の人間のようだな。多少なりとも奇特な力をもっているようだが……所詮はその程度だ」

 

 小馬鹿にしたような笑みを浮かべるコカビエル。

 それに対してグレモリー眷属や教会組の片割れは、目を皿にして驚きつつ俺のことを眺めていた。まぁ、かつて自分たちをぼこぼこにした相手の服を自分たちの通う学校の教師がしているんだからそう思われるのも無理はないとは思うけどな。

 

「俺と戦うには到底及ばない。……だが、一応あの術式を壊したことは評価に入れてやる」

 

 そういうとコカビエルは右手に光の槍を一つ作りだしてこちらに投擲してきた。

 

「それを防ぎきったら、認めてやるぞ。人間!」

 

 慢心もいいところである。

 普通はこんなところに何の準備もなく人間が来るはずがない。何かしらの対策や対抗手段を持っていると疑ってしかるべきなのに、この始末。

 大戦経験者なんて言っているがその勘はだいぶ衰えているのではないのだろうか。

 

 俺は右手で、光の槍を吸収すると、すぐに腰に差している大剣を引き抜く。そして捕食者の攻撃手段である闇を纏わせながら地面を巻き込むようにして下から振り上げた。

 

「デッドスパイク!」

 

 すると、纏っていた闇が形を作り、獣の口のような形になりコカビエルへと向かって行く。彼はそれを両手で受け止めようとするが直前で普通の攻撃でないことに気が付いたのか慌てて回避行動を行った。しかし、完全に回避し切れたわけではなく左腕の肘から下がデッドスパイクに喰われていた。

 

「くくくっ、いいぞ。面白い!先ほどの言葉を訂正しよう。貴様はリアス・グレモリーとその眷属たちよりもよっぽど強い!人間、名は!?この俺様に傷をつけたお前の名はなんという!」

 

 なんでこいつは肘から下を喰われても嬉しそうにしているのだろうか。

 リアルに引きながらも、何とか俺は自己紹介を行った。

 

「野水黎凪だ。別に覚えておかなくていいぜ―――――」

 

 

 

―――――どうせここで死ぬんだから。

 

 

 この発言が奴のツボに入ったのか大爆笑をするコカビエル。

 

 こうしてグレモリー眷属を置き去りにしつつ、俺と聖書に記された堕天使の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 





次回予告

コカビエル「期待を裏切るなよ、死神」
黎凪「来いよ!化け物!」

コカビエル「ブラックホークスティンガー!」
黎凪「カーネージ・シザー!」


完全にアズラエルVSラグナですありがとうございます。

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