全員の自己紹介終了後。
俺達は今、本館に向かい歩いている。
弾バカと槍バカは取っ組み合いをしながら、綾辻と木虎と綺凛は仲良さそうに話しながら、操と小南は互いの戦い方を言い合いながら、那須とくまちゃんはいつものようにキャッキャウフフしながら、三輪は音楽を聴きながら、俺と紅覇は陽太郎と雷神丸のペースに合わせながら、雪ノ下と由比ヶ浜は百合百合しながら、葉山、戸部、三浦、海老名さんはよくわからんが盛り上がりながら移動中。
ここだけを見たら雰囲気のいい団体に思われるだろう。
しかし、この輪の中に2人、いない人物がいる。
1人目は平塚先生。
あの人は後ろでゆっくりと歩いている。
理由は、2人目を紹介するのと一緒にしよう。
2人目は小町。
やはり、まだ俺が言った事がショックだったのか元気がない。
いつもなら兄である俺をバカにするなり色々とちょっかいを出してくるが、その気配は毛頭もない。
平塚先生も小町をこの事に誘ったことを後悔しているのか、小町のカウンセリング的なのをしているのだろう。
別に先生のせいじゃないんだけどな・・・。
俺がそんな光景を陽太郎と紅覇と話しながら見ていると、目的の場所についた。
流石に先生も責任者ということで、先に到着していた小学校の先生に挨拶しに行った。
当然、俺もボーダー側の責任者ということで、平塚先生に付いて行く。
「こんにちは。ボーダー側の代表、比企谷八幡です。3日間よろしくお願いします。」
「ふふ。久しぶりね、八幡くん。」
「・・・お久しぶりです、吉田先生。」
「ん?なんだ比企谷、知り合いなのか?」
俺と吉田先生との会話に疑問を持ったのか、平塚先生が聞いてくる。
「ええ、まあ。俺が小学校にいた時の先生で、去年のボランティアの時もお世話になったんです。」
「ふむ、そうだったのか。それなら人見知りな君でも、今回のボランティアはやりやすいかもしれないな。」
「・・・そっすね。では、俺はこれで。」
俺は吉田先生に一礼し、その場を離れた。
俺が操達の元に戻ると小学生たちは既に並んでおり、ワーワーギャーギャー騒いでいた。
う、うるせー・・・。
生徒達の前に教師が立ち始めたというのに、生徒達のヒートアップされているソウルは収まりを見せない。
と思っていたのだが、思いのほか3分程でヒートアップされたソウルは冷却された。
「はい、みんなが静かになるまで3分かかりました。」
でたー、集会とかで始まる前によく言う、お説教の前振りに使われるセリフ。
今年もこれを聞くことが出来るとは・・・。
当然、ここから説教が始まり、大半の生徒は先生の目を見ながら話を聞いている。
それに反し、少数の生徒は地面の石を弄ったり、友達と話したり、寝ていたりする。
あ、俺の隣でも小学生並みのバカ、米屋陽介が寝ている。
お前も小学校からやり直してこい、勉強だけでもいいから。
俺がバカをつつき起こすと同時に、お説教が終わった。
「では最後に、皆さんのお手伝いをしてくれるお兄さんお姉さんを紹介します。みんな、大きな声で挨拶しましょう。」
メガホンを持った吉田先生はこちらに振り向くと、俺の前に立ち、メガホンを俺に渡す。
えー、なんで俺?
ここは派手さも顔の良さもNo.1、葉山隼人の出番でしょ。
ま、なんだかんだ言ってやるのが俺のいい所なんだけどね!
俺は渡されたメガホンを持ち、目の瞳を少しでも大きくするため、サイド・エフェクトを使用する。
目の瞳が大きいと、目が腐ってるように見えないらしい。
「これから3日間皆さんの手伝いをします、総武高校とボーダー隊員です。何かあったら言ってください、何かしらの対処はするつもりなんで。この林間学校で来年までは覚えていられるような思い出を作っていってください。よろしくお願いします。」
俺は一礼し、吉田先生にメガホンを渡す。
ま、俺みたいなのに前にこられたら小学生たちのテンションもダダ下がりだろうな。
そう思い、操の隣に立つと
「お、おい。あれ、A級1位の比企谷隊隊長の比企谷八幡じゃね!?」
「うそ!?後でサインもらえるかな!?」
「ね、ねぇ。もしかしてあそこにいるの嵐山隊の綾辻 遥と木虎 藍!?」
「うっそ!?ねぇあそこにいるのって比企谷隊の隊員全員!?」
などなど、予想をはるかに超える熱狂に包まれた。
・・・君たち、さっき先生に怒られたばっかでしょ。
ほら見て、先生を。
今にもメガホンのグリップの部分握りつぶそうとしてるよ?
「それでは、オリエンテーリング・・・スタート!」
あ、ヤケクソになった。
先生の一言で事前に決められていたのだろう6人ひと組になり、動き始める。
それに混ざるかのように、平塚先生も動き出す。
いや、あなたはいくら何でも年齢に無理があるんですけど・・・。
「早速で悪いんだが仕事だ。君たちの最初の仕事は・・・こちら!」
平塚先生は手に持っていたスケッチブックをめくり、あたかもバラエティ番組のような発表をする。
え〜と、なになに〜。
生徒達よりも早くにゴール地点に到着し、昼食の準備をする?
え、それを今言う?
もう生徒達、走り出してるよ?
歩いて行ったら間に合わないんじゃないの?
あ、車で送ってってくれるのか。
それなら、余裕でつくだろ。
「それと、君たちにはせっかく空気の美味しいところに来てもらったんだ。というわけで・・・君達には歩いて行ってもらう!」
俺の幻想は当然のごとく砕かれた。
先生は俺の幻想を打ち砕くとすぐに車に乗り出発した。
はぁ、諦めるか。
運のいいことに、俺達の荷物は先生が車で持っていってくれてるらしい。
「じゃ、行きますか。」
こうして、俺達の波乱万丈なボランティアが幕を開ける!