やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼の人脈は思いのほか広い(ボーダーのみで)

副本部長室。

夏休みに入り、俺は副本部長兼おふくろに呼び出された。

は〜、一体何の用なんだよ。

俺なんかやらかしたか?

わざわざ家じゃなくてこっちで言うって事は仕事関係なんだろうけど。

自慢じゃないが俺は仕事でミスしたことは無い・・・と思う。

にしてもこの重たい空気、しんどい。

俺が入室してから数分たってるのに未だに話し出さない。

おふくろはさっきからパソコンをいじってる。

副本部長ともなれば仕事は大変なのかね。

おふくろが入ってから俺に回ってくる仕事は減った。

つまり、おふくろは本来俺がやるはずだった仕事をしているわけだ。

だから俺は仕事をしているおふくろに対して何も口出しすることが出来ないわけだ。

だから俺はボーっと立っているしかない。

だって・・・こわいもん。

俺が冷や汗垂らしなが、おふくろの仕事を見ていると

「ふー、ようやく終わった・・・。」

おふくろの仕事が一段落付いたようだ。

「さて、あなたを呼んだ理由を話そうかしら。」

「あんまし長引かせないでくれよ。俺、まだ夏休みの課題終わってねーんだよ。」

夏休みが始まって既に一週間たとうとしている。

本来なら夏休みの課題は長期的にやるのだろう。

だが、ここには夏休みの課題を他人にやらせる奴がいる。

断ってしまえばいいのだが、あいにくそうもいかない。

ボーダーから留年者は出したくない。

そのためボーダー隊員総出で夏休みの課題が終わってないやつを手伝う。

当然、何らかの報酬付きで。

去年は焼肉連れてってもらったなー、米屋に。

ほんと、なんで米屋は去年で懲りないで今年もランク戦ばっかやってんだか。

はー、早く俺も夏休みの課題、終わらせよ・・・。

「それじゃ、本題に入らせてもらうわ。」

「ようやくかよ。」

「副本部長よりボーダー隊員代表比企谷八幡に命じます。来週の金曜日から2泊3日の間、海浜小学校の千葉村でのオリエンテーションのボランティアをしなさい。」

「・・・去年もしたんですけど。」

そう、去年も同じような事をした。

ただ、違うところを挙げさせともらうと

「なんでボランティア?」

ボランティアというところだ。

去年はちゃんと給料が出た。

「ええ、そうよ。ただ、ボランティアというのは名目上で実際は給料も出るわ。」

「そうか。で、何人誘えばいいんだ?」

「そうね・・・だいたい12人いれば十分かしら。」

「わかった。取り敢えず誘ってくるわ。」

俺がおふくろの元を離れようとした時

「まちなさい。まだ話は終わってないわ。」

呼び止められた。

「いや、今ので終わりだろ?」

「いいえ。・・・おそらく、私達がボーダーだということが小町に近いうちにバレるわ。」

うん、だろうな。

流石に隠し通すのはキツすぎる。

絶対にいつか、バレる日が来る。

俺はそう確信していたんだが

「なんで、そう思うんだ?」

おふくろが急にこんなこと言い出すんだ。

何かしらの理由があるんだろう。

「・・・昨日、悠一くんから電話が来たの。近いうちに娘さんがボーダーに入りたがる、って。」

なるほど・・・。

迅さんのサイド・エフェクトがそう言ってんのか。

けど、まてよ・・・。

「なぁ、迅さんはいつ、小町のこと見たんだ?」

そう、小町と迅さんには何の接点もない。

少なくとも俺の知る範囲では、だが。

「この前、あなたがいない時に家に訪ねてきたそうよ。その時に小町が対応したんだって。」

「・・・そうか。で、どうすんだ?このままじゃあいつはボーダーにはいりたがるぞ。」

「ええ、そうなのよね。もしも、あの子が勝手にボーダーの試験受けたらどうしようかしら。」

「そうなんだよな・・・。仮に受けたとしても小町は絶対に受かることは無い。それに関してはおふくろも分かってるだろ?」

「もちろんよ。・・・それで気を落とすのが怖いのよ。」

「俺の時にもそんな言葉かけてくれれば嬉しかったなー。」

「あなたに言うわけないじゃない。」

・・・断言しやがったな、このクソアマ。

なんで、娘と息子の扱いの差ってこんなにも出るのかしら。

ほんと、困っちゃうわね、も〜。

・・・キモイな。

「・・・それにしてもなんであの子だけ・・・・・・あんなにトリオンが少ないのかしら。」

「そうだな・・・。」

小町が絶対に入隊できない理由。

それは、圧倒的なトリオン量の少なさ。

おそらく、並の一般人よりもひくいだろう。

なんで小町のトリオン量が分かるかって?

それは・・・小町は一度、トリオン量を測ったことがあるからだ。

昔、俺がボーダーに入る際、小町のトリオン量も測ったのだ。

しかし、まだ幼少期とはいえ、平均よりも圧倒的にトリオン量がすくなかった。

成長したからといって急激にトリオン量が増えるわけもない。

だから、俺とおふくろは小町が入隊出来るわけがないと、確信している。

「それでね、八幡。・・・あんたの好きなタイミングでいい。小町に言いなさい。包み隠さずに全部。」

「・・・断る。なんで俺がそんな恨まれるようなことしなきゃならねんだよ。」

「私はしばらく家に帰れないし、残念ながら私より、あんたの言葉の方が小町には響くみたいだしね。」

「・・・はぁ、わかった。ただし、これは貸しだからな。」

「わかったわ。・・・話はいじょうよ。では、メンバーが揃ったら報告するように。」

そう言うとおふくろはまた仕事を開始した。

はー、責任重大だな・・・。

俺は副本部長室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷隊、隊室。

誘うって言っても誰誘うの?

12人か・・・。

比企谷隊全員で行くとして、あとは一つの隊につき2人ずつの4部隊分か。

取り敢えず、去年誘った人に当たってみるか・・・。

 

 

 

 

太刀川隊隊室。

「出水ー。いるかー?」

俺は扉を叩きながら出水を呼び出している。

案外これで呼び出せる。

「ん?お、比企谷じゃん。どした?」

俺が扉を叩いていると開き、目的の人物が現れた。

「よ、出水。なぁ、去年やった千葉村の覚えてるか?」

「ああ、覚えてるけど、どうしたんだ?」

「今年も行かねーか?もちろん防衛任務はお前抜きになるけど。」

「別にいーぞ。ぶっちゃけ防衛任務、太刀川さん一人いれば十分だしな。」

「そうか、サンキューな。あ、後日程なんだが、来週の金曜日だ。持ち物とかは去年と一緒だから。」

「オッケー。じゃ、俺は夏休みの課題あるから。メンバー決まったら教えてくれよ。」

「おう。」

出水はそう言うと隊室に戻っていった。

 

 

 

 

 

嵐山隊隊室。

『すいませーん。嵐山さんいますか?』

流石にここは呼び鈴を使う。

仕事中だったらただの迷惑行為だしな。

『はーい。あ、比企谷くん。ちょっと待ってて、今開けるから。』

・・・すぐに開けてくれるのは有難いんだが、もう少し相手を確認してから開けような?

もしかしたら不審者かもしれないし。

宅急便でーすって来て、確認しないでドア開けてまさかの強盗ってこともあり得るからな。

俺が頭の中でそんな風景を想像していると

「いらっしゃい、比企谷くん。」

ドアが開き、嵐山隊オペレーター、綾辻 遥が出てきた。

「よ、綾辻。嵐山さんいるか?」

「嵐山さんなら奥にいるよ。」

「そうか、サンキュー。」

「ううん。あ、今お茶入れるね。」

これが本来客人が来た時に対応する奴の態度だ。

こんなに相手に不快感を与えない接客ができればトラブルなど起こらない。

なぜ俺がこんなことを感じているのか。

それは・・・操が原因だ。

あいつはいつも客人が来ても茶は出さない、もてなさない、など人間性に欠けるやつなのだ。

はぁ、うちの隊でまともなの俺と綺凛ぐらいしかいないんだもんな。

紅覇はってか?

ダメダメ、あいつはいつも対応しないから。

ほんと、嵐山隊が羨ましいな。

俺が嵐山隊を讃頌していると、奥から嵐山さんが出てきた。

「お、比企谷。どうしたんだ?お前から俺のところに来るなんて珍しいな。」

「まぁ、そっすね。で、早速本題なんですが、去年の千葉村の件覚えてますか?」

「千葉村?・・・ああ、覚えてるさ。それがどうかしたのか?」

「実は今年もそれがありまして、良かったら参加して欲しいなと思いまして。」

「いつだ?」

「来週の金曜日、2泊3日です。」

「・・・俺、その日仕事あるな・・・。よし、遥、藍二人とも行ってこい。いいか?比企谷?」

「別にいいですよ、本人がいいなら。」

ま、去年と同じ面子だったら野郎しかいないからな。

少しは花があった方がいいか。

「私は大丈夫ですよ。」

「わ、私も大丈夫です。」

綾辻と木虎がオーケーした。

「そうか、じゃ、持ち物とかは去年と同じなんで、嵐山さん、二人に教えておいてください。」

「わかった。そうだ、集合時間は?」

「後日、連絡します。」

「そうか。・・・じゃあな比企谷。」

「それでは失礼します。」

俺は綾辻に出してもらったお茶を一気に飲み、嵐山隊隊室を出ていった。

残り5人か。

 

 

 

 

 

 

 

三輪隊隊室。

「三輪ー、いるかー?」

俺は出水の時と同じように、扉をガンガン叩いて、三輪を呼び出した。

「・・・何のようだ、比企谷。」

・・・なんでそんなに元気ないんですか、三輪くん。

よく見ると、三輪の手は少し黒くなっていた。

おそらく、先程まで字を書いてきたのだろう。

三輪は、米屋の課題の犠牲者の一人だ。

頑張って自分の分の課題を終わらせようとしてんだな。

「いや、その・・・来週に去年やった千葉村のヤツあるから、誘いに来たんだけど・・・。」

俺が三輪の雰囲気に押されながらも要件を伝えると

「お、俺も秀次も行くぞ。」

奥から夏休みにおいて最大最強のボーダー隊員。

米屋陽介が現れた。

テメーのせいで三輪のご機嫌が斜めなんだよ・・・。

「・・・陽介、勝手なことを言うな。」

「えー、別にいいじゃん?去年もやったんだし。」

「やらん。」

「えー、やろうぜー。」

ついに、三輪が折れたのか

「・・・わかった。行こう。詳細は後で携帯の方に送ってくれ。」

三輪はそう言うとすぐに扉を閉めた。

まだ、課題やるんですね・・・。

合掌。

残り3人。

 

 

 

 

 

 

 

那須隊隊室。

俺が那須隊隊室に向かうと、途中で日浦に会い、一緒に移動している。

「それで、比企谷先輩は那須先輩達に何のようなんですか?デートの約束ですか?」

「・・・仕事の依頼だ。」

「仕事ですか?ならなんで那須先輩とくまちゃん先輩を?」

「野郎だらけの仕事なんて嫌だって言ってる奴がいるんでな。それに、こういうイベントは弟子を誘えって言われてんだよ、おふくろに。」

「へー、そうなんですか。あ、良かったらあたし、伝言伝えますよ?」

「・・・後でLINEで説明するっていっといてくれ。」

こいつが伝言すると、内容が変わるってのはもう分かっている。

こいつは鈴鳴第一のスナイパー、別役太一とはまた違うおっちょこちょいだからな。

俺が日浦のことを見ると・・・日浦は俺の事をじと目で見てくる。

「・・・私の事信用してないんですか?」

「念のためだ。流石に仕事を内容を間違われると困るからな。」

「・・・わかりました。」

「よし、いい子だ。じゃ、頼んだぞ。」

俺は日浦の頭をポンポンと叩き、自分の隊室に足を向けた。

さて、あと一人は・・・あいつでいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下。

俺は最後の一人の候補に電話をかけている。

どうせあいつのことだ、すぐに出るだろ。

すると俺の予想を裏切らず、案の定ワンコールで出た。

『もしもし、どうしたのよ八幡?』

最後の候補、玉狛支部アタッカーにして俺の幼馴染、小南 桐絵。

「あー、去年の千葉村のやつ今年も行くことになったんだけど・・・お前も」

『行く!絶対に行く!』

俺が最後まで言い切る前に答えを出しやがった。

しかも大声で。

「そうか。じゃ、詳細はご」

『あ、陽太郎も行きたいみたいなんだけどいい?』

また言い切る前に・・・。

はぁ、まいっか。

いつものことだし。

それにしても陽太郎か。

別にお子様一人増えてもなんと問題は無いな。

「いいぞ。じゃ、俺眠いから切るぞ。」

『わかったわ。それじゃ。』

ふー、これでオッケーか。

あとは操、紅覇、綺凛に伝えて、必要な物買いに行きますか。

 

 

 

 

 

・・・雷神丸って人数に入れるべきか?

 


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