やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼は木の葉の忍び?

魔王との遭遇の翌日、月曜日。

俺は今日、那須との約束があるため雪ノ下に由比ヶ浜の誕生日プレゼントを渡しに行こうと部室に向かってる。

いや、同じクラスだけどさ、俺が自分から話しかけれるはずもないし、あんなうるさいところになんか自分から行くわけないし。

ふっ、群れることでしか自分の立場を確立出来ないなんて可哀想な奴らだな。

因みに俺は、一人でいることでボッチという立場を確立させている。

ボッチってリア充からしたら奈落にしか見えないんだろうな。

奈落も案外いいもんなのに。

もしかしたら一番下に温泉あるかもしんないのに。

いや、ないな。

第一、奈落ならそこがないんじゃね?

つまり、俺は現在進行形で真っ逆さまというわけか。

真っ逆さまに、落ちて、デザイア。

中森明菜さーん!

俺の頭の中で『デザイア〜情熱〜』が流れていると、部室の前に由比ヶ浜がいた。

「スーハー、よし。」

「何してんだ?お前。」

「っえ!?うわっ!?ヒ、ヒッキー!?・・・い、いや〜。空気が美味しいな〜って・・・。」

あからさまに気合入れてたでしょ。

それもそうだな、辞めた部活にまた足入れようとしてんだ、緊張しないわけがない。

俺なら行かないね。

誰か別の人に頼んで行かせる。

いや、おれ、頼める人いないじゃん・・・。

もう、かなし・・・。

「うす。」

俺は悲しさと一緒に部室に足を入れた。

後ろの由比ヶ浜は拳を握ると、決意した目になり、由比ヶ浜も部室に足を踏み入れる。

「や、やっはろー・・・。」

火を見るより明らかに声にいつものような覇気が込められてない。

さっきの決意は何だったんだ・・・。

「こんにちは、由比ヶ浜さん。ごめんなさいね、呼び出したりして。」

「う、うん。だ、大丈夫だよ。今日、特に用事なかったし・・・。」

あ、あのー。

僕、挨拶返されてないんですけどー。

なんでそれが当たり前のように話が進んでるんですかー?

「あら、比企谷くん。何時からそこにいたのかしら?・・・ごめんなさい。そこに誰もいなかったわね。」

「いるから、チョーいるから。さっきからいたでしょ。」

「さっきから?・・・はっ、もしかしてストーカー?もしそうなら早く言いなさい。私が直々に裁いてあげるから。」

「俺は何モノにも裁かれませんー。俺を裁けるのは尸魂界(ソウルソサエティ)だけですー。むしろこれから今までの行い挽回していきますー。」

「あら、あなたがいくら卍解(ばんかい)しても挽回は出来ないのよ?いくら尸魂界だけと言っても結局は裁かれる運命なのよ。だから私が直々に裁いてあげると言ってるのよ。感謝しなさい。」

こいつ・・・できる!

まさかブリーチが伝わるとは思わなかったぜ。

こいつも、平塚先生に毒されたな、JUMP症候群に。

JUMP症候群とは、どんな会話にもJUMPネタを混ぜてくる奴らのことだ。

気がついてるかもしれないが、俺もそのうちの一人だ。

く、銀魂実写版が楽しみだ・・・。

「ごめんなさい、話がそれたわ。・・・実は、由比ヶ浜さんに言わなければいけないのだけど・・・。」

「う、うん。」

なんで由比ヶ浜は固唾を呑んでんだよ。

そんなに緊張する局面か?

あ、頬に冷や汗垂れた。

「お誕生日おめでとう、由比ヶ浜さん。」

「・・・へ?」

おい、なんだよその・・・鳩が豆鉄砲食らったみたいな表情は。

内側に秘めるアホが外にまで出て来てるぞ。

「今日はお前の誕生日なんだろ?由比ヶ浜。素直に喜べよ。ほれ、おめでとさん。」

俺はカバンから正方形の薄い箱を取り出し、由比ヶ浜に渡した。

「え、えっと・・・ありがと。あけてもいい?」

「ん、いいぞ。」

由比ヶ浜が包装用紙を子供のようにビリビリに破き、中身を取り出した。

「くびわ?」

「・・・やっぱり比企谷くんは私が裁くわ。」

ん?なんかこいつら勘違いしてないか?

「に、似合うかな?ヒッキー。」

なんでこいつは首につけてんの?

いや、そりゃー首輪だし、首につけるのは当たり前なんだけど

「それ、犬ような。・・・お前が犬志望なら話は別だけど。」

「え?・・・そ、それを早く行ってよ!ヒッキー!」

由比ヶ浜は顔を赤くし、首輪を外す。

あれ?なんか顔色悪くない?

由比ヶ浜の首をみると、首輪はきつく締まってた。

なんでたよ・・・。

「雪ノ下、外してやれ。」

俺急いでんのに、何でこんなにもトラブル起こすかなー。

や、別にToLOVEるはおきてないよ?

起きたら、雪ノ下に殺される。

それこそ斬魄刀(ざんぱくとう)使って。

俺は雪ノ下が斬魄刀を振っている姿を想像し、雪ノ下の方をチラッとみた。

お、首輪は外れたか。

「んじゃ、首輪は外れたみたいだし、俺は帰るわ。・・・由比ヶ浜、辞めるも続けるもお前の勝手だが、罪悪感でここ辞めたんなら・・・二度と来んなよ。じゃ。」

俺は自分でも冷たいと自覚するレベルの冷めた声で由比ヶ浜に言い放った。

ったく、二度と来んなよな、・・・罪悪感があるなら。

ふっ、我ながら甘い考えだな。

俺は自分の甘さに舌を巻きながらボーダー本部へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボーダー本部、個人ランク戦ブース前。

俺は椅子に座り、個人ランク戦を暇つぶしがてら見ている。

ちょうど今、弾&槍バカーズが24本終了したと同時に

「ごめんね、比企谷くん。まった?」

那須がきた。

「別に。待った、って言っても5、6分程度だ。・・・んじゃ、時間もったいねーから早速やんぞ。俺は112に入ってるからステージ等好きに決めていーぞ。」

俺はブースへと歩き出し、トリガーを・・・起動した。

さて、いっちょ弟子のために一肌脱ぎますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージ、市街地B。

なるほど、ここなら遮蔽物も多いからな、那須のバイパーが活きる。

本気で俺に勝ちにきてんだな。

なら・・・本気には本気で応えないと。

俺はレーダーを見て、那須がどこにいるのかチェックした。

・・・ちかっ!

俺はレーダーを閉じ、両手にトリオンキューブを出現させる。

那須がいるのはあそこだから・・・

「アステロイド+アステロイド・・・ギムレット!」

俺は建物ごと那須を狙った。

俺のトリオン量はボーダーで一番だ。

あんな建物なんてあってないようなもんなんだよ。

ま、それは那須も分かってたんだろうな。

若干だけどシールド張ってるのが見えたし。

ただ、誤算があるとすれば・・・俺が合成弾を使ったことだろう。

当選、シューターなら殆どの人たちが使う。

それは頭に入っていたはずだ。

ならなぜ誤算なのか。

それは・・・土曜日からたったの一日ふつか程度で俺が合成弾を習得できたことだ。

那須も含めシューター達は合成弾を習得するために何度も練習を繰り返したのだろう。

それこそ、1日2日程度の期間ではなく、もっとそれ以上の時間をかけて。

だが、合成弾を初めて使用した出水は、やったらたまたま出来た、と言っていた。

なら俺が、たまたま出来てもおかしくはないわけだ。

一度出来てしまえば感覚は残る。

あとはそれをひたすら作っては消しの繰り返し。

するとあら不思議。

合成弾の作成スピードが5秒程になってるではありませんか。

しかし、これを間宮隊の面子にやらせたら出来るかと聞かれたら、答えはNOだろう。

俺は元々、シューターとしての基礎は出来ていた。

それこそ、そこら辺のB級中位には負けないくらいに。

これは俺の長年の賜物だ。

俺はポッケに手を突っ込み、那須のいた方を向いていると、空に一筋の光が飛んでいった。

まずは1勝・・・か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、結果は8対2だった。

ブランクがあるとはいえ、なかなかの満足レベル。

いやー、あんなに近づかれるとはねー。

至近距離からのトマホークなんて俺じゃなきゃ当たってたな。

まじ俺のサイド・エフェクト、チート。

「は〜、負けちゃったか。」

隣では落ち込んでいるも、どこか清々しさを感じさせる弟子、那須玲が座っている。

「ったりめぇだ。シューター歴としてはお前より長いんだよ。勝負は実力差もだが、経験の差もモノをいう。」

「・・・ねぇ比企谷くん。私も、比企谷くんみたいな戦い方出来るかな?」

「・・・辞めとけ、誰かの真似すんのだけは。」

「・・・なんで?」

「仮にお前が俺と同じ戦い方が出来るようになったら、それ以上は伸びねーよ。・・・けど、トリガーの使い方ぐらいなら真似してもいんじゃねーの?」

「そっか。・・・じゃあ早速、あのアステロイドの使い方教えて。」

「あのアステロイド?」

どのアステロイドだ?

俺、今日殆どアステロイドしか使ってないんだけど。

あ、1回バイパー使ったか。

「ほら、私が比企谷くんとの距離が近くなった時の。」

近くなった時・・・近くなった時・・・。

あ、俺から接近した時ね。

「あれは・・・これを見ろ。」

俺はスマホを取り出し、YouTubeを見せた。

「これは・・・アニメ?」

「ああ、そうだ。あの技の元はこれだ。」

そのアニメの名は・・・NARUTO!

いやー、あれは戦い方が参考になるからって理由で見始めたんだが、もう試験中だろうが入試前だろうが関係なしに見てたね。

因みに、那須の言っているアステロイドとは、早い話ただの『螺旋丸』だ。

手元に出現させたアステロイドを分割せず、距離、弾道設定もせずに威力が最大になるように設定し、そのまま相手にぶつける。

半端なシールドじゃ防ぎようのないシュータートリガー最大の威力、だと俺は思ってる。

「ねぇ比企谷くん。私にもこれ、出来るかな?」

「・・・1週間もあれば十分だ。・・・ただし、やり方は自分で考えろ。出来るようになったら風間さんのところに行け。体捌きに関してはあの人はボーダートップだ。俺が話つけとくから。」

俺も風間さんに何回か指導してもらってるしな。

体捌きは近接戦闘においては最も大事なことと言っても過言ではないくらいだ。

俺なんかよりもなにかの分野でのエキスパートに指導してもらうのが一番だ。

「わかった。・・・今日はありがとね、付き合ってもらって。」

「ま、一応、師匠だしな。それなりの事はやるつもりだ。・・・あとはお前の努力次第だが。」

「ふふ、そうだね。じゃあ、私これから防衛任務だから。じゃあね、明日もよろしく。」

那須は手をこちらに振ると元気そうに走っていった。

体が弱くてもトリオン体なら、関係ない。

・・・誰かの役に立てるって、いい気分だな。

 

 

 

・・・俺が弟子をとるのは、間違ってない。

 

 

 

かもしれない・・・。


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