那須の誕生日を祝った翌日の日曜日。
俺は今テレビの前で歯を磨きながらお天気アナのニュースを見ている。
やっぱ、結野アナ可愛いなー。
『それでは今日の適当占い。今日1番ついていないのは、今歯を磨きながらこの占いを見ている、アホ毛に腐った目をしているあなた。今日は魔王との遭遇に気をつけてください。それでは今日も一日頑張って・・・行ってらっしゃーい。』
行ってきまーす・・・出来るかー!
なんで俺のことピンポイントで指してきてんの!?
テレビ越しでなんで俺のことわかるの?
あと、行ってらっしゃーい、が逝ってらっしゃーいに聞こえてくるわ!
はぁ、魔王との遭遇か。
なんとなくわかる気がしてきた・・・。
これから東京ワンニャンショーに行くってのに嫌な気分だなー。
俺、留守番しようかな・・・。
「八幡お兄さーん。みんな準備できましたよー。」
「わかった。今行くー。」
みんな・・・か。
俺はみんなに含まれてないのかな?
ま、綺凛がそんなこと意識するわけないか。
してないよね?
してたら俺泣くぞ。
「わり、結野アナ見てたら遅れた。」
「ケツの穴?」
おい、女の子がとんでも発言したぞ。
イントネーションがおかしいだろ、小町。
「小町、結野アナってのはね、三門市のお天気アナのことよ。八幡はそのお天気アナのファンってわけ。にしても、八幡。何でそんなに暗い顔してんの?」
「結野アナの占で今日は最悪だって。あの占い結構当たること多いから・・・。」
「あー、確かに八兄あの占い通りになること多いよね〜。去年なんて占い通りに車に引かれたし。車に気をつけてって言われたのに信じないんだから。」
「あれから結野アナのファンになったんだよなー。あの事故が無ければ俺は結野アナのファンになってなかっただろうな。」
ほんと、未来視のサイド・エフェクトでもあんのかって思うレベル。
未来見れるのはぼんち揚食ってるセクハラ大好きエリートだけで充分だ。
「あ、八幡お兄さん、バス来ましたよ。」
俺達が話しているとバスは来ていたみたいだ。
さて、気を取り直して行きますか。
「わ〜、やっぱりいっぱい動物いますね。」
「そうだな、去年とはまた違った動物がおおいな。」
ほんと、動物の数が多いよな。
別に動物だけならいいが、・・・何でリア充ばっかなんだよ。
動物の珍しさに比例してリア充の密集率が高い。
そして俺達が向かってるのはその密集地帯。
俺は4人とは少し離れて後ろの方で待機している。
操達は密集しているところなんなくと臆せず入っていく。
もう操の頭しか見えねー。
俺は横にいる人気が少ないのか一匹ぽつんと立っているアルパカの方を向いた。
あっ、コイツなんで人気ないのかわかった。
コイツ、目が俺とそっくりだ。
そりゃ人気なんかねーよな。
わかるよその気持ち、俺も人気どころか認知されてないレベルだからな。
俺はアルパカと見つめ合ってる。
アルパカも目を逸らさず俺のことを見ている。
お互いどこか親近感を感じてるのかもしれない。
「お兄ちゃん、何してるの・・・?」
リア充密集地帯から生還してきた小町、操、綺凛、紅覇。
「うわっ、このアルパカ八幡とクリソツ、目が。」
操がアルパカをバカにしたかのような反応をすると・・・
「ギャ!ちょっと何すんのよ!?」
操にアルパカのつばがかけられた。
ふん、バカにするからだ。
目が腐ってるのはこの世の見たくないもんを見てきたからだ。
バカにすんじゃねーよ。
綺凛がアルパカに触れる。
当然?なのか分からないのだが綺凛に対しては何も行動を起こさない。
「うわー、モフモフしてて気持ちいいです。」
「な、なんで綺凛はいいのよ!?」
もうバカはほっといていいや。
「あ、お兄ちゃん。ペンギンだよ!並んで歩いてるよ!あ、あのペンギン踊ってるみたい。」
小町はすぐ近くにあるペンギンエリアでペンギンを見ていたようだ。
「ん、おーほんとだ。そういえば知ってるか?ペンギンって語源のラテン語で肥満って意味らしいぞ。そう考えるとあの並んで歩いてるペンギンって会社帰りのおっさんにしか見えねーな。それにあの踊ってるように見えるペンギン、芋洗〇係長見たいだな。」
あの人、あの体型で何であんなにキレのあるダンスができんだよ。
「う、うわー。これからペンギン見る時、そういう目で見ちゃう・・・。」
小町が軽く引いてる・・・。
良かれと思って行ったんだけど、また失敗か・・・。
俺と小町はその場を離れ、操と綺凛と合流した。
「あれ、紅覇はどこ行った?」
さっきまでいたと思っていた紅覇がいない。
あいつもガキじゃないんだから迷子にはなんないとは思うが心配だ。
だって、お兄ちゃんだから。
「あー、紅覇なら・・・。」
操が視線をずらす。
俺はそれを目で追うと・・・豚エリアにいた。
なんで豚?
しかも紅覇の周りにだけ人いねーし。
「おーい紅覇、行くぞー。」
「りょ〜か〜い。」
「お前、豚好きなのか?」
「いやいや、そういうわけじゃないよ。あそこにいる豚全部雌だったんだよ。そしたらなんか・・・虐めたくなっちゃって。」
ドS紅覇が目覚めた。
なに!?虐めたくなった!?
しかもメスの豚を!?
なんてこと言うんだよ・・・。
俺が紅覇の言葉にドン引きすると小町が
「あ、お兄ちゃん。あれって・・・雪乃さん?」
小町がいう方向を見ると確かに雪ノ下がいた。
え?あいつがツインテールしてんの初めて見たな。
にしてもあいつ何してんだ?
パンフレット何かとにらみっこして。
雪ノ下はパンフレットから目を離すと歩き出した。
あいつも何か動物探してんのか?
けど・・・
「そっち壁しかねーぞ。」
見かねてつい口を出してしまった。
「あら、珍しい動物がいるわね。」
おうふ・・・出会い頭に罵倒されちまった・・・。
「あ、雪乃じゃない。どうしたのこんなところで。」
「あ、雪乃さんこんにちは。お久しぶりです。」
「八兄、誰?この、壁に向かおうとしたお馬鹿な人は。」
3人ともこっちに来た。
「コイツは・・・顔見知り?の雪ノ下雪乃だ。よろしくしなくていーぞ。」
「ふーん、はじめまして。八兄の弟の紅覇だよー。」
紅覇は雪ノ下を舐めきった態度で接する。
そいつ相手にそんな態度取らないほうがいいのに。
紅覇は自分の認めた人以外にはなめてかかる癖がある。
そのくせそろそろ直さないとかな。
「あら、比企谷くんの弟なら私より年下なのだと思うのだけれど。何かしらその態度は?お兄さんと一緒でまともに挨拶もできないのかしら?」
おーい、雪ノ下ー。
紅覇を挑発すんなよー。
紅覇は一番我が家でキレると怖い。
「ねぇ、なに八兄のことバカにしてんの?」
怖い怖い、目が笑ってないよ。
ほら、綺凛も涙目になり始めてるよ?
「あら、そう聞こえなかったかしら?」
なんでお前もそんな挑発にのるの?
「へー、君なんて一人じゃ何も出来ないよ?」
「あら、どういうことかしら?」
「君なんて・・・ただのあの人の劣等品のくせに。ぼくが誰のこと言ってるのかは君ならわかるよね?」
「っ!?なんであなたが知ってるの!?」
はー、なんでこんなにヒートアップすんのかね。
ただでさえあの人の話はしたくねーのに。
「はぁ、紅覇、雪ノ下、ストップだ。」
「八兄、まだ言いきって・・・。」
「終わりだ。」
「・・・わかったよ。」
よかった。
物分りのいい子で。
「雪ノ下も悪かったな。けど今回はお前にも非はあるけどな。」
「そのようね。・・・悪かったわ。」
「そういやお前、部員勧誘はどうなってる?って聞いても俺の予想が正しければ、由比ヶ浜・・・だろ?」
「あら、気づいてたのね。それで、明日何の日かわかる?」
「知らねーな。少なくとも休日じゃないのは明らかだな。」
なんか前もこんなことしたよーな・・・。
「明日、6月18日は由比ヶ浜さんの誕生日よ・・・多分。」
確信ないのかよ・・・
こいつが多分っていう事はよくあるある、メアドに誕生日でも入れてたんだろ。
「そうか、で?」
「由比ヶ浜さんに私達の気持ちを伝えましょう。辞めるにしろ感謝の気持ちは伝えるべきだわ。」
「あ、そ。俺にとってはどーでもいいことだな。」
「そう、それでも・・・あなたも感謝を伝えなさい。そして・・・私と誕生日プレゼントを、買いに行くの、つきあってくれない、かしら・・・。」
「どうぞどうぞ。こんなので良かったら好きなだけ貸してあげます。ね?お兄ちゃん!」
「いや、俺の意思は・・・」
「そう、ありがとう。では、早速行きましょうか。」
「お兄ちゃん、頑張ってねー。」
覚えてろよ小町ー!
なんでほかの奴らは何も言わないの・・・?
あ、メロンパン買ってる・・・。
不幸だぁぁぁぁあ!
ボーダー以外の女子と出かけるのってこれが初めてじゃね?