やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼は初めてのものを手に入れる

6月16日、土曜日。

俺は今、操を後ろに乗せ那須の家に向かっている。

今日は那須の誕生日。

今日、防衛任務がなかったのは操が仕組んでいたことらしい。

今日が那須の誕生日だと知っていたなら教えて欲しかった・・・。

そしたら昨日、あんなに慌てなかったのに。

因みに、何で平塚先生に土日のスケジュールを教えたのか聞くと

『え?平塚先生に土日暇かって聞かれたから、基本日曜日は予定ないですって言ったけど・・・なんかまた私やらかしちゃった?』

と、なんとも無自覚バカが丸出しだった。

勘弁して欲しいぜ。

ただでさえ明日も用事があるってのに・・・。

俺はともかく、雪ノ下も友達がいない。

当然、部活勧誘なんて向いていない。

それを今日と当日含めてあと、3日。

平塚先生も無茶ぶり言ってきやがる。

ま、心配はいらないか。

雪ノ下が昨日、平塚先生に何で確認をとったか。

それはその確認を取ることにより、勧誘することが出来る人物。

俺のせまーい交友関係でもそんなのは1人しかいない。

おそらく・・・由比ヶ浜だろう。

は〜、何でやめたやつをまた呼び戻すのかね。

やる気がなければ、辞めていい。

あ〜、イライラするなぁ。

俺はそのイラつきを振り払うかのように、法定速度ギリギリのスピードにまで加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

那須の家の前。

俺のイラつきはなんとか収まった。

良かった、これから祝うのにイライラしてたらその空間にいる奴ら全員が微妙な空気になる。

「比企谷、相変わらず時間ぴったりに来るな。」

なかなかオサレな服装に、顔色一つ変えない顔、茶色がかった髪。

三輪隊スナイパー、奈良坂 透。

「よっ、奈良坂。時間に関してはお前も一緒じゃねーか。」

「俺は買出しだ。」

「ねぇ、透は何買ったの?」

「ここで言うわけないだろ。巻町、お前は人1倍口が軽いからな。」

「なんでよ!?私ってそんなに口軽い!?ねぇ八幡!あんたもなんか言ってやんなさい!」

「奈良坂に同意。」

「ムキー!!もういいわよ。今日はあんた達と一言も話さないから!」

操がムキになってる時に奈良坂はインターホンを押す。

そのスルースキル、米屋で培ったな。

俺?

当然、スルーである。

いちいち構ってたら俺の気力が減っていくからな。

「あ、いらっしゃい。操ちゃん、比企谷くん。透くんもお疲れ。どうぞ上がって。」

那須が玄関を開けた。

ベッドから起きて大丈夫なのかね。

俺達4人はRPGのように一列で歩いた。

当然俺は最後尾。

トラップ等に関しては先頭に任せる。

あー、でもRPGって1人トラップ等にかかるとそのパーティー全員が同じことになるからなー。

因みに、先頭は那須。

次に操、その次に奈良坂となっている。

そんな馬鹿げたことをかんがいていたら、那須の部屋に着いた。

はー、女子の部屋なんてあんまし入りたくない。

ましてや女子4人に対して男が二人ときたもんだ。

だが、俺はほかの男子共とは違う。

俺は女子に大して興味はない。

興味のあるのを強いていえば、戸塚ぐらいだろう、

可愛いし、守ってやりたくなるし、才能があるし。

ほんと、戸塚っていい意味で俺に興味を持たせるね。

「お、操、比企谷。」

「あ、巻町先輩、比企谷先輩、こんにちは!あと奈良坂先輩おかえりなさい!」

元気な後輩、日浦による挨拶。

え、くまちゃん?

日浦のインパクト強くて覚えてねーや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

那須の部屋は、俺達6人にはちょうどいいスペースになった。

全員揃ったことにより、早速誕生日会がスタートした。

奈良坂が持っていた袋から白い箱を出す。

どうやらこいつはケーキを取りに行っていたらしい。

ロウソクの数は年の数と同じ、17本。

奈良坂がロウソクに火をつけた終わったと同時に、部屋の電気が消えた。

『ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデイディア怜(那須)〜。おめでとー!』

各々持っていたクラッカーを一斉に鳴らす。

「さ、たべよ。八幡、切って。」

おい、今日は俺と口聞かないんじゃなかったのかよ、とは言わない。

どうせこのバカのことだ、忘れてんだろ。

「へいへい。くまちゃん、そこにある包丁とってくれ。あと日浦、悪いけど熱湯でタオル濡らしてきてくんね?」

「はい、比企谷。にしても熱湯で濡らしたタオルって何に使うの?」

「それは見てからのお楽しみだ。」

「そう。あかね、お願い。」

「はい!任せてください!」

日浦は元気よく返事をすると部屋を出ていった。

「お、そうだ那須。これ、タンプレ。」

俺は操の背負っていたリュックから昨日買ったネックレスを渡した。

「ありがとう比企谷くん。開けていい?」

「ん、いいぞ。つーかそれもう俺のじゃないしイチイチ許可する必要ないんじやわね?」

俺があげたものがいつまでも俺の所持品だったら相手も気にするでしょ。

いや、案外俺のだったら変な気使わなくていいから好き勝手に使うんじゃ・・・。

「キレイ・・・。ホントにいいの?比企谷くん。これ、高かったんじゃない?」

「別に、この前臨時ボーナス入ったからな、家計はたいして苦しくねーよ。それに今、おふくろいるし・・・。」

「そっか。・・・あ、そうだ比企谷くん。これ付けてくれない?」

「それ、一人で着けやすい作りになってるらしいぞ。」

俺がどんな作りかを説明すると、操、くまちゃんの視線が飛んできた。

何この視線の数々。

女子2人にこんなに見つめられたら照れるー。

「奈良坂、俺なんか間違った?」

「良かれと思ったことは必ずしもいい方向には行かないもんだからな。・・・今日ぐらい玲のわがままに付き合ったらどうだ?誕生日だしな。」

「それもそーだな。・・・じゃ、付けるから髪の毛上げてくれ。」

那須が髪の毛を上げるのとほぼ同時にネックレスを那須の首につける。

なるほど、確かにこれは一人でつけやすいかもな。

恐らく、目をつぶってでも出来るぞ。

因みに俺がネックレスを固定するのに使った時間は恐らく、1秒ほどだろう。

他人がやってこの速さだ、きっと本人がやったらもっと速くなるだろうな。

俺が那須の元を離れ、もといた場所に座り直すと操とくまちゃんはなんかジト目で見てくるし、奈良坂は呆れてますよー表現をしてくる。

那須の方を見ると微笑んでる。

「八幡、あんたもう少し、丁寧かつ、ゆっくりに出来ないの?」

「ばか、相手に不快感を与えずにするために最深の注意を払ったぞ。息止めたし、極力真正面を見ないようにしたし、手が触れないようにしたんだぞ。」

「ふふ、比企谷くんはいつも通りだね。・・・ねぇ比企谷くん、少しお願いが・・・」

「温めてきましたー!」

那須が何かを言い切る前に元気よく日浦が登場。

「お疲れさん、日浦。じゃ、ケーキ切るか。」

俺は包丁を日浦が持ってきてくれた熱々のタオルで拭いた。

本来、ケーキを包丁で切ると断面が汚くなる。

だが、俺はそんなの許さない。

アタッカー1位ともなると斬り方、切断面にまでも気を使う。

トリガーだろうが包丁だろうがキレイに、それが俺の目標だ。

熱々のタオルで拭いた包丁は、ケーキのどこにも引っかからず、綺麗に切れた。

当然、切断面も綺麗に。

「すごっ!比企谷、あんたこんなのどこで知ったのよ。」

「ふっふっふ、木崎さんだよ。俺が今料理ができるのは木崎さんのおかげだ。お菓子作りを習いに行った時に教えて貰ったんだ。」

俺は綺麗に6等分し、皿に盛りつける。

もちろん、チョコプレートが乗ってる部分は那須に。

全員のところに行き渡り、一斉に食べ始めた。

もぐもぐ、うまいな。

特にこのいちご、甘いかと思ったが生クリームの甘さを殺さないように甘さを抑え、生クリームを引き立てている。

まるでイケメンの隣に立つ俺のように。

なんなら大抵の男子の隣に立ったら引き立てることが出来る。

「で、那須はさっき何を言おうとしてたんだ?」

俺は最後に残しておいたいちごを食べ那須に聞く。

「あ、うん。あのね・・・私を弟子にしてくれないかな?」

「丁重にお断りさせていただきます。」

「え!?なんで?」

「当たり前だろ。俺はアタッカー一筋の男だぞ?そういうのは弾バカとか加古さんに頼め。」

二宮さんはには言っても無駄だろうしな。

「実は、比企谷くんのお母さんに弟子入りしようと思ってね、頼みに行ったら断られて・・・。」

「おふくろのとこ行ったのか!?」

「う、うん。でも断られちゃった。ランク戦10本やったんだけど、全敗でね・・・。」

那須はどこか悲しそうな顔をする。

そりゃそうだ。

恐らくおふくろ相手になら、那須も自分の持てる力すべてをぶつけただろう。

それでも勝てなかったんだ、今まで培ってきたものを全否定されたような気分になる。

でもな・・・

「そうか。なら良かったじゃねーか。な?操。」

「そうね。桐花ちゃんが最後まで10本やったんだからね。桐花ちゃんは、才能がある人にしか10本最後までやらないのよ。」

「そういうこった。だから、自信をなくすな。むしろ胸を張れ。・・・で、その流れでなんで俺に弟子入りしたいんだ?俺の実力も知らないのに。」

「比企谷くんのお母さんが、比企谷くんなら、私の師匠にぴったりだって。」

「おふくろか・・・。はぁ、わかった。お前を弟子にする。今日は誕生日だしな。」

「ホント!?じゃあ、明日からお願いできる?」

「わり、明日は用事あるし、まだ腕なまってるから少し練習しておきたいんだ。だから明後日、月曜日からにしてくれ。」

「わかった。楽しみにしてるね。」

那須が俺の弟子になることが決定した。

そこからはもう、どんちゃん騒ぎ・・・とはならなかった。

それでも、みんなでワイワイと話で盛り上がった。

・・・俺と奈良坂の幼少期の話で。

解せぬ!

ま、盛り上がってんならいいか。

こんな調子で結局夜まで那須の家にいた。

 

 

 

 

 

 

俺、なんだかんだで弟子とるの今回が初めてだな・・・。

 

 

 


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