やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼女はヒーロー志望?

職場見学が終わり、一週間が経った金曜日。

俺は今週初の奉仕部に向け歩いている。

「うーす。」

いつも通り、何も変わらない空間に、いつも通りの挨拶。

しかし、そこにはいつもならあるものが無かった。

いや、いなかった。

「由比ヶ浜は?あいつ俺より先に教室出たと思うんだが・・・。」

由比ヶ浜がいなかった。

俺はあまりここには来ないから、あいつがどの程度休むのかは分からない。

ま、リア充は部活だけじゃなく、友人関係も大事にしないといけないからな。

俺にはその気持ちが分からんが。

「ねぇ、由比ヶ浜さんと何かあったの?」

雪ノ下は読んでいた本をパタリと閉じ、こちらに目を向けた。

何か・・・ねぇ。

「いや、ないと思うぞ。」

あいつが何を思ってるのか俺には分からない。

わかったらプライバシーの侵害になっちゃう。

「何も無かったなら由比ヶ浜さんは部活に来るのだと思うのだけれど。」

「考えすぎじゃねーの?友達と遊びに行ったんじゃねーの?あいつ、俺達とは違って友達がいんだから。」

「私とあなたを一緒にしないでくれるかしら?・・・ここ最近来てないのよ、職場見学が終わってから。」

ここ最近ねぇ。

そろそろこの何も無い部活が嫌になったのか?

それともただで人助けするのが嫌になった?

「さぁな、俺には特に心当たりがないんだが・・・。」

「そう・・・。なら、あなたの無自覚なのかもしれないわね。あなたは知らないかもしれないけど、職場見学が終わったあと、私達、ボーダーにスカウトされた面々は食事してきたの。その時、周りは気付かなかったのだろうけど彼女、目を軽く腫らしてたわ。あなたを待つと言ってボーダー本部に残っていたから、あなたと何かあったのは間違いないわ。」

もしかしたら、あのことかもしれない。

だが、あれに関しては俺は何が悪いのかわからない。

お互い何かを気にして接するのは気持ち良くない。

だからその関係をリセットするためにあの時、由比ヶ浜に言った。

「なんだ、由比ヶ浜は今日も来てないのか。」

乱暴に扉が開けられたと思ったら、平塚先生が降臨した。

つーか開けた瞬間に分かったって事はこの人、知ってたな。

由比ヶ浜が来ないことを。

「先生、ノックを・・・。」

「すまん、すまん。・・・由比ヶ浜が部活に来なくなって1週間か・・・。今の君達ならどうにかすると思っていたが、まさかここまで重症だったとは。さすがだな。」

どこか感心しているような口ぶりだな、平塚先生。

「はぁ、なんか用があったんでしょ?」

「ん、ああ。由比ヶ浜のおかげで部員が増えると活動が活発化するということが分かったんでな、由比ヶ浜が来ないなら・・・1人でいい。人員補充したまえ。」

「何で1人でいいんですか?」

雪ノ下よ、この人は未だに努力・友情・勝利を愛する見た目は独身アラサー女教師、心は少年みたいな人なんだぞ。

さらに、ここは例えるなら金を取らない万事屋。

ここまでくればわかるだろう。

そう、この人は

「決まってるだろ。こんな、人のために動く時は3人と決まっている!ジャンプを読まんか、ジャンプを。」

ジャンプ大好き人間なのだから。

みろ、雪ノ下の顔を。

よくわからないものを見る顔になってんじゃん。

「期間は何時までなんすか?俺、忙しいんで参加出来ないと思うんですが・・・。」

「なに、期間はそんなに長くはない。次の月曜日までだ。」

「あの・・・今日と当日入れても4日間しかないじゃないですか・・・。なおさら参加出来ないんですけど。」

「何を言っている。君は基本、日曜日には任務を入れてないと聞くぞ?」

誰に聞いたんだ?

学校に提出したシフト表には土日祝日の分はかかれていない。

比企谷隊のスケジュール知ってんのは比企谷隊だけ。

紅覇は口がかたい。

すると犯人は1人だけ・・・ミーサーオー!

またあいつか!

あんまりスケジュール他人にべらべら言うなって言ってたのに。

「平塚先生。一つ確認しますが、人員補充をすればいいんですよね?」

「その通りだよ、雪ノ下。」

平塚先生はその一言を残すと、その場から立ち去って行った。

にしても、あの人の白衣ってかっこいいのなー。

国語教師なのに白衣着てんだぜ?

なのにあの様になる姿。

「さて、俺もやることなくなったし、帰る。人員補充の件については俺は力になれそうにないからな。月曜日にでも聞かせてくれ。じゃーな。」

俺はカバンを持ち、部室から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下駄箱。

いやー、やっぱここ臭いな・・・。

いろんな奴らの靴の匂いがオーバーレイ!

エクシーズ召喚!

匂いの混ざった・・・俺の靴!

・・・そろそろ靴変えよ。

俺が自分の靴の匂いに軽く絶望している時

「比企谷、明日何の日かわかってるわね?」

待ってましたと言わんばかりに昇降口の柱に背を預けてるくまちゃんが登場した。

「なんかあったっけ?あ、明日は珍しく防衛任務がないな。それぐらいだが?なんかあんの?」

俺がくまちゃんの方に向き直るとクマちゃんの手はグー。

「デトロイト・・・スマッシュ!」

「ぐはっ!」

くまちゃんのスマッシュが俺の腹を直撃。

女の割にいいパンチしてんじゃないの。

しかもスマッシュって・・・

くまちゃん、ジャンプ読んでんの?

ジャンプ読んでる女は人なぐるの好きだよね・・・。

「あんた明日が何の日が忘れたの!?」

「思い出した・・・明日、和菓子の日だ。なんか買って帰るか。」

「テキサス・・・スマッシュ!」

どんだけヒーローになりたいの?

流石に、2回目となると反応ができる。

伊達に個人総合1位キープしてるわけじゃないからな。

「くまちゃん、そろそろ正解教えてくれよ。」

「あんたホントに覚えてないの?・・・明日は玲の誕生日でしょ。」

那須の・・・誕生日?

「あー、そう言えばそうだったな。」

「あんた、きょねんじぶんがなにあげたのかわすれてるでしょ、その様子だと。」

「何あげたんだ?ギフトカード?図書カード?」

「・・・桃缶だよ。」

「まじ?まさか俺が人の誕生日に・・・生物渡すなんてな。」

「今年こそはちゃんとしたもの上げなさいよ。て言っても、もう準備することも出来ないだろうけどさ。」

「大丈夫だ、くまちゃん。1箇所だけいい場所がある。」

「どこ?これから行けるの?」

「ああ、多分大丈夫だ。」

「ねぇ、私も行っていい?」

「・・・良いけど、誰にも言うなよ。・・・キモがられるかも知んないから。」

「大丈夫だって、比企谷ときどき、キモイから。」

え・・・やっぱりキモイ認定されてたんだ。

衝撃の事実、とまではいかないが、やっぱりショック。

俺は目的の場所に連絡を取り、許可をもらった。

「よし、じゃあ行くぞ。くまちゃん。今なら人いないって言ってたから。」

「え?比企谷の知り合いの店?」

「ああ。不安か?」

「別に、ただ比企谷がボーダー以外に知り合いがいるなんて思わなかったから。」

こいつ、最近俺に対する扱いが雑になってきている気がする。

「ま、いっか。・・・行くぞ、とっとと後ろ乗りな。」

「比企谷、ヘルメットかぶると様になるね。」

それは、顔が見えないからという意味でしょうか。

つまり俺は顔がなくなればイケメンということ。

・・・顔なかったらイケメンじゃないじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセサリーショップ前。

「着いたぞ、くまちゃん。」

俺のよく行く店、その名も『マヤ』。

「ひ、比企谷・・・ここは?」

「ん、俺がよく利用するとこ。あんまし人に言うなよ。」

俺とくまちゃんは中に入った。

相変わらず、あんまし明るくねーな。

目ェ悪くなるっつーの。

「よぉ、久しぶりだな。八幡。」

「久しぶりです。おやっさん。」

この人はおやっさん。

親父の知り合いで小さい頃からの付き合いだ。

因みに、昔おじさんって言ってたらまだそんな歳じゃねぇ、って言われてこの呼び方が定着した。

「なんだ、今日は女連れてきたのか。お前も隅におけねーなぁ。」

「ただの友達だ。明日誕生日の奴がいっからよ、それ買いに来たんだ。んで、そいつのこと良く知ってるやつを連れてきたってわけ。」

「ほー。まさかお前が家族以外のために買いに来るとは思わなかったよ。で、どんなの買う?1%ぐれぇなら負けてやってもいいぜ。」

「それ殆ど値段変わってねーじゃねーか。そーだな・・・くまちゃん、どんなのがいいと思う?」

「あんたが買うんだからあんたが決めなよ。玲なら、あんたが渡すもんだいたいよろこぶとおもうよ。」

「ふむ・・・なら」

俺は一番最初に目に付いたものを手に取った。

なかなかイカすデザインだ。

「こんなのは、どう?イカすだろ?」

「却下。何で女子にあげるのに、ドクロなのよ。」

えー、パイレーツ・オブ・カリビアンみたいでおしゃれじゃん。

他には・・・キラキラしてて、目がチカチカすんな。

「おやっさん、なんかいいのない?」

「そうだな・・・そのオメェが渡したいネェちゃんはどんな感じなんだ?オメェの印象を教えてくれ。」

「そうだな・・・美人、目に縦線入ってる、病弱、顔の色を変えるのが早い、時々テンパる、ぐらいかな。」

「最初の以外殆ど参考になんねぇな、スットコドッコイ。」

「いいだろ別に。で、いいのある?」

「これなんてどうだ。飾りが少々ちいせぇが光に当たると、飾りの部分が光る。しかもオメェさんの財布にも優しい。因みにこれはうちが扱ってる中でもなかなか手に入らないもんなんだぜ?どうよ。」

ふむふむ、なかなかおしゃれ・・・なのか?

よかわからんが、光るのか。

いいな、光るの。

「何でこれが手に入りにくいんだ?」

「この飾り作ってる奴が大規模侵攻で逝っちまったんだと。」

「そうか・・・よし、これくれ。いくらだ?」

「2万円」

「もうちょい」

「1万9千」

「もっといける」

「1万5千」

「やれば出来る」

「1万4千」

「のった。1万5千きればいい。」

おやっさんがここまで値切ってくれたんだ。

流石にこれ以上は図々しい。

「んじゃ、ほれ。ちゃんと渡してやれよ。あと、そのネェちゃんの写真今度見せてくれ。」

「ロリコンかよ・・・。まいいぞ。また今度な。」

「期待して待ってんぞ。おっと、待ってくれそこのネェちゃん。」

「わ、私ですか?」

「ちとこっち来てくれ。」

くまちゃんがおやっさんに呼ばれて2人でこしょこしょと喋ってる。

あいにく、手で口元隠してるせいで何を言ってるのかわからない。

お、どうやら話し終わったらしい。

おい、なんで2人ともニヤニヤしてんだよ。

こんな暗さの中で男女がニヤニヤしてると怪しいヤツらにしか見えない。

「八幡、気をつけて帰れよ。あと・・・いい加減、青春しろよ。」

「忘れなきゃなー。じゃ、またいつか世話になるな。じゃなー。」

「おじゃましました。」

「おう、また来てくれよな。」

俺とくまちゃんは店を出てバイクに乗った。

ぐぎゅ〜

「くまちゃん・・・サイゼ、行く?」

「・・・お願いします。」

俺とくまちゃんはサイゼに向かい、バイクで走り出した。

 

 

 

 

 

あ、さっきの買い物で俺の所持金が・・・

 

 


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