やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼は〇〇を探したい

おふくろ達が引っ越してきた翌日。

朝起きたら小町と綺凛が仲良くなってた。

あなた達コミュ力高いですね。

なんでこんなに早く和解したのか操に聞くと

「なんか綺凛があんたの妹じゃなく小町の妹になる、って言ったら小町がそれでオッケーしたのよ。」

と言ってた。

まぁ、結局俺の妹に変わりはないんだが・・・

小町、それで納得するってなかなか頭が残念な気がしてきた。

我が比企谷家にバカは許されない。

綺凛は学年でも1、2を争ってるし紅覇は学年1位。

操に至っては普段の言動に反する学年3位。

世の中何があるか分からないもんだ。

それでも頭が残念なのにはかわらないが。

さっき、食パンくわえて慌てて『友子との約束の時間に遅れるー!』って言って家飛び出してったけどあのスタイルはのび太くんを連想させる。

傍から見たらバカかアホにしか見えない。

さて、俺もそろそろ学校に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

ゴールデンウイークも過ぎ、じわりじわりと熱くなってくる今日このごろ。

昼休みともなると生徒のざわめきも暑さに比例し大きくなり、余計に暑さを感じるようになってくる。

元々、クールでハードボイルドな俺が厚さに強いわけがなく、少しでも涼く、人気の以内場所へ向かった。

適当にブラブラしてたらある事を思い出した。

確かクラスの女子が

『ねー知ってる?屋上の南京錠壊されてるんだってー。』

って、言ってた。

因みにこれは盗み聞きしたのではない。

隣の女子が大きな声で話してたのがたまたま耳に入ってきただけだから。

不可抗力だから。

ま、誰に弁明するのかわからないけど取り敢えず言ってみるか。

確かこの階段を登るとあったはず。

俺は階段を登り、机が置かれ1人通れるかどうかの隙間を抜け扉にたどり着いた。

なるほど確かに南京錠が壊れてる。

にしても綺麗に斬られてるな。

こんなのレーザーかトリガー使わないと斬れそうにもないな。

まあこんな事にトリガー使う馬鹿なんて1人しか思い浮かばないがあいつ屋上に行かないもんな。

さて、屋上とごたいめーん。

おお、静かだ。

この静けさからするとうるさい軍団はいないようだ。

もしかしたら誰もいない、俺ひとりなのかもしれない。

誰もいないと俄然元気になるのができるボッチだ。

俺は地面に座り購買で買ったパンをむさぼり始めた。

このアンパンと牛乳が俺の空腹に満ちた腹を刺激する。

張り込みをする刑事たちはアンパンと牛乳が主流だとドラマでやっていたが納得だ。

もしかしたら刑事たちもこの刺激にやられたのかもしれない。

ふー、ご馳走様でした。

俺は食い終わったゴミを袋に入れ寝転がった。

あー、空が青いなー。

お、あの雲ラピュタありそう。

ラピュタかー、俺も探しに行こうかな〜。

俺は手元にあった職場見学希望調査票に目をうつした。

将来の夢はパイロットってもいいな。

ぴゅう、っと風が吹いた。

おっと、俺の手元にあった職場見学希望調査票が飛んじまった。

紙は俺を弄ぶかのように俺からどんどんと遠ざかっていく。

もういいや、新しい紙貰おう。

俺が諦め先ほど居た位置に戻ろうとした時だった。

「これ、あんたの?」

声がした。

どことなく気だるげなその声の主をさがして俺は周囲を見渡すが、俺の周りに人はいない。

「どこ見てんの」

ハッと馬鹿にしたような声は、上から聞こえた。

まさにこれが上からものを言うというやつなのだろう。

屋上の一番上、給水塔。

その給水塔により掛かり、俺を見下ろしていた。

長く背中にまで垂れた青みがかった黒髪。

リボンはしておらずセクシーに開かれた胸元。

蹴りが鋭そうな長い足。

一言いおう、ボーダー入りませんか?

「これあんたの?」

その少女は先ほどと変わらぬ声音で言った。

リボンが無く何年生か分からないから無言で頷く。

いつだって無言は最強である。

「ちょっと待ってて。」

ため息混じりでそう言うと、給水塔から降りるため梯子を降り始めた。

そのとき。

風が吹いた。

まるで夢を運ぶような風が。

重く、垂れ下がった暗闇を晴らしてくれるようなそんな風が。

それは俺にとって未来永劫脳裏から離れることのないよう焼き付けるような風が。

そう、パンツが見えたのだ。

でかした、風。

梯子から降りた女子は紙を俺に渡す前に一瞥した。

「バカじゃないの。」

女子の冷たい言葉が俺にスパーキーング!

そう俺に投げつけるかのごとくぶっきらぼうに俺に渡した。

俺が受け取るとくるっと周り校舎へ消えていった。

俺は『ありがとう』も『バカっていうやつが馬鹿なんだぞ』も『パンツ見てごめんなさい』も『ご馳走様でした』も言えなかった。

だから俺はこう言おう。

「風よ・・・ありがとう。」

俺は今日見た黒のレースを忘れる事は無いだろう。

俺は次の授業に意気揚々として挑んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

職員室の一角には応接スペースが設けられている。

そこのそばにある窓から風が入ってきて1切れの紙が踊りながら床に落ちた。

俺はその紙の行く末を問おうと紙の動きを目で追っていた時だった。

ダンっ!と鉄槌のようなピンヒールが突き刺さった。

俺はその脚を見た。

次に胸。

ここまでは良かった。

まるで名刀菊一文字のような美しさだった。

問題はその上に不釣り合いな金剛力士像のような恐ろしい形相があることだ。

金剛力士像に菊一文字、まさに鬼に金棒といった組み合わせだった。

国語教師の平塚先生はタバコをかじり、怒りをこらえてますよアピールをし、俺を睨みつけてくる。

「比企谷。私が何を言いたいか、わかるか。」

大きな瞳が放つ眼光に耐えきれず、体ごとそらした。

「まさか、わからないとでも言うまいな。」

「も、もろちんわかっておりますともです。」

なんか変な日本語になった。

それほどまでに俺は今焦っている。

恐らく原因は先ほど提出した職場見学希望調査票のことだろう。

やはり

希望する職業:パイロット

希望する職場:空港

理由:ほんとにラピュタがあるか確かめたいから。世の子供たち大人たちの夢を叶えたいから。

は、アウトだったようだ。

特に理由あたりが引っ掛かったのだろう。

「か、書き直しますんで殴るのは勘弁してくでせェ。」

「当たり前だ。全く少しも変わらんな。」

「俺は自分で決めた道をまっすぐ行くタイプなんで。」

俺は胸を張り真剣な眼差しで平塚先生を見た。

すると、平塚先生のこめかみからピシッと、音が聞こえた気がした。

「やはり殴るしかないか。テレビも殴った方が早いしな。」

「い、いや。俺精密なんでそういうのはちょっと。それに最近のテレビは薄いですからね殴ったら倒れますよ?俺のメンタルと一緒で。」

「は〜、やはりその性格は治らんか。という訳でお前には奉仕活動をしてもらおう。」

「あの〜それ、以前断ったんですが。それに防衛任務が・・・。」

「それなら許可をとっている。電話をしたら君の妹が好きにしてもいい、と言っていた。」

妹?綺凛はそんなことを言うとは思えないし、操は妹じゃないし平塚先生も知っているはずだ。

まさか・・・

「すいません、妹って誰ですか?」

「ん?確か小町と名乗っていたはずだ。」

「すいません。それなかったことにしてください。」

「む、なんでた。君の妹は母も了承してくれると思うんでと言っていたが。」

「恐らく俺の妹、小町は我が家が全員ボーダー隊員という事を知りません。おふくろは小町を戦闘から遠ざけるためにボーダーのことを言ってないはずです。」

「家族全員?君のご両親もボーダーなのか?」

「はい。俺の両親はボーダー設立時の初期メンバーです。因みに俺と操は小学生からボーダー隊員です。」

「という事は君と巻町は大規模侵攻前からボーダーだという訳か?」

「はい、まぁ信じられないでしょうが。」

「いや、信じるさ。教師が生徒を信じなくてどうする。」

随分と物わかりのいい先生だ。

生徒を信じるというのはかなり危険な行為だというのに。

この人ならヤンクミになれるだろう。

「しかし、毎日防衛任務あるわけではなかろう。週に1、2回でもいいから行ってくれないか?」

「別にそれだけでいいなら行きますけど条件があります。その条件を飲んでくれるのなら入部します。」

「条件による。」

「一つ目、俺の用事を再優先。二つ目、俺のやることに口出し無用。三つ目、居たくなくなったらすぐにやめれること。の、三つです。」

「わかった。その条件を飲もう。」

「わかりました。それでは今週の分として今日行ってきます。」

俺が席をたとうとした時だった。

「まぁ待て比企谷。まだ話は終わっていない。」

「いや、もう終わってるでしょ。職場見学希望調査票は書き直すことで一件略着しましたし。」

「それは教師としての話だ。ここからは私個人の話だ。」

「あまり長くならないのなら。あと男に振られただの愚痴もなしですよ。」

「誰が振られたと言った!まだ、付き合ってもいないわ!」

あらら、随分とおっきな声で言っちゃった。

ほら、先生方がこっち見てる。

あ、俺のクラスの担任の坂田銀八先生だ。

オレの話を聞いてくれるなかなかいい先生。

因みに死んだ魚のような目をしている。

お互いどこか親近感が湧いているのだろう。

「で、平塚先生。そんなことを大声で告白するために呼びとどめた訳じゃありませんよね。」

「言わせたのはほぼお前だろ!ま、いい。いや、よくない・・・。まあ今はいい。本題に戻ろう。比企谷、君に聞きたいことがある。」

「ものによりますね。」

「お前の意見でいい。この前のような事はまた起きると思うか?」

この前のような事とはイレギュラーな(ゲート)のことだろう。

「はい。寧ろ今まで起き続けています。今年はまだ少ない方です。」

「そうか・・・。なら校長たちと今後の事について話し合ったほうがいいな。」

「その事なんですけど実は校長に言いに行こうと思っていたんですが・・・。」

「何をだ?というか私に話していいのか?」

「どうせ先生も後で知りますよ。実は今回の職場見学、全員をボーダー本部にして欲しいということなんです。」

「は?どういうことだ。確かに大半の生徒がボーダー本部を希望していたがほかのところにも訪問したいというお前のようにふざけず書いた生徒がいたんだが。」

「別にふざけたつもりは・・・、今後前回のように俺やほかのボーダー隊員がいるとは限りません。例えば前回、A級8位の三輪隊隊長の三輪 秀次やスナイパーの奈良坂 透が不在でした。この学校には幸いA級隊員が多くいますが基本、少数しかいません。ですから今度の職場見学の際、生徒達には秘密に入隊テストを受けてもらいます。で、優秀な生徒は後でスカウトするという形で入隊してもらいます。」

「そうか・・・、だが親の反対を受けているところはどうする。まだこの街にはボーダーに反対し続ける人たちはいるぞ。」

「その時は俺や嵐山さん、外交官の人たちで対処します。ほんとに無理だったら強制はしません。親にとって子供は一番可愛いですから。」

「そうか。ならこの事をこれから校長に言いに行くのか?」

「いえ、生徒に間違っても聞かれたくないので後で内密に・・・シッ!」

背後に誰かの気配を感じた。

あれは・・・由比ヶ浜か。

どうやら今職員室に入ってきたようだ。

あの様子だと聞こえていないようだな。

「しつれいします。平塚先生に用があって来ました。」

由比ヶ浜がこちらに向かって歩いてきた。

「では平塚先生、この事は内密に。失礼します。」

俺が椅子から立ち上がり由比ヶ浜とすれ違うときだった。

「あ〜!ヒッキーここにいたんだ!平塚先生に相談したらここに来いなんて言われるからドキドキしてたけど平塚先生と話してたんだ!」

ここは職員室ですよ?由比ヶ浜さん。

五月蝿きことこの上ない。

「平塚先生、これはどういうことですか?」

「なに、由比ヶ浜が君を入部させたいらしいからな話し合わせようと思っていたんだが、その必要はなくなったようでな。」

由比ヶ浜が?

俺とこいつに同じクラスという以外に接点はないはずだが。

「もー、ヒッキーのこと探すのチョー大変だってんだからね!ヒッキーのこと知らない?って聞いたら『テニスの上手いヤツ?』としか返ってこなかったんだからね!」

俺的にはよくヒッキーで通じたなと思う。

俺ってそんなにヒッキーでとおってんの?

テニスうまいねって言ってくれたのにヒッキーなの?

ひきこもりだったらマリオテニスぐらいしか出来ないぞ。

「まーそういうわけだ。比企谷、行ってこい。」

「うす。」

今日、俺は初めて部活動に入部した。

 

 

 

 

 

 

空き教室こと奉仕部部室。

「やっはろー、ゆきのん。新入部員連れてきたよ!」

由比ヶ浜が勢いよく扉を開けた。

前の平塚先生を超える威力で。

「由比ヶ浜さん、もう少し静かに入ってこれないのかしら。心臓に悪いわ。」

「うん、ごめんね。でね新入部員連れてきたよ!」

ダメだこいつ、人の話を聞かねぇ。

「わ、わかったからそんなにくっつかないで。流石にこの時期だと暑苦しいわ。」

「あ、ごめんね。」

由比ヶ浜はしゅんとして雪ノ下から離れた。

「べつにいいわ。ところで新入部員は?」

「よ、雪ノ下。今日から週に1、2回ほどだがここに来ることになった。」

「由比ヶ浜さん、新入部員は?」

「いや、俺今言ったよね?なに?むし?それとも聞こえてない?」

「あら。え、えっと・・・ひ、ヒキガエルくんだったかしら?」

「なんでお前が俺の小学校でのあだ名知ってんだ。ストーカー?」

「あら、自意識過剰ね。私はストーキングはされたことはあるけどした事は一度もないわ。あなたと違って。」

「へいへい、そうですかい。」

あー、なんでこいつはこんなに悪口が思いつくんだよ。

一種の才能だな。

こいつ悪口学校、罵倒科しょぞくか?

専門的に学んでいるのなら勝てるはずもない。

きっとこいつの頭の辞書には主語、述語、罵倒の三つから文を作ると書いてあるのだろう。

「あ、そうだ!ヒッキー、ゆきのんメアド交換しよ!」

「え、やだ。」

「別に必要ないと思うのだけれど。」

何のために?

メールなんて防衛任務関係でしかしたことない。

因みに俺はボーダー隊員と連絡する時は基本LINEだ。

だからメアド交換を交換する気は無いのだ。

「えー、なんでー?メールできた方がいいじゃん。」

「どのへんがいいんだよ。何でLINEじゃないんだよ。」

俺は一番の疑問をぶつけた。

「だって、私スマホじゃないんだもん!」

「スマホじゃなくてもLINEできるガラケーもあるぞ。」

「うそ!?買った時そんなのお店の人言ってなかったよ!?」

いや、お店の人わざわざ言わないから。

この機種、LINEできませんよ。

なんて言う店員いたらびっくりだわ。

「そうだったんだ〜。ってヒッキー話しそらさないでよ!という訳で2人とも携帯貸して。」

なかなかこいつは強引だな。

雪ノ下に至ってはもう折れて携帯渡してるし。

「ほら、ヒッキーも!」

「あら、私だけに出させておいてあなたは出さないつもりかしら。何様のつもり?」

なんか雪ノ下少し嬉しそうじゃない?

そんなにメアド交換楽しみなの?

確かに友達のいない奴が携帯にメアドが増えるとにやついてしまう。

それがボッチの性だ。

「ほれ、パスワードはかかってねーから好きにしろ。」

「うわ、人に簡単にスマホ渡すって・・・ぶ、ぶようじん?じゃない?」

「別にいいんだよ。見られて困るのもないしな。」

「ふーん、って!ヒッキーメアドゼロじゃん!?」

「そりゃ俺メール派じゃないからな。」

「え、ヒッキーってもしかしてLINEしてるの?」

「まあな。ほれ、打ち終わったら返せ。」

「あ、うん。」

なんだこのスパムメールと間違えそうな名前は。

ガハマに変えておこう。

「うわっ・・・。」

と、急に由比ヶ浜は顔をしかめた。

え?そんなにガハマ気に入らなかった?

俺的にはかなりいいと思うんだけどな。

「比企谷くん。由比ヶ浜さんに卑猥なメールを送るのはやめなさい。」

「いや送ってねーよ。」

「そうだよゆきのん。それに多分ヒッキー関係ないよ。だってクラスのことだもん。」

「そう、なら比企谷くんは無実ね。」

「最初から言ってんだろ。」

その時だった。

コンコン、とノックする音が聞こえた。

これが俺達奉仕部3人の初仕事の合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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