やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼は気にかけ続ける

鳩原さんが地球から去って2時間後。

俺は全速力で走っていた。

ハァハァ、おふくろとの約束の時間かなり過ぎたな。

バイクがあれば良かったんだけど今車検に出してるからな〜。

車検に出すタイミング間違えたな。

取り敢えず今は走るだけだ。

トリオン体になれればいいけど、生憎こちらもメンテナンス中。

鳩原さんの件のあと鬼怒田さんが急に

『比企谷、トリガーを貸せ。』

って言って渡しちゃったんだよな〜。

しかもなんかニヤニヤしてたし。

お、見えてきた。

俺がおふくろとの待ち合わせ場所として選んだのは『アンブラル』という喫茶店だ。

テスト前や防衛任務までの時間潰しによく利用する。

そのせいか、店長に名前まで覚えられた。

因みに店名の由来は

『雨宿りのついでに』

らしい。

なかなか洒落た店だ。

カランカラン

「いらっしゃいませ、八幡くん。どうしたんだい?そんなに慌てて。」

「て、店長・・・。30代後半のおばさん来てない?」

「う〜ん。30代後半っぽい人は来てるけどおばさんって感じじゃないよ。」

「その日とどこにいる?」

「奥の席に三十分前ぐらいからいるよ。」

「ありがと店長。あ、あとアイスコーヒーお願い。」

「かしこまりました。どうぞごゆっくり。」

奥野席とは恐らく角を曲がったところにあるトイレ付近の席のことだろう。

いた、なんか不機嫌オーラバンバン出してるよ。

二ノ宮さんでもそこまでひどくないんだけどな〜。

あ、おふくろ二ノ宮さんの師匠だ。

取り敢えず、覚悟決めるか。

「わるい、おふくろ。防衛任務長引いた。」

よし、これならおふくろも無理に責めれまい。

「あら、自分で約束した時間、場所で遅刻するなんてよっぽど重大な防衛任務だったのね。」

はい、そのとおりでござんす。

やはり俺はおふくろに頭が上がらない。

「ああ。まさかトリオン兵が100体近く出るとは思わなくてよ、事後調査してたら遅れたんだ。」

「そう、わかったわ。それじゃあ、早速だけれども本題に入りましょうか。」

「ん、いいぞ。」

「引越しは何時がいいかしら。出来れば休日がいいのだけれど。」

「なら明後日の日曜日はどうだ。俺は防衛任務だけど操たち、他の隊員は休みだ。」

「あら、なんであなただけ防衛任務があるのかしら。」

「新人チームの防衛任務について行くんだよ。何かあった時に対処できるようにな。」

「そう、わかったわ。じゃあ、日にちは明後日の日曜日ていう事で。部屋割は操に聞けばいいのかしら。」

「ああ、二階にしてあるが嫌ならどっかに引っ越せ。」

「あら、実の母親になんてこと言うのかしら。」

「生憎あんたのことをホントに母親って思ったことは一度もないんでな。」

「あなたも言うようになったじゃない。」

俺とおふくろの口論が始まるというまさにその時だった。

「アイスコーヒーお持ちしました。」

まるで狙ったかなようなタイミングで店長が現れた。

よく見ると頬の筋肉が緩んでた。

この人、絶対に聞いてたな。

「ありがとうございます。」

手短に例を言った。

あと少しで閉店するので俺はアイスコーヒーを一気に飲み干しグラスに残った氷を口にほおばった。

口に広がる苦味がたちまち氷により薄くなった。

「ここの会計は私が持つわ。」

「そうかい、なら頼むわ。俺は悪いけど先に帰らせてもらう。妹、弟達が待っているからな。」

「あら、あなたに小町以外の兄妹がいるのかしら。」

「まぁな。俺にとって生きる希望になった存在だ。」

「ふふ、それ小町が聞いたら嫉妬するわよ。」

「しないだろ。4年近くあいつとは喋ってねーんだぞ、今回一緒に住みたいなんて言ったのはおふくろが仕事で構ってくれないからかまってくれるやつが欲しい、ってところだろ。」

「どうかしらね。」

「じゃ、今度こそ俺は帰るぞ。また明後日な。」

俺はそのまま喫茶店をでて、夜の街の人混みに消えてった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

俺は今、影浦隊の隊室の前にいる。

理由はユズルのメンタルケアだ。

鳩原さんがいなくなったことでユズルの心はズタズタになっているだろ

う。

一応鳩原さんと約束したしな。

ちゃんとユズルを立ち直らせて1人前のスナイパーにさせる。

まあ、もう一人前のスナイパーなんだけどな。

ピンポーン

俺は影浦隊の隊室の呼び鈴を鳴らした。

『はいはーい、どちら様。』

「俺だ、比企谷だ。」

『ハチ?どしたん。』

「悪い、今ユズルいるか?」

『いるけど今はそっとしておいてくれないか?鳩原さんの件で・・・』

「俺はそのことで来た。」

『わかった。今開けるから少し待ってて。』

ウィーン

俺は影浦隊の隊室に入った。

うわ、かなり散らかってるな。

これ全部ヒカリの私物か?

女らしさの欠片も見えない。

操と同類だな。

「ハチさん、何のよう・・・。」

ユズルから話しかけてきた。

その目は赤く腫れ上がっていた。

かなり泣いていたのだろう。

ここにカゲさんがいないのは攻めてもの気遣いだろう。

「よ、ユズル。随分と泣いたみたいだな。」

「五月蝿い、黙っててよ。」

「そうもいかない。俺は鳩原さんにお前のことを頼むって言われてんだ。それにこれも俺の仕事の範疇だ。」

「どうゆうこと。もしかしてハチさんなんで鳩原さんが規定違反したか知ってるの?」

「ああ、知っている。」

「ねぇ教えてよ。俺にも知る権利はあるはずだ。」

「悪いな、それを決めるのはお前じゃない。俺達、上層部だ。」

「なんで?なんで知ったらいけないの。俺が知ったら都合の悪いの。」

「そうだな。だが、お前に知られて都合が悪くなるんじゃない。ボーダー隊員全員に知られたら都合が悪い。」

「そっか・・・。ねぇハチさん。」

「なんだ?」

「鳩原さんまた戻ってきてくれるかな。」

「ああ、きっと戻ってくるさ。いや、絶対に戻す。」

「何でそんなに言い切るの。」

「そうだな・・・俺が個人総合1位だから、じゃダメか。」

「理由になってないよ。」

「そうかい。なら、おまえが連れ戻してみろよ。」

「うん・・・。」

ふっ、どうやら一肌脱いだ甲斐があったようだ。

徐々にだがユズルに笑顔が出てきた。

まっ、元からあまり感情を表に出さないんだけどね。

俺が内心で喜んでいると

グゥ〜〜

と可愛い音がした。

見たところユズルではないようだ。

俺でもない。

となると犯人は1人だけだ。

「ヒカリ、ユズル、飯食いに行くぞ。今日は俺が奢る。」

「ホントか!?ハチ。わたし、肉が食べたい!」

「オメーには選択権はねーよ。ユズルに決める権利を与える。ユズル、なにがいい。何でも好きなの食わせるぞ。」

「なら、カレーがいい。」

「了解、んじゃ早く準備しろよ。俺は外で待ってっから。」

ウィーン

ふぅ〜、良かった。

ユズルが強い子で。

これで落ち込み続けていたら鳩原さんが帰ってきた時に合わせる顔がない。

 

 

ユズル、強く生きろよ・・・。

 

 

 

 


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