やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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少し短いです。


彼は大事なことに気が付かされる。

リア充とのテニス勝負が終わり数日後の防衛任務。

時刻は夜。

今日、この防衛任務が終わったらお袋と会う約束をしている。

出来れば今日はトリオン兵出てきて欲しくないな〜。

あと1時間もないし恐らく今日は(ゲート)開かないで終るな〜。

しかし、俺のささやかな願いは叶わず(ゲート)が開いた。

「は〜。ハロ、何体だ。」

『トリオン兵0、トリオン兵0』

は?どゆこと?

トリオン兵がいないのにも関わらず(ゲート)開いたの?

どんだけトリオン兵働きたくないんだよ。

俺が働いてるのにテメーらがサボってるのは許せん!

俺が頭の中で葛藤している時だった。

『比企谷隊に告ぐ。密航者を捕らえろ。』

この声は忍田本部長?

「一体何があったんですか?」

「わけはあとで話す。取り敢えず今は急いで密航者を捕らえろ。」

「了解。紅覇と綺凛はここで待機、操行くぞ。」

「オッケー。」

「りょーかーい。」

「はい、分かりました。」

俺と操はグラスホッパーを展開し全速力で目的地にまで駆けた。

密航者か・・・。

俺は頭がぼんやりしていた。

別に風をひいたとかではない。

密航者に心当たりがあるのだ。

あれは数日前のことだった・・・

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「比企谷くん。」

俺は声のする方を振り返った。

普段なら振り返らないが流石にボーダー本部で比企谷の名字は俺だけだろうと思ったからだ。

「こんにちは、鳩原さん。」

二宮隊スナイパー鳩原さんだった。

この人は武器破壊を得意とする異色のスナイパーだ。

ランク戦では何度も弧月をはじかれたりスコーピオンを砕かれたりなどなん度も邪魔をされたものだ。

ま、最近じゃイーグレットやアイビスなら弧月で斬ることが出来るから破壊されることはなくなったが、攻撃の手を止めることになるからスキができる。

そこを二宮さんのフルアタックで仕留めるというなかなかイヤらしい戦法で何度も苦しめられている。

俺がしみじみしていると

「ねぇ比企谷くん。比企谷くんはさ近界側(ネイバーフッド)に行きたくたない?」

「俺は遠征で毎回行ってるんですが。」

「ふふ、そうだったね。そうだ、比企谷くん。少しお願いがあるんだけど。」

「なんすか?」

「もしかしたら少しここに来れなくなるかもしれないからユズルのこと、おねがいできる?」

「俺、スナイパーじゃないんで無理です。当真さんにでもお願いしてください。」

「比企谷くん、それじゃぁ職務放棄だよ?本部長に言っちゃおうかな〜。」

「謹んでお受けさせてもらいます。」

「ありがとう。君ならそう言ってくれると思ったよ。」

脅しておいてよく言うな。

「じゃ、私これから防衛任務だから。じゃあね。約束守ってよ。」

「ハイハイわかりましたよ。」

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なんてことがあった。

俺の予感が外れているといいんだが。

「操、ペース上げるぞ。ついてこれるか?」

「誰にものを言ってるのよ。まだまだ余裕よ。」

俺と操はグラスホッパーを展開させる間隔を狭めた。

連続で踏むとかなりのスピードが出る。

因みにこれを応用したのが乱反射(ピンボール)だ。

『目的地まであと100m、目的地まであと100m』

ハロから通信が入った。

この距離なら俺のサイド・エフェクトで見ることが出来る。

人数は恐らく4人。

そしてその中には鳩原さんもいた。

鳩原さんはこちらに気が付いたようで一緒にいた人たちに(ゲート)に入るように促している。

俺は既に腰にある弧月に手を掛けた。

狙いをさだめているとき鳩原さんと目が合った。

「ッ旋空・・・弧月!」

悲しくも俺の放った旋空弧月は空を斬り彼方へと消えていった。

「八幡、なんであそこで躊躇したのよ。あんたなら私情と仕事の区別くらい出来るでしょ。まさか知人がいたから戸惑った、なんて言うんじゃないわよね。」

俺は無表情で話す操を無視し紅覇達の元へ戻るために歩き出した。

「比企谷、密航者はどうなった。」

俺の歩く先に風間隊が現れた。

「すいません・・・逃がしました。」

「そうか、ご苦労だった。あと今日はゆっくり休め。

酷い顔をしているぞ。」

酷い顔か・・・、確かにそうかもしれない。

俺は止められるものを止めなかった。

俺があの時しつこく聞いていれば鳩原さんは、この事について話してくれたかもしれない。

今回の件は俺の失態だ。

また、手の届く距離でつかめなかった。

結局俺は大規模侵攻(あの時)から何も成長していない、何も変われていない。

何が個人総合1位だ。

いざという時に何も出来ないじゃないか。

ならば俺がボーダーにいる意味はあるのか。

何のために俺はまだボーダー隊員になっているのか。

一体何のために・・・

「あ、八幡お兄さんーん!」

綺凛が俺に気付いたようでこちらに来た。

ああ、そうだ。

俺がボーダー隊員でいる訳。

それは、俺の家族を守るため。

それ以外に何の理由もない。

個人総合1位なんてただの肩書きだ。

俺はそんな下らない肩書きなんていらない。

ただ、こいつ等の『お兄ちゃん』としていれればそれでいい。

あ〜あ、何を悩んでたんだろうな俺は。

鳩原さん、お陰で大事なことに気付くことが出来ました。

お礼と言ったらなんですがユズルの事は任せておいてください。

だからちゃんと地球に戻ってきてください。

俺は誰に聞かせるわけでもなく夜空を見上げた。

「八幡お兄さん?どーしたんですか?急に立ち止まって。」

おっと、いつの間にか歩く足を止めてしまったようだ。

「何でもねーよ。」

俺は綺凛の頭を撫でながら紅覇のいる所まで再び歩き出した。

あ、操がいねー。

ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

「ムキー!なんで私が手伝わないといけないのよ!」

「巻町先輩口動かさないで手を動かしてください。」

絶賛風間隊のお手伝いとは八幡たちは知る由もなかった。

 

 

 

 

 


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