今日は私の中で最悪の1日かもしれない、そう思えば気が楽になる。
今日から新しいクラスを持つと言うのに、何故こう面倒事ばかり重なるのだろう。
世界初だからか知らんがここまで書類が要るのだろうか。心なしか、そう思っていた私の歩く速度が落ちている気がした。
『……r斑一夏です。…………以上です。』
そのふざけた紹介を聞いた私は、手に持った出席簿を握り締め……教壇で突っ立っている馬鹿を叩くことにした。
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スパンッ!
「いっ!?」
叩かれた男子生徒は、恐る恐るといった風に振り返る。
「ゲッ、関羽!」
バンッ!!
「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者が。」
叩いた張本人である女教師は、低めのトーンで落ち着いているため恐怖心を駆り立てる。
「あ、織斑先生。会議は終わりましたか?」
「ああ。山田先生、クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな。」
先ほどとはうって変わって高めのトーンで口を開く。
「い、いえ。副担任ですから、これくらいは……」
若干声を潤ませ、頬を紅くしながら言う。
これに対し、若干の溜め息を吐きながら口を開く。
「諸君、私が織斑千冬だ。お前達新人を一年で使い物になる操縦者に育て上げる、それが仕事であり義務だ。故にお前達は私の言うことをよく聞き、そして理解しろ。出来ない者は出来るまで、わからない者はわかるまで指導してやる。私に逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな?」
女教師……否、千冬の言葉にクラス中の女子が悲鳴をあげる。
頬を染めて。
「キャーーーー本物の千冬様よ!」
「千冬様にご指導していただけるなんて!」
等、黄色い悲鳴で満たされる。
耳をつんざくような声に、少しガラスが震えていたが……然したる問題ではないだろう。
「はぁ、毎年毎年よくもこれだけの馬鹿を集めたものだ。……これだけは馴れないものだな、私も。」
悪態を付きつつ、頭を抱える千冬。
端から見れば本当に鬱陶しそうにしている。
だが……
「御姉様!!!もっと叱って、そして罵ってください!!!」
「でも時には優しく!」
「そしてつけ上がらないように躾を!!」
彼女達にとって苦ではなく、千冬にとっては苦になる事に。
実際千冬に耳があったら、タレ千冬になっているだろう。
「……馬鹿者共がこうも集まる。感心させられるが、何故私のクラスだけ多いのだ?ここだけに集中させているのか?」
若干不満げに、誰にも聞こえないような声量で愚痴を溢す。
そして意を決したように向き直ると、先ほどから突っ立っている男子生徒にこう言い放つ。
「で? 挨拶もろくにできんのか?お前は。」
「いや、千冬姉……俺はーー」
ズバンッ!!!
「ここは学舎、そして私は教師だ。故に織斑先生と呼べ。」
「……はい、織斑先生。」
このやり取りが切っ掛けか、回りがざわつき始める。
「え?……織斑君って、あの千冬様の弟?」
「それじゃあ、世界で唯一男で『IS』を使えるのもそれが関係して……」
「ああっ、いいなぁ。変わってほしいなぁ……」
等々、ちらほらと男子生徒……織斑一夏と織斑千冬の関係性がわかっていく。
そんななか、心底面倒臭そうに溜め息を吐く千冬。
「はぁ……さて、
「「はい!!!」」
鋭い眼光で見渡すと、その場全員(山田先生含む)が一斉に返事をした。