ついつい、読むことに時間を使ってしまいました。
さて、今回は報告とその後です。
それではどうぞ。
「――以上が剣道部乱入事件の顛末です」
閉門時間間際の部活連本部で、本日遭遇した剣道部の騒動について報告を行った、私達の前には三人の男女。
向かって右に生徒会長、七草真由美。中央に風紀委員長渡辺摩利。そして左の男子生徒が、部活連会頭、十文字克人だ。
身長は一八五センチ前後。見上げるような大男、という訳ではないが、分厚い胸板と広い肩幅、制服越しでも分かる、くっきりと隆起した筋肉で、巌のような男だった。
「それで、諍いが起こった原因については見ていないんだな?」
「はい」
「何故最初から仲裁に入らなかった?」
「仲裁に入らなかったのは、両者が主張している問題の現場を見ていなかったからです。それに、怪我程度で済むのなら、それは自己責任だと判断したからです」
「ふむ。……適切な処置だな。それで、魔法を使ったのは本当に桐原だけなんだな?」
「はい」
正確には魔法を発動出来たのが桐原先輩だけだったんだけど、発動する前に蹴り飛ばしてたし。発動させる機会も与えなかったし。
「それで、十文字。風紀委員はこの件に関して懲罰委員会に持ち込むつもりはないが、お前は如何だ?」
「俺も風紀委員の処置に従おう。せっかくの温情を無駄にするつもりはない」
「それで、達也くん怪我はないの?」
「俺はありません」
「日向さんは?高周波ブレードを素手で掴んだって聞いたけど」
私は掴んだ方の手を見る。
見ると、血が流れていた。
「大丈夫です」
達也から、嘘つけ、みたいな視線を送られるが無視する。
「そうですか。では今回の争いの話はこれで終わりです。二人ともご苦労様でした。今日はもう上がっていいわよ」
「「失礼します」」
二人同時に礼をして部屋から出る。
カバンを教室に取りに行こうと達也とは逆方向に歩き出すが、
「待て」
いきなり肩を掴まれる。
特に何も思わなかったがとりあえず声だけ上げてみる。
「きゃー、達也のエッチっ」
「そんな棒読みで言われてもな」
「ま、そうだよね。で、何?」
「手は大丈夫か?血が出てただろ」
「さっきも言ったけど大丈夫だよ。こんな傷、すぐ治るよ」
「一応、保健室に行っておけ」
「はいはい」
達也の説教じみた言葉を軽くあしらって教室に向かう。
実際、顔を顰めるのを我慢してる。
だって、手を切られたら痛いじゃん。
それを我慢して教室に入りカバンを取って部屋から出る。
……一応保健室に行っておくか。
保健室に行って、第一高校保険医、安宿玲美先生に包帯を巻いてもらった。
更に、
「女の子なんだから、傷は残っちゃ嫌でしょ?我慢しちゃダメ」
と小言ももらった。
傷を治す魔法とかないかなぁ、なんて考えながら歩いて昇降口を通ると、
「逆桐」
達也たちいつものメンバーがいた。
怪我のことがバレないようにそっと隠す。
「みんな如何したの?」
「お兄様が日向も待ってあげようと言ってくれたの」
「それで達也くんが奢ってくれるって言うんだけど逆桐さんも来ない?」
「それはいい。私も行くよ。ありがとう、達也。ゴチになります」
「……お前も俺と一緒で遅れてきたんだがな。まあいい、それじゃ行くか」
そう達也が切り出して歩き始めた。
そうして、店に着いて注文をする。
そこで、西城レオンハルトが今日の争いについて聞いてくる。
「そう言えば達也、剣術部の相手は殺傷性Bランクの魔法を使ってきたんだろ?よく無事だったな」
「『高周波ブレード』は有効範囲の狭い魔法だ。触れなければ如何とでも対処できる。刃に触れられないだけで、それ以外は真剣相手と対処は変わらない。が、逆桐は『高周波ブレード』を真正面から受けてたな」
「だ、大丈夫なのかよ。真正面から受けたって……」
こちらを向いて心配そうに見てくる。
実際、とても痛いがあっけらかんと話す。
「大丈夫大丈夫。手を怪我したぐらいだから」
「って怪我してんじゃねえか!」
「だって、あの魔法がどんなものか知らなかったんだから。名前しか聞いたことが無かったし」
「魔法を無効化する前に飛び出してたからな」
「それを早く言って欲しかったよ……」
達也が魔法を無効化出来ると今聞いて項垂れる。
「それよりもこの子に魔法を教えるのが先決じゃない?見てて危なっかしいわよ」
「そうだな。だが、今日はもう遅いし帰るか」
「そうですね」
そう言って、勘定を達也に全てお任せして、みんなと分かれる。
……家に帰ると兄が面倒そうだな。
実際に面倒くさかった。
心配してくれるのはありがたいけど、いちいち喚くし、終いには桐原先輩を襲いに行こうとしてたし。
怪我をするもんじゃないなぁ。
兄がとても面倒くさい。
静かにさせる為に思いっきり木刀で殴る。
「痛いよ!なんで殴るの!?」
「うるさいから。そこまで大きな怪我じゃないし、そこまで騒がないで」
「怪我の大きさの問題じゃないんだよ!怪我をしたこと自体が問題なんだ!」
「じゃあ、怪我を治す魔法とか作ってよ」
「……」
その手があったか!みたいな感じで顔をあげる。
……本気にしてしまった。
「分かったよ、ひな!今すぐ作ってくるっ!」
そう言って階段を駆け上がっていった。
あまり期待はしていないので、騒がしかったことにため息をついた。
どうでしたか?
達也がキャスト・ジャミングを使っていないので説明はカットしました。アンティナイトも出てきませんでした。
怪我を治す魔法については後ほど、ということになります。
次回は達也視点が入ります。
お楽しみに。