TSで行く進撃の巨人   作:ハゲ教官

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三頁目

 

 

◎月α日

 

 

 死ぬこともなく二年目は終わった。まあ、ライベルアニがなにか企んでいるのは知ってるんだけどね!(戦慄)

 

 なんかこう、私を殺そうと躍起になっていたのが無くなってる。余裕が生まれたみたいな、そんな感じに。

 

 まあ、奴らが私に危害を及ぼさないというのなら全く以て問題はない。日頃から警戒はしておくが。

 

 

 

¶月√日

 

 

 訓練兵団も今日で卒業になる。エレンの演説があったり、ジャンとの喧嘩があったりで、最後まで面白いやつらだった。

 

 エレンも、悪気はないんだろうが『勿論お前も調査兵団志望だよな?』っていう輝きに満ち溢れた目をこちらに向けてくるのは本当にやめてほしい。目が腐ってる私にはニフラムかかってるのと同義だから。ザキと同義だから。「えっ。……えっ」とか本当に言ったから。

 

 ……最近、こいつらに死んでほしくないとか考えるようになってきた。いやそれが普通なんだけど。やはり三年も一緒にいると情が沸いてしまうらしい。いざというとき見捨てられるように過ごすべきだったか。……でもまあ、誰かが死なない状況にもって行ければそれに越したことはない。目標は三班のメンバーとマルコの救済。

 

 明日はついに実戦かー。正直このままどこかへ消えたい。

 

 そうそう。私の順位だが。

 

 11 っ て お 前 。

 

 クリスタをのし上げるために私の邪魔をしてくるユミルマジ許すまじ。しかもちょっと申し訳なさそうにしてんじゃねぇよ気まずいだろ。

 

 ちなみに首席から十位までは原作通りだ。しかも最後に教官から貰った言葉が「貴様は本当に運がないな……」って。そこも含めて評価してくれる教官素敵!(建前)運で成績変わるっておかしいだろふざけんな(本音)。

 

 

 一人だけ怯えてるんだよなあ。明日のことで。エレンに「どうした」って聞かれたけど答えられる筈もなく。なにげこの世界は運ゲー要素あるからね。人類準最強(ミケさん)も思ったより呆気なく亡くなったし。やっぱり実力で生き残るならアッカーマン家くらいないとなあ。無理ゲーすぎて泣ける。

 

 ベルトルトはまだ覚悟を固める前だったか。あいつもちょっと様子がおかしかった。ライナーやアニは今回壁破壊に加担しないとはいえ、どこか神妙な顔つきだった。

 

 ……明日、明朝に行動を起こそうと思う。固定砲整備なんぞ知るか。一人の時を見計らってベルトルトの首を落とす。うまくいったら、だが。

 

 正直な話、ベルトルトは私よりもかなり強い。リーチという大きな武器もあるし、何より第三位というのは伊達ではない。ミカサ仕込みの体術(反射神経に頼る野性的なもの)に頼っても、人間状態で勝てる確率は半分以下と言ったところか。

 

 

 

¶月ц日

 

 

 

 今はなにも書きたくない。気持ちが落ち着いたらもう一度書こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、私は怖じ気づいた。ベルトルトの背後に回ったまでは良かったが、そのあとブレードを握る事すら出来なかった。結局、覚悟など出来ていなかったのだ。人を殺す覚悟も、それが出来ないことによる多数の犠牲の事を考えても、私は確実な保身に走った。

 

 ミーナやトーマス、それにマルコ。みんな死んだ。助けられる筈だったのに。

 

 エレンも食われたとアルミンから報告された。普段の私なら「原作通り」だとか書いているのだろうが、頭の中にあるifの可能性の事を考えると、言い様のない不安に駆られる。怖いのだ。どうしようもなくこの世界が。本物の巨人を見てようやく実感した。

 

 屋根の上、エレンの凶報を受けてもミカサは平然としていた。それどころか私達を鼓舞するような………いや、演技だろう。きっとあの場で一番辛かったのはミカサだ。

 

 首席という立場を良くも悪くも理解している彼女は、ここで士気を下げる訳にはいかないと考えたのだろう。トップが折れてしまってはその下が折れない訳がない。

 

 強い。だが脆い。彼女より大人である筈の私が行動に移せず、こうしてただ文でひたすら考察を続けるなどおかしい話だ。わかっている。支えてあげるべきなのだろう。だが、体がどうしようもなく動かない。背後から迫る死神の足音に抗えずにただ震えている。

 

 ……これではまさに家畜だ。反逆しようともせず、この状況をただ悲観するだけ。

 

 私は人だ。今のところ、肉体だけは。

 

 ……いつか、エレンの様に気高い『人』になれるだろうか。彼が私の立場だったなら、きっとこんな犠牲はなかった。どこまでも純粋な漆黒の衝動のまま、ベルトルトの心臓を貫いていただろう。

 

 これから、トロスト区奪還作戦が始まる。絶対に生き残ってやる。家畜のまま死ねるわけがない。

 

 他人に『心臓』を捧げられる人間こそが、本当の意味での人間なのだろう。

 

 怖くて仕方ないが、今度は腕は震えていなかった。むしろ妙な達観さえ生まれている。生き残れたなら、真っ先にミカサとエレンの所へ行こう。二人を精一杯抱き締めてやりたい。

 

 だが、もし死んだときの為だ。胸ポケットにこの日記を入れて、これがハンジやリヴァイ、調査兵団の糧になるためのものにしておこう。こちらの世界の言葉で、これを記しておく。

 

 

 

『私はセシル・ウィルス。第104訓練兵団所属。これを見ている人間がいるのならば、私はトロスト区奪還作戦中に死んだということだろう。出来る事なら遺体は、憲兵団所属のケニー・アッカーマンの元で火葬してほしい。

 

私は先の超大型巨人襲来による作戦中、人類の敵の正体を知ってしまった。

 

 同期のベルトルト・フーバーが超大型巨人の正体である。鎧の巨人は同じくライナー・ブラウン。これから現れるであろう女型の巨人の正体はアニ・レオンハート。

 荒唐無稽な話ではあるが、どうか信じてほしい。エレン・イェーガー訓練兵の巨人化からもわかるように、人は巨人へとその姿を変えることが可能である。つまり、知性を持っているであろう先述した巨人達はみな、中に人が入っている可能性が高い。

 

 証拠を提示しろと言うのならば、先述した三名の四肢をもぎ取るといい。そうすれば奴等は巨人化できない上、その正体を晒されることになるだろう。もいだ四肢から狼煙が上がるなら、それが何よりの証拠だ。

 

 自傷行為が巨人化の引き金になっているため、彼らが金属類を身に付けているときは推奨しない。指先まで完全に捕縛してから行為に及ぶべきである。』

 

 こんなものか。願わくば、この日記が私以外の手に渡る事がないことを。

 

 


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