どうも、ふぁもにかです。とりあえず、今回はりこりん紳士の皆さんは閲覧を控えた方がいいかもしれません。結構酷い感じになってますしね。それでも原作よりはマシかもと思える辺り、原作がどれだけエグかったかがわかるというものですね、ええ。……と、まぁそれはさておき。この辺のシリアス展開に笑い所を作るのが難しすぎる件について。さて、どうしたものか。
「なん、で……」
キンジ、アリア、理子以外の人がいないはずの横浜ランドマークタワー屋上。そこに現れた小夜鳴徹という存在にキンジとアリアが混乱する中、スタンガンを喰らって床に倒れ伏した理子が三人の心中を代表するように疑問の声を上げる。しかし。小夜鳴は理子の問いに答えない。答えないまま、理子に近づきうつ伏せから仰向けに体位を変えさせると「これは私のものよ。返しなさい」と、
「ちがッ、それ、は、ボク、の……」
「へーぇ、まだ私に立てつく余裕があるのね。ちょっと意外かしら」
「みぎゃぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
痺れの残る体で、それでも
「なん、で……バレ……」
「なんでって、もしかしてあのお遊戯会のこと? え? 何、あんな稚拙な演技で私を騙したつもりだったの? ぷッ、あっはははははははははは! これは傑作だわ!」
「作戦、は……完、璧、だっ……た――」
「――ふふ、面白い冗談ね。完璧なわけないでしょう? 遠山くんと神崎さんは我が東京武偵高が誇る優秀なSランク武偵よ。そんな実力者が二人そろって2週間も紅鳴館でハウスキーパーをやるだなんて不自然極まりないわ。そんなの私に疑ってくれと言ってるようなものじゃない」
((た、確かに……!))
したり顔な小夜鳴から今回の件がバレた根拠を突きつけられたキンジとアリアはその根拠の正論具合に何も言えなくなる。効果音をつけるとしたらガーンといった所か。
「かえ、し……」
「あぁもううるさいわね! いい加減黙ってちょうだい!」
「ッあ!?」
一方。手に持っていたスタンガンをポイと捨てた小夜鳴はうわ言のように
「これは没収よ。残念だったわねぇ、峰理子リュパン四世」
「「えッ!?」」
(なんで小夜鳴先生が理子がリュパンだって知ってんだ!?)
理子に見せびらかすように
だが、小夜鳴は理子が初代リュパンのひ孫だと知っている。この様子だと、理子が武偵殺しだということも知っているだろう。となると、眼前のイケメン臨時教師は――イ・ウーにも一定以上関与している裏の人間だと考えるのが普通だ。
(小夜鳴先生、いや小夜鳴……お前、一体何者だ?)
「う、ぅ……」
「クフッ♪ いいわねぇ。その痛みと絶望がない交ぜになったその表情。貴女みたいなリュパン家の欠陥品の心がガリガリ削られていく様は見ていてホントに快感だわ。どーぉ? 希望が粉々に打ち砕かれた感想は? アハハ! アハハハハハハハッ!!」
「う、くッ、もう、もう止め――かふ!?」
「うん? 何か言ったかしら? よく聞こえなかったわ。もう一度お願い」
「もう、止め――ぐッ!?」
「うーん。耳の調子でも悪いのかしら、全然聞こえなかったわ。もう一度お願い。今度はもっとはっきりと大きな声で」
「や……こふッ」
「ワンモアプリーズ、四世ちゃん。言ってくれなきゃお姉さんわかんないぞ?」
キンジたち二人が得体の知れない小夜鳴に対して警戒心を募らせる中、二人の眼前では無抵抗の女子に対する理不尽な仕打ちが繰り広げられていた。小夜鳴は狂ったような笑みとともに頭、足、脇腹、鳩尾と、理子の体の随所を蹴りつける。理子の声に耳を傾けることなく、小夜鳴は何度も何度も理子を蹴りつけ続ける。成人男性の蹴りを何度もその身に受けた理子の体はもうボロボロだった。
「ぁ……」
「アハ、ごめんなさい♪ ぜぇーんぜん、聞こえなかったわ。さあ、もう一度――ッ!?」
もはや悲鳴すら上げられない理子に小夜鳴はさらに追い打ちの蹴りを放とうとする。と、そこで。身の危険を察した小夜鳴はサイドステップの要領で咄嗟に右に避ける。直後、ついさっきまで小夜鳴の顔があった場所を二発の銃弾が通過した。小夜鳴が切れ長の瞳で銃弾の発生源を見やると、そこには小夜鳴に銃口を向けるキンジとアリアの姿があった。
「……ねぇ、二人とも。今のは何のつもりかしら? 今、この私を殺そうとしたわよね」
「いえ。違うんですよ、先生。すみません。どうやら何かの弾みで銃が暴発してしまったみたいです。……おかしいですね。小夜鳴先生の目をメガネごと撃ち抜くよう暴発したはずだったのですが、さすがに非常勤とはいえ武偵高の教師をやっているだけのことはありますね」
「……白々しいわね。貴方たち、武偵でしょ? 武偵法9条を忘れたのかしら?」
「知らないのか、小夜鳴? 武偵法なんてもはや時代遅れの悪法だぜ? ……今の時代はネオ武偵憲章の時代だ。ネオ武偵憲章46条、己の欲望に従順であれ。なぜか豹変してしまった小夜鳴先生をこれ以上見たくない。心根の醜い小夜鳴先生を一刻も早く俺の視界から排除したい。そう望んだ俺がいる以上、たまたま銃が暴発して偶然にも先生の目に向かって銃弾が放たれたとしても何ら不思議じゃないんじゃないか?」
まさか自分に向けて発砲してくるとは思わなかった小夜鳴は未だ銃口を向けたままのキンジとアリアを睨みつける。一方、キンジとアリアはそれぞれ棒読みに近い口調で、『やれやれ、これだから素人は』とでも言いたげな雰囲気で即興の言い訳を披露する。そんな二人の人を小馬鹿にしたような口調に小夜鳴のこめかみに怒りマークが生まれる。
「そんな屁理屈が通じると本気で思っているの?」
「さてな。けど、目の前の一方的な暴力シーンをいつまでも見てられるほどSじゃねぇんだよ。俺もアリアも」
「右に同じです。それに、武偵法9条を持ち出したって無駄ですよ。今回の件で武偵法9条は適用されませんから」
「あら、面白いことを言うわね。理由を伺ってもいいかしら?」
「簡単な話ですよ、小夜鳴先生」
アリアは両手を腰に当てて勝気に笑う。武偵法9条が自身にも適応されると考えている小夜鳴相手にアリアは一切余裕な笑みを崩さない。どうやらアリアは小夜鳴に武偵法9条が適用されない根拠に気づき、それに確信を抱いているようだ。
「キンジももう気づいてますよね?」
アリアからの問いかけにキンジはつい「え?」と声を漏らす。すると。キンジの反応が予想外だったのか、アリアも「……え?」と疑問の声を口にする。横浜ランドマークタワー屋上を包んでいた緊迫感が幾分か和らぐ中、キンジを見つめるアリアのきょとんとした瞳が徐々にジト目に移り変わっていく。
(え、何? 今までのやりとりの中で小夜鳴に武偵法9条が適用されない根拠があったのか!? 気づいて当然の動かぬ証拠があったのか!?)
「……気づいてないんですか、キンジ?」
「え、あ、いや――ほ、ほら! あれだろ? 要は例えこの場で小夜鳴を殺しても、俺たちの心の中で小夜鳴はちゃーんと生き続けるから何も問題ない、みたいな感じだろ? それか、今の小夜鳴がとても人間とは思えないぐらい醜い顔してるから殺してもOK、みたいな?」
アリアのジト目を受けて内心冷や汗ダラダラなキンジは口角を吊り上げて得意げな笑みを形作ると、武偵法9条が適用されない根拠についての解答を当てずっぽうで口にする。だが。案の定と言うべきか、自身の解答を「違います」とアリアに一蹴されたキンジは「まぁ、そうだと思ったけど」と小さくため息を吐いた。
「……すみません、何か無茶ぶりしちゃったみたいで」
「いや、別に謝らなくていいぞ。知ったかしてた俺が悪いんだし」
申し訳なさそうな表情を浮かべるアリアにキンジは気にするなと手をヒラヒラと振る。アリアは「そうですか」と一つうなずくと、キンジに向けていた視線を小夜鳴へと戻した。
「――武偵は如何なる状況に於いても、その武偵活動中に人を殺害してはならない。これが武偵法9条の内容です。ですが小夜鳴先生、貴方はそもそも人間じゃありませんよね? 人間を対象に作られた法律に人外の化け物が当てはまるわけないじゃないですか。ねぇ、ドラキュラ伯爵、無限罪のブラド?」
「「「ッ!?」」」
「二重人格なのか他の何かなのかまではわかりかねますが……貴方は小夜鳴先生であり、同時に吸血鬼のブラドでもある、そうですよね?」
アリアは確信に満ちた顔つきでビシッと小夜鳴を指差す。アリアが提唱したまさかの『小夜鳴徹=ブラド説』にキンジ&理子が驚きを隠せない中、当の小夜鳴は「へぇ」と顔をゆがめて凶悪な笑みを浮かべた。
「凄いわ。よくわかったわね、神崎さん。後学のためにも、どこで気づいたのか聞いていいかしら?」
「いえ。別に私はわかってなんていませんでしたよ、小夜鳴先生」
「? それはどういう意味かしら?」
「さっき言った小夜鳴先生がブラドだっていうのはただの直感です。貴方の醜い笑顔を見た時に閃きました。だから、少しカマをかけてみただけですよ。簡単に引っかかってくれてありがとうございます、小夜鳴先生。貴方が自白してくれたおかげで手間が省けました」
アリアは慇懃無礼な態度でペコリと頭を下げる。それから頭を上げたアリアはニィといたずら好きの子供のように笑ってみせる。アリアのいかにも意地の悪そうな笑みに小夜鳴は「……やってくれたわね。貴女も不完全とはいえホームズの血を受け継いだ、そういうことね」と怒気の孕んだ独り言を漏らす。
「まぁ、大体合ってるわ。私はブラドの手によって生まれた人格。だから私とブラドは別々の存在だけど、依り代とする体を共有してるの。……普段の生活を送る上では私がこの体の主導権を握り、ブラドは私を隠れ蓑にしてるわ。ブラドの体じゃ表社会にはまず馴染まないもの。でも、私が興奮状態になった時にはブラドが主導権を握る。……ブラドを呼び寄せる方法は色々あるけど、一番手っ取り早いのはヒステリア・サヴァン・シンドロームを利用することかしらね」
「ヒステリア・サヴァン・シンドローム、ですか?」
「……おい。ちょっと待て、なんでお前がそれを使えるんだ? それを使えるのは遠山家の人間だけのはずだ」
「あら、知らないの? イ・ウーはね、色んな人が集まってその力を教え合う、いわば学校みたいな場所なの。だから、その内の誰かからHSSを学んでいたって不思議ではないでしょ? 尤も、私の場合は異性とのみだりな接触による性的興奮じゃなくて、自分の手で散々痛めつけたニンゲンの絶望しきった表情でHSSを発動させるんだけどね」
「……」
「なら、さっさとそのヒステリア・サヴァン・シンドロームとやらを使ってブラドを出してください。即刻逮捕して証言台に引きずり込んでやりますから」
「ふふふ。安心して、神崎さん。言われなくても端からそのつもり、よ!」
「えぅッ!?」
小夜鳴はクツクツと肩を震わせて笑うと、唐突に理子の腹部に強烈な蹴りを入れる。しばらく小夜鳴からの攻撃がなかったためにすっかり油断していた理子は不意打ちの蹴りをモロに喰らい、吹っ飛ばされる。ゴロゴロと転がった先で理子は蹴られた腹部を守るように両手を腹部に当てて体を丸めると同時にゴホゴホと肺の中の息を吐き出す。
「さーて、四世ちゃん。今ここに貴女の大事な大事な
小夜鳴は敢えてもう一度理子に見せつけるように
(こいつら、あの時のオオカミじゃねぇか!?)
そう。小夜鳴に付き従うようにして現れたのは、以前キンジがレキと協力して撃退したコーカサスハクギンオオカミだった。しかし。二匹のオオカミはただ小夜鳴の一歩後ろで控えているだけで、襲ってくる気配はない。
(小夜鳴は、こいつらを従えてるってことか!? マズいな、あのオオカミ一匹倒すだけでも結構苦労したってのに……)
「はい、これ捨ててきて」
小夜鳴はオオカミの一匹に
「や、止め――!」
小夜鳴の意図を理解した理子が叫ぶ。しかし。あくまでご主人の命令に忠実に動くのみのオオカミは首を振って
「……あ、ぁあ」
「ふふふ、もーぉホンット最高ねぇ、その表情。絶望しか残ってないじゃない。ついさっきまであんなにはしゃぎまわってたのにね」
「ボク、の、
「今頃どうなってるかしらね、あの
「そん、な……」
絶望を映した理子の瞳からボロボロと涙があふれる。当然だろう、理子が俺に土下座してまで欲したものが二度と手に入らなくなったかもしれないのだから。運が良ければ後で見つけられるかもしれないが、あくまで運が良ければの話だ。運が悪ければ、それまでの話だ。
「おいおい。あの
「構わないわよ、別に」
小夜鳴はキンジの問いにそっけなく返答する。その後。小夜鳴はニタァと口角を吊り上げて何事か呟いたが、その声は誰の耳にも届かなかった。
(どうせ別の下僕に拾わせるから、ね……。小夜鳴が従えてるのはここにいるオオカミ二匹だけじゃないってことか)
とはいえ、読唇術を身につけているために小夜鳴の口の動きだけ見えていれば何を呟いているかがわかるキンジからすれば、小夜鳴の声が聞こえるか否かなんてものは大して関係ないのだが。
「ん! んんッ!」
と、その時。いきなり小夜鳴がビクンと体を震わせたかと思うと、恍惚の笑みを浮かべて両手を顔に当てる。そして。夜空を見上げて「来た! 来たきたキタキタキタァ――!!」と歓喜の絶叫を上げ始める。その喜色に満ちた叫び声を上げる様子はまるで自身の崇拝する神様の降臨を心から祝福する狂信者のようだ。
「キタキタキタ――!」と壊れた人形のように叫び続ける小夜鳴。その体が突然、文字通り膨張し始める。身に纏った魔女っ娘衣装をビリビリと木っ端微塵に破り捨てる形で、小夜鳴はあっという間に自身の身長を裕に超す巨体に成り果てる。その姿はまさしく化け物と形容するに足るだけの迫力を持っていた。
(これが、ブラドか……!)
(……これは文字通りの大物ですね)
『久しぶり、四世』
生のブラドを目の当たりにしたキンジとアリアがゴクリと唾を呑む中。小夜鳴の面影の全く感じられない化け物へと変貌したブラドがギロリと理子を見つめてニタリと獰猛な笑みを浮かべる。今ここにおいて、イ・ウーナンバー2の『鬼』がその全貌を現したのだった。
キンジ→久々にネオ武偵憲章を持ち出してきた熱血キャラ。
アリア→直感の冴えわたるメインヒロイン。カマだってかけられる。
理子→ブラドとの戦闘前に既に肉体的にも精神的にもボロボロなビビり少女。今現在、気絶する一歩手前ぐらいには傷ついている。
小夜鳴先生→原作同様Sっ気に満ちあふれているオカマ。その口調のせいで気持ち悪さに拍車がかかっている模様。さよなきもちわるい。
76話 まとめ
小夜鳴「ん! んんッ! 来た! 来たきたキタキタキタァ――!!」
キンジ(さよな気色悪いな)
アリア(さよなキモいですね)
理子(さよなきもちわるい……)
オオカミ二匹((さよな気味が悪いワン))
というわけで、76話終了しました。それにしても随分と久しぶりに話題に上げた気がしますね、ネオ武偵憲章。
……べ、別に今の今まで忘れてたわけじゃないんだからね! このシーンで使うためにずっとずっと温存し続けてきただけなんだからね! つい最近、熱血キンジと冷静アリアの1~5話辺りを読んでネオ武偵憲章のこと思い出したわけじゃないんだからね!
まぁそれは置いといて。今回、小夜鳴先生が登場したのに未だに全然戦闘が始まる気配がないとはこれ如何に。……やはり地の文が多いのが問題か。
~おまけ(その1 ネタ:もしも小夜鳴先生が『女性に虐げられることでヒステリアモードになるドMさん』だったら)~
小夜鳴「尤も、私の場合は異性とのみだりな接触による性的興奮じゃなくて、女性に痛めつけられることでヒステリアモードに移行するんだけどね」
オオカミ♀A「ガルルルル(←小夜鳴の背中に飛びかかって押し倒し、倒れた小夜鳴の上に乗って全体重を籠めるオオカミさん)」
オオカミ♀B「ガルルルルル(←小夜鳴先生の顔面に容赦なく爪を突き立てるオオカミさん)」
小夜鳴「ん! んんッ! 来た! 来たきたキタキタキタァ――!!」
キンジ「……女性って、人間じゃなくてもいいのかよ……何つう性癖持ってんだよ、あいつ」
アリア「なんであんな惨めな姿を晒しているというのにあれほど満面の笑みを浮かべていられるのでしょうか? 理解に苦しみますね。気持ち悪いです」
理子「……(あんなのに監禁されてたボクって一体……)」
三人の心境は複雑なようです。
~おまけ(その2:ちょっとしたネタ)~
小夜鳴「アハ、ごめんなさい♪ ぜぇーんぜん、聞こえなかったわ。さあ、もう一度――ッ!?(←銃弾をギリギリ避けつつ)」
キンジ&アリア「「……(←小夜鳴に銃口を向ける二人)」」
小夜鳴「……ねぇ、二人とも」
小夜鳴「グルメサイトのホット○ッパーって知ってる?」
キンジ&アリア「「うん、知ってる」」
理子(え? ちょっ、なんでこのタイミングでその質問!?)